阿南惟幾 (あなみ これちか)
職業:大日本帝国陸軍大将 陸軍大臣
俳優:役所広司
敵:0人 手段:
計:0人 本編136分: 殺/分
劇中の大半が重要な台詞のやり取りで構成されている、凄い映画です。
複数人の会話のやり取りを名言集
(というかほぼ台詞集)にしたので、かなり見難い部分が多いですが、テキストから、この映画の緊迫したシーン達を思い出して頂けたらと思います。
また、この映画を改めて見返すきっかけにでもなれれば幸いです。
ちなみに、現時点でこのブログのいちばん長い記事となっております。見るのが疲れます。
鈴木貫太郎総理大臣ルーズヴェルト大統領死去にあたっての談話: 鈴木総理
「
今日の戦争において、アメリカが優勢であるのは、ルーズヴェルト大統領の指導力が極めて優れているからです。
その偉大な大統領を、本日亡くしたのですから、アメリカ国民にとっては非常な悲しみであり、痛手でありましょう・・・
ここに私は、深甚なる弔意を、アメリカ国民に申し上げる次第であります。
しかし、大統領の死去によって、アメリカの戦争努力が変わるとは思いません。
より激化するとも思われます・・・ 」
(劇中に台詞はないが、「我々も、アメリカの覇権主義に対し今まで以上に強く戦い続けます」と続く)
陸軍 VS 海軍 一回戦: 迫水久常内閣書記官長
「
戦局の見通しと時局の将来について、ざっくばらんに話し合えたらと思います!」
米内光政海軍大臣
「陸海軍一体化の話でしたら、論ずるまでもありません」
阿南惟幾陸軍大臣
「本土決戦も近いんです。少し柔軟に考えましょうよ」
米内「英国式の
海主陸従にしたいというのであれば、聞く耳はあるよ????」
阿南「海軍が主流になるわけないでしょう・・・(呆れ)
陸軍には無傷の将兵が国内国外合わせて
600万おるんです!!」
米内「なにをもってして無傷と言うんだ!
陸海軍は今や、手足をもがれたも同然じゃないか!!」
阿南「
手足をもがれているのは海軍でしょう!??
その海軍と比較して、陸軍は無傷だと申し上げたんです!!」
米内「
精神論だけで国を守ることなどできん!! 」
阿南「
精神論の話などはしていません!私は海主陸従はありえないと言っている!!海軍は手足どころか・・・金玉も取られている!!!」
米内
「金玉とは何だ!!」
天皇の食事事情:吹上御所 入江相政
「本日も雑炊でございます」
昭和帝
「アサリだね」
入江「食糧事情は民間の方が多少融通は利きますので」
三井安弥「侍従各自が自宅から弁当を持ち込み、陛下のお食事に陪席(ご一緒)させていただけたらと思いまして・・・」
保科武子「君臣語り合う永年の美風をいささかでも回復できるのではないかとも思います」
昭和帝「皆に食事の心配をさせて気の毒に思う。
しかし、弁当の会食とは良い考えだ。
ありがとう。」
天皇の希望: 昭和帝
「これは、あくまで懇談であるゆえ、今日は最高戦争指導会議の6名に加え、木戸内大臣にも同席してもらいたい。
去る6月8日の会議で、今後の戦争指導要綱は決まり、4日前の会議では、陸相と総帥部両総長は
本土決戦で勝利を挙げた上で、
和平交渉を成すが可であると主張した。」
「他面、3月から5月にかけての空襲で、
東京の半分は焼け野原となった・・・今は、
地方都市への空襲が続いている」
「この際、
従来の概念にとらわれることなく、
戦争の終結についても、すみやかに具体的な研究を遂げ、
これの
実現に努力するよう、希望する。」
鈴木首相「今日は陛下から、
我々が心で思っても口にするのを憚らねばならぬ、和平に関するお言葉を直接お聞きすることが出来た。」
「誠に、ありがたいことです。」
阿南大将の娘の結婚式を心配する昭和帝: 昭和帝
「5月の空襲で帝国ホテルは休業していたと聞く・・・
結婚式は無事すんだのか?」
阿南「
はっ!! 」
「九段の軍人会館に急遽、会場を移しまして、なんとか!!」
昭和帝「
よかった・・・よかった・・・ 」
若手を焚きつける東條: 稲葉正夫陸軍中佐
「かつて中国で野戦軍を指揮した時に、阿南閣下はこうおっしゃったそうだ。
”積極ハ如何ニ努メテモ猶ホ神ノ線ヨリ遠シ”」
畑中健二陸軍少佐
「”積極は・・・如何に・・・? 努めてもなお神の線より遠し”・・・? すごい!!」
竹下正彦陸軍中佐
「勝利は攻撃精神に徹してこそと信じて疑わない人だよ」
井田正孝陸軍中佐
「あれだけ部下を殺しても恨まれなかったのは
乃木大将と阿南大将だけです」
竹下「不愉快な言い方するな井田!(笑)」
井田「ビアク島作戦考えてみろよ。
阿南閣下は
1万5000の兵を送り込んだ。結果、捜索隊に収容された
生存者は90人です」
荒尾興功陸軍大佐・軍務課長
「ビアク玉砕は、
統帥が麻の如く乱れた結果だ。」
青年将校
「東條閣下だ!!!」 東条英機陸軍大将
「楽にしてくれ。
陸軍大臣が留守だというので、君たちに一言忠告しておく」「昨日の陛下のご発言のことだ。」
「勤皇には二つある。 ”狭義”と”広義”だ。」
「狭義の解釈では陛下より”和平せよ”との勅命あればこれに従う」
「広義の解釈では国家永遠を考える」
「たとえ陛下より仰せあるも、まず諫言し奉る」「それでもお許しなくば、どうする?」 「どうする?」 「どうするっ!?」 椎崎二郎陸軍中佐
「”
強制し”奉りても所信を断行すべし!!!」
東條「
貴様、名前は?」
椎崎「椎崎二郎であります!!!!」
東條「
よく言った!椎崎中佐!
強制し奉りても所信を断行すべし!! 余はこれを取る!!!」
「君たちは、いかに心得る!??」畑中少佐「
”積極ハ如何ニ努メテモ猶ホ神ノ線ヨリ遠シ”であります!!!」
東條「なに???」竹下「
本土決戦、徹底抗戦あるのみと信じます!!」
東條「よし。軍務課長、このやり取りそのまま陸軍大臣に伝えておくように」
荒尾「はいっ!!」
安井藤治国務大臣
「東條さんはやる気満々だねぇ!あちこちで火をつけてる・・・」
阿南「うちにも来たそうだ。」
荒尾「若いのが何人か火をつけられました」
昭和帝「んぁぁ・・・ヒメジョオンは見つけ次第取らないといけないね」
入江「ドクダミなど日本固有の雑草は隣近所と共存共栄する慎ましさがございますが、外来種は非常な繁殖力がございますね」
昭和帝「うん」
阿南「言いたいことがあれば言え安井」
安井「地方の豪族に過ぎない
楠木一族が、天皇をお守りするため数万の敵に挑んだ姿は
日本軍人の鑑だ」
「だから銅像も宮城(皇居)の南を守っている
が、今
楠木一族はいらん」
阿南「
戦うなというのか?貴様は?」
昭和帝「この戦は応仁の乱だね。もう15年も続いてる」
阿南「しかし、どうやったら戦争を終結させられるか・・・」
阿南「
恐れ多いことだ・・・」
安井「陛下に
大元帥陛下として号令してもらうしかない」
阿南「英国式の
立憲君主制では許されん」
「
大本営と内閣が一致して決定したことについては、
反対であろうが、承認するのが原則だ。」
安井「総理が命を賭ければ事は為せる!」
会議と共に音程も麻の如く乱れる日本首脳達:米内「総力戦を戦う糧食は最早無い!」 東郷茂徳外務大臣
「長野県松城への宮城移転は2ヶ月前に結論が出ました」
安倍源基内務大臣
「戦局が変わったんです。本土決戦の時が近づいた以上、移転は不可避だ」
迫水「陸軍大臣も同意見なのでしょうか?」
安部「
当然だ!!」
阿南「お上は、国民と共に東京で苦痛を分かちたいと仰っていたと記憶しますが?」
鈴木首相「
帝都固守!帝都固守!これこれ!これあるのみ!」
米内「生死は宮城内において決する!」
鈴木「本日の閣議は以上。これより月例会を始めます」
迫水「月例会に入ります!!」
村瀬直養法制局長官
「お配りしているのは上海陸戦隊の歌に書記官長が作詞しました「一億総蹶起の歌」(いちおくそうけっき)であります」
鈴木「”
一億総蹶起”は”
一億総穴居”で頑張ろうってことかい?」
米内「わっはっはっは!!」
左近司政三国務大臣
「穴にこもる穴居ですか、なるほど!」
♪ 仰ぐも無念宮城の~
↓↓ 御垣に残るター
↑↑マのあとー
↓↓(作詞した迫水書記官長が早速外す)
♪ この敵撃ての御心をぉぉ~
↑↑ やっすんじぃ!まつるとぉ
↑↑き!はっいっまぁぁ
↓↓(音程どころか旋律さえも盛大に外す米内海軍大臣)
「閣下は600万将兵の頂点におります。心してください」
阿南「
私は大本営直属の軍人ではありませんよ。」
「どういうことですか?」
阿南「
天皇直属です。 」
漢 鈴木、義勇隊の装備を見学し戦争終結を決意:担当官「では、義勇隊用に用意した兵器をご覧ください」
機関銃!! エンフィールド銃!! 手榴弾!! 日本刀!!火縄銃!!!(←!?)
槍!!刺股(さすまた)!! 袖がらみ!! 鋤っ!(すき) 鍬っ!!(くわ) 鎌っ!!!(←!? !? !?)
鈴木「
まともな兵器は、もう残っていないんだね(絶望)」
迫水「まともな思考力が、陸軍にはもう残っていませんよ!!!(ブチギレ)」鈴木「シーーッ!!
鍋の火加減は慎重に、小魚はすぐ煮崩れするからね」
担当官「全国民は火の玉になって敵に当たる覚悟でおります!!」
8月9日:早朝 鈴木一首相秘書官
「
広島の新型爆弾に続いて、
ソ連参戦ですか・・・」
迫水「
もう、なんでもありってことなんでしょうね・・・」
東郷「広島では多くの国民が犠牲になりました。
今度は内閣が進めていたソ連を介しての和平交渉が見事に裏切られたわけですから、輔弼の責任上 総辞職を決行することが順序だと思います」
鈴木「
総辞職はしません!!この戦争はこの内閣で決着です!!」
東郷「陸軍大臣が内閣を総辞職に追い込むのではないですか?」
鈴木「アナンさんは・・・阿南さんは・・・倒れません。」
8月9日:午前鈴木「陛下に詳しいご報告を申し上げてきた」
迫水「ポツダム宣言受諾ですか!?」鈴木「
うん・・・」
迫水「陸軍は?」
鈴木一「
最高戦争指導会議を開き、ついで
閣議を招集します。
その後、抜き打ち御前会議をして聖断を仰ぐ所存です」
迫水「
憲法運用上の規範を破ることになります!!」
鈴木「ルールを破る。大元帥命令によって軍を抑える。」迫水「
国の方針を陛下の意思によって決したら・・・」
阿南一「必然的に
天皇にして
大元帥に全責任が生じます。
しかし、
陛下に責任を負わすことはできません。輔弼の最高責任者たる
総理大臣が、一命を投げ出してかかります」
鈴木「臣下がやってはいけないことだ・・・
死刑は覚悟している」
ごり押しの終戦計画:工作迫水「
御前会議開催の場合は必ず事前に連絡します。」
豊田副武軍令部総長
「大西!!」
大西瀧治郎軍令部次長
「はい!!」
豊田「
期日無記入の書面にさ、
花押署名しろっていうんだよ」
大西「署名したら良いですよ
(てきとう) 書記官長?
とにかく戦争を続ける方策を考えようよぉ。あんた大番頭なんだから。
2000万人の国民を特攻で殺すつもりなら必ず勝てるんだ」
迫水「・・・・・・。(ドン引き)」
迫水「
梅津参謀総長の花押署名は頂きましたが・・・」
吉積正雄軍務局長
「
御前会議が正式に最高戦争指導会議として成立するためには
総理大臣と総帥部の両総長の3人が連署し、
花押を添えた期日記名の書面を宮中に提出、宮中から大本営に打診が入り・・・!」
迫水「あっ ですから!
問題は緊急対応なんです!そうでなくとも総理は相当に体調を崩されております」
吉積「かなり悪いの?」
迫水「はい。」
阿南「吉積、行くぞ。参謀総長もお待ちだ。」
迫水「阿南閣下!?」
吉積「
かならず事前連絡をくれよ?」
迫水「
勿論です」
阿南「ご一緒に?」
迫水「はい」
河辺虎四郎中将、以下将校一同
「命にかけて本土決戦をお願いします!!敬礼!!!」
戦争指導会議8月9日:陸軍 VS 海軍 二回戦鈴木「広島の原爆といい、ソ連の参戦といい、
これ以上の戦争継続は不可能であると思います。ポツダム宣言を受諾し、戦争を終結させるほかはない。ついては、各員のご意見を承りたい」
出席者一同「・・・。」
米内「
黙っていたら分からんよ!!
ポツダム宣言を無条件で鵜呑みにするか、それともこちらから希望条件を提示するか 」
阿南「
まずは国体の護持の確認です」
鈴木「
天皇の国法上の地位を変更しない! 」
阿南「
占領は小兵力・小範囲。武装解除は日本人の手で行う」
米内「
あ り え な い ・・・ 」
阿南「外地派遣軍にとって武装解除は屈辱的であり危険です。この条件が入らなければ、戦争継続のほかありません。」
「
死中に活を求める戦法に出れば勝機は必ずあります」
米内「希望的観測で物を言うのはやめたまえ!日本は事実上、敗北しているんだぞ!!」阿南「
敗北とは聞き捨てなりません!」
米内「
この状況を敗北と言わずして何が敗北だ!!」
阿南「
局地的会戦では負けています。
が、戦争には負けていません!!」
「大日本帝国陸軍は明治四年の創立以来、
一度も戦争には負けていない!!」「こぉんな議論でぇ・・・敗北を受け入れるわけにはいかない!!!」迫水「
はぁぁぁぁ・・・・・・11時2分に
2発目の原子爆弾が長崎に投下されました・・・」
「
被害は広島と同じく、甚大であります! 」
8月9日:鈴木総理奏上鈴木「
戦争指導会議では結論が出なかったので、これより首相官邸に移動し、閣議に入ります。
恐らく、深更まで議論を重ねても結論は出ないと思われます」
「その場合、
陛下のお助けをお願い致します」
昭和帝
「わたくしの名によって始められた戦争を、
わたくしの本心からの言葉で収拾できるのなら、ありがたく思う」
神風大西:大西「阿南大臣?」
「
皇族を訪問して戦争継続のお願いをしとるんですが、うまくいかんのです。
車も燃料切れです。」
阿南「海軍大臣は、もうとっくに官邸に移動したよ?」
大西「
米内大臣は腰抜けです。陸軍大臣に期待するしかありません。
死中に活を求める戦法は私と同じですよ?」
「特攻あるのみ。2000万の国民特攻隊で戦えば、神風は吹く」阿南「誤解するなよ大西君。
死に拠ってのみ任務が遂行される作戦は、武士の情けに欠ける。統帥の道にも反する」「皇軍精神への冒涜だ・・・!」大西「冒涜ぅ!?」(恩賜の軍刀に手を添える)
阿南「海軍大臣の立場もあるぞ。この話は以上!」
「 誠なれ ただ誠なれ 誠なれ
誠 誠で 誠なかれし 」大西「あんた 何考えてんだ!!わけわからんよ!!!
このまま終戦なら、大和民族は死したるも同然ですぞ!!!」
鈴木「迫水君!
御前会議の段取りはぁ?」
迫水「はい。
総理と統帥部の両総長の3人が連署し花押を添えた書類を、いつでも宮中に提出できます」
閣僚たち「待て!書記長官!!
待て!聞いてないぞ!!」
鈴木「これから参内上奏するので閣僚はしばらく待機されたい」
豊田「
総理、迫水君、統帥部には事前連絡したのかね?」
迫水「ですから、
連署花押は頂いています」
阿南「迫水君。これは
大本営条項に違反していないか?」
迫水「本日の会議は結論を出すというものではなく、実情をそのまま陛下に聞いていただくものと理解しています」
阿南「だったら閣僚を待機させる必要はない」
迫水「 御前会議には平沼枢密院議長にも列席していただくわけで・・・
となれば!そこで出た議決を閣議にかけるための体裁を整えるよう・・・皆様にも待機をお願いしようと・・・ 」阿南「分かった・・・!」
安井「会議の内容は、逐一参謀たちに漏れている」
阿南「分かっている」
安井「全軍が貴様の一挙手一投足を注視している。
陸相が孤軍奮闘している限り、クーデターは起こらない・・・!」
阿南「そのつもりでやっている!」安井「足りない!!」
御前会議:8月10日阿南「ソ連は不信の国、米国は非人道の国。
こんな敵どもにぃ・・・保証もなきまま皇室を任せることは絶対に出来ない!!
一億枕を並べて倒れても、大義に生くべきであります!! 」
「ただし!四条件案によって、戦争を終結させることが出来るならば、
ポツダム宣言受諾に!賛成致します・・・」
鈴木「それでは参謀総長、ご意見を」
梅津参謀総長「陸軍大臣と同意見です。
本土決戦の準備は既に完了しております」
平沼枢密院議長の玉虫色の高説を経て・・・
鈴木「議を尽くすこと既に2時間に及びましたが、戦争指導会議の6名は遺憾ながら3対3のまま、なお、
議決することができませぬ。しかも事態は一刻の遅延も許されないのであります。この上は、まことに異例で恐れ多いことでございますが・・・」
「
ご聖断を拝しまして、本会議の結論といたしたいと存じます 」
昭和帝
「それならば、わたくしが意見を言おう」
「わたくしは、外務大臣の意見に同意である。
このまま、本土決戦に突入すれば、日本民族は死に絶えてしまう」
「わたくしの任務は、祖先から受け継いだ、この日本という国を、子孫に伝えることである」
「ひとりでも多くの、日本国民に生き残ってもらって、その人たちに、将来再び、立ち上がってもらうほか、道はない」
「このまま戦争を続け、文化を破壊し、
世界人類に不幸を招くことは、わたくしの望むところではない」
怒りの陸軍:将校「迫水を斬れ!!」将校「鈴木と東郷を斬れ!!」阿南「御前会議の席で、主張するべきことは十分主張した!」将校「大臣はソ連を不信と呼び、米国を非人道となじったと聞くが!
そんな連中がさらなる難題を突きつけてきたら、どうなさるおつもりかぁっ!?」阿南「和するも戦うも・・・敵方の回答いかんによる!! 」「ポツダム宣言受諾は、皇室保全の確証が得られて初めて実行される!!」
「この条件がなければぁ!!戦争を続ける!!!」「陸軍は和戦両様の構えで連合国側の回答を待つ!」「厳粛な軍紀の下、一糸乱れず!団結してくれ!!」
天皇の信頼を失った東條:昭和帝「重臣たちは、政府の方針に賛同したと聞く」
東條「先ほどの集まりは、重臣会議ではなく、鈴木首相による決定通告でございました。
東條は納得いたしておりません」
「改めてポツダム宣言受諾反対を奏上に参りました」
「陛下のお好きな生物学に例えれば、
軍はサザエの殻と申し上げていいのであります。
殻を失ったサザエは、その中身も死なないわけにはまいりませぬ」
昭和帝「
東條ぉ・・・ひとつ聞かせて欲しい・・・」
東條「なんなりと、陛下」
昭和帝
「サザエは学名を”Turbo Cornutus”と言い、18世紀に英国のジョン・ライトフット尊師が命名したが・・・
お前は・・・チャーチル首相がサザエを食す姿を想像できるか?
スターリン元帥も、
トルーマン大統領も、
サザエは殻ごと捨てるだろう 」東條「東條の比喩はっ!不適切でございましたっ・・・!」昭和帝「ナポレオンの前半生は、本当によくフランスに尽くしたが、後半生は自己の名誉のためにのみ働き、
その結果は、フランスのためにも、世界のためにもならなかった。
わたくしは、歴史をそのように見ている」
「 日本は、その轍を踏みたくない 」「違うか? 東條・・・」
青年将校叛乱の兆候:8月11日阿南邸阿南「何事だぁ!?」畑中「
和平派が閣下を監禁するという噂が流れております」
井田「
暗殺も気がかりです」
阿南「分かった。中で話そう」
「
私は和平派からも過激派からも狙われているのか?」
井田「
そういうことになります」
畑中「
憎むべきは和平派です。奴らは国賊です。
全滅か勝利しかないかという時に妥協的な国体護持などありえません! 」
井田「陸軍省部には、終戦は”大御心”だからこれに従うのみだという者もいます。
東條閣下でさえ昨日午後、
陛下に叱責され矛を収めたとの噂が飛び交っています」
畑中
「日清・日露の大戦で輝かしい勝利を収めた、
連戦連勝陸軍の栄光を守り・・・
戦争継続を遂行できるのは閣下だけです・・・」阿南「まぁ・・・ゆっくり飲め・・・」
井田「酒の席で閣下がよく、長沙作戦の話をなされていたのを思い出しました。
”ドンドン行け!”」
阿南「ハハハハ!
ドンドン行け!いいか!ドンドン!ドンドン行け!(笑)」
8月12日:連合国返答の翻訳の食い違い 松本俊一外務次官
「”The authority of the Emperor and the Japanese Government to rule the state shall be
subject to the Supreme Commander of the Allied Power ~~~”
この
”Subject to”(さぶじぇくと とぅ)・・・」
長谷川才次「
天皇の権威が ”連合軍最高司令官に従属する”ですね」
松本「いや。
”管理下に置かれる”という感覚です。」
迫水「陸軍は独特の回路を持っているから、少しきつい表現の方が納得するんじゃないですか?」
松本「
”制限の下に置かれる”ですか?」
その頃陸軍では:陸軍将校「おいっ!ウエブスター大辞典では
”隷属する”となっているぞ!!!」
「”Subject to”が”隷属する”か!?」 「あっ!はいっ!!!」
「”隷属する”ってなってるぞ!!!」「天皇陛下および国家統治の権限は連合軍最高司令官に隷属するってことを言ってるんですよ奴らはぁっ!!!」「隷属するとは何だぁっ!!!」畑中「返答があったのか!?」陸軍将校「ああ!”Subject to”が”隷属する”って訳せるんだよ!!!」
同日:参謀奏上梅津参謀総長「敵の回答は天皇の尊厳を冒涜しております」河辺参謀次長「これを受諾することは、わが国体の破滅、皇国の滅亡を招来するものと断言できます!」 昭和帝
「議論するとなれば際限はない!
文言が気に入らないからとて、戦争を継続することはありえない・・・!」
8月13日:阿南陸相奏上青年将校「ポツダム宣言受諾を阻止するべきです!できなければ大臣は切腹するべきです!!」阿南「
陛下のご信任の厚い畑元帥から、
陸軍の総意を上奏してもらうべく広島へ迎えの飛行機を出しております」
昭和帝「アナンよ・・・もうよい。」
阿南「
最終的な、日本国の形態決定に、陸軍として大きな不安を抱えております・・・」
昭和帝「
心配してくれるのは嬉しいが、、、もうよい・・・
わたくしには、国体護持の確証がある」
決起準備:稲葉「 1、使用兵力:東部軍及び近衛師団 2、使用方針:宮城と和平派要人とを遮断す 」
畑中「
木戸・鈴木・東郷・米内ら和平派要人を兵力を持って隔離し、ついで
東京に戒厳令を布告」
稲葉「 3、目的:国体護持に関するわが方条件に対する確証を取り付けるまで
降伏せず。交渉を継続する 」
「 4、方法:陸軍大臣の行う警備上の応急局地出兵権をもって発動する」
荒尾課長「実行には条件をつけたい」
畑中「どんな条件です?」
荒尾「
陸軍大臣、参謀総長、東部軍司令官、近衛師団長の四者が承諾すること」
稲葉「
それは無理ですよ! 」
荒尾「
無理だと?貴様、不祥事件を繰り返すつもりか!? 」
井田「
四者の同意がなければ、我々は理念なき逆賊に堕ちる。俺は荒尾課長に賛成です」
決起準備:陸相抱き込み荒尾「我々の練り上げた、兵力動員計画書であります」
椎崎「明14日、午前10時に予定されている
閣議の席に押し入り、主要な和平派要人を監禁。
陛下に聖慮の変更を迫ります」
「例え逆賊と呼ばれても行動致します!」
阿南「あらゆる事を考え抜いた上の結論なのか?」
稲葉「当然であります」
阿南「それにしては、根本が漠然としているぞ」
畑中「閣下の支持は頂けますか?」
阿南「今は閣議に全力を注ぐ。経過は、吉積軍務局長に伝える」
椎崎「では、吉積軍務局長室にて待機いたします」
阿南「軽挙妄動は慎め」
井田「我々は右するも左するも一に大臣を中心にして、一糸乱れず行動する決意であります。その点は重々ご安堵ください」
ポツダム宣言受諾決定:8月13日午後鈴木「わたくしは、本日の閣議のありのままを陛下に申し上げ、明日、
重ねて聖断を仰ぎ奉る所存であります」
米内「御前会議の手続きはどうします?」
鈴木「陛下のお召しであれば、手続きは省けます」
迫水「散会にします」
阿南「総理、御前会議を開くのを、もう2日・・・
いや、1日待っていただくわけにはいきますまいか」
鈴木「
時機は今です。この機会を外してはなりません。
どうか・・・どうか・・・あしからず・・・。」
阿南「お寛ぎのところ、お邪魔いたしました」
鈴木「
1日待てば、ソ連軍が満州・朝鮮・樺太ばかりか、北海道にまで来る。ドイツ同様、分断される・・・!相手がアメリカのうちに始末をつけねばならん」
同盟国ドイツ第三帝国では: 「ヒトラー ~最期の12日間~」名言集
本土決戦となれば、桜はもう咲かないな・・・
太平洋戦争(大東亜戦争)1945年8月15日の”終戦”を描いた作品です。
戦線各地で敗北を重ね、追い詰められた日本は、
昭和天皇(本木雅弘)の支持のもと
鈴木貫太郎内閣主導によって
戦争終結への道を模索します。
一方、”勝利”か”日本民族滅亡”かを賭しての
本土決戦を望む血気盛んな陸軍将校達は、政権を打倒してでも戦争を継続しようとクーデターを目論見ます。
首相の
鈴木貫太郎(山崎努)と共に、戦争終結のため陸軍大臣に抜擢された
阿南惟幾大将は、原爆投下やソ連参戦によっていよいよ終戦止むなしという状況の中、いつ暴走してもおかしくない陸軍継戦派をなだめつつ、針の穴に糸を通すようなギリギリの終戦工作に身を投じます。
長い歴史と伝統を持つ我が国が、恐らく初めて経験する
「民族存亡の危機」。
大よそ勝利と呼べるものが望めない絶望的な状況の中ですが、戦争終結が日本のためを思ってのことなら、
また、戦争続行も日本の尊厳、誇りと伝統のためを思ってのことなのだと考えられます。
国が敗れる、という事に重みを感じて、鑑賞したい作品だと思います。
「ラスト・サムライ」と
「SPILIT」の”英語を話して白人に媚売る胡散臭い日本人役”でお馴染み原田眞人さんが監督を勤めた映画です。
派手な戦闘シーンは無く、
ほぼ全編が
政治的・軍事的な台詞のやり取りで構成されており、短い間隔で
ポンポンと変わるカメラアングル、場面転換が、予断を許さない風雲急を告げる戦局下の緊迫を鑑賞者に訴求しています。
テンポは良いように感じるものの、濃度の濃いシーンが立て続けに長時間続くため、
会話ばかりの映画なのに見応えに満ちていますが結構疲れる映画と言えます。
そして、昭和帝・鈴木首相・阿南大臣を始めとして
戦争期を代表する著名人達が次から次へ、わんさか登場するため人物の把握が大変。
事前知識として
戦時期辺りの日本史を知っていないと完全に置いていかれる作りの様な気がします。
いちばん長い日、とは14日~15日にかけて起きた「宮城事件」を指しますが、映画は1945年4月の鈴木貫太郎内閣組閣の段階から始まるなどボリューミーです。
戦況が最悪の方向へと向かっていく程、やけっぱち。取り憑かれたように本土決戦、戦いを求める狂気もじっくりと伝わってきました。
「ヒトラー最期の12日間」でもそうでしたが、戦争に負けることの絶望、大きな争いを治める事の過酷を如実に描いていると思います。
監督・脚本:原田眞人
制作国:日本 2015年
英語タイトル「THE EMPEROR IN AUGUST」
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