120年前に行われた日本初の人工降雨実験とは? 

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日本初の人工降雨?

1901年の今日(8月18日)、日本で初めて人為的に雨を降らせるという、いわゆる「人工降雨」が成功したという報道がなされました。これを行なったのは延原正孝という人物で、この報道は当時の東京日日新聞などに掲載されて話題となりました。

この実験はその手段も詳しくわかっておらず、科学的に効果があったのかは非常に曖昧ですが、延原正孝による『電力応用人工降雨法』には「電気を空中に送電して、空間電気を刺激」することで雷雨が呼ぶことができるという内容が書かれています。

延原正孝に『電力応用人工降雨法』(画像出典:国立国会図書館デジタルコレクション)

じつは現代では人工的に雨を降らせる研究が盛んに行われています。

人工降雨のメカニズムを考えるには雨や雲ができるメカニズムを知らなければなりません。

私たちが雲と呼んでいるものは、空気中にある水蒸気が冷えて細かい水の粒になったものが空気中のチリなどを核として集まったものの集合体です。その中に含まれている水滴のうち、比較的大きな水滴が地表に降り注ぐのが雨なのです。

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なお、雨の種類には「冷たい雨」と「暖かい雨」があり、前者は雲の中で水滴が氷になって落下するもの(落下中に解けて水になる)、後者は水滴のまま大きくなって降る雨を指すそうです。日本で降る雨のはほとんどが「暖かい雨」だといわれています。

雲ができたときに、その中に雨粒のタネとなるものを散布することができれば人工的に雨を降らせることが可能となります。これが人工降雨のメカニズムです。

主な方法としては細かなドライアイスのカケラを空中から散布する「ドライアイス法」やヨウ化銀の煙を発生させて氷晶核とする「ヨウ化銀法」などがあります。

この人工降雨は1933年にベルシェロンとフィンダイゼンという二人の学者がそれぞれ独立して「氷晶説」という降雨の理論を唱えて以降、世界中で行われてきました。

世界で初めて行われたのは1946年のアメリカのことでアーヴィング・ラングミュアという人物が理論立てて実験を行なったとされています。

現在、この人工降雨の実験は水不足を解決するような芳しい結果を残していませんが、最近では中国が2025年までに人工的に雨や雪を生み出すという「気象改変プロジェクト」を行なっているなど、研究が行われています。

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