古代エジプト神話の世界へ
世界の始まりは混沌とした原初の海「ヌン」であった。
その海から、すべてのものが生まれ、育まれた。
しかし、世界の終りがやってくると、すべてのものは再び原初の海へ飲み込まれていく…。
古代エジプトの神話には、このように壮大な生と死のサイクルが描かれていたことをご存知でしょうか?
本展では、そんな古代エジプト人が信じた「天地創造と終焉の物語」を、ドイツ・ベルリンにある、「ベルリン国立博物館群エジプト博物館」のコレクションの中から選りすぐった約130点の作品で展覧いたします。
展示構成は、第1章「天地創造と神々の世界」第2章「ファラオと宇宙の秩序」第3章「死後の審判」というテーマで、古代エジプトにおいて世界はどのように生まれたと考えられていたか、日本では単なる王様という印象を持たれていることが多いファラオが担った最重要の役割とは何だったのか、そして、古代エジプトの人々は死後どのようになると信じていたのか、をご紹介いたします。
また、各章で異なった空間演出を施すことで、古代エジプト時代の雰囲気を味わっていただくと共に、オリジナルアニメーションで古代エジプト神話の一部を紐解きます。オリジナルアニメーションの主役は、大人気俳優の荒牧慶彦さんが扮する「アヌビス」。皆さまが古代エジプト世界で迷子にならないよう、しっかりとご案内いたします。
さぁ、かつてない古代エジプト神話の世界を、どうぞお楽しみください。
ベルリン国立博物館群は、ドイツの首都・ベルリンに流れるシュプレー川に浮かぶ「博物館島」にある5つの博物館を中核とする総合博物館群です。プロイセン王国歴代のコレクションを礎とし、先史時代から現代にいたるまで、世界的な規模と質を誇るコレクションを擁しています。
さらに、第二次世界大戦や東西ドイツ分裂の時期を経て、1999年には「博物館島」全体がユネスコの世界文化遺産に登録され、2000年代からは各博物館の改築やコレクションの整理が急ピッチで進められています。
エジプト博物館は、「博物館島」にある5つの博物館のうち、2009年に改修を終えた「新博物館」内にあり、世界で最も有名な女性像の一つとして知られる「ネフェルトイティ(ネフェルティティ)の胸像」を所蔵している博物館として有名です。
紀元前3000年頃の動物の彫像から、古代エジプトに終焉を告げたローマ皇帝の肖像まで、壮大なエジプト史を網羅する同館のコレクションは、17世紀のブランデンブルク選帝侯の所蔵品を発端とし、その後のプロイセン王が主導した発掘や購入により、世界有数のエジプトコレクションとなりました。とりわけ、宗教改革によって個性的な芸術が生まれたアマルナ時代の充実した所蔵品と6万点にものぼるパピルス・コレクションは必見です。
この世界は、天も地もない全くの暗闇で、
ヌンと呼ばれる混沌とした「原初の海」だけが
存在していた。
その大海から自力で出現したのが
創造神アトゥムである。
初め、アトゥム神は大海の中をただよっていた。
やがて、大海の中から「原初の丘」と呼ばれる
小高い丘が出現した。
その丘に這い上がったアトゥム神は
自力で大気の神シュウと
湿気の女神テフヌウトを生み出した。
シュウ神とテフヌウト女神は夫婦となり、
彼らの間に、大地の神ゲブと
天空の女神ヌウトが誕生した。
しかし、ゲブ神とヌウト女神は片時も離れない。
そこで、父であるシュウ神が2神を引き離し、
天と地を分け、その間に大気が
存在することとなった。
その後、ゲブ神とヌウト女神の間には
オシリス神、イシス女神、
セト神、ネフティス女神が誕生。
創造神アトゥム、シュウ神、テフヌウト女神、
ゲブ神、ヌウト女神、
オシリス神、
イシス女神、セト神、ネフティス女神の九柱は
創世神話にかかわる重要な神々として、
ヘリオポリスの9柱神と呼ばれる。
このたび、ベルリン市内のシュプレー川中州にある、ベルリン国立博物館群のエジプト・コレクションの名品を紹介する「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」を開催する運びとなりました。
ベルリン国立博物館群は、ロンドン・大英博物館、パリ・ルーヴル美術館と並ぶ、ヨーロッパ最大級の規模と質の高さを誇る総合博物館として知られ、なかでも、エジプト部門は、アマルナ時代の優品を筆頭に数千年にわたるエジプト史を網羅する世界有数のエジプト・コレクションを誇ります。このベルリンのエジプト・コレクションから「天地創造の神話」をテーマに、約130点の名品を展示します。
古代エジプトの神話では、すべてのものは混沌とした原初の海「ヌン」から生まれ育まれ、そして世界の終わりがやってくると同じ海に沈んでいきます。本展では、「天地創造と神々の世界」「ファラオと宇宙の秩序」「死後の審判」の3章構成で、知られざる古代エジプトの神話の世界を、アニメーションも駆使しながら貴重な出土品とともに解き明かします。日本の創世神話との意外な共通点に驚くことでしょう。長さ4メートルを超える「タレメチュエンバステトの『死者の書』」や装飾が美しい「タイレトカプの人型木棺(外棺)」など100点以上は日本初公開です。
本展が、ドイツと日本の友好関係のさらなる発展に貢献することになれば幸いです。開催にあたり、貴重な作品をご出品くださいましたベルリン国立博物館群エジプト博物館や、ドイツ政府をはじめ、ご後援、ご協賛、ご協力を賜りました関係各位に、心から御礼申し上げます。
主催者
古代エジプトの世界は何世代にもわたり人類を魅了してきました。古代エジプトに関する展覧会は世界中で広く人々の心を捉え、好評を博しています。このことは、展覧会を開催した各国の博物館における来場者数が最も明確に示しています。ベルリンにあるエジプト博物館・パピルスコレクション単独の来場者数は年間およそ80万人にものぼります。
ベルリンのエジプトコレクションには、40,000点以上の考古品と60,000点におよぶ古代文書が収蔵されています。世界有数のコレクションのひとつとして、当コレクションには、ドイツ国内をはじめ海外での特別展を支援するための借用依頼が数多く寄せられています。国立ベルリン・エジプト博物館と日本との非常に良好な関係は1988年に遡ります。この年、古代エジプト美術の素晴らしい展覧会が日本で初めて開催されました(5都市を巡回)。その後、2005年に2回目となる大規模な展覧会が開催され、博物館島に収められている主要コレクションの数々が東京と神戸の2都市でお披露目されました。この展覧会の大成功を受け、開催されるこのたびの「古代エジプト展 天地創造の神話」 では、エジプトコレクションの収蔵品のみを展示しております。テーマは、古代エジプト史の最も重要かつ複雑なトピックのひとつである、様々な姿をした神々の世界、その活動の舞台、神話の意味に的を絞っています。
展覧会のタイトルは神の仕業である天地創造(展覧会の出発点となっています)を指すだけではなく、さらに比喩的な意味でも解釈できるでしょう。エジプト文明の誕生、社会規範・様式の基盤、文化的規範、美術史的原理など、あらゆる文化的側面が網羅されています。
テーマの範囲は、神々の天体およびそれが日常生活に及ぼす影響から、古代エジプトの来世に関連するあらゆる側面に至るまで多岐にわたります。死後の世界は、死者が新たな人生に目覚める場としての世界というだけではなく、太陽神アメン・ラー とその子孫が日々再生する世界でもあります。
楽園であるこの上ない幸福な死者の住処を垣間見て終わる形で、物語は、すべてが終わる時すなわち全世界が原初の海に再び沈む時に幕を閉じます。
日本で展覧会を開催するにあたり、エジプト博物館・パピルスコレクションは常設展の優れた展示品のほか、これまでベルリン以外で展示されることのなかった品を含め、貴重な遺物の数々を貸し出すこととなりました。
日本の関係者の皆様と共に今回の展覧会の構想に携わることができ、大変嬉しく光栄に存じます。 この有意義な協力により、日本でしか見ることができない唯一無二の素晴らしい展覧会が実現いたしました。
ベルリン国立博物館群エジプト博物館館長
フリーデリケ・ザイフリード