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天体(そら)のメソッド第1話「円盤の街」のストーリー解析を行う。→次回
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「この町の空には、いつも円盤が共にあった――」
■評価
★★★ テクニカル、ストロング
[ニコニコチャンネル]http://ch.nicovideo.jp/sora-no-method
■総評
第1話は、乃々香とノエルの約束と再会。ストーリー構成は非常に高度な設計で、書ききれないほど丁寧な作り。また、それに裏打ちされた多くのセリフが胸に刺さる。第1話に必要な謎や目的が大きく展開され、初回の機能も十分果たしている。繰り返し見るたびに内容が強化される、極めて強度の高いストーリーである。
■基本情報
原作 - カレイドシフト
原案・脚本 - 久弥直樹
監督 - 迫井政行
アニメーション制作 - Studio 3Hz
→Wikipedia
■登場人物
[主人公たち]
古宮 乃々香(こみや ののか) - 夏川椎菜
ノエル - 水瀬いのり
水坂 柚季(みずさか ゆずき) - 豊崎愛生
水坂 湊太(みずさか そうた) - 石川界人、潘めぐみ(幼少期)
椎原 こはる(しいはら こはる) - 佳村はるか
戸川 汐音(とがわ しおね) - 小松未可子
[乃々香の家族]
古宮 修一(こみや しゅういち) - 土田大
古宮 花織(こみや かおり) - 茅野愛衣
■ドライバー分析
第1話のメインドライバーは、
①乃々香がノエルとの約束を思い出す(L-F-E-G-L)
である。またサブドライバーとして、
②登場人物の紹介(P)
③乃々香がノエルの服を洗う(P)
④乃々香が食材の買出しに行く(P)
⑤乃々香がノエルが写真立てを割ったと誤解する(E-G)
などがある。ストーリー構成は極めて上質で、多重性に富んでいる。
大雑把に言えば、第1話のストーリーの目的は、「乃々香がノエルとの約束を思い出す」こと。構図としては、「乃々香を待ち焦がれていたノエル」と、「ノエルの事を中々思い出せない乃々香」というギャップがストーリーの核になっている。
さらに分析的に言えば、第1話には次の4つのレイヤーがある。
1.出来事
2.ノエルと乃々香のエモーショナルライン
3.ノエルと乃々香の約束(過去の出来事)
4.様々な伏線
これらが高い整合性で組み合わされることで、ストーリーにはかなり厚みがある。この中でも特に、ノエルと乃々香のエモーショナルラインが面白い。(エモーショナルラインとは、ストーリーに伴う情動の列である。)
今回は、いくつかのシーンに分けて、そのエモーショナルラインを追ってみよう。
まず、最初のノエルと乃々香の出会いのシーン。乃々香の存在に気がつき、いてもたってもいられずにやってきたノエル。その想いはとってもポジティブだ。しかし、それに反して乃々香はノエルのことを思い出せない。
「ちょっと待ってってば、……あなた誰?」
[突然現れたノエルに戸惑う乃々香]
乃々香の何とも痛切な返答に、ノエルは戸惑い名前を告げる。この「期待が裏切られる」、あるいは「願いが叶わない」という展開はストーリーの基本形式の1つ(L-F)。当時小学2年生の乃々香が覚えていないのは無理もないのだが、何気ない言葉にはノエルを悲しませる要素が含まれている。
続いて、少し間をおいた服を洗った後のシーン。
「何の事か分からないけど、でも、あなたのことを知ってる気がする」
[乃々香の反応に喜ぶノエル]
先のシーンとの違いは、乃々香がノエルのことを知らないと言いつつ「知っている気がする」と期待を持たせている点。何の事か分からないと言っているのは前のシーンと同じだが、「あなたのことを知っている気がする」とすることで、ノエルの気持ちに応える部分が追加されている。服を洗ったり、買出しに行くという行為もポジティブな流れに沿っている。
しかし、それが打ち砕かれるのが次の買出し帰宅後のシーン。帰宅した乃々香は、ノエルが良かれと思ってとった荷解きの行動を、荷物を散らかし、母の写真の入った写真立てを割ったと勘違いしてしまう。
「あなたが誰なのか知らないけど、もう2度と私の前に現れないで!」
[ノエルから奪った写真立てを抱える乃々香]
ノエルの側から見れば、これは1つ目のシーンの強化版。2つ目のシーンで持った期待や、荷解きを手伝った気持ちが完全に打ち砕かれる。また、直前の回想シーンや、それまでのフラッシュバック演出で、乃々香とノエルが7年前に出会っていたことが何となく分かっている。だから、「もう2度と私の前に現れないで」というのは、乃々香にとっては今日の出来事だけの意味しかないが、ノエルにとってはもっと大きな意味がある。
この周辺から、エモーショナルラインは乃々香の側に大きくシフトする。この怒りの出来事は、乃々香にとっていかに母親が大切であるかを強調すると共に、ノエルに酷い事を言ってしまったという葛藤を生み出している。このあたりのエモーショナルラインの設計はかなり細かい。
[ノエルに酷い事を言ってしまったと気がつく乃々香]
乃々香には「酷い事を言ってしまった」という気持ちがあるが、「荷物を散らかした事」と「写真立てを割った事」という2つの誤解が、それが表に出てくることを阻んでいる。流れとしては、1つ目の誤解が解け「それでも許せない」となり、2つ目の誤解が解ける事で「謝らなくちゃ」となっている。
ここで乃々香の誤解が2段階になっていることで、再び乃々香の母親に対する想いが強調されている。この辺りの構成は非常に巧みだ。「乃々香と母親」という新しいテーマが加わる事で、ノエルと乃々香の関係に新たなピースが加えられる。それが乃々香がノエルのことを思い出すきっかけにつながっている。
[『ノエルにいっぱい謝らないと』と言って家を飛び出す乃々香]
ノエルが見つからず諦めかけた乃々香は、薄暗く雨も降り出した空を見上げる。その時、乃々香は7年前のノエルと交わした約束を思い出す。2人を結びつけたのは、乃々香が母親に教わったという“鼻歌”だ。ここで冒頭から何度も口ずさまれてきた乃々香とノエルの鼻歌が、きっちりと機能しているのは素晴らしい。
「そうだ、お母さんを呼んできてあげる。ノエルの事聞いたらすぐ来てくれるよ。待ってて、すぐ戻るから!」
[ノエルに母親の鼻歌を聞かせてあげると言う乃々香]
7年前の引越しの日、乃々香はノエルに鼻歌を教え、「すぐ戻るから」とノエルに約束する。ノエルはその約束を信じ、ずっと天文台で待っていた。しかし、引越しの都合で、その約束はずっと果たされずにいた。修一が乃々香を「母さんを困らせるな」「すぐに戻ってくる」などと説得している点も良く出来ている。
引越し、乃々香、ノエル、母親、そして口ずさむ“鼻歌”。キーワードはストーリーの中に散りばめられており、それが全て合わさり乃々香はノエルの元に辿りつく。
「来てくれるって信じてた」
[7年間、乃々香を待ち続けたノエル]
天文台でノエルが言ったセリフには、今日の出来事と、七年前に交わした約束の2つが重ねあわされている。こういった背景によって意味が何重にも感じられるセリフはストーリーの各所に見られる。各セリフにはそれぞれ色々な感情が感じられる。
このように、第1話のエモーショナルラインは、ノエルの想いから始まり、乃々香の母親の想いにシフトし、最後に2人の関係へと結びつく。ここには書き切れないが、1つ1つのセリフが非常に大切にされており、構成の丁寧さには目を見張るものがある。また、演出や音響もエモーショナルラインにしっかり沿っている。
「今度はノエルが約束を果たす番。ノエルはそのためにいるから。あなたの願いを叶えるために」
[輝く円盤に照らされるノエル]
さらに付け加えて言うなら、第1話にはまだ説明されていないストーリー最大の謎がある。それは「乃々香はどうしてノエルを呼んだのか?」ということだ。まだ設定は明らかにはなっていないが、おそらくノエルにはノエルを呼んだ何らかの理由があるはずだ。
それは当時の乃々香がとても気にしていた事であり、ノエルと乃々香を結びつけるものだ。だから、第1話のストーリーは、その謎が明らかになったとき、また別の意味を持つだろう。1つ1つの出来事の上に、ここまで何層もの広がりのあるストーリーは珍しい。
第1話は、観るたびに感じ方が変わっていく素晴らしいストーリーである。原案、脚本が1人である事も整合性の高い理由かもしれない。是非、隅々まで観て欲しい。
■登場人物紹介
初回なので登場人物の紹介。まずは名前を覚えよう。
①古宮 乃々香(こみや ののか)
物語の主人公。一本気な性格だが、それゆえに間違ってしまう事もある。現在中学3年生で7年前に霧弥湖に住んでいた。母親に対する思い入れが強く、そのことがストーリーに強く影響を与えている。また、ノエルの出現とも関係する最重要人物。
②ノエル
空に浮かぶ「円盤」に関係する謎の少女。ノエル自身は「乃々香の願いを叶えるためにいる」と言っている。7年前と姿が変わっておらず、単なる人間ではないようだが、今のところ人間とあまり変わらない。とても純粋な性格。
③水坂 柚季(みずさか ゆずき)
「円盤の街」に暮らす中学三年。7年前の乃々香の友達の1人。円盤のことを嫌っており、円盤を街から追い出そうとしている。湊太とは双子の兄妹。
④水坂 湊太(みずさか そうた)
柚季の双子の兄で、同じく7年前の乃々香の友達の1人。どちらかというと世話焼き体質。最近は、柚季から目の敵にされている。
⑤椎原 こはる(しいはら こはる)
霧弥湖の土産物屋「しいはら本舗」の看板娘。7年前の乃々香の友達の1人。柚季や湊太とは幼馴染で仲が良い。性格はおっとり。
⑥戸川 汐音(とがわ しおね)
7年前の乃々香の友達の1人。いつもヘッドホンをしている。コミュニケーションが若干苦手。7年後でも乃々香を覚えていた唯一の人物。乃々香のことをとても気にかけており、それが裏目に出ている。現在は、街で一人暮らし。
⑦古宮 修一(こみや しゅういち)
乃々香の父。7年前に家族と共に東京に移ったが、転勤で霧弥湖に戻ってきた。家事を娘に任せるずぼらな面もあるが、乃々香の性格を熟知している。
⑧古宮 花織(こみや かおり)
乃々香の母。乃々香の良き母親だったが、乃々香達と東京に越した後に亡くなった。天体観測が花織の趣味だったようで、乃々香もその影響を受けている。今でも乃々香の憧れの存在。
■残された伏線
多くの謎が残されている。このあたりも今後の見どころ。
①乃々香の願いとは何か?
ラストシーンでノエルは、「乃々香の願いを叶えると約束した」と言っている。しかし、乃々香はそのことを覚えていない。乃々香の性格を考えると、願いは母親や友達に関するものかもしれないが、それはまだ謎である。作品のトーンからすると、最終的には乃々香の願いはノエルに関するものになりそう。
[何かの儀式をする乃々香達]
②ノエルや円盤とは何か?
7年前の回想シーンで乃々香達はチャネリングのようなものを試している。乃々香とノエルが出会ったのも天文台なので、その行動がノエルの出現と関係しているようだ。
第1話終盤の演出では、乃々香がノエルを探し出したときに円盤が光り輝いており、ノエルと円盤は心理的にリンクしている。円盤はノエルの乗り物というよりは、ノエルそのものという印象。
[ノエルの心に反応し輝く円盤]
③乃々香の母親は病気だったのか?
7年前の引越しの日の回想シーンを見ると、乃々香の母親(花織)は車の中でぐったりしている。7年前の引越しの理由は分からないが、母親の病気のためという可能性はあるだろう。引越しの時点で容態が悪かったとすると、乃々香の願いも母親を元気にして欲しいということだったかもしれない。だとすると、その願いはもう叶わない。
[引越しの日の花織]
④汐音はなぜ乃々香に冷たくしたのか?
7年前の回想シーンを見ると、汐音は友達の中で一番乃々香のことを気にかけているように見える。しかし、7年後では帰ってきた乃々香に「今更何をしに戻ってきたの」と冷たい言葉をかけている。乃々香は引越しのことを伝えられずにいたようなので、そのことを恨んでいる可能性はある。汐音の行動は愛情の裏返しのようなので、誤解が解ければ、また仲良くなれそうである。
[7年前の汐音と乃々香]
⑤なぜ乃々香たちはお互いのことを忘れている風なのか?
不思議なのは、7年前は友達だったはずの乃々香達が、汐音を除き初対面のような扱いになっているのか。いかに幼いと言えども、乃々香と友人達がお互いを忘れているのは不自然な気もする(第2話でも同じ扱い)。唯一はっきり覚えていそうな汐音の存在もあり、お互いのことを思い出すことや、なぜ忘れてしまったのかもストーリーのキーになりそう。
■ストーリー詳細
P 古宮乃々香(こみやののか)が、子供の頃住んでいた街に父と共に帰ってくる。
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L 寂びれた天文台で、謎の少女ノエルがそれに気がつく。
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P 乃々香は引っ越してきた街「霧弥湖」の上空に浮かぶ「謎の円盤」を眺める。
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(次の日)
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P 次の日、目覚めた乃々香の部屋にノエルがいる。しかし、乃々香は偶然それに気がつかない。
L 修一は朝ご飯を用意する乃々香に妻の面影を見る。
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(しいはら本舗前)
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P 水坂湊太(みずさかそうた)が、看板娘である椎原こはる(しいはらこはる)と話をしている。
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(乃々香の家)
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P 乃々香の父が仕事の引継ぎに行ってしまい、乃々香はしぶしぶ家の掃除を始める。
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L そこで乃々香は部屋にいたノエルに出会う。ノエルは乃々香に会えて大喜び。
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F しかし乃々香はノエルのことを断片しか思い出せない。
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EG あっけにとられる乃々香だったが、ノエルの服が汚れていることに気がつき、服を洗濯する事に。
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(街の用品店)
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P 水坂柚季(みずさかゆずき)が、何やら“物資”を買い込んでいる。
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LF 首尾よくいっていた柚季だったが、帰りの霧弥湖行きのバスに乗り遅れる。
P バスには、たまたま戸川汐音(とがわしおね)が乗っている。
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(乃々香の家)
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L ノエルは「乃々香のことをずっと待っていた」と言う。
F しかし、やっぱり乃々香には何のことか思い出せない。
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P 乃々香は「お腹が空いてるだろう」と言い、食材の買出しに行く。
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P 留守番することになったノエルは、乃々香が忙しそうだからと引越しの荷物の整理を始める。
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(湖の辺)
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F 乃々香はノエルのことを少しずつ思い出しかける。
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E 湖の近くで乃々香は、突然汐音に「なぜ今更何をしに戻ってきたの」と言われる。
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(回想、天文台)
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L 小学生の頃、乃々香、柚季、湊太、こはる、汐音の5人は天文台で何かを呼ぼうとしていた。
F しかし、それはうまくいかなかった。
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F そして、乃々香は自分が引っ越す事も打ち明けられないでいた。
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(乃々香の家)
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P 乃々香が家に帰ると、引越しの荷物が散乱している。
L ノエルは乃々香が帰ってきて喜ぶ。
E しかし、乃々香はノエルが荷物を散らかし、母親の写真の入った写真立てを割ったと勘違いしてしまう。
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EF 乃々香は「もう私の前に現れないで」とノエルに言い、ノエルが出て行く。
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G その後、乃々香はノエルが荷解きを手伝おうとしていた事や、乃々香は写真立てを割ったのがノエルでない事を知る。
G 乃々香はノエルに謝るためノエルを探しにいく。
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(しいはら本舗前)
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P いくつかの場所を探し回った後、乃々香はこはるにもノエルのことを尋ねる。
EF しかし、ノエルは見つからない。
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G 雨も降り出し、諦めかけたその時、乃々香はノエルの事を思い出す。
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(回想、引越しの日、天文台)
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L 乃々香は母親から教わった鼻歌をノエルに教える。
LF ノエルはそれに喜ぶが、乃々香には引越しという気がかりがあった。
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L そこで乃々香は母親を呼んできて、鼻歌を聞かせてあげるとノエルに約束する。
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F しかし、車に戻った乃々香は「フェリーの時間があるから、母親を困らせるな」と修一に連れて行かれてしまう。
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(天文台)
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P ノエルが教わった鼻歌を歌っている。
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LG 乃々香がノエルを見つける。
L ノエルは「来てくれるって信じてた」と乃々香に言う。
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P ノエルは「ノエルは乃々香の願いを叶えるためにいる」と言う。
|
(つづく)
私はアニメファンではありませんがたまたま番組を視聴し、複雑な伏線、高度なストーリー展開、細やかな登場人物の心理描写、 そしてきれいな絵に感心しこれまでのエピソードを繰り返し見ています。 一度見ただけでは理解できなかった物語が繰り返し見ることで恐ろしく綿密に構成されていることに気付きました。 自分の思いを確認するためサイトを探していてこの【ストーリー解析】に出会いました。 的確で詳細な解析に納得し、自分の解釈が間違っていなかったと安心しました、 有難うございます。 後二回放送あるようで結末が楽しみです、 が このままだと最終回は号泣してしまいそうです。 作品にもよりますが日本のアニメには素晴らしいものがあると改めて思った次第です。