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「ほんとうに、いま、食べたいです」入管収容半年で死亡したスリランカ女性の死の真相は

2021年7月11日 08:00
今年5月、名古屋で営まれたある女性の葬儀。スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん。名古屋の入管施設に収容中に亡くなりました。収容されてから半年余りのことです。「誰が責任者かわからない。誰も責任とっていない」(ウィシュマさんの妹)
 施設の中で何が…見えてきた問題とは…

 千葉県にある日本語学校。ウィシュマさんが2017年に来日してから通っていた場所です。就学理由書には、彼女の「夢」が書かれていました。

「わたしは新たな言語に日本語を選びました。スリランカで語学学校を開きたいです」(ウィシュマさんの就学理由書より)

「(日本語は)だんだん成長はしていたと思います。生活態度は問題なかったと思います。おとなしめで真面目な方だと」(日本語学校の校長)

 学校によると、体調不良で来なくなり、翌年には除籍処分に。

 その後、在留資格を失い、2020年8月、名古屋出入国在留管理局に収容されました。
 

ウィシュマさんを迎え入れる予定だった部屋と真野朋美さん

身元を引き受ける予定だった支援者「この部屋で…」
 在留資格のない外国人は、施設に強制収容されます。国外退去の処分を受けると基本的には送還されますが、何らかの事情で残留を希望する人は、施設での収容が続きます。

 ウィシュマさんは、支援者がみつかったことなどから、残留を希望していました。

「こういう感じでね。ウィシュマを迎えようと思ってたんよ」(真野明美さん・ウシュマさんを迎え入れる予定だった部屋で)

 支援者の1人、真野明美さん。ウィシュマさんの収容が解かれた際に身元を引き受ける予定でした。

 真野さんは、2020年12月に初めて面会。手紙などでやりとりを重ねてきました。

 初対面のことをはっきりと覚えています。

「ぐったりした感じで現れました。小さく見えたのね、小柄な人だなって。彼女のことを知った上で受け入れようと思ったんだけど(その姿を見て)いきなり『うちにおいで!一緒に暮らそう』って叫んだんですね。(ウィシュマさんは)『ありがとうございます』と身体をよじりながら喜びをあらわしましたね」(真野明美さん)
 

ウィシュマさんからの手紙

体重は20kg減 彼女の体に何が…収容半年で亡くなる 
 しかし、2021年に入り、ウィシュマさんに「異変」が。

「わたし、12.5kgぐらいやせています。ほんとうに、いま、食べたいです」
「わたし、まだ、げんきない」(真野さんに宛てられた手紙より)

 嘔吐などの症状を訴え、看護師の面談や、医師の診療を繰り返し受けるようになりました。

 体重は、半年で約20kg減少しました。

「面会の時に『もう点滴打った?』と聞くと、『まだやってない。やってくれない』と。面会室で苦しんでいる彼女を見るとね、何にもできない、このアクリル板をたたき割って連れて行けばいいのかと思ったのね」(真野明美さん)

 手紙は、2021年2月上旬を最後に途絶えました。
 

ウィシュマさんの葬儀(5月)

 そして2021年3月6日。ウィシュマさんは施設内で倒れ、亡くなったのです。

 真野さんは、5月の葬儀で遺体と初めて対面しました。

「(面影は)…頬の辺にはね…ごめんなさい…」(涙で話せない真野明美さん)
 
「なんで亡くなったかの、まだ調査結果は出ていない。2カ月もたって、私たち家族にどうして結果が伝えられないのか」(ウィシュマさんの妹)

 入管の施設に対し募る不信…対応は適切だったのでしょうか。

 体が薬を受け付けず、点滴を求めていたというウィシュマさん。2月5日の医師の診察記録には、こう記されています。

「薬を内服できないのであれば点滴、入院」

 一方、出入国在留管理庁がまとめた中間報告。そこには「医師から点滴や入院の
指示がなされたこともなかった」とありました。  
 

出入国在留管理庁の中間報告

点滴巡る診療記録と中間報告の『矛盾』
 診察記録と中間報告の『矛盾』。

 調査を指示した法務省は、事前にこの記録を確認していましたが、中間報告には盛り込みませんでした。

Q.記録が残っていることをまったく記載していない。判断したのは誰か?(記者)
「いま調査チームが最終報告にむけ調査している段階ですので、今のような御質問、記載のしかたも含めまして、どのような理由、誰が指示したのかについては私自身調査を指示している立場ですので、お答えは差し控えさせていただきます」

Q.適切だったのか?
「それに対する評価も含めて調査チームの客観公正な調査にゆだねている」(上川陽子法務大臣 4月の会見)

 また、中間報告では「未判明」とされた死因。

 その後、衆議院の委員会で「甲状腺炎による障害で全身の状態が悪化し、臓器不全が加わり死亡したとするのが考えやすい」との司法解剖の結果が示されました。
 

ウィシュマさんの家族と支援者ら

「死の真相を知りたい」遺族や支援者
 2021年5月、ウィシュマさんの妹が来日。名古屋の入管施設を訪れました。姉の死の真相を知るためです。 

 施設側とのやりとりは、音声で残されています。

【ウィシュマさんの妹】
「点滴を打ってと言ったのに、なんでしてあげなかった?自分の体の調子が悪くなっていると言っていたのに正しい薬を出さずに関係のない薬を出した。なんでそんなことをやったのか?」

【名古屋出入国在留管理局の担当者】
「ウィシュマさんに対する対応が適切であったかについては、今まさに調査が進められていると承知しております。まだ確定していない不正確な情報をご説明するのは差し控えたい」

 明確な回答は得られませんでした。

「なんの結果も出していない。出すまでは(スリランカに)帰れない」(ウィシュマさんの妹)
 

ウィシュマ・サンダマリさんと真野朋美さんの言葉

 ウィシュマさんの遺骨はいま、支援を続けてきた真野さんの自宅から車で5分ほど離れた寺に納められています。

「中間報告をみたら、あれだけ支援者が記録を出して伝えてきたのに、正しく反映されていないから信頼ができない。良い最終報告というのは期待できないですね。でも、それからが(真相解明の)スタート」(ウィシュマさんの支援者だった真野朋美さん)
 

弁護士が公開した精神科医の診療記録

「施設の外に出してあげるべきでは」2日前の医師の言葉に入管職員は
 今回の問題について、7月に新たに分かったこともあります。

 ウィシュマさんが亡くなる2日前、 精神科医が診療した時の記録の一部です。

『 診療時、話は何とかできていた。 念のため、頭部CTをしたが、特に異常はなかった』とした上で

『確定はできないものの、病気になることで仮釈放してもらいたいという動機から、詐病・身体化障害(いわゆるヒステリー)を生じたということも考えうる』と記されていました。

  記録を手に入れた弁護士によりますと、診療した医師は、「立ち会っていた入管の職員がそのように話した」と説明したということです。
 

精神科医と立ち会った入管職員のやり取り(弁護士による)

 また弁護士によりますと、診察した医師と、立ち会っていた入管職員の間には、こんなやりとりもあったといいます。
 
  診療した医師は「施設の外に出してあげるべきではないか」と提案したそうですが、 入管の職員は「(入管に)持ち帰る」と返答したということです。

 医師と職員のやりとりについて、名古屋出入国在留管理局は「調査を受けている段階のためコメントできない」としています。

 このやり取りについては、出入国在留管理庁の調査チームの中間報告には入っていませんでした。最終報告でどう扱われるかが注目されます。

(7月7日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

 

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