国内ではベンチャーへの転職は情報が少なく、ベンチャーやスタートアップに転職したいと思ってもどのように情報を探せば良いかわからないことが多いですよね。
大手有名企業のように知名度もまだない段階の会社がほとんどで、外に出ている情報もすくないです。
転職したい方は、選考の中でしっかりと的を射た質問や確認をしていくことが非常に重要ですので、どのような観点で見極める必要があるかを解説します。
これから、私がベンチャー転職3社で学んだ成功と失敗の経験をもとに重要なポイントを解説します。
1,会社の成長可能性がどれくらいあるか
残念ながら、国内の多くのベンチャーは事業が思ったように成長せずに、ゾンビ企業となることが多いです。
実際に倒産することは少ないにしても、資金調達したキャッシュとジリ貧の利益から食いつなぐだけの状態になるベンチャーが非常に多いです。
もちろん、その後に事業転換(いわゆる、ピボット)して、成功する企業も多くありますし、むしろピボットしないで成功するケースの方が少ないかもしれません。
それでは、直感的に成長している会社に転職した方がいいことはわかりますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
社内外で新しい機会は獲得しやすい
まずは、社内外で新しい機会が獲得しやすくなります。
社内であれば、会社が成長していくにつれて、自身が手を上げて掴み取れる機会が多く生まれます。
たとえば、
・新規事業を始めることに伴うプロジェクト立ち上げ
・既存事業拡大に伴う新チーム立ち上げ
・チームメンバー拡大に伴うマネージャー/役員ポジションへの昇進 など
一方、会社が成長せずにメンバーも増えずに、既存事業をとりあえず運営している状況では、投資できる資金も少ないので、新規採用や新規事業などはなかなか訪れません。
また、社外でも実は良いことがあります。
それは、成長している企業に勤務していると成長したいと思っている会社から声がかかって、コンサルティング依頼が来ます。
ベンチャーであれば、基本的にはどこも会社の成長を目指すので、すでに先人として成功している会社に教えを求めるのは当然です。
依頼側の課題次第で業務内容は大きく変わりますが、私は下記のようなコンサルティング案件を受けたことがあります。
・経営戦略、事業戦略の壁打ちや策定
・インサイドセールスチームの立ち上げ
・マーケティング戦略と実行体制の立ち上げ
・カスタマーサクセスにおけるヘルススコア設計 など
本業とは別に副業としてコンサルティングを行うことになります。
本人のスキルや希少性などによる部分が多いですが、私の場合では週10時間の稼働で5万円〜15万円くらいの条件が多かったです。副業としては非常に高単価ですし、スキルや専門性があがれば、時間単価もより上がっていきます。
経済的なメリットが大きくなる
上記のように副業していれば、本業との収入あわせて大企業時代の年収を超えることも珍しくありません。
しかし、それ以上に経済的メリットが大きいのがストックオプション(以下、SO)です。ストックオプションとは、会社が従業員や取締役に対して、会社の株式をあらかじめ定めた価額(権利行使価額)で、将来取得する権利を付与するインセンティブ制度です。
簡単にいうと、従業員などに対して会社の自社株を非常に安く買う権利をくれて、会社が新規上場のタイミングで株式を購入できる制度です。大企業からベンチャーに行く人が増えているのも、この制度の影響が非常に大きいです。
メルカリの事例はまさに会社がものすごく成長した結果、従業員に非常に大きな経済的インセンティブが付与された事例です。
35名が6億円以上の資産、メルカリが証明したスタートアップドリーム メルカリの上場までの軌跡は、同社のバリューの言葉を用いて、「Go Bold」な爆速の挑戦、「All for O newspicks.com
なんとなくこの制度の凄さがわかったと思いますが、より具体的に解説します。
会社から以下条件でSOを無償で付与された
付与数:1,000個
権利行使価額:10円
権利行使時の株価:4,000円
この場合、1,000個×(4,000円-10円)=3,900,000円が利益になります。
ここから、手にした株式を売却して現金にすると、約20%程度の税金が発生するので、3,120,000円が現金として手元に残ります。
これはあくまで一例ですが、どうすればこの利益を大きくできるのでしょうか?
どれだけの利益になるかに大きく影響するのは、①会社の成長性、②入社タイミング、③会社への貢献度です。
この中でも特に、会社の成長性が1番重要です。
なぜなら、会社が成長せずに上場できなければ、SOは何も価値がないからです。
付与数がいくら多くても、権利行使価額がいくら低くても、結局は会社が上場しないと手元に利益として残りません。
また、上場時の時価総額が大きいほど、つまり会社が成長して規模が大きいほどSOによる利益は得やすいです。
たとえば、以下2つのケースでは、いずれもSOによる利益は同じ5,000万円で同じです(権利行使価額は考慮しない)。
・500億円の時価総額で上場した会社で0.1%のSOを付与されていた場合
・50億円の時価総額で上場した会社で1.0%のSOを付与されていた場合
一概には言えないですが、前者がマネジャー、あるいは早い段階で入社すれば可能なライン、後者は早い段階で入社かつ部長以上、あるいは創業メンバーでないと厳しいラインになります。
このように、パフォーマンスに自信がある、重要ポジションで入社するというケースではない限りは、前者の成長している企業を選別して、入社する方がSOの利益獲得の近道です。
ここをあまり意識せずに、ゾンビと化したベンチャーで仕事をしている人を多く知っていますし、私も最初のベンチャー選びで失敗したので、我が身を持って実感しています。
もちろん、上場せずともM&AでもSOの設計次第ではちゃんと従業員に利益還元される場合がありますが、それも会社が成長している前提です。
また、自分が心から好きな事業に没頭できるなら、SOの経済的インセンティブが不要という方もいますし、それを否定するものではないので、その点はご理解ください。
2.上場の確率はどの程度なのか
上場しないとベンチャー転職におけるSOの恩恵はないのですが、どの程度の確率でベンチャーは上場するのでしょうか?
この点、統計データはないのですが、一般にベンチャーが上場までいく確率は数%と言われています。
こう聞くと相当確率が低いように思いますが、スモールビジネスやっているだけの会社など除外して、かつVCが投資しているか、などのフィルターを通してくいくと10%〜20%くらいの確率になっていくイメージです。
さらに、この確率も実際には会社のステージがレイターという上場に近い規模になっている会社にいくと上場の確率はどんどんあがりますし、ベンチャーに詳しい人が判断すれば、その確率は多少あがります。
たとえば、人事労務SaaSのSmartHRは直近シリーズDの資金調達を行っていますが、株主として海外機関投資家を入れていることから、グローバルオファリングという形式で2,3年以内で大型上場になるだろうと推測はできます。
この辺りの有望ベンチャーの調べ方、個社の求人分析などは別途記事を書きたいと思います。
(某雑誌などで取り上げている「有望ベンチャー100」みたいな特集記事は、基本的には参考にしない方がいいです。ベンチャーに精通していない記者がPRのうまい会社、感覚的に伸びそうな会社を選んでいるだけなので。)
なお、米国の初期ステージ(シード期)のテック企業を調査したデータを見
ると、67%がゾンビ企業となっていて、会社が失速しています。
引用元:Venture Capital Funnel Shows Odds Of Becoming A Unicorn Are About 1%
失敗しないためにも、ベンチャーへの転職する際に、会社の成長性が非常に重要であることがわかっていただけたと思います。
前編は以上です。
後編は今回の続きで、ベンチャー転職する上で重要なポイントである「自分が活躍できる環境」、「条件面」について書いていきたいと思います。