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2007年03月08日

雑誌レトロスペクティヴ vol.1 :『 03 ゼロサン TOKYO Calling 』

ゼロサン表紙押入の奥からすでに廃刊になった雑誌が何種類か見つかったので、順次ご紹介していくこのコーナー、きょうからはじまりました。おそらく数回で終わります。
 第1回は1989年~91年まで刊行されていた新潮社の月刊誌、『 03 ゼロサン TOKYO Calling 』です。「ゼロサン」という誌名の由来は存じ上げませんが、サブタイトルは The Clash のナンバー「 London Calling 」から来てるんでしょう。'89年12月の創刊号(特集「ニュー・ヨーク」)はもちろん、忌野清志郎や花田裕之が表紙を飾った号なんかも持ってたはずですが、手許に残ってるのはこの1冊だけみたい。1991年6月号、特集「越境せよ! OUT OF BORDER 」。

「越境」というテーマ、かなり惹かれます。わたしにとっては「永遠のテーマ」って感じです。たぶんこの号も特集のために購入したのでしょう。コンテンツは画像として下のほうにアップしておきますが、特集の執筆者のみ書き出しておきます。

  □ソ連――戒厳令下の街に潜入せよ 今枝弘一
  □ベンヤミン、越境の果ての死 浅田彰
  □ドラッグの密輸方法教えます 池田草兵
  □劇画評伝 越境者・勝新太郎 根本敬
  □隔世の扉を開き現世を超えろ 麻原彰晃 vs, 荒俣宏
  □西暦2000年の脱人間プログラム MONDO2000


 浅田彰の記事は、かれがベンヤミンをどうとらえているのか期待してたんですが、たんにベンヤミンが自殺した場所を見てきましたよ、という観光レポート。どっかですでに読んだような話ばかりだったんで、かなり失望した記憶あり。このなかでいま読んでもっとも興味深いのは、表紙にもなってる麻原彰晃と荒俣宏の「サイキック対談」でしょう。リードは以下の通り。
 
事件との関わりの有無や家族訴訟などが日本全国を賑わせた〈オウム真理教〉。彼らは一体どこからやって来て、どこへ行くのか。なんのために存在するのか。あらゆる宗教、神秘学に精通する奇才・荒俣宏が、この謎を解き明かすべく立ち上がった。虎穴に入らずんば虎児を得ず。教祖であり、精神の越境者ともいえる麻原彰晃師を富士山麓・真理教本部に訪ね、ここに世にも稀なるサイキック対談の実現と相なった。

 もちろん、いまでこそオウム真理教を断罪することが容易とはいえ、まだ一般的にはかれらに対して半信半疑な見方も少なくなかった時期の特集なので、この対談だけをもってあげつらうわけにはいかないですし、そんなつもりもありません。
 しかし、オウムが実行したとされる「犯罪」のいくつかがこの時点ですでに決行されていたことは、いまではあきらかです。どこをどう読んでもオウム真理教の提灯持ちとしか読めない対談をこの雑誌の版元たる大出版社は、その後のオウムに対する圧倒的なネガティヴキャンペーンのなかで一度でも読み直してみたことがあるのだろうか。「麻原尊師にかぎりない好感を抱」き、「麻原尊師のようなグルにめぐまれない」ことを嘆いている荒俣宏といっしょに、オウム真理教の思想をきっちりと総括してみたことはあるのだろうか。――さあね。

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ゼロサンもくじ特集記事のひとつとなっているソ連は、この翌年の暮れに完全に解体してしまいます。また、特集以外の記事としてフィーチュアされているのが黒澤明とヴェンダースの対談、あるいはF1アメリカGP(このころF1ってほんとに流行ってた)のアイルトン・セナであることを思うと、やはり隔世の感があります。

個人的におもしろかったのは、コラム風に掲載されている「国を捨てる:越境者になるための3つの方法」。1見開きずつ計3見開き、「旅券を変造せよ」「高飛びせよ」「国籍を捨てよ」の3通りのノウハウが経験談(?)をもとに述べられています。
 つまり、「越境」というテーマが本質的に国家の管理から逸脱するものである以上、それが「犯罪」とならざるを得ないことを端的にわからせてくれる、その意味でもっともこの特集の意図を汲んだ原稿なのでした。

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この手の雑誌はいまもあまり多くないので、提灯持ちが得意な大出版社がもう少し企業努力をして続けてくれてればなあと思わないでもないのですが、どの原稿も対象の上澄みをさらっただけで、深く掘り下げて読ませるわけではないので、結局読まない記事の集積場になってしまっています。これもバブル時代の徒花なのかもしれません。

naovalis68 at 23:04││Magazine Jamboree 
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