今回取り上げるのは、「BAD」アルバム(1987年)から「Leave Me Alone」です。
今日はちょっと長くなりそうですが、お付き合いください。
ヒップホップが台頭し、ミュージック・シーンの流れが大きく変化していた80年代後半、硬質なバッキバキのファンク・サウンドがお気に入りだったマイケルは、この「BAD」では様々な実験的音楽を意欲的に、そしてマイペースで作っていました。
アルバム発売後、「時代遅れ」だとマイケルを非難した批評家たちをよそに、マイケルはシングル5枚連続全米1位という新たなギネス記録を作ります。
「BAD」アルバムは、2曲を除いてマイケル単独作で占められており、プロデュースもクインシーよりマイケルの比重が強くなった、MJ色が色濃く出たアルバムでした。
それが、「スリラーに遠く及ばない駄作」だとか散々こき下ろされ、グラミー賞もメイン・カテゴリーでの受賞を逃すという屈辱を味わうことになったのです。
しかし、消費者の反応とこういった評価との大きなズレには、改めて違和感を覚えますね。どうしても、マスコミの悪意を感じてしまいます。
だって「BAD」の収録曲といえば、マイケルのSFとしてお馴染みの「Bad」に「Smooth Criminal」、「Man In The Mirror」「The Way You Make Me Feel」といった名曲ばかり・・・・・サウンドは全く古くならないし、未だに新しい発見があったりするんだから。
(そういえば、今年で発売30周年なんですね!)
「BAD」ワールド・ツアーでも動員数でギネス記録を更新したくらい、世界中で再びマイケル旋風が巻き起こったんですよね。もう、何度親にSFを見せられたことか・・・・(笑)。
マイケルは「BAD」の酷評に悶々としながらも、次の「DANGEROUS」ではクインシーとのタッグを解消し、新たに当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったプロデューサー、テディ・ライリーを迎え、ニュー・ジャック・スイングを取り込んでしっかり時代の波に乗ったわけです。
でも今振り返ってみると、「DANGEROUS」アルバムから最もヒットしたのがマイケル自作曲「Black Or White」で、代表曲の一つになったバラードの「Heal The World」も自作曲だし、両方ともテディ・ライリーが一切関わっていませんよね。
そう思うと、マイケル・ジャクソンという人は世間の流行なんてものとは別次元で、常にその強烈な個性で圧倒的な人気を維持してきた、極めて稀なアーティストということになるのかもしれません。
「Leave Me Alone」は、「BAD」のラスト・トラックですね。当時はレコードからCDへの転換期だった為、この曲はCD版にのみ、ボーナス・トラックとして収録されました。その頃は確か、私の家にもレコードしかなかったんですよね・・・・。
「ここでのメッセージとは、シンプルに『Leave me alone(ほっといてくれ)』ってことです。この曲は男女の関係を歌っているけど、実は『Leave me alone』というセリフは、僕を煩わせる人達に言いたいことなんです。」(マイケル・ジャクソン「MOONWALK」より和訳)
マイケルの曲にはダブル・ミーニングを匂わせるものも多いのですが、この曲はわかりやすいですね。自分のプライバシーを侵しデマを流すマスコミへの、怒りを込めた歌です。
「放っておいてくれ!もう充分僕で稼いだじゃないか。僕のプライベートを嗅ぎまわるのは止めろ!」
こういった歌詞を持つ曲というと、前作「THRILLER」でも既に「Wanna Be Startin' Somethin'」で書いていますが、この後「DANGEROUS」の「Why You Wanna Trip On Me」、「HISTORY」の「Scream」や「Tabloid Junkie」、「INVINCIBLE」の「Privacy」など、アルバムには必ず登場するようになります。
マイケル・ジャクソンという人ほど、パパラッチに追われマスコミに苦しめられ人生を狂わされた人はいませんが、80年代の作品であるこの「Leave Me Alone」は、まだ明るい気持ちで聴けますね。
マスコミに翻弄される生活がどういったものか、「BAD」発売時期にこう綴っていました。
「名声の代償とは、非常に重いものです。でも '名声' なんてものは、そんな代償を払うほどの価値があるものなんだろうか?
考えてみてよ、本当にプライバシーってものがないんだからね。特別な手配でもしない限り、何も出来やしない。喋ったことは全て書かれるし、何をしようと全て報道されるんだ。何を買ったか、どんな映画を観たのか、どんなことでも彼らは知ってる。例えば僕が図書館にでも行こうものなら、彼らは僕が借り出した本のタイトルを、全て記事にするだろう。
一度、フロリダで一日のスケジュールが全て新聞に載ったことがあった。朝の10時から夜の6時まで、僕のしたこと全部だよ。『これをこうした後に、彼はあれをした、そしてあれをした後あそこに行き、ドアからドアへ・・・・』なんて具合だよ。僕はよく、新聞に書いてもらいたくないような事をするにはどうすればいいかな、なんて考えたもんだよ。それもこれも全部 '名声' の代償ってわけさ。
僕のイメージは、大衆の心の中では歪められてしまっていると思う。前にも話したように、人々は、マスコミが流す悪意ある報道以外に、僕がどういう人間なのかという方法を得る術がないんだ。大衆紙では嘘が真実として報道されることもしばしばで、話したことの半分しか報道されないこともよくある。センセーショナルに見えるような内容でも、ちゃんと結末まで書いてくれれば、実は大した話じゃなかったりするんだ。事実とはかけ離れたことばかりだよ。」(マイケル・ジャクソン「MOONWALK」から和訳)
インターネットが普及していない時代ですから、今と違って大衆紙が書く情報が全てだったわけです。どんなに嘘っぽい内容であろうと、それが活字になり報道されれば信じてしまうのが人間の弱さであり、マイケルがどれだけ報道を否定しても、一度定着した「イメージ」というものを覆すことは難しい。
当時は大手の大衆紙なんかも、例えばマイケルの顔写真を加工して掲載し「顔面崩壊した」と報道していたりもしたんですね。確かその時は、マイケルの弁護士が謝罪を求めて和解していたように思いますが、マイケルは年がら年中そんな状況に身を置いていたわけです。
この曲のショート・フィルムは非常にユニークですが、グラミーの最優秀短編音楽ビデオ賞を獲得しています。ダンス・シーンが少ないのですが、実写とアニメを合体させた映像が面白いですね。(ちなみにこのSFが使われている映画「MOONWALKER」自体もノミネートされていました。)
ラストの映像で、これが長編小説「ガリバー旅行記」をモデルにしていることが示されていますよね。日本でも絵本になっていたりしますが、私は中学生の時に原作の小説を読んだ記憶があります。
ガリヴァー旅行記 (岩波文庫) -
マイケルが舞台に選んだ「小人の国(リリパッド国)」のお話はあくまでもガリバー旅行記の「第一章」で、ガリバーはここ以外にもいくつもの国を航海で旅しています。
ガリバーはイギリスを出港後、船が岩壁に衝突して海に投げ出されてしまい、必死で泳いである国に辿り着きます。へとへとに疲れ切ったガリバーはそのまま深い眠りに落ち、目が覚めた時には体中を紐で地面に縛り付けられていて、身動きが取れません。そこに現れたのは、体の大きさが1/12サイズの、小人達でした・・・・。
「ガリバー旅行記」は、この後様々に展開していきます。ガリバーはリリパッド国の後にも、ブロブディンナグ国、ラピュータ国(「天空の城ラピュタ」の元ネタですね)、バルニバービなどなど様々な場所を訪れるのですが、それは小人の国とは真逆の「巨人の国」だったり「妖術使いの国」だったり「死なない人間の国」だったりという具合で、ガリバーは様々な体験をしてはそこから逃れ、そしてまた別の国へ・・・・と旅は続くわけです。
この小説はアイルランドのジョナサン・スウィフトの18世紀の文学作品で、当時のイギリスによるアイルランド政策に対する批判や、イギリス貴族制、キリスト教内での諍いなどを揶揄した、政治色の強い風刺小説です。
恐らくマイケルはそのガリバーの一連の航海からヒントを得て、あの不思議な「船」に乗り「マスコミが創造した『奇妙なマイケル・ジャクソン王国』」へ旅に出る、というテーマでSFを作ったのでしょう。
そう考えると、「Leave Me Alone」のどこかファンタジー的な雰囲気のあるシャッフル・リズムが、波に揺れながら航海を進めるイメージにピッタリ合うように聞こえてきませんか・・・・?
SFは、孤島に佇むマイケルの家の映像から始まります。
椅子に座ってくつろいでいたマイケルが、ポーンと椅子ごと放り出されて、海に落ちる。(「Black Or Wahite」を思い出しますね。)そして、船に乗って航海を始めます。
やってきた島への入り口は、人間の口ですね。これが、ゴシップをまき散らすマスコミを表しているのでしょう。両サイドでは、怪獣のような奇妙な生き物がリズムを取ってお出迎えです。ヒエロニムス・ボスの画に出てくる、人間の足を持ったお魚のようにも見えます。
パパラッチが犬の姿をしているのは、歌詞にある「Just Stop Doggin’ Me Around(僕のことを嗅ぎまわるのはやめろ)」の「dog(嗅ぎまわる)」という単語の語源である「犬」を引っかけたギャグでしょう。「犬にでもなっとけ、コラ」って感じでしょうか。
マイケル扮するガリバーを、ハンマーを使って地面に打ち付けているのがこの犬(パパラッチ)だというのも、ポイントです。
よくよく見ると映像の中にはいろんなアイテムが出てきますね。例えばマイケルの家の中には、白い手袋とか、孔雀とか、金魚鉢の金魚とか、マイケルを表すイコン的なものが出て来るのが面白い。(マイケルは「僕は金魚鉢の中の金魚だよ」と発言したことがあります。)
マイケルの愉快な仲間たちも友情出演しています。(ペットのバブルスに蛇のマッスルズ、そしてラマ。)
ゴシップ記事はどれも実際にマイケルに関してマスコミがばらまいていたものの再現です。その中に、「Michael Sleeps In Hyperbaric Chamber(マイケルは高圧酸素機器の中で睡眠をとる)」というゴシップ記事があって、写真の中のマイケルが横たわりながらこっちを見ていますよね?
これがどういうゴシップだったかというと、かつてスポンサーのペプシのCM撮影中に、スタッフのミスによりマイケルの頭部に火花が引火するという大事故が起こり、火傷が頭蓋骨にまで達する重症を負ったことがありました。(マイケルが鎮痛剤を常用していたのはこのためです。)
マイケルは、ペプシから支払われた多額の賠償金を使って医療施設を寄贈したのですが、そこを見学で訪れた際に、設置されていた最新の医療機器に試しに横たわってみたそうなんですね。これ自体は何でもない出来事です。
しかし何者かがマイケルを写真に撮り、さらに大衆紙に売られて「マイケルは不老不死を手に入れるために酸素機器の中で寝ている」というキャプション付きで紙面を飾ったわけです。
(今はスポーツジムには酸素カプセルがあったりするので、仮にこれが真実であっても驚かないのですが、当時は相当なインパクトだったようです。というか、「少しはおかしいと思いなさいよ」って感じですが、その時既に大衆の中ではマイケルは ‘異様な人物’としてのイメージが定着してしまっていた為、記事を鵜呑みにしてしまったんですね。その記事が真実かということには、興味が無かったのです。)
で、マイケルはこの嘘記事をご丁寧に、自ら再現してあげたんですね。
しかも元の写真のマイケルは普通にシャツとズボン姿で上を向いているのですが、ここではしっかりパジャマを着て、「THRILLER」のジャケットばりにポーズを撮ってこっちを向いてるのが、なんともおかしくて笑ってしまいます(笑)。マイケルのユーモアですね。
この頃のマイケルにはまだこれくらいの心の余裕があったわけです。(それでも、肌の病気に関する心無い憶測記事については登場していないようなので、そこだけは、マイケルがどうしても許せない部分だったのでしょう。)
それから、SFには若かりし頃のエリザベス・テイラーも出てきます。エリザベス・テイラーと言えばまさに「絶世の美女」という言葉がふさわしい大スターだったわけですが、8度の結婚と華やかな恋愛遍歴でも有名でした。
マイケルとは幼い頃から業界にいたことなど共通点があり出会ってすぐ意気投合し、お互いを「ソウルメイト」と呼ぶほどの親友関係にありました。
しかし超有名人同士で、しかも年の離れた異性間の友情関係が珍しかったのか、マスコミは二人の関係を度々記事にし「マイケルはエリザベス・テイラーの為に自宅に神殿を作った」とか「マイケルがエリザベス・テイラーにプロポーズした」なんていうデマが広がっていました。
今思うとくだらないのですが、マイケル・ジャクソンの名前が付く記事なら何でも売れたのです。
この二つの記事もSFに出てきますが、皆さんは見つけられましたか・・・・?
そういえば一つ私の記憶に残っていることがあって、昔テレビインタビューを受けたマイケルが「エリザベスにプロポーズした」というネタを振られて、「で、プロポーズしたの?」と質問されたことがあったんです。(その頃、エリザベスは7回目か8回目の結婚をしていました。)
するとマイケルは得意げな顔で「そうだね、すればよかったな!!」と返答したんです。
これ、エリザベスは嬉しかっただろうなと思うんです。だってエリザベスはマイケルよりも25,6歳年上なんですよ。女としては、誤解は解いてほしいけどかといって、きっぱり「いやー、さすがにそれは無いっしょ。」とか年下の男性に言われると傷つくわけで(笑)・・・・・いやーマイケル優しいなって、当時感動していたのを思い出しました(笑)。
そんな余談はいいとして・・・・
マイケルはそういったマスコミが創りあげた「奇妙な世界」を旅するわけですが、一通り回って外に出ると、仰向けに横たわるマイケルの姿が写る引きの画になりますよね。
ここで、マイケルが巡っていたのが「小人たち=マスコミ」に捕まった「ガリバー=マイケル」の「頭の中」だったということが判明するんですね。
マスコミはマイケルの頭の中を引っかき回して混乱させ、その存在を好き放題にアミューズメント化してしまっている、という愚行の風刺になっているわけです。
でもガリバーは自力でその拘束から逃れて、立ち上がる。それが「自分は決して屈しない」というマイケルの意思表示なんですね。
マスコミに翻弄されている自分を自虐的に描いたSF「Leave Me Alone」は、マイケルの遊び心が感じられるアーティスティックな作品で、個人的に気に入っています。
さてさて・・・・、続いて楽曲自体の話に移りたいと思います。もうしばらくお付き合いください。
この「Leave Me Alone」は、多重録音したマイケルのバック・コーラスを堪能できる曲であり、また、ダイナミックなシャッフル・リズムに負けじと、怒りを表現しながら強いアクセントを付けて歌うメイン・ヴォーカル、更には的確にリズムを刻むフェイクも聴きどころです。
マイケルは、楽曲制作について技術的にどのような作業を行ったかということについては、生前あまり語ることはありませんでした。この曲についても、自著で語っているのはこれだけです。
「雲の層のように、何重にもヴォーカルを重ねて制作したので、ずいぶん苦労したんだ。」
マイケルのバック・コーラスが最高だ!!という話はもう散々してきましたが、例えば「Bad」みたいな一見インパクト重視のオラオラ系の曲にも、実はすごく高度なバック・コーラスが仕込まれていたりして、一度そういうところに気付いてしまうと、もうマイケルの音楽から逃れられなくなってしまうわけです。
この「Leave Me Alone」はまさにそのバック・コーラスがメインといっても過言ではない曲で、特にこういうのはイヤホンじゃなくてヘッドホンで聴かないと、「雲の層のように」丁寧に立体的に重ねられた声を体験することはできませんね。
右から左から、そして上や斜めから何重にも折り重なって降ってくるようなコーラスは、ただただ贅沢の一言です。
このバック・コーラスの多重録音というのは、どうやって行っていたのでしょうか?
また、発売から20年、30年と経ったマイケルのアルバムを聴いていても、決して古いと感じさせないその技術とは、どういうものなのでしょうか・・・?
それはド素人の私でも少なからず興味があるところで、ちょっとでも覗いてみたいと、マイケルの生涯の制作パートナーであったレコーディング・エンジニア(録音技師)のブルース・スウェディンの自著「MAKE MINE MUSIC」という本を以前購入したのですが、これがあまりに専門的過ぎて、さっぱりわからない(苦笑)
Make Mine Music -
ブルース・スウェディンは白人のおじいちゃんで、業界の大御所です。最近は車椅子生活になってしまったようで体調が心配で仕方ないのですが、そのキャリアの中で、マイケル関連を含めアカデミー賞13回ノミネート(うち5回受賞)、参加アーティストはベニー・グッドマンだとかデューク・エリントン、ジャッキー・ウィルソン、ナタリー・コール、ハービー・ハンコック、ミック・ジャガー・・・・などなど、大物ミュージシャンばかりです。
ブルースはクインシーと一緒に仕事をしていた為、マイケルとの初対面はマイケルが18歳の時に参加した映画「The Wiz」でのことでした。ブルースとクインシーは兄弟同然の仲で、歳も13カ月しか違わないのだそうです。
クインシーはこの映画の音楽監督を任されていて、ブルースもエンジニアとして参加していたんですね。(ちなみに「She's Out Of My Life」の作者であるトム・バーラーもチームの一人でした。)
ブルースは、マイケルがクインシーから離れた後も、マイケルの全アルバムにおいてレコーディングを担当し、時にはプロデュースやソングライティングにも参加していた、マイケルが絶対的信頼を置いていたスタッフの一人です。
ブルースの熟練のレコーディング技術のおかげで、マイケルの音楽は今も新鮮な音として私たちに届いているのです。
マイケルは、歳とともに貫禄が付いていったブルースの大きなお腹にインスパイアされたのか、ブルースを「テディ・ベア」と呼んでいました。
最近は車椅子なのでわかりませんが、ブルースは世界中を回ってレクチャーなども行っていて、この著書も自身のレコーディング技術を後進の技術者に伝えようという意図で、書かれたものなのでしょう。
私もこの本を買ってみたものの、何せオーディオ知識ゼロなので、英語はなんとか訳せても「この機材はこうで」とか説明されてマイクなんかの写真を見せられても、さっぱり意味がわからない(笑)。
だって、例えばこういう文章↓の意味、解りますか・・・・・・?
「私は24trのサウンドはあまり好まない。2インチの16trを76cm/s、ノイズ・リダクション無しで使うのがアナログ・メディアとしては良い。しかし、マイケル・ジャクソンのヴォーカルを録るにはプロダクションの点で16trでは不十分だ。全て別々のトラックに録る。・・・・」
しかし、マイケルのアルバムは音響技術を語る上で極めて重要な位置を占めているらしく、本には何度も「マイケル・ジャクソン」の名前が出て来るんですね。
なので、知識ゼロの私のようなファンの方でも何となく楽しめそうな部分、またブルースがマイケルの人柄などに触れている部分に絞って、今後少し楽曲と絡めて訳していきたいなと思っています・・・・・。
さてさて、マイケルの多重録音のバック・コーラスというと、初の本格的ソロ作品「OFF THE WALL」でその才能が花開いたわけですが、クインシー曰く、マイケルはいきなりさらっとこなしてしまったわけでは無かったそうです。
マイケルがレコーディングの際に必ずヴォイス・トレーニングをしていたという話は、マイケルの高いプロ意識と努力家の一面を垣間見ることが出来る逸話として知られていますが、そもそもいつからの習慣なのかというと、クインシーに出会ってからのようです。
以前クインシーのインタビューで読んだのですが、マイケルはジャクソン5からジャクソンズに至るまで、限られた音域の曲(バブルガム・ソングのような)ばかり歌ってきた為、「OFF THE WALL」用にマイケルが自分で作ってきた「Don't Stop 'Til You Get Enough」を歌うには、声域が十分でないとクインシーは思ったのだそうです。
そこでクインシーはマイケルに、声域を前後ともに4度広げること、そしてその為にヴォーカル・レッスンを受けるよう求めたのです。
これ、当時19歳とはいえキャリアは10年を超すベテランで、何度もナンバー・ワンを獲ってきたマイケルにとっては、かなりキツかったんじゃないかなと思いますが(笑)とはいえ、当時ジャクソンズのキャリアは低迷期で、命運をかけた初の本格的ソロ・アルバムを託したクインシーからの助言ですから、出来ることは何でもやろうという気持ちだったのかもしれません。
マイケルは、専任のヴォーカル・コーチの元でトレーニングを積むようになります。
そういえば昔、マイケルが宿泊していたホテルの電話の盗聴音声らしきものが出回ったらしいのですが、そこに録音されていたのが、マイケルが延々と音階を発声している声だったそうです。
盗聴までされていたなんて本当に可哀そうとしか言えないのですが、コーチと会えない時は電話越しでトレーニングをしていたそうなので、その音声とやらはまさにその最中のものだったのでしょう。マイケルは遺作の「INVINCIBLE」に至るまで、このトレーニングを欠かさなかったのです。
ここで、ブルースの著書を少し訳してみたいと思います。著書の中では、ブルースが音楽を愛したきっかけや家族についても触れられていたり、数々のアーティストとのレコーディング、使用機材の詳細から音楽哲学に至るまでが書き綴られています。
見ていると、やはり「THRILLER」というアルバムは、エンジニアのブルースのキャリアにおいても最重要アルバムだったというのがわかります。
ブルースは別のインタビューで「他人がこのアルバムのサウンドを全て解明するには何年もかかるだろう」と言っていますが、素人の私でも、マイケルの楽曲のサウンドが複雑に作られているというのは分かります。
マイケルの名前は、本の中盤あたりから多く登場します。まずはアーティストとしてのマイケルについて綴っている部分から始めたいと思います。
「マイケルほどの刺激を与えてくれたアーティストと、私は仕事をしたことが無い。世界中どこに行っても、まず最初に私が受ける質問は、いつもこうだ。『マイケル・ジャクソンと一緒に仕事をするってどんな感じですか?本当のマイケル・ジャクソンって、どんな人物なんですか?』。
せっかくの機会なので、私は述べておきたい。これからこれらのページを使って私の友人マイケルについて語ることは '神に誓って' 真実である。マイケル・ジャクソンは、世界中の報道機関によって、ネガティヴに扱われてきた。私は頭にくるんだ! 恐らくそれは、マイケルがとてつもない成功者だからだろう。妻のビーと私は長年にわたり、マイケルと世界中を旅してきた。私たち夫婦は、彼と一緒に生活していたんだ。でも私たちは一度として、報道機関が糾弾してきたことのいかなる証拠も、見たことなどない!
マイケル・ジャクソンは私が今まで共に仕事をしてきた中で、最もプロ意識が高く、最も熟達した人物である。私が仕事をしてきたのは、音楽業界の最高峰にいる人物だ。彼は善良で、長年にわたり世界中でその人気を保ってきた。彼は疑いようもなく、サバイバーなのだ。
まず始めに、私が自信を持って言っておきたいこと、それはマイケルは一緒に仕事をするのがとても楽しい人だ、ということだ。一緒に仕事をしていて、こんなに楽しめる人物は他にはいない。彼は最高のアーティストだ。彼ほどに自身の芸術に身を捧げたアーティストと、私は仕事をしたことがない。加えて、彼はとても紳士的だ。彼はとても礼儀正しい。彼と仕事をしていると、常にこういった言葉を耳にする。『Please(お願いします)』『Thank you(ありがとう)』『You're welcome(どういたしまして)』・・・・・・この業界じゃ、こんな丁寧な言葉はあまり使われないんだがね。
MJの音楽水準というのは、信じられないくらいに高い。マイケルと仕事をしている時は、『just good enough(これくらいで充分だろう)』というレベルで、音楽制作に手を打つなんていうことはない。(クインシーから離れた)デンジャラス・プロジェクトからは、マイケルと私は『品質に満足しなければ名前は出さない!』という言葉を合言葉にしてきた。言い換えれば、マイケルと私の名前が付いた作品は、音楽的、技術的に満足出来ている、ということである。
マイケルは、常に準備万端で臨んでいた。彼がヴォーカル録音をしにスタジオに来るときは、メロディーと歌詞を暗譜していた。そして声入れをする際には、ヴォーカル・コーチのSeth Riggsと最低でも1時間発声練習をしてから来るんだ。それが時々ってことじゃなくて、毎回必ずなんだ!それこそが、真の ‘献身’ ってもんさ。」
ここを訳していてびっくりしたのが、向こうの人たちは普通、誰かを称賛するときには「Michael is one of the most...(マイケルは最も...な人の中の一人です)」っていう物言いをするのですが、ブルースは「Michael is the most...」と、マイケルがトップに来ると言い切っているんですね。そこに、ブルースのマイケルに対する評価の高さを垣間見ることが出来ます。
次は、アルバム「BAD」についての文章から抜粋です。
「マイケルは『バッド』の中で小さなヴォイス・パーカッションを入れていて、私はそれを"How Now Brown Cow"と呼んでいます。マイケルは、ビート・ボックスの権威ですよ。全てのリズムパートの楽器を自分で演奏出来るんですから!
興味深いことに、『バッド』アルバムについて振り返ってみると、MJの他のどのアルバムよりも、このアルバムに私の大好きな曲が最も集まっていることに気付きます。たくさんの人が、マイケル・ジャクソンのアルバムの中で『バッド』のサウンドが最も素晴らしいと、私に話すのです。そう思われていることを、私は知りませんでした。
もし私が『バッド』のサウンドについて総合的にコメントするならば、このアルバムは "最も音場の多様性に富んでいる" ということでしょう。例えを出すならば『The Way You Make Me Feel』の、大音量で鳴り響くリズム・セクションだ。シャッフル・リズムを使っているが、これが素晴らしいダンス・トラックにしているし、それから『Man In The Mirror』は、ポピュラー音楽のマスター・ピースだね。」
ちなみにマイケル達は、この「BAD」アルバムのタイトル曲「Bad」に取り掛かっていた頃、仮タイトルを「Pee(小便)」としていたそうです(苦笑)。小学生か!!っていう・・・・。
なぜオシッコと呼んでいたのかは書かれていませんが、後からマイケルが書いたという歌詞の冒頭で「Your butt is mine(お前のケツはこっちのもんだぜ)」なんて言ってるのは、そのオシッコの名残でしょうか?
そして次に、マイケルのヴォーカル録音の方法に関して綴っている部分です。
「まずモノラル(単旋律)のメロディー・トラックを、マイケルがマイクに充分に近づいた状態で録ります。もちろん、マイケルは全てのバック・コーラスを自分で録ります。彼はバック・コーラスの多重録音のエキスパートですよ。ビブラートの周波数まで完璧に合わせてしまうんです!
次に、マイケルを同じポジションに立たせて、同じトラックを録ります。さらにその後、彼を2歩下がらせて前の2回と音量レベルがマッチするようにして、同じメロディーを歌わせます。こうすると、初期反響音(?)の比率が上がるのです。最初の2つのトラックと混ざって、素晴らしく効果的なのです。
最後に、彼をマイクからさらに離し、ステレオ効果を上げるために同じメロディーをX/Yペアー、または"Blumlein Pair"と呼ばれるマイクで録り、同じように他のトラックと混ぜ合わせるのです。」
最後の方は何を言っているのかチンプンカンプンですが(汗)つまり、音の「立体感」を出す作業までもを手作りで行っていた、ということでしょうか?
この部分を読むまで、私はてっきり、後から機械でいい具合に調整していたのかと思っていましたが・・・・そこがブルースのこだわりなんですね。気が遠くなるような地道な作業です。
ブルースは、ビブラートがブレないというマイケルを使って様々な実験をしていたようですが、マイケルもそういったことが好きで、クインシー共に大変協力的だったのだそうです。
でも、マイケルのヴォーカルを録る際には当初は大変なこともあったそうです。
それは、マイケルはヴォーカル録音をしている最中に踊り出してしまう為、立ち位置がズレたりヴォーカル以外の音をマイクが拾ってしまって処理に困るということだったようです。
しかしブルースは、マイケルが「つい、やってしまう」という足踏みや指パッチン(フィンガースナップ)、手拍子といった音をマイケルの '個性' として愛し、それを最大限に生かす為にマイケルを大工さんお手製の木箱の上に乗せて歌わせたり、様々な工夫をしていたそうです。「Leave Me Alone」でも、手拍子の音とか入ってますよね(笑)
(とはいえ、どの音を「残す」かという選別作業はあったわけですが。でも、なんだか楽しそうですね。)
そのあたりについてはブルースは他にも綴っていますので、また今後訳していきたいと思います。
「Leave Me Alone」は、まさに「雲の層のように」幾重にもバック・コーラスが重ねられていますが、実際には何トラックを録ったのでしょうか・・・・?
「はい、一歩下がって、次はこっち、はいもう一回、今度はマイクに近づいて・・・・」っていう感じでしょうか??
マイケルの音楽には多重録音のバック・コーラスを使った楽曲が多いわけですが、その度にマイケルとブルースは、こんな地道な作業を繰り返して録音していたんですね。
そう考えると、「INVINCIBLE」の「Butterflies」だとか「Heaven Can Wait」なんかは、さらに難しそうですけど・・・・。まさに、「職人さん」です。
ちなみに「Leave Me Alone」の制作のクレジットはこんな感じですね↓
作詞・作曲:Michael Jackson
ドラム・プログラミング、シンセサイザー:Larry Williams
ギター:Paul Jackson Jr
‘シンクラヴィア’シンセサイザー・プログラミング:Casey Young
シンセサイザー:Greg Phillinganes
リズム・ヴォーカルアレンジ:Michael Jackson
そして、アルバム全体を通してレコーディングを担っているのはもちろんブルース・スウェディンですが、クレジットはこうなっていますね↓
レコーディング・ミックス:Bruce Swedien("Acusonic Recording Process D"使用)
この"Acusonic Recording Process"とやらは、さぞかしご大層な機材なんだろうと想像してしまいますが・・・・・ブルースの著書にはこれについての文章が出てきます。
ブルース曰く、これはある特定の機材を示すわけではなく、ブルースがあみ出した多重録音技術に名付けた「キャッチフレーズ」で、この技術は既に「OFF THE WALL」から使っていたようです。
しかし、「BAD」アルバムのこのクレジットを見た他のレコード会社やらレコーディング・スタジオやらが「その機材を売ってくれ」と金額を提示してきて困ってしまったと、ブルースは書いています。
その技術がどういうものなのか?というのがどうやら本には書かれているようなのですが、これが全く意味不明(泣)。素人はお呼びでないようなので、とにかくマイケルの音楽の立体的、多様な音場感というのは、ブルース様の録音技術によって完成されているんだなーと感謝しつつ、ありがたくヘッドホンで堪能させていただく私なのでした・・・・。
ちなみにこのアルバムの「スペシャル・サンクス」欄には"三菱サポートチーム"が出ていますね。ブルースが日本から取り寄せた機材もあったそうですよ。
長くなりましたが、ご覧いただきありがとうございました。
今日は最後に、「Leave Me Alone」の和訳をしましたのでどうぞ↓
※(カッコ内)はコラース・パートです。
Leave Me Alone
I Don’t Care What You Talkin’
‘Bout Baby
I Don’t Care What You Say
Don’t You Come Walkin’
Beggin’ Back Mama
I Don’t Care Anyway
君が話す内容になんて、興味が無いのさ。
君が何を言おうと、僕にはどうでもいいことだ。
僕にせがむのはもう止めてくれよ。
もう僕にはどうでもいいんだ。
Time After Time I Gave You All Of My Money
No Excuses To Make
Ain’t No Mountain That I
Can’t Climb Baby
All Is Going My Way
‘Cause
何度も、君には僕の金をくれてやったじゃないか。
言い訳なんかごめんだぜ。
僕には登れない山なんてないんだよ、ベイビー。
僕は自分の道を行くのさ。
なぜなら・・・
(There’s A Time WhenYou’re Right)
(And You Know You Must Fight)
Who’s Laughing Baby, Don’tYou Know
And
(There’s The Choice ThatWe Make)
(And This Choice You Will Take)
Who’s Laughin’ Baby
(自分が正しい時には、戦わなければならない)
今笑っているのは、誰なのかな?わからないかな?
そして、
(それが二人で一緒に決めたことならば、その選択を受け入れるさ)
笑っているのは、誰なのかな?
So Just Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone-Stop It!
Just Stop Doggin’ Me Around
だから、僕のことは放っておいてよ。
放っておいて。
構わないで。
そっとしておいてほしいんだ。もうやめてくれ!
僕のことを嗅ぎまわるのは、止めてくれ。
There Was A Time I Used To
Say Girl I Need You
But Who Is Sorry Now
You Really Hurt, You Used To
Take And Deceive Me
Now Who Is Sorry Now
「ガール、君のことが必要なんだ」って、
確かに言ったことはあったよ。
でも、今後悔しているのはどっちかな?
君は僕のことを傷つけたよね、
僕を騙したじゃないか。
それで、今後悔しているのはどっちなのかな?
You Got A Way Of Making Me
Feel So Sorry
I Found Out Right Away
Don’t You Come Walkin’-Beggin’
I Ain’t Lovin’ You
Don’t You Get In My Way
‘Cause
君って人は、僕を後悔させる術を知ってるんだね。
すぐにわかったよ。
僕にすがらないでくれ、もう、僕は君のことは愛していないんだ。
僕の邪魔をしないでくれよ。
なぜなら・・・・
(There’s A Time When You’re Right)
(And You Know You Must Fight)
Who’s Laughing Baby-Don’tYou Know?
And
(There’s The Choice That We Make)
(And This Choice You Will Take)
Who’s Laughin’ Baby?
(自分が正しい時には、戦わなければならない)
今笑っているのは、誰なのかな?わからないかな?
そして、
(それが二人で一緒に決めたことならば、その選択を受け入れるさ)
笑っているのは、誰なのかな?
So Just Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone Stop It!
Just Stop Doggin’ Me Around
だから、僕のことは放っておいてよ。
放っておいて。
構わないで。
そっとしておいてほしいんだ。もうやめてくれ!
僕のことを嗅ぎまわるのは、止めてくれ。
da,da,da-da.....(スキャット)
(There’s A Time WhenYou’re Right)
(And You Know You Must Fight)
Who’s Laughing Baby, Don’tYou Know, Girl
(It’s The Choice That We Make)
(And This Choice You Will Take)
Who’s Laughin’ Baby
(自分が正しい時には、戦わなければならない)
今笑っているのは、誰なのかな?わからないかな?
(それが二人で一緒に決めたことならば、その選択を受け入れるさ)
笑っているのは、誰なのかな?
So Just Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone Stop It!
Just Stop Doggin’ Me Around
だから、僕のことは放っておいてよ。
放っておいて。
構わないで。
そっとしておいてほしいんだ。もうやめてくれ!
僕のことを嗅ぎまわるのは、止めてくれ。
Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone
Leave Me Alone-Stop It!
Just Stop Doggin’ Me Around
放っておいて。
構わないで。
そっとしておいてほしいんだ。
もうやめてくれ!
僕のことを嗅ぎまわるのは、止めてくれ。
(以下アドリブ、フェイド・アウト)
(訳・テト)
この記事へのコメント
coco
けんじ
ブルース氏の解説を僕の理解できる範囲で補足すると、ブルース氏のエンジニアとしての考えとしては、レコーディングには、2インチ幅のアナログテープ(アナログテープとしては最大幅)を使い、幅の広いテープを使用するとノイズが発生しやすくなるが、そういったノイズを軽減する装置はあえて使用せず(昔のオーディオのカセットデッキにもついていましたね)、テープに録音する音は(ミックスする音)は16トラック(ボーカル、楽器類全部で16種類)までとすることがサウンド的に望ましい。しかし、マイケルの場合はボーカルトラックだけでも多数のトラックを必要とするため、より良いサウンドを作るため、いろいろ試行錯誤した・・・といった内容だと思われます。僕が最近知り合い、お世話になっているアメリカ人のレコーディングエンジニアさんも、16トラックでのレコーディングが一番良いというようなことをおっしゃっていました。ビートルズは4トラック(時代的に4トラックが最大)のレコーダーを2台同時に使用していたそうなので、マイケルの場合は16トラックレコーダーを2台とか3台とか同時に使っていたのかしら?そこも知りたい!!(笑)
また、多重録音のボーカルについては、テトさんが書かれておられるように、普通であれば、同じマイクで同じ距離で歌ったものを録音し、あとでミックスするための機材を使ってそれぞれのボーカルパートの音量や細かい周波数帯を調節し仕上げるところを、優秀なマイケルの場合は、録音の段階からボーカルパートの仕上がりを想定して、とてもアナログでありながら、高度で難しい録音方法で作業を行っていたという内容だと思います。そりゃ、1年も2年もレコーディングに掛かるはずですわ(笑)マイケルの超絶な耳の良さ、歌のうまさがあっての芸当ですね。時間と手間、こだわり、努力、まさしく魂を込めて作品を作っているからこそ、何十年もたった今でも、世界中で聴かれ続けているのですね。まさに芸術作品。凄い!まだまだ知りたいことがいっぱいです。ビートルズみたいに、全曲のレコーディングプロセスについての解説本でも出てくれないかなぁ?
テト
なんだか私の方がいろいろ勉強させてもらっちゃいました(笑)またいろいろ教えてくださいね!
テト
(cocoさん、後から頂いたコメントも拝見しました。どなたでも気軽に遊びに来て頂いて、情報交換や意見交換ができるブログであったらいいなと思っているので、気にせずいつでもコメントくださいね。これからもお喋り楽しみにしています♪)
けんじ
多重録音機材を2台同時使用ですか!それは凄い!感動です! テトさん、貴重な情報を本当にありがとうございます! ビートルズと同じ手法ですね!。どういうことかと申しますと、アナログの多重録音機材は、1台で16トラックまで録れるものから最大40トラックまで(アナログテープを使った機材の場合)録音できる機材があるのですが、トラック数が増えれば増えるほど、機材への負担が大きく、ノイズが増えたりサウンド的に劣化するらしいです。そういった事情を踏まえて、ブルースさんの考えでは、最大2インチ幅のテープを使い16トラックの機材で録音するのがサウンド的にベストなので、マイケルの場合はボーカルやドラムだけで16トラック以上を必要とするため、その16トラックの機材を同時に(リンクさせて)2台使用して、トラック数を稼ぎ、最終的に2台に録音したサウンドをデジタル機材(PC)に取り込んで(コピーして)、他の楽器類のサウンドとミックスしていたという内容だと思います。手間隙掛かってますねぇ。いやあ、新たな発見でした。一人で盛り上がってしまってすみません(笑)。また、ちょいちょいこういったコアな豆知識を記事に放り込んでくださると、非常に嬉しいです。知りたがっているファンの方、たくさんいるんじゃないかな? 長々と失礼しました。
テト
私はカセットテープが復活しているのは、ただ「オシャレ」だからなのかと思っていました(笑)「アナログ」で録るアーティストと「デジタル」で録るアーティストがいるんですね。マイケルは「アコースティックな空間」というものに拘っていたそうですが、それと関係するのでしょうか・・・・。ブルースの著書を今ちょっと見ていたのですが、「4トラックの装置を2台固定して使う方法を64年に始めた」と書いてありました。ビートルズと同じということでしょうか。「ポップミュージック作品で行われ始めていたヴォーカルの『重ね録り』などの生産価値を形にするために、多くのトラックを使いたいという強い思いがあった」と書いてありますね。(マイケルのヴォーカルは24tr、ドラムは16trで録っていたそうです。)
ブルースはクインシーと共に「The Wiz」から本格的に2台使いを始めたそうで、そこでマイケルと出会い「OFF THE WALL」でオリジナルの多重録音技術をあみ出し、"The Acusonic Recoeding Process"(Leave Me Aloneの記事で書いた)と名付けた、という流れのようです。けんじさんのおかげで、本に書かれていることの意味が少し理解できました(笑)感謝です!!この本はすごく専門的なんですよ。機材の詳細とか(マイケルのヴォーカルにはチューブ・トラップはこう使う、とか?)録音方法(楽器別の方法論とかジャズ、クラシック、ポップの違い?)だとか・・・・・私は音楽用語も微妙なのでどのあたりがコアな情報なのか、どこら辺が凄いのか判断できませんが(笑)面白そうなところを見つけたら、また紹介してみますね。
中二
テト
マイケルは変な人ではありませんよ(笑)。「Leave Me Alone」私も大好きです。
マイケルは常に、誰の手にも負えない程のゴシップにまみれていたんですよ。体中にまとわりつくウジ虫のような感じ・・・・と表現すればわかりやすいでしょうか?「マイケル・ジャクソン」の見出しが付くゴシップ記事は売れ方が違うので、皮肉にも多くのマスコミ関係者の生活を実質的にマイケルが支えていたんです。マイケルとしては、それを片っ端から訴訟にするというのは物理的に難しかったと思います。当然お金もかかりますし、判決が出るまで相当の手間を取られるわけですからね。それが際限なく続くと思うと、第一線で音楽活動をしていたマイケルには「無視をする」というスタンスを取るしかなく、大衆紙の手の込んだねつ造記事などに対抗措置を取るのが精いっぱいだったんでしょう。
今でいえば、ジャスティン・ビーバーなどもパパラッチに悩まされていますが、マイケルはもう比較にならない程に酷い状態でした。ましてマイケルは黒人ですから、マスコミも節操がなく加担するタイプの人も大勢いたんですよ。時代が違いますしね。
あ、ちなみに「This Is It」はマイケル自身が作ったアルバムではありませんよ。「INVINCIBLE」が遺作です・・・・。
中二
テト
マイケル没後(2009年の6月以降)の「MICHAEL」「THIS IS IT」「XSCAPE」などは、SONYが未発表曲や未完成曲を掘り起こして発売されたものですので、マイケル自身は知りません(私はほとんど聴いていませんので、具体的にどういう曲が入っているのか全て知っているわけではありません・・・・)。
「XSCAPE」に関してはややっこしいのですが、デラックス・ヴァージョンの方には、マイケルのオリジナルのデモ・ヴァージョンと、マイケルの死後にプロデューサーが手を加えているヴァージョンが両方収録されています。
中二
テト
いえ、私はよくないと思いますよ。良くないと思うので私は聴こうとは思わないのですが・・・・。
でも聴きたいというファンもいますし、大きなお金が動いて業界の多くの人が稼げるというのが現実ですから・・・。プリンスもしかり、世界はそういう風に回っています。
その流れに乗ってしまうか、それに逆らうか、それはご自身の判断です。
中二
テト
まあ、澄んではいないかもしれませんね(笑)。
本国でマイケルと関わっていた人の中には、もちろん批判する人はいますよ。マイケルと一緒に仕事をしていた人の中にも当然いますし、クインシー・ジョーンズもそう、マイケルが懇意にしていた雑誌媒体もそうです。でも特に日本の音楽業界は横のつながりが大事だと聞くので、大きなレコード会社が打ち出す商品に公にケチなんか付けたが最後、仕事なんか出来なくなるんじゃないでしょうか?よっぽど大御所とかなら別でしょうけどね。だから否定的なことを言う人なんかいませんよ。
私は別に業界人でもなんでもないただのファンですから(笑)、「故人を冒涜しやがって、馬鹿野郎!」といくら叫んだところで失業することもありませんし、忖度するような人もいませんけどね。私の蚊のような声は、巨大な象の足に踏みつけられて終了です。
中二
マイケルはビッグ過ぎるから、死んでもタカられてかわいそうです。きっとLeave me alone!って叫んでいるだろうと思いました。