今回は久々に古酒を飲みます。飲むのは、黒角ニッカです。

ニッカ初の後熟ウイスキー

_DSC3936_01黒角ニッカは、1978年~1989年まで販売された1級ウイスキーです。
当時、1級ウイスキーとしてブラックニッカ、ブラック50(黒の50)が販売されていましたが、黒角ニッカは若干高い値段で、ワンクラス上のウイスキーとして登場しました。

特徴は、ニッカとして初めて、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドした後で再び樽に詰めて後熟(マリッジ)を行ったことです。

これを試みる上で、1977年に栃木工場が竣工し、グレーン原酒の熟成とともに後熟用の貯蔵庫が設けられました。

この黒角ニッカでの試みを経て、1983年に特級ウイスキーとしてマイルドニッカをリリースし、1985年には現在も発売されているフロム・ザ・バレルが登場し、それらウイスキーに技術が継承されました。

さて、黒角ニッカのボトルデザインは、1956年に発売された初代ブラックニッカに似ていますが、初代ブラックニッカではクビの部分にリボンを巻き付けて居るのに対して、黒角ニッカでは首にかける形でリボンをつけているのが違いになっています。

一方で、ニッカのエンブレムを押印した赤い蝋を使ってリボンを固定している点は共通します。

今回は後熟の技術の継承を見る上で、現行のフロム・ザ・バレルと飲み比べたいと思います。
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まろやかさを実感できる仕上がり

グラスからの香り、液色

黒角ニッカは、グラスからはリンゴ、レーズンの香りがしっかり伝わってきます。
液色は少々薄めの琥珀色です。

ストレート

黒角ニッカは、先にゴムの香りがやってきて、後からレーズンの香りが強烈に鼻を通っていきます。その後はリンゴ、カカオ、バナナと続きます。
味わいは、アルコールからの辛みは比較的抑えめで、ほろ苦さの後に酸味が一気に広がります。

一方でフロム・ザ・バレルは、レモン、レーズン、リンゴ、シナモンの香りが一斉にやってきて、後からカカオ、樽香、バナナの香りがついてきます。
味わいは、51.4度のアルコール度数とは思えないほど辛みが少なく、酸味がしっかりと広がり、奥から苦みを感じます。

ロック

黒角ニッカの場合、リンゴとレモンの香りが揮発し、しっかりと広がります。その後はレーズンの香りが続き、後から樽からのウッディな香りが締めます。
味わいは、苦みがストレート以上に強くなりますが、その後に酸味が広がります。甘みはほとんど感じません。

フロム・ザ・バレルでは、レモンと燻製を思わせるスモーキーな香りが先にやってきて、後からリンゴ、レーズンの甘い香りが追いかけてきます。残り香的にカカオも感じられます。
味わいは、ほろ苦さが若干感じられるものの、甘みが全体に広がり、酸味も柔らかい印象です。

ハイボール

黒角ニッカでは、ピートからのスモーキーな香りが目立つようになり、その後はリンゴ、レーズンの香りが続きます。
味わいは、酸味が先にやってきた後、甘みがジワジワと訪れる印象です。

一方でフロム・ザ・バレルは、リンゴとレーズンの香りが口いっぱいに広がって、ピートからのスモーキーさは穏やかに感じられる程度です。
味わいは、最初にほろ苦さを感じつつも、徐々に甘みが広がっていきます。

まとめ

1級ウイスキーの場合、黒角ニッカの発売時はモルト原酒を18~27%迄しか入れられなかったため、7割以上がグレーン原酒、醸造アルコール、スピリッツが占めていました。

そんな条件が厳しい中で、黒角ニッカは後熟によってアルコールの刺激や辛みが抑えられ、香りも比較的豊かになっていて、新品状態を想像するに現行のブラックニッカ並みの出来を1級ウイスキーの条件で作り上げられたように思えます。

この黒角ニッカによる後熟技術を更に高め、加水を抑えて作られたフロム・ザ・バレルは、ノンエイジでありながらもストレートでもアルコールの辛みが少なく、現行のニッカのボトルの中でもトップクラスの出来であることは過言ではないでしょう。

今回は中古ボトルを扱う酒店からネットで購入しましたが、液面の低下があまりなく、ヒネ臭もそれほど強くは感じない程度で、状態としては比較的良いものでした。加水するとヒネ臭が目立ちますが、ストレートでは飲みきるにも申し分ないものでした。

黒角ニッカの販売当初は1,700円の定価でしたが、現在ネットなどでは8,000円以上の値で取引されています。
ただし歴史的価値を考えても、8000円の値は出しすぎだと言えます。

720mL、アルコール度数42度。

<個人的評価>

  • 香り B: ゴムを経てレーズンの香りがしっかり。その後リンゴ、カカオ、バナナ。加水でレモン。
  • 味わい C: 後熟によってアルコールからの辛みは少なめ。ほろ苦さの後に酸味。加水で甘みが出る。
  • 総評 C: ニッカ最初の後熟ウイスキーとして期待通りの熟成感を出せたことを実感できる。