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無欲の聖女二次創作『聖女は片銅貨をも大切に想う』 作者:みふぁ~
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強欲の乙女は片銅貨をせしめる

無欲の聖女の二次創作です。

第2部中盤~第3部のあたりで、何事もなく平和な日があったらこんな感じかな~という妄想ネタです。

手紙が魔力で~とかの部分は完全に二次創作時のデタラメ設定です。羊皮紙の値段も適当です。


※賭けの内容が不自然だったので、交渉するシーン追加、罰ゲームと賭けの金額などを変更しました。



通貨設定

片銅貨=10円くらい?(小菓子が買える)

小銅貨=100円くらい?(リンゴ1個買えるかも)

銅貨=1000円くらい?(数枚あると高い本が1~2冊買えるらしい)

小銀貨=1万円くらい?(安めの食堂なら全メニュー注文できるかも?)

 ブルーノの妨害工作が執事のカイを引き離し、少年レーナが学生寮のレオノーラ侯爵令嬢の部屋の窓の外からこんにちは。

 いろいろと情報交換を終えた後、レオノーラがエランド語で話し出しました。


『レーナ、ちょっと聞いていいか?

 羊皮紙って高いんだよな。買ったことはないからよくわからねぇけど。』


『羊皮紙?安くはないわね。

 小さめの羊皮紙1枚の値段で安い本なら何冊か買える、っていう程度には高いはずよ。

 あの時の契約に使ったくらいの大きさなら銅貨1枚から5枚の間くらいかしら。』


『やっぱりそうなんだよな!?

 カイが俺の様子の報告を手紙で書いてハーケンベルグ侯爵家に送ってるのは知ってたけど、その時に使ってる紙が羊皮紙なんだぜ全部!信じられるか!?

 1回手紙送るのに一体いくらかかってるんだよ、って思って、一瞬気を失っちまってな。

 また「出歩いちゃいけません」って言われちまったぜ。』


『紙くらいで気絶しないでよ、必要だから使ったってだけでしょ?

 まあいいわ。説明してあげる。

 それは貴族へ出す手紙なら当然のことでしょうね。

 普通の紙に書いた内容は、ちょっと魔力がある人だったら簡単に書き換えられちゃうものなのよ。

 ただ幻を重ねるって程度の魔法だから、見る人にある程度の魔力があれば魔力での偽装は簡単に見破れるけど、自分より極端に上の実力で偽装されたものは見破れなかったりするから、どうしても信頼性に欠けるのよね。

 だから、書き換えられちゃいけない、例えば契約書とか。そういうものには羊皮紙を使うのよ。さっき言った通り安いものじゃないけど、魔力での偽装は羊皮紙ならほぼ不可能だからね。』


『そうなのか?そういえば例の契約書にも羊皮紙使ってたな。あんなものどうして使うのかと思ってたけど、一つ謎が解けたぜ。

 あ、でも、ちらっと手紙の内容見たけど、たいしたこと書いてなかったんだぜ。俺が笑ったとかしゃべったとかそういうことをなんかめんどくせー書き方で書いてあっただけだ。

 毎日同じようなこと書いてるらしいし、バイトの定時連絡みたいなもんだよな。

 定時連絡みたいな文章書くなら普通にチラシの裏とかでもいいんだよな?カイにも教えてやらなくちゃいけねぇな。』


『あなたにとっての普通の紙はチラシの裏なのね・・・。

 それはおいといて、もったいないからやめておきなさい。』


『そーだろ!?やめさせたほうがいいよな?』


『逆よ。もったいないから、止めるのをやめなさいって言ってるの。』


『止めるほうがもったいない?どーいう意味だ?』


 レオノーラにとって、「もったいない」という言葉は自分で言うのはいつものことだが、言われるほうになるのは久々のことである。


『どういう意味だと思う?』


『うーん、あれだろ、「内容を伝えるだけなら普通の紙でいい」んだよな。

 「書き換えられると困る」ってほどの内容でもないだろうし、わからん。』


『うん、そうね。

 ノーラちゃんにわかりやすいように、簡単な例えにしてみましょうか。』


『ノーラちゃんって、その呼び方はなんだよおい。』


『真剣に考えられるように、ちょっと条件を付けないといけないわね・・・。』


『おい聞けよ。』


『毎度おなじみ、守銭奴検定!私は1回しか見たことないけどね。

 今からノーラちゃんに1問の簡単な問題を出します。

 正解したら呼び方も戻すし、今日買い物行ってきたときのおつりをあげる。

 ハズレなら私はあなたのことをこれから2週間「ノーラちゃん」と呼ぶ。例の執事君がいないときはね。どう?勝負する?』


『いくらだおつりって。』


『片銅貨3枚。』


『よしやる気出てきた、受けて立とう、いつでも来い。』


『えっと、冗談よ?片銅貨3枚っていうのは。』


「くれない……の、ですか!?

 おま……あなた、言ったこと守らないのはダメなん……ですよ、信用なくす……のです!」


 顔だけ見るなら、告白してこっぴどく振られた直後の少女、という表情だろうか。

 「絶望」と「ショック」を足して2で割らなかったような表情である。


「あー、悪い、そういう意味の「冗談」じゃなくてだな。」


「だっ……どう…………よ!!」


「うん、ほとんど暴言の封印で止められてるけど、たぶん罵倒されてるんだろうな、っていうのは伝わってるぜ。

 ほら、これやるから機嫌直せ、な?」


 レーナ少年がレオノーラの片手を握り、そこになにかを握らせた。


「この感触、この重厚感、かぐわしい銅の香り…

 銅貨っ……です、ね!」


 零れかけた涙は一瞬にして姿を消し、花咲き誇るような笑顔に変わる。


「試した俺が言うのもなんだけど、あいかわらず安上がりだな。銅貨一枚で機嫌治るのかよ。」


『銅貨もらって機嫌直さないやつなんかいないだろ普通。

 タダでもらっちゃってよかったのか?ダメって言われても返さないけどな。』


『返さなくてもいいわよ。もともと問題に正解したらあげるつもりだったんだから。

 今一枚渡しちゃったから、正解したら銅貨をもう一枚追加するわね。』


『今なら、どんな問題でも答えられそうな気がする。

 あ、でも、レーナにとっては「小銭」なんだよな銅貨1枚って。』


『まあそうね、ちょっとしたことですぐなくなる金額よ。』


『それだったら、2週間もかかる罰ゲームと引き換えにするには安すぎるだろ。

 値上げを要求する。それに、回復に1週間から1年って最初に言ってたんだから、賭けの途中で元に戻せる魔力がたまる可能性もある。罰ゲームの途中だから戻さないなんて言われても困るし、「罰ゲームより前の契約のほうが優先する」っていう項目も必要だ。』


「まあ当然の要求だな。

 罰ゲームより前の契約のほうが優先するのは当然守る。

 罰ゲーム自体も時間がかからないものに変えるか。

 ところで、賭けの金額はどのくらいが妥当だと思う?」


「たくさん!」


もちろん、レオノーラはもらえるものならもらえるだけもらう気満々である。


「罰ゲームと一緒に調整するとしようか。」


・・・


「うん、まあこの項目はこのくらいだな。

 次、なにか主張することはあるか?」


「ノーラちゃんと呼ばれるのが罰ゲームなら、最初の会話で3回呼ばれたぶんは『理由なく罰ゲームだけ受けた』ということになります。そのぶんの賠償は別に行われるべきです。」


「え?

 ああ、そういえば3回言ったか?

 でもあの時銅貨1枚やったんだし、チャラでいいだろ?」


「あれは「これをくれるから機嫌を直しなさい」と言われて渡されたものです。

 機嫌を直したから、値段分の仕事はしたと考えます。」


「わかったわかった、3回分で銅貨3枚。賭けとは別に払う。

 最初は片銅貨3枚で良いって言ってたんだから、このくらいでいいだろ。」


「せっかくなので、片銅貨もください。」


「片銅貨3枚追加だ、これでいいな?」


「ありがとう!」


「いい笑顔だな。

 それはそれとして。そろそろ勝負しないと、執事君が帰ってきちまったら今日の賭けは不成立だからな。」


「それはいけません!急いで勝負しましょう!」


『それじゃ、出題前に勝負の内容を再確認するわね。

 私のことをレーナ、あなたのことをレオノーラ、とするわね。精神のほうで定義するわよ。

 レーナが出す質問にレオノーラが正解したらレーナがレオノーラに小銀貨7枚と銅貨5枚を賞金として払う。

 質問は1問、必ず「正解」が存在し、論理的に思考すれば正解する可能性があるものを出すこと。

 判定は羊皮紙のかけらに書き込み、封をした状態であなたに渡す。封を開ける前に回答すること。回答権利は1回だけ。

 不正解ならレーナはレオノーラに罰ゲームを300点分する権利を持つ。

 罰ゲーム内容1、レーナがレオノーラのことを「ノーラちゃん」と呼ぶ。1回1点、レオノーラが返事をした場合1点追加。

 罰ゲーム内容2、レーナがレオノーラの手、または頬に触れる。(1回30秒以内で終えること。)10点。

 罰ゲーム項目は両者の合意により追加、変更、削除できる。

 追記、レーナは銅貨3枚と片銅貨3枚を勝負の結果に関係なく賠償金としてレオノーラに支払う。

 これで問題ない?』


『俺としては文句はないんだけど、そんな簡単な罰ゲームでいいのか?

 学院でだって「レオノーラちゃん」とか呼ばれてることもあるんだし、「ノーラちゃん」くらいなら何回言われたって平気だぜ。値段がつくならうれしいくらいだ。

 それに、手や頬を触る、って罰なのか?よくわからねぇな。』


『罰かどうかはわからないけど、その肌の感触は一度味わったら触りたくなるわ。自分の体だったときはわからなかったけどね。』


『そうなのか。それなら文句はない。手でも胸でも尻でもどんとこい。』


『その顔で!お尻とか!言わないで!』


『おう、なんか知らんけどわかった。』


『エランド語でも封印したほうがいいんじゃないかしらこいつの言葉は…

 まあいいわ。今考えても仕方ないし。

 それでは問題です。』


『よし来い。』


『カイ君という名前の少年が2つの手紙をとある貴族に書きました。

 一つは羊皮紙に丁寧に書かれた手紙。受け取った貴族様はそのまま大事に保存しました。

 二つめはチラシの裏に丁寧に書かれた手紙。受け取った貴族様は筆写の職人を雇って羊皮紙に書き写させて、羊皮紙とチラシを大切に保存しました。

 もったいないのはどっち?』


『え?えっと・・・

 どっちも、と言いたいとこだけど、問題は「どっち」なわけだから、両方っていうのはなしだよな。

 一つめが羊皮紙と配達代、二つめはチラシと配達代と職人の給料と羊皮紙。

 二つめのほうがたくさん使ってるから「チラシを使って書いたほうがもったいない」、っていうことになる・・・のか?

 むむむ、理解はできないし納得もできないけど、答えは「二つめ、チラシを使って書いたほう」だ!』


『おみごとー。レオ。正解よ。

 ときには材料をケチるのもいいけど、「依頼主、スポンサーが必要とする品質」を満たすのが最低条件。

 そこを読み違うと、はるかに大きい金額を無駄にすることになったりする。覚えときなさい。』


『なるほどー、儲けのために金を使う、っていう考え方もあるとは知ってたけど、そういわれてみると、無駄に見えて無駄じゃないこともあるんだな。羊皮紙を使ったほうが安いなんてこともあるのか。守銭道は奥深いぜ。ありがとな。』


『どういたしまして。あなたがどこに向かってるのかはわからないけど。

 あ、忘れるところだったわ。正解の賞金受け取りなさい。』


『おおおおお、小銀貨だ!銅貨だ!ピカピカだー!

 本当にもらっていいんだよな?簡単な問題だったからやっぱりなしとか言わないよな?』


『もちろんよ。どうぞご遠慮なく。』


『ありがとな!よし、それじゃ、こっちの特にきれいなほうの小銀貨にはレーナって名前を・・・。』


『お願いだからそれだけはやめて。恥ずか死ぬから。』


『わかった、スポンサーには逆らわないのが良いっていうからな、今度別の名前を付けることにする。』


『ありがとう。助かったわ。』


『どういたしまして。

 ところで、さっき言ってた通り、ここに置いてある片銅貨3枚ももらってよかったんだよな?』


『もちろんよ。言ったことは守るわ。』


『ありがとな。

 アルファ、ブラボー、チャーリー、デルタ、エコー、フォックス、ゲイン、ハッピー、インセンティブ、ジュリエット、キング、ライム、マイク、ナンシー、オスカー、ピーター、クイーン、ロミオ、シエラ、タンゴ、ユニフォーム、ヴィクトリア、ウィスキー、エクストラ、イェン、ズー、お前たちに仲間が3人も増えたぞ、仲良くしてやれよ。』


『あんた、小銀貨や銅貨に名前を付けてるのにもあきれたけど、片銅貨にまで名前つけてるの?』


『これは名前じゃない、コードネームだ。

 片銅貨たちには別れがつらくならないように、固有名はつけないようにしてる。

 再会したときにわかるように、顔だけは覚えておいてるけどな。』


『今までに使った片銅貨をもう一度見たら区別できる、ってこと??』


『傷が増えてたりすることもあるから必ず区別付くとは言えないけどな。だいたいは区別できると思うぜ。』


『私が言うのもなんだけど、その記憶力、「もったいない」わね。』


『ともに戦った戦友を覚えておくのは「もったいない」ことじゃないぜ。』


『…うん、ごめんね。悪いこと言ったわ。

 正直言って、そこまでとは思わなかった。』


『わかってくれればいい。』


『あっ、もうこんな時間ね。そろそろブルーノの時間稼ぎも限界だろうし、帰ることにするわ。』


『ブルーノも来てたのか、よろしく言っといてくれな!』


『レオは元気に片銅貨に語りかけてた、って言っておくわ。それじゃぁね!』


『またなー!』

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