Bad~1~

「Bad」といえば、やっぱりあのショートフィルムが有名ですよね。


同い年のプリンスに共演を打診して断られた、というのは有名な話。
プリンスははじめこの共演話を持ち掛けられて興奮したそうですが、最終的に「あんな曲、やりたくないよ」と言ったそう。「僕がいなくたってヒットするよ」とも言ったそうですが、そのプリンスの読み通り、「Bad」は全米チャート、R&BチャートともにNo,1を記録しています。
(「We Are The World」の参加も断わっていましたが、マイケルに比べて背の小っちゃいプリンスが、見劣りするのを恐れたという説がありますね。)

二人が共演するとどうなるのか、ちょっと見てみたかったですが・・・・。
世間からは「ライバル」とされていた二人ですから、一緒に仕事をしたくても、他のアーティストと同じようにはできない事情もあったのかもしれませんね。

「Bad」はアルバムのタイトル曲にふさわしい、インパクト大のスケールの大きな曲ですが、一方でスーパースターとして孤高の存在になってしまったが故の苦悩が伝わってくるような、どことなく緊張感の漂う曲でもあります。
この曲も、マイケルによる作詞・作曲ですね。

私は、「Bad」を聴くときはいつもリミックスの方で聴きます。以前、「おすすめリミックス」カテで紹介しましたね。是非そちらもチェックしてみてください。
(※現在「おすすめリミックス」カテはありません。Bad~2~で紹介しています)

個人的には、この曲のマイケルの声はあまり好みではないのですが、「Smooth Criminal」同様、メロディー部分以外でもヴォーカルをリズムの一つとして多様しているのが、打ち込みサウンドが印象的なこの曲にぴったりハマっていて、すごいなと思います。
そういえばさっきAmazonで見たら、なんとまだ「Bad」のシングルが売れてるんですね。びっくり。20年以上経ってるのに・・・・。

この「Bad」という曲で、そういった音楽性においてはもちろんショートフィルムでも、「マイケル・ジャクソンといえば・・・」という人々のマイケルに対するイメージが植え付けられたと言っていいでしょう。

なんといっても、「Bad」で完成したと言える「マイケル・ジャクソン」的ダンス。
マイケルが自分の大事なところを掴むダンスをしたのも、このショートフィルムが初めてでした。
(無意識でやってしまって、監督に「今のいいね」と言われて気づいたらしい)

「風」を印象的に使ったのも、このショートフィルムが初めてじゃないですか?
この後の「DANGEROUS」アルバムの「Black Or White」とか「Give In To Me」とか、風に吹かれまくりですよね。

でもメイクを派手にしたり衣装をジャラジャラさせたり、一生懸命「ワルく」見せようとしているのに、マイケル独特の品の良さが隠しきれていないのが、なんとも微笑ましい。

このショート・フィルムには、ヤンコビック作の「Bad」ならぬ「Fat」というおバカなパロディーがありますが、それを見て真面目なマイケルは怒ってしまった・・・・かと思いきや、何とこれが、マイケル公認だったりする(笑)
日本ではとんねるずもやってましたね。そっちも公認かどうかは知りません・・・・(笑)

マイケル自身も、映画「ムーンウォーカー」の中でパロディを作っていました。
みなさんご存じ、ミニサイズ「Bad」ですね (カワイイ・・・・)クスクス笑いながら見ているマイケルが目に浮かびます。

でもこの「Bad」のショートフィルム、本当に良く出来てるんですよね。
「Smooth Criminal」同様、カメラワークが素晴らしい。
(そういえば「Bad」の監督をしたのは、先日アカデミー賞にノミネートされたばかりのマーティン・スコセッシでしたね。)

一列に並んで「動く歩道」状態になっているのを真横から撮るっていうのも印象的だし、改札口を飛び越えてきてワラワラと自由に踊っちゃうのも、対照的で面白い。

それから「ブンブン」と風を切る効果音、手を弾く音、生音に切り替えられて伝わってくる熱気。
特に見所なのは、マイケルが空気口を開けた後のところから。

ド正面のアングルから、いきなり真横90度に切り替えて腕を突き上げ効果音、そしてまたド正面。
今度は上から、効果音とともにグイーーンと下がって、決めゼリフ「Who's Bad!」(ワルなのは誰だ!!)でマイケルに最接近。

つい「ニヤっ」としてしまう気持ちよさ・・・・(笑) これ、子供も絶対好きですよね。

そう、この「Bad」も「Beat It」とか「Black Or White」みたいに、若い世代に向けて作られた曲。

歌詞を見てもわかるのですが、マイケルがこの曲で問いかけているのは、「‘Bad(ワル)=イケてる’とはどういうことなのか」ということ。

「悪ぶって、表面上だけカッコつけていても、それはイケていると言えるのか?」

その問いが、この曲には込められています。

「真面目に正しく生きるのが、本当はカッコいいんだよ」って普通に諭されても、反抗したくなるのが子供っていうもの。
でもそれを最高の音楽とダンスで見せられたら、きっと子供は夢中になってしまうはず。

その構想が前提にあって、曲調も、ショートフィルムも、こういうスタイルになったんでしょう。
「Bad」はマイケルが「兄貴」的感覚で書いた、愛情たっぷりの曲なんですね。


もし知らない方がいらっしゃったら・・・・・このショート・フィルム、実際は18分もある大作になっています。
一般的に知られているのは、メインの曲の部分だけですが、実はこのショート・フィルムはシリアスなストーリー仕立てになっていて、みんなが知っている部分はその後半部分を切り取っただけなんですね。

これはマイケルが新聞で読んだ記事を元にしたという、実話がベースになったストーリーです。
若い黒人青年が学校の寄宿舎から地元のハーレムに帰省した際に、銃の犠牲になった、という事件。

悪い友達のいる地元から離れ、一人郊外の私立高校で寄宿生活を送る青年ダリル(マイケル)が、学校の休みに久々に地元に戻る部分からストーリーは始まります。
この部分はモノクロで表現されていて、「Bad」の本編部分とは対比して描かれます。
3人の旧友は相変わらずワルさばかりしていて、そこに自分を引き込もうとする彼らに、ダリルは何と言うのか・・・・。

そしてこの「Bad」が始まるんですね。
曲が終わった後、ダリル(マイケル)が彼らに熱っぽく繰り返す言葉「お前たちは間違っている」「お前たちは空っぽだ!」というのは、この前半部分から繋がっています。

マイケルが言うにはこういうことだそうです↓


「‘僕はワル(Bad)さ、お前たちもワルだ、じゃどっちがワルだ、どっちがベストだ?’
 彼(ダリル)は、強く、正しく生きようとする人間こそがワルだと言っているんです。」(MOONWALK)



これは、実はすごく深いメッセージが込められたショート・ムービーなんですね。
マイケルのシリアスで素朴な演技も見られますから、こちらでどうぞ↓
(ファンでなくても、一家に一枚のDVDです♪)
You Tubeでも分割で見られますけど、やっぱり通して見たいですよね。
よくできた作品ですから、ぜひDVDで観ていただきたいと思います。
(この撮影中、低所得者層の暮らしを垣間見たマイケルは、貧しい身なりの年寄りを見つけ、かわいそうだね、と神妙な表情を見せていたそう・・・。)


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ちなみに「Who's Bad?」という決めゼリフですが、当時マイケルは世間から、皮肉を込めて「クスリもタバコも酒もやらない、‘優等生’マイケル・ジャクソン」のイメージで見られていたそうなので(実際そうなんですが)、それに対する「本当にイケているBadな奴とは、俺のような人間をいうんだ」という、マイケル自身の主張もあったのかな、なんて思ったりもして、それも面白いです。

それから、この曲で一躍有名になった「チャモーン」ですが(笑)。
「Come On」の「カ」の音がCoolでない、ということで「チャ」と発音したそうです。
はじめ「カモン」と歌っていて、「この音、ちょっと変えられないかな」なんて思ったんでしょうか。

音に対するこだわりというか美学は、やっぱりすごいものがありますね・・・・。

BAD~2~へどうぞ



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