この記事は Chrome セキュリティ チーム、Charlie Reis、Alex Moshchuk による Google Online Security Blog の記事 "Protecting more with Site Isolation" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。

Chrome のサイト分離により、悪意のあるウェブサイトが他のウェブサイトからデータを盗みにくくなる、重要なセキュリティ保護機能です。サイト分離は、Windows、Mac、Linux、Chrome OS ですべてのウェブサイトを他のサイトから保護し、ウェブサイトよりも権限が高い拡張機能とプロセスが共有されないことも保証します。Chrome 92 では、この機能をさらに拡張し、拡張機能が相互にプロセスを共有できないようにする予定です。これにより、既存の拡張機能の動作を一切妨げることなく、悪意のある拡張機能に対する保護が強化されます。

一方で、現在の Android のサイト分離は、パフォーマンスのオーバーヘッドを低く保つため、高価値サイトのみを保護しています。今回は、サイト分離の 2 つの改善についてお知らせします。これにより、Android ユーザーのサイト保護の対象となるサイトが増加します。Chrome 92 以降、ユーザーがサードパーティ プロバイダ経由でログインするサイトや、Cross-Origin-Opener-Policy ヘッダーが設定されているサイトに、サイト分離が適用されます。

Android のサイト分離の継続的な目標は、リソースの制約があるデバイスで、ユーザー エクスペリエンスを低下することなくセキュリティ層を追加することです。ほとんどの Android デバイスにとって、 すべての サイトでサイト分離をすると、コストがかかりすぎる点は変わりません。そのため、保護を追加することで最もメリットを得られるサイトを優先するように経験則を改善することを戦略としています。現在のところ、Chrome はユーザーがパスワードを入力してログインするサイトを分離しています。しかし、多くのサイトが、サードパーティのサイト(たとえば、「Google でログイン」を提供するサイト)を使って、パスワードを入力しなくても認証できるようになっています。ほとんどの場合、これは業界標準の OAuth プロトコルで実現されています。Chrome 92 以降のサイト分離は、一般的な OAuth のインタラクションを認識し、OAuth ベースのログインを利用するサイトを保護します。そのため、ユーザーがどのように認証をしても、データは安全です。

さらに Chrome は、新しい Cross-Origin-Opener-Policy(COOP)レスポンス ヘッダーに基づいてサイト分離をトリガーするようになります。このヘッダーは Chrome 83 以降でサポートされ、セキュリティを考慮したウェブサイトの運営者が、特定の HTML ドキュメントで新しいブラウジング コンテキスト グループをリクエストできるようにします。これにより、信頼できないオリジンからドキュメントが切り離されるので、攻撃者はサイトのトップレベル ウィンドウを参照したり操作したりできなくなります。このヘッダーは、SharedArrayBuffer などの充実した API を使う際に必要なヘッダーの 1 つでもあります。Chrome 92 以降のサイト分離では、ドキュメントの COOP ヘッダーがデフォルト以外の値だった場合、ドキュメントのサイトに機密データが含まれる可能性があるものとして扱い、サイト分離を開始します。そのため、Android でサイト分離によって確実にサイトを保護したいサイト運営者は、サイトで COOP ヘッダーを指定することでそれを実現できます。

これまでと同様、Chrome は新しく分離されたサイトをデバイスのローカルに保存します。ユーザーが閲覧履歴などのサイトデータを削除すると、そのリストもクリアされます。また、Chrome は、COOP によって分離されるサイトに一定の制限を課し、リストを最近使われたサイトのみに集中させ、リストが大きくなりすぎるのを防ぎ、悪用されないように保護しています(COOP サイトがリストに追加される前にそのサイトでのユーザー インタラクションを必須とするなど)。今後も、この新しいサイト分離モードには、最低 RAM しきい値(現在は 2 GB)を設けます。以上の点を踏まえたサイト分離の新たな改善では、Chrome の全般的なメモリ使用量やパフォーマンスに大きな影響を与えることなく、ユーザーの機密データを扱うたくさんのサイトに保護を追加できることがデータによりわかっています。

Android のサイト分離におけるこれらの改善に伴い、Android で Spectre に対応するための V8 ランタイム対策の無効化も行うことにしました。この対策は、サイト分離よりも効果が低く、パフォーマンスのコストがかかります。デスクトップ プラットフォームでは Chrome 70 以降でこの対策は無効化されており、今回の対応によって Android もそれと同等になります。Spectre からデータを保護したいサイトでは、COOP ヘッダーを設定することを検討してください。それによってサイト分離が行われます。

Android デバイスで完全な保護を実現したいユーザーは、chrome://flags/#enable-site-per-process から手動でサイト分離をオプトインすることもできます。これにより、すべてのウェブサイトが分離されるようになりますが、メモリの消費量は増加します。


Reviewed by Eiji Kitamura - Developer Relations Team

ソフトウェアの設計方法や構築方法は絶え間なく進化しています。現在、私たちは、セキュリティをソフトウェアに最初から組み込むものとして考えていますが、そのソフトウェアへの信頼を最小限に抑える新たな方法も模索し続けています。それを実現する方法の 1 つは、ソフトウェアが行ったことを暗号学的な確実性をもって確認できるようにソフトウェアを設計することです。 この投稿では、この暗号学的な確実性を実現する際に役立つ、 という考え方を紹介します。検証可能なデータ構造の既存の応用例や新しい応用例についても説明します。また、皆さん独自のアプリケーションでこの構造を活用していただくためのリソースも提供します ...
この記事はプロダクション セキュリティ チーム、Ryan Hurst による Google Online Security Blog の記事 "Verifiable design in modern systems" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。

ソフトウェアの設計方法や構築方法は絶え間なく進化しています。現在、私たちは、セキュリティをソフトウェアに最初から組み込むものとして考えていますが、そのソフトウェアへの信頼を最小限に抑える新たな方法も模索し続けています。それを実現する方法の 1 つは、ソフトウェアが行ったことを暗号学的な確実性をもって確認できるようにソフトウェアを設計することです。

この投稿では、この暗号学的な確実性を実現する際に役立つ、検証可能なデータ構造という考え方を紹介します。検証可能なデータ構造の既存の応用例や新しい応用例についても説明します。また、皆さん独自のアプリケーションでこの構造を活用していただくためのリソースも提供します。
 
検証可能なデータ構造とは、暗号学的な確実性によって、そこに含まれているデータが正しいという合意を効率的に形成できるデータ構造です。

最も有名なのがマークル木です。マークル木が数十年にわたって使用されているのは、多くのレコードの中にデータの特定の部分が含まれていることを効率的に検証できるからです。そのため、ほとんどのブロックチェーンの基礎としても使われています。

このような検証可能なデータ構造は新しいものではありませんが、新しい世代のデベロッパーたちがこのデータ構造によって実現できる設計を発見することにより、採用が加速されています。
 
こういった検証可能なデータ構造を使えば、動作自体に検証可能性と透明性が組み込まれた要素を利用して、新たな種類のソフトウェアを構築できます。これは型強制に対する新たな形での防御になり、既存のエコシステムや新しいエコシステムにアカウンタビリティが導入されるとともに、規制機関、消費者、パートナーに対するコンプライアンスの実証も簡単になります。

証明書の透明性は、検証可能なデータ構造の大規模な利用例の 1 つであり、ブロックチェーンを利用せずに、インターネットの中核インフラストラクチャを保護する方法です。私たちはこのパターンを使い、ウェブを破壊することなく、あらゆる人が利用する既存システムに透明性とアカウンタビリティを導入することができました。
 
残念なことに、検証可能なデータ構造とそれに関連するパターンの機能はあるものの、デベロッパーがスケーラブルな実稼働品質のシステムを設計、開発、デプロイするうえで利用できるリソースは多くありません。

このギャップに対処するため、Google が証明書の透明性の構築に使ったプラットフォームを汎用化し、他の種類の問題にも応用できるようにしました。このインフラストラクチャは、何年にもわたってこのエコシステムの一部として使われているので、よく理解されており、実稼働システムに安心してデプロイできます。
そのため、このプラットフォームは、医療、金融サービス、サプライ チェーンなどの領域のソリューションで活用されています。さらにこのパターンを応用し、Google のプロダクトやサービスの他の問題にも、透明性とアカウンタビリティの特性を適用しています。

その実現に向けて、2019 年にこのプラットフォームを使い、Go Checksum Database によって Go 言語のエコシステムにサプライ チェーンの整合性を導入しました。このシステムにより、デベロッパーは、Go のエコシステムをサポートするパッケージ管理システムが、意図的、恣意的、偶発的に誤ったコードを公開しても、それが見逃されることはないという確証を得ることができます。Go ビルドの再現性によって、ソース リポジトリにあるものがパッケージ管理システムにあるものと一致するという保証を得られるので、これは特に有力です。このソリューションは、ソース リポジトリからコンパイルされた最終アーティファクトまで、一貫して検証可能なチェーンを提供します。

このパターンのもう 1 つの活用例が、最近発表された Sigstore という Linux Foundation とのパートナーシップです。このプロジェクトは、オープンソース エコシステムへのサプライ チェーン攻撃が増え続けていることへの対応です。

サプライ チェーン攻撃が成立するのは、チェーンのリンク部分に弱点があるからです。ビルドシステム、ソースコード管理ツール、アーティファクト リポジトリなどのコンポーネントは、すべて重要な実稼働環境なので、それ相応に扱う必要があります。そのためには、まず、チェーン全体の出所を検証できるようにする必要があり、Sigstore の目的はこれを実現することです。

現在、私たちは、このパターンとツールを使って、デバイスのファームウェアで、ハードウェアによって強制されるサプライ チェーンの整合性を実現する作業をしています。これにより、ファームウェアのサプライ チェーンに透明性とアカウンタビリティが導入されるので、私たちが日々利用するスマートフォンなどのデバイスに対するサプライ チェーン攻撃が減るものと期待しています。

以上のすべての例で、検証可能なデータ構造を使い、サプライ チェーンでアーティファクトの整合性を保証しています。これにより、顧客、監査者、内部セキュリティ チームは、サプライ チェーンのすべての関係者がそれぞれの責任を果たしていることを確信できます。これは、サプライ チェーンの利用者の信頼を得るうえで役立ち、発覚する可能性が増えるため内部関係者による立場の悪用を阻止できます。また、アカウンタビリティが導入され、関連システムが継続的にコンプライアンス義務を果たせるようになります。

このパターンを使う場合、最も重要なタスクは、どのデータを記録するかを定義することです。そこで、分類とモデリングのフレームワークを作成しました。これは、以上で説明したシステムに検証可能性を組み込む際の設計に役立ちました。ご活用いただければ幸いです。
検証可能なデータ構造の詳細については、transparency.dev ウェブサイトや、皆さん独自のアプリケーションで使っていただけるようにまとめたツールやガイダンスをご覧ください。


この記事は Product Manager, Google Maps Platform の Yaron Fidler と Product Manager, Google Maps Transportation の Johann Lau による Google Maps Platform Blog の記事 "Elevate customer and driver experiences with improved accuracy, reliability, and travel modes" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。

昨年、Google は新たにオンデマンド配車および配達ソリューションをリリースしました。このサービスは、企業のオペレーション改善を助けることに加え、予約から配車・配達までのカスタマージャーニーを、ドライバーとお客様双方にとって変革することを目的としています。オンデマンド配車と配達において、時間はきわめて重要です。ユーザーが配車の予約やフード デリバリーの注文をする際には、シームレスなエクスペリエンスとリアルタイムの情報更新が求められます。現在 Google は、位置情報、時刻、距離の精度、並びにバイクルートのデータ品質の改善に注力しています。

機械学習により位置情報の精度を向上

位置情報の精度はお客様の業務の基盤です。モバイル デバイスからの位置はさまざまな理由から途切れることがあり、ドライバーの位置情報が滞ったり、断続的になることがあります。

最近、Google のフリート管理プロダクトにおいて、特定の管理車両で使用するために、複数の位置情報に関する信号を取り入れ、その中から最も信頼性の高い位置情報を決定する手法を開発しました。その手法により、以下のような劇的な改善が見られました。
  • 位置情報の長い「滞り」がほぼなくなりました。車両の「滞り」とは、車両が動いていると考えられるものの測定された位置情報が元の位置から動いていない場合を指します。
  • 位置情報に関する信号が断絶するのを 52~86% 削減しました。この「断絶」とは車両の位置が急に、大きく移動したように見えることです。移動した距離と比較して車両の速度が現実的ではない場合に、「断絶」が発生したと判断されます。
  • 断絶された平均的な距離も 44~86% 削減しました。「断絶された距離」とは、「位置情報の断絶」が発生したと判断された場合の、2 つの連続した地点間の距離を表します。

インド国内の e コマース プラットフォームである Dunzo は、注文追跡機能を Google Maps Platform のオンデマンド配車および配達ソリューションに統合することでサポートへの問い合わせを 90% 減らすことができました。導入が簡単なこのソリューションの効果はすぐに現れ、Dunzo のバイク配達パートナー各社は、随時更新される位置情報を同期して滞りと途切れの発生を抑え、良質なユーザー エクスペリエンスを提供できるようになりました。


Dunzo は地図表示の精度を上げてカスタマー エクスペリエンスを向上。

車両の位置情報の信頼性が高いと、配車時のマッチングの質も向上します。つまり、配車を決定するために最適な判断ができる可能性が高くなるということです。これにより、ユーザーの待ち時間を低減でき、ドライバーの満足度が高くなり、キャンセルが減りました。


バイクルートにおける到着予定時刻の精度向上

多くの地域では、道路空間に余裕があるとは言い難く、自動車の保有には非常に高い費用がかかるため、バイクが主な移動手段となる場合もあります。バイク用のマップには、独自の経路案内、到着予定時刻、ナビゲーション機能が必要です。バイクの経路案内と到着予定時刻の推定精度の向上により、Gojek は、Wi-Fi がつながりにくい地域や、マップ上に存在しない道路がある地域でも、サービス全体の質を向上することができました。


ジャカルタにおけるバイクルート(左側)と自動車ルート(右側)の違い。 バイクは狭い道路を活用できるため、おすすめのバイクルートは 自動車ルートよりも短くなる。

最近では、バイクに特化してトレーニングされた新しい機械学習モデルの開発により、到着予定時刻の結果がさらに向上しました。こうしたモデルを使い、さまざまな地域やシナリオで生じる多様な混雑状況と交通の流れを処理しています。

到着予定時刻の精度は世界全体で、一般の運転者に対しては最大 8%、オンデマンド配車と配達の到着予定時刻の精度は最大 6% 改善しました。移動や注文の状況をリアルタイムに把握するのがユーザーにとって当たり前になったオンデマンド型経済においては、こうした改善がユーザー エクスペリエンスを大幅に向上します。

Google はこれからもお客様の要望とニーズに寄り添い、自動車とバイクの両面から、オンデマンド配車と配達サービスに革新をもたらしていきます。配車と配達の最適化において、一般ユーザー、ドライバー、フリート オペレーターすべてにとってシームレスなエクスペリエンスを構築することにより、お客様の成功に全力を尽くしています。

Google Maps Platform に関する詳しい情報はこちらをご覧ください。ご質問やフィードバックはページ右上の「お問い合わせ」より承っております。


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※この投稿は米国時間 2021 年 7 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

2021 年 10 月 12 日から 14 日に開催される Google Cloud Next の登録の受付が開始されました

Google Cloud を代表するこのイベントは、今年は Google Cloud のようにオープンで柔軟性に富んだ内容となっており、最適な参加方法を自由にお選びいただけます。参加者一人ひとりがいっそう自分に合った体験ができるように、Next ’21 はカスタマイズ可能なデジタル アドベンチャーとして構成されています。

期間中は毎日、ライブ配信と基調講演をお届けして最新のリリースを紹介し、お客様とパートナーが Google Cloud や Google Workspace を使用して今日最大のビジネス課題に取り組む方法を共有いたします。参加者はこの 3 日間、ご自身の興味やスケジュールに合わせてオンラインでのインタラクティブな体験に参加したり、オンデマンドのセッションに参加したりすることができます。また、世界各国の視聴者向けのセッションやプログラムもご用意しています。

エキスパートによるリアルタイムの Q&A やブレイクアウト セッションから、Google の最新技術を活用した臨場感のあるデモや実際のアプリケーションまで、さまざまな企画を楽しめる Next ’21 を、情報を集めたり、刺激を受けたり、専門知識を広げたりするための場としてぜひご活用ください。今すぐ登録して、あなただけの Next ’21 を計画しましょう

誰もが気軽にこのイベントを体験できるよう、今年の Google Cloud Next は無料とすることにいたしました。10 月 12 日の開催に向けて、イベントの最新情報、興味や関心に基づいた主要なセッション、Google Cloud コミュニティと交流できる特別な機会といった情報をこれから順次ご案内いたします。

ぜひ Google Cloud Next にご参加ください。



- Google Cloud, Chief Marketing Officer, Alison Wagonfeld


この記事は Chrome デベロッパー、Olivier Li Shing Tat-Dupuis による Chromium Blog の記事 "Faster and more efficient phishing detection in M92" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。





ウェブをブラウジングする Chrome ユーザーの安全を確保することは、Chrome にとって非常に重要です。実際、セキュリティは 4 つの基本原則の 1 つであり続けています。ときに、セキュリティのためにパフォーマンスが犠牲になることがあります。パフォーマンスの探求シリーズの次の投稿では、オンラインのユーザーの安全を確保するフィッシング検知アルゴリズムをどのように改善したかについてお伝えします。ここで紹介する改善によって、現在のフィッシング検知は 50 倍高速になり、電池使用量も少なくなっています

フィッシング検知

Chrome は新しいページに移動するたびに、ページの一連のシグナルがフィッシング サイトのシグナルと一致するかどうかを評価します。これを行うため、アクセスしたページのカラー プロファイル(ページで表示される色の範囲と頻度)と、通常のページのカラー プロファイルを比較しています。たとえば以下のイメージでは、ほとんどがオレンジ色で、緑と少しばかりの紫が含まれていることがわかります。





サイトが既知のフィッシング サイトと一致した場合、Chrome は警告をし、個人情報を保護して認証情報が漏れることを防ぎます。


フィッシングの試みが検知された場合に表示される画面

プライバシーを守るため、Chrome のセーフ ブラウジング モードは、デフォルトでブラウザ外にイメージを送信することはありません。これはプライバシーにとってはよいことですが、マシンはイメージを分析する作業をすべて自力で行わなければならないことになります。

多くの場合、イメージ処理は重いワークロードになる可能性があります。イメージの分析には、一般的に「ピクセルループ」と呼ばれる処理をし、各ピクセルを評価する必要があるからです。最新のモニターの中には最大で 1400 万ピクセルを超えるものもあります。そのため、各ピクセルで単純な操作をするだけでも、積もり積もってかなりの CPU 使用量になります。フィッシング検知で各ピクセルに対してするのは、基本色を数える操作です。

この操作は、次のようになります。この数は、ハッシュマップと呼ばれる連想データ構造に格納されます。各ピクセルについて RGB のカラー値を抽出し、その数を色ごとに 1 つずつ、3 つの異なるハッシュマップのいずれかに格納します。





効率の改善

ハッシュマップに 1 つの項目を追加するのは高速ですが、この操作は何百万ものピクセルに対して行う必要があります。分析の質が損なわれないように、ピクセルの数を減らすことは避けますが、計算自体は改善できます。

次のようにパイプラインを改善します。
  • このコードでは、3 つのハッシュマップで RGB チャンネルを追跡するのではなく、ハッシュマップを 1 つだけ使って色ごとにインデックスを管理します。これで、数える回数が 3 分の 1 になります。
  • 連続したピクセルは、ハッシュマップで数える前に合計します。これにより、均一な背景色のサイトでは、ハッシュマップのオーバーヘッドがほぼゼロになります。
その結果、色を数える操作は次のようになります。ハッシュマップの操作が大幅に減っていることに注意してください。





高速化の成果

Chrome M92 以降のイメージベースのフィッシング分類は、50 パーセンタイルで最大 50 倍高速に、99 パーセンタイルで 2.5 倍高速に実行されます。平均で、ユーザーがフィッシング分類結果を取得するまでの時間は 1.8 秒から 100 ミリ秒に短縮されます。

これにより、Chrome を使ううえで 2 つのメリットがあります。1 つ目かつ最大のメリットは、同じ作業をするために消費する CPU 時間が減り、総合的なパフォーマンスが向上することです。CPU 時間が減れば、電池の消耗もファンが回る時間も少なくなります。
2 つ目は、結果を早く取得できるため、Chrome が警告を早く表示できることです。この最適化により、処理に 5 秒以上かかるリクエストの割合が 16.25% から 1.6% 未満に下がりました。この速度の改善により、特に悪意のあるサイトでパスワードの入力を防ぐという点で、セキュリティに大きな違いが生まれます。 

総じて、今回の変更により、Chrome のレンダラー プロセスとユーティリティ プロセスが使用する合計 CPU 時間を約 1.2% 削減できました。

Chrome の規模では、わずかなアルゴリズムの改善であっても、全体では膨大なエネルギー効率の向上になります。つまり、何世紀分にも相当する CPU 時間を節約できます。

今後もさまざまなパフォーマンスの改善についてお知らせしますので、ご期待ください。

すべての統計情報の出典 : Chrome クライアントから匿名で集計した実データ

Reviewed by Eiji Kitamura - Developer Relations Team

9 月 14 日(火)から 4 日間にわたり Open Cloud Summit を開催いたします。 アプリを高速に開発、改善することが重要な時代になってきています。Kubernetes やサーバーレス プラットフォームを利用した、モダンなシステム構築や開発、最新の運用管理について、わかりやすくお伝えします。 そして、お客様セッションでは、デンソー、日本経済新聞社、日本総合研究所、ビザスク、ブレインパッド、みんなの銀行にご登壇いただき、現場目線での Google Cloud 活用事例をお話しいただきます ...

9 月 14 日(火)から 4 日間にわたり Open Cloud Summit を開催いたします。
アプリを高速に開発、改善することが重要な時代になってきています。Kubernetes やサーバーレス プラットフォームを利用した、モダンなシステム構築や開発、最新の運用管理について、わかりやすくお伝えします。
そして、お客様セッションでは、デンソー、日本経済新聞社、日本総合研究所、ビザスク、ブレインパッド、みんなの銀行にご登壇いただき、現場目線での Google Cloud 活用事例をお話しいただきます。

最終日の 17 日(金)には Open Cloud Summit で取り上げられる内容に合わせたハンズオンを Qwiklabs を用いてエンジニアの解説付きで開催いたします。

ご登録いただいた方から抽選で 100 名様に Google Cloud オリジナルのサニタイザー ケースをプレゼントいたします。
ぜひ、この機会にご登録ください。


お申込み受付中 : https://goo.gle/OCS_gcbg


開催概要

名 称 Open Cloud Summit 
日 程 9 月 14 日(火)~ 9 月 16 日(木)14:00 - 18:30
    (Cloud Study Jam ハンズオン は 9 月 17 日(金) 14:00-17:00 に開催)
対 象 開発エンジニア、インフラエンジニア、運用エンジニア
参加費 無料(事前登録制)
登 録 https://goo.gle/OCS_gcbg



ピックアップ セッション

■  Anthos & GKE は何を解決するのか ~ その価値を最大化する  3 つのヒント ~
  中丸 良
  Google Cloud アプリケーション モダナイゼーション スペシャリスト

■ Cloud Ops で踏み出す Cloud Run 本番運用への第一歩
  岩成 祐樹 
  Google Cloud カスタマー エンジニア

■ Apigee で作るオープン API エコノミー
  関谷 和愛 
  Google Cloud Apigee カスタマーエンジニアリング Japan リード


Data Cloud Summit 本登録開始


Data Cloud Summit は、データ駆動型のビジネスへの変革に不可欠な、データ分析・基盤ソリューションに特化したオンライン セミナーです。


本イベントでは、BigQuery、Cloud Spanner など Google Cloud のデータ分析・データベース製品の最新情報、製品 Deep Dive のセッションを Google Cloud のエンジニアがお届けします。
そして、お客様セッションでは、NTT コミュニケーションズ株式会社、デサントジャパン株式会社、楽天グループ株式会社、Ubie 株式会社にご登壇いただき、現場目線でのデータクラウド活用事例をお話しいただきます。


最終日のハンズオン セッションの登録も開始しております。
ぜひ Day 1 ~ 3 のセッションで興味を持った製品をハンズオンでお試しください。



■ 開催概要


9 月 7  日(火)~ 9 月 9 日(木)13:00 - 18:10

Cloud Study Jam(ハンズオン)9 月 10 日(金)14:00 - 17:00

※ プログラムは変更になる可能性がございます。最新の情報は上記 Web ページにてご確認ください。


【お問い合わせ】

Data Cloud Summit 事務局