In The Closet~2~

マイケル・ジャクソンの1991年発表のアルバム「DANGEROUS」に収録された「In The Closet」は、R&Bチャートでナンバー・ワンを記録しています。

当時「In The Closet」はシングルで3枚同時リリースされ、それぞれに異なるリミックス・バージョンが収録されました。(↓ そのうちの一枚)


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公式リミックスだけで16種類ほど存在しますが、私は「KL'12」や「The Newark Mix」がオススメです。聴いたことのない方は是非。You Tubeでも聴けるのかしら?

「In The Closet」については実は6年ほど前に一度書いているのですが(こんなにブログが続いていることにビックリ・・・笑)、この曲の歌詞はかなりセクシャルな為、その時は全体的にオブラートに包んで和訳をしました。
今日は改めて歌詞の解釈を加えたいのですが、オブラートに包んだままだとこの曲の官能性がしっかり伝わらないので、今回はオブラートを適切に剥がして(笑)和訳をし直していきたいと思います。
あくまでも真面目に曲の分析をしていきますが・・・・・こういった話題自体がお好きでない方は、今日の記事はスルーして下さいね。それから、18歳未満の良い子の皆さんは、もれなくご退出ください(笑)。


この曲のSFはナオミ・キャンベルとのセクシーな絡みも話題になりましたが、当時子供だった私はマイケルのあの喘ぎ声にビックリして、ただエッチな曲だと思っていました。(むしろ不潔だくらいに感じていたような・・・・汗)この曲の官能性をしっかり理解するようになったのは、ずいぶん後になってからのことです。

マイケルは、セクシーなアドリヴの中では禁止用語も口にしているのですが、わざとはっきりとは聴き取らせないようにしている部分もあるようで、海外のネイティヴのファンの間でも「マイケルがこんなことを言うなんて!」「いやこう言っているんじゃないか?」「どっちにしてもポルノだろ!」とあれこれ推測して盛り上がっていたようです。
しまいには、「スペイン語も入っていないか?」「いやフランス語では?」「私スペイン人だけど違うと思う」なんていう混乱具合で、結局のところ、歌詞に起こされていない細かい部分でマイケルが何と言っているのかは、「本人のみぞ知る」ということになるのでしょう・・・・・。

いずれにしても、リミックスやネットに流出したいくつかのアカペラ・ヴァージョンを聴いてわかる通り、マイケルは歌いながらちょこちょこ歌詞を変えたり多くのアドリヴを放り込んでいたようで、最終的にどの「声」を残し、効果的にリズムと絡ませるのか、エンジニアのブルース・スウェディンはきっと相当苦労したのだろう・・・・そう思わずにはいられません。


まずは「In The Closet(イン・ザ・クローゼット)」というタイトルの意味をおさらいしておきますが、このフレーズは「同性愛者であることを隠している人」という意味のスラングを連想させます。(closet という単語にはそもそも「戸棚」「押し入れ」という他に、「秘密」という意味もあります。)

‘キング・オブ・ポップ’ らしからぬなんとも衝撃的なタイトルですが、しかし歌詞の内容やSFでのナオミ・キャンベルとの絡みを見てわかる通り、同性愛的ニュアンスは皆無で、マイケルはこの言葉をただ「戸棚の中(の秘密)」という意味でのみ使用しています。マスコミが広めた「マイケル・ジャクソンはゲイだ」という噂を利用した形ですね。

「自分は同性愛者ではない、しかし女性との性生活は公にしたくないのだ。」ということでしょう。マイケルは曲中で何度も「Keep it in the closet(戸棚の中にしまっておいてくれ)」つまり「二人だけの秘密にしておいてくれ」と、彼女に念を押しています。

ただこの曲のタイトルはもともと、「Out Of The Closet(秘密を公表する)」という全く逆の意味になる予定だったようです。そして皆さんご存知の通りマドンナとのデュエットを想定して歌詞が書かれていて、このタイトルを聞かされたマドンナは、マイケルに「あなたこの言葉の意味知ってるの?」と聞き、マイケルは「もちろん知ってるよ」と答えたのだそうです。

その後その話が白紙になり、マイケルは歌詞を書き変えタイトルも変更したのですが、白紙になった理由はマドンナが歌詞の内容に満足しなかったとか、かなり過激なSFをマイケルに要求したとかいくつかあるようですね。マイケルは後に「マドンナは全然セクシーじゃない」とディスっていたそうなので、よっぽど何かあったんでしょう(笑)

そういえばマドンナは今年、テレビ番組でマイケルとの関係を聞かれて、マイケルと濃厚キスをしたことをぶっちゃけていましたね。「彼はすごくシャイだったわ、でもシャルドネで酔わせたら驚くほど効果があったの。」と言っていましたが、きっとこの時期のことなんでしょう。この頃からハンターだったんですね(笑)

結局、楽曲に登場しているのはモナコのステファニー王女ですね。当時は「ミステリー・ガール」としてその正体が明かされていなかった為、声の主が誰なのかと話題になったのですが、マイケルとステファニー王女の間には元々交流があったのだそうです。

ステファニー王女はあのグレース・ケリーの娘なのですが、ものすごい恋愛遍歴の持ち主なんですね。ボディーガードとの間に未婚のまま2子をもうけたり、さらにその後も別の方と未婚のまま第3子を出産したり、サーカス団員と結婚したり・・・・と日本では到底考えられない自由奔放な王女様です。「In The Closet」でマイケルと共演する前には歌手デビューもしていて、しっかり曲をヒットさせているんですよね。だから、こんなセクシーな曲でも参加OKだったのでしょうか・・・・・?すごく魅力的な声ですよね。マドンナにしなくて良かったと、マイケルも思ったんじゃないでしょうか?(笑)


さて、前回私が行った和訳では、サビの部分を大きくオブラートに包んでいました。こちら↓ の下線部分ですね。


Because there's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you


なぜなら君には「何か」がある
そのせいで、君に与えたくなってしまうんだ



今回、オブラートを剥がしたらこうなりました↓


なぜなら君には「何か」がある
だから、君にしたくなるんだよ



'give it to you' は、CDのブックレットでも「君に与えたくなる」 と直訳されています。しかしベッドでの会話の場合には、ズバリ 「相手に性的な行為をする、セックスする」 という意味になります。反対に相手に行為を求める時には 'give it to me' となりますね。

2013年発売のロビン・シックのアルバム「BLURRED LINES」の収録曲に、「Give It 2 U」がありますが、この歌詞には 'Give it to me, You know what it do'(俺にしてくれよ、何のことか解るだろ?) 'Give it to you'(君にもしてあげるよ)と出てきます。
この曲は禁止用語のオンパレードで、官能というよりもただ卑猥ですね。向こうのR&Bって何故こんなのばっかりなんでしょうかね?(まあ、R・ケリーを好きな私が言えることじゃないんですが・・・・笑)

(ちなみにこの曲はケンドリック・ラマーと共作・共演していますが、2 chainzも加わったリミックス・バージョンには、歌詞にマイケルが出てきます。「マジで尊敬されてる、黒人マイケル・ジャクソン。DJがかけてくれたら、指圧師みたいにグイグイ押し返されちまうぜ。」なんて感じです。)

日本の女性ファンの方の中には、この「give=与える」という訳を見て、マイケルが「愛」や「妊娠」を示唆しているとロマンティックに捉えていらっしゃる方も多いようですが、全くもってそんな深い意味はありません。

またこの曲については、珍しく「感情表現が乏しい」と手厳しい評価をされているファンの方が多いようですが・・・・・・。

マイケルは、最初の歌い出しの部分で 'She just a lover' (彼女は恋人)と言っていますよね。lover(恋人) という言葉には、二人が肉体関係で繋がっているというセクシャルなニュアンスが強いため、日常生活であまり使うイメージがありません。
古い映画や恋愛小説などではよく出て来るので、そういう印象を加えたかったというのもあるかもしれませんが、真剣交際をしている女性には普通 girlfriend を使いますし、恐らくセ〇レ関係のようなニュアンスで使っているんじゃないでしょうか。

あれだけ熱を帯びたヴォーカルですから、もしも恋愛感情があるのならどこかしらで 'I love you' とか 'love me' なんていうセリフがマイケルの口から出るはずです。でもそういった愛の言葉を一切口にしていませんし、彼女に対して愛情表現を示していません。ロマンティックな情景描写もなく、ただお互いの欲望を満たし合っているだけです。
同じ官能ソングである「Break Of Dawn」との決定的な違いを感じませんか・・・・?


「In The Closet」のテーマはただ一つ、‘性的欲望’ です。
性的欲望を満たし合うことと、恋愛感情は別です。(特に男性にとっては。)むしろ恋愛感情を抱いていない相手の方が、全てをさらけ出せたりするものです。
マイケルは、(この曲が実体験とは関係ないとすると)テーマが鈍らないようにあえて心情表現を排除しているように思います。だから最初に二人が肉体関係で繋がっていることを匂わせ、愛の言葉を囁かないのです。
「体だけの関係だから人には知られたくないんだ、秘密にしてくれ」と。「keep it in the closet」と言っているのはそういうことで、この曲は恋愛ソングではないのです。


ところでマイケルはこの曲で、共に ‘性的欲望’ を表す lust desire という言葉を使っていますね。この二つの違い、わかりますか・・・・・?
宗教も関係してくるので、恐らくネイティヴの人の中でも捉え方が変わってくると思うのですが、私が知る限り一般的には次のような形で区別されているようです。

lust というのは、「強烈な性的欲望を抱く」「肉欲」という意味です。性的欲望以外の意味で使われることもあり、金銭欲に囚われた状態は 'a lust for money' と言いますが、いずれにせよ善い意味を持っていません。とにかく自分の欲求を満たしたいというその一点で、そこには相手への感情は関わってきません。

一方の desire は、決して悪い意味では捉えられません。こちらも他の欲望の意味でも使いますが、この曲では明らかに性的欲望 sexual desire という意味で使っています。
キリスト教的考えでは、婚姻関係にあり子供を作るための desire は罪ではない、ということになっているようです。しかしその必要性を超え、単純に自己の欲求を満たすことだけを強く渇望すると、lust とみなされるのです。
キリスト教を無視して考えた場合、相手がいて、一緒に欲望を満たしたいと望むことを desire と呼び、自分本位の欲望として渇望すると lust と捉える人が多いようですが・・・・・・・・・・うーん、難しいですね。

マイケルは歌詞の中で、女性(ステファニー王女)の言葉としてこう書いています。


One thing in life you must understand
The truth of lust
Woman to man
So open the door and you will see
There are no secrets
Make your move
Set me free

人生で一つ、あなたには理解しておくべきことがあるわ
それは、‘欲望の真実’
女から男への
だから扉を開いて、そうすればわかるわ


そしてマイケルは、彼女と交わりたいという desire を抑えられない、試してみようじゃないかと歌い、一緒に lust にのめり込むのです。

海外のファンサイトで、ある方がこの曲についてこう解釈されていました。

「『In The Closet』は、lust について歌っているんじゃなくて、lust そのものだよ。だって女性ファンはこの曲を聴いた後、教会に行かなきゃいけないんだから。」

マイケルは、巷に溢れているただエッチな言葉を並べたR&Bとは一線を画すような、欲望の本質に迫る曲にしたかったのかもしれません。

「DANGEROUS」アルバムのタイトル曲「Dangerous」も、lustdesire について描かれていますね。

マイケルはある女性と関係を持った時、こう言います。「もう神に祈るしかない。僕にはわかっているんだ、肉欲(lust)がいかに人を盲目にするか。」

なぜ「Dangerous」でのマイケルがこんなに恐れているのかというと、あくまでも lust を感じているのはマイケルだけなんですね。
彼女の方が感じているのは desire で、しかも sexual desire ではありません。

マイケルは「彼女は欲望(desire)の目を光らせて」と言っているのですが、この彼女の心の中には、売名など何かしらの目的でマイケルを利用しようという、別の desire があったということを示唆しています。

自分にはちゃんと恋人がいるし、この女と関係を持っても利用されるだけだと解っていても、彼女から性的行為をされた瞬間に lust の闇に堕ちて行く。なんて危険なんだと。その背徳感が、声を潜めて語るマイケルの声に表れています。

「教会に行く」「神に祈る」というのは、「神に許しを乞いに行く」という意味なのでしょう。
「Dangerous」を聴いていると、マイケルのようなスターは遊ぶ女を間違えるとこうなっちゃうんだろうな、というリアルさも感じるのですが(笑)

一方の「In The Closet」では、ある意味良い関係性を維持していますね。マイケルは「Dangerous」のような結末を恐れてか、しきりに「秘密にしてくれ」と念を押しているのが面白いのですが、彼女の方も単純にマイケルとの行為に溺れているようです。

(考えてみるとこの「In The Closet」は、いかにも男性が書いた歌詞という感じですね。女は男と違って、体の関係が続くほど体と心を結びつけてしまいやすい生き物だということを、マイケルがどれだけ理解していたのか?というのが女として興味があります。もしこれが現実であれば、この関係は長くは続かないはず・・・・笑)

マイケルは、彼女が感じている lust についてこう描写しています。


I cannot contain myself when in your presence
I'm so humble
Touch me
Don't hide our love
Woman to man

私は、自分自身を抑えられない
あなたの前に立つと
私はとても卑しくなってしまう
私に触れて
私たちの愛を隠さないで
女から男への



humble という言葉はよく「謙虚」と訳されますが、「自分を下に見て蔑む、卑しむ」というニュアンスがあるので、「身分が低い、みすぼらしい」なんて意味になることもあります。ここでは「あなたにこんなにも欲望を感じてしまう私は、なんて卑しい人間なの」ということですね。こんなセリフをマイケルは一国の王女に言わせたわけです。変態ですね(笑)

いずれにしても「In The Closet」は、マイケルが lust という欲望を受け入れ解放させた、行為真っ最中の様子をあからさまに描写した曲なのです。

「Dangerous」やマイケルとステファニー王女とのやりとりを見ていると、 ‘女性の性的魅力につき動かされ、自分を求める女性に導かれて交わる’ という構図で男女の行為を描いています。 'Woman to man' (女から男へ)とあるように、マイケルにとってのセックスとは、そういうものだったのでしょう。

今回、CDのブックレットの和訳を改めて読んでびっくりしたのですが、歌詞が全て男性(マイケル)の言葉として訳されているんですね。訳者の方が音源を聴かない状態で訳したのでしょうか?
この曲は、女性(ステファニー王女)男性(マイケル)のセリフの掛け合いによってマイケル独特の官能的な世界感が作られていますから、その部分を無視すると台無しになります。

では・・・・・いつもどうり前置きが長くなりましたが(汗)歌詞の和訳に移ります。



In The Closet


(※ステファニー王女の語り)
There's something I have to say to you
If you promise you'll understand
I cannot contain myself when in your presence
I'm so humble
Touch me
Don't hide our love
Woman to man

あなたに言わなければならないことがあるの
あなたが理解するって約束してくれるなら
私は、自分自身を抑えられない
あなたの前に立つと
私はとても卑しくなってしまう
私に触れて
私たちの愛を隠さないで
女から男への


She just a lover
Who’s doin’ me by
It's worth the givin
It's worth the try
You cannot cleave it
Put it in the furnace
You cannot wet it
You cannot burn it

彼女は恋人
僕のそばで尽くしてくれる
やってみる
試す価値があるんだ
それは、引き裂くことも
炉に入れることもできない
濡らすことも
燃やしてしまうこともできない


She wants to give it
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)
Dare me
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)
She wants to give it
(She wants to give it)
Yeah
(Ahh she wants to give it)
(She wants to give it
Ahh she she wants to give it)

彼女はしたがってる
(彼女はしたがってるんだ)
僕を挑発してくれ
(彼女はしたがってる)・・・・・・


It's just a feelin
You have to soothe it
You can't neglect it
You can't abuse it
It's just desire
You cannot waste it
Then if you want it
Then won't you taste it

それは ‘感覚’ なんだ
鎮めてあげないと
無視することも
粗末に扱うこともできないさ
それは ‘欲望’
無駄になんかできない
もし欲しいのなら
味わってみたらどうだい?


She wants to give it
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)
Dare me
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)
She wants to give it
(She wants to give it)
Yeah
(Ahh she wants to give it)
No No
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)

彼女はしたがってる
(彼女はしたがってるんだ)
僕をその気にさせてくれ
(彼女はしたがってる)・・・・


(※ステファニー王女の語り)
One thing in life you must understand
The truth of lust
Woman to man
So open the door and you will see
There are no secrets
Make your move
Set me free

人生で一つ、あなたには理解しておくべきことがあるわ
それは ‘欲望の真実’
女から男への
だから扉を開いて、そうすればわかるわ
そこに秘密はない
動き始めて
私を解放して


Ah
Because there's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you
I swear there's
Somethin about you baby
Ah
Oh

ああ
なぜなら君には「何か」がある
だから、君にしたくなるんだよ
本当だよ、君には「何か」がある
ああ


(※マイケルの語り)
Just promise me
Whatever we say
Whatever we do to each other
For now we make a vow to just
Keep it in the closet

約束してくれ
これから僕たちがお互いに言うこと
お互いにすること
二人だけの秘密にすると誓ってくれ


If you can get it
It's worth a try
I really want it
I can't deny
It's just desire
I really love it

君がわかってくれるのなら
試す価値があるさ
欲しくてたまらないんだよ
僕には否定なんて出来ない
それは ‘欲望’
すごくいいじゃないか


(※ステファニー王女の語り)
Cuz if it's achin
You have to rub it

だって、そこが疼いてしまったら
愛撫してあげなきゃ


She wants to give it
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)
(Dare me)
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)
She wants to give it
(She wants to give it)
Yeah
(Ahh she wants to give it)
(She wants to give it
Ahh she wants to give it)

彼女はしたがってる
(彼女はしたがってる、ああ、彼女はしたがってる)
もっと来てくれ
彼女はしたがってるんだ・・・・・


(※ステファニー王女の語り)
Just open the door and you will see
This passion burns inside of me

扉を開けてみて、そうすれば見えるわ
私の中で、燃えている熱情が


(※マイケルとステファニー王女の語り)
Don't say to me
You'll never tell
Touch me there
Make the move
Cast the spell

わからないなんて言わないで
そこに触れて
動き始めて
魔法をかけて


Ah
Because there's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you
I swear there's somethin about you baby
That makes me want

ああ
なぜなら君には「何か」がある
だから君としたくなるんだよ
本当だよ、君には「何か」がある
だから、君としたい気分に・・・・


(※マイケルの語り)
Just promise me
Whatever we say
Or do to each other
We make a vow for now to just
Keep it in the closet

約束してくれ
これから僕たちがお互いに言うこと
お互いにすること、
二人だけの秘密にすると誓ってくれ


<アドリヴ>


Because there's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you

なぜなら君には「何か」がある
だから、君にしたくなるんだよ


Because there's
Somethin about you baby
That makes me want
To give it to you
I swear there's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you

なぜなら君には「何か」がある
だから君としたくなるんだ
本当だよ、君には「何か」がある
だから君としたくなるんだよ

I swear there's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you
There's somethin about you baby
That makes me want
To give it to you
Somethin about you baby
That makes me want

誓うよ、君には「何か」がある
だから、君にしたくなるんだ
君には「何か」がある
だから、君にしたい気分に・・・・


(※マイケルの語り)
Just promise me
Whatever we say
Whatever we do to each other
For now
We'll make a vow to just
Keep it in the closet

約束してくれ
これから僕たちがお互いに言うこと
お互いにすること、
二人だけの秘密にすると誓ってくれ


<アドリヴ>


(訳・テト)




マイケルの歌い出し部分の、 Who’s doin’ me by(僕のそばで尽くしてくれる)とした部分ですが、歌詞カード上は 'Who makes me high' (僕を高ぶらせる)となっていますが、おそらくこう変えています。

ここ↓ の部分は、ものすごく官能的ですね


Just open the door and you will see
This passion burns inside of me

扉を開けてみて、そうすれば見えるわ
私の中で、燃えている熱情が



「Keep it in the closet(秘密にしておいてくれ)」と言って扉を閉めるマイケルに対し、彼女は「扉を開けてみて」とマイケルに促す。

彼女の言う「扉」とは「欲望(lust)の扉」であり、また同時に女性の体の部分を示している・・・・・・・・と、なんともセクシャルな妄想をさせる官能的な歌詞です。

もしかしてマイケルは、恋愛ソングよりも官能ソングを書く方が上手いんじゃないか?と、つい思ってしまいますが(笑)ここの部分なんか特に、マイケル(男性)の言葉として訳されてしまったら何とつまらないことか・・・・。

'Then if you want it, then won't you taste it' (欲しいのなら味わってみるんだ)というセリフは、ずいぶん軽いノリですね。本命の女性を誘う時には使わない表現です。'taste' (味わう、味見をしてみる)という単語は、例えばセックスを直接的に意味する禁止用語 f*ck とかよりも、よっぽどいやらしい表現です。

この 'taste it' 'waste it' (無駄にする)'soothe it'(鎮める)もそうですが、言葉選びも歌い方もいちいちセクシーで、本当にズルいですね(笑)
(soothe とは「鎮める、なだめる」という意味で、泣き止まない赤ちゃんを「よしよし」となだめるようなイメージです。)

そしてマイケルが曲中で何度も発する 'Dare Me' という言葉ですが、これは相手をけしかける時に言うセリフですから、ベッドの上では「もっと僕を挑発してくれ、その気にさせてくれ、もっと来ーい!」とかなりセクシーなニュアンスの叫びになりますね(笑)もう、ドSなのかドMなのかよくわかりません・・・・。

それから、前回「痛いところがあったら、さすってくれるでしょ」とオブラートに包んで訳した ‘Cuz if it's achin You have to rub it’ の部分ですが・・・・・ブックレットでも同じように訳されています。

achin とは、基本的には「体の中が痛い、うずく」と、体内の感覚的な痛みを表現する単語です。しかしこの単語には「欲しくてたまらない、ウズウズする、切望する」という裏の意味もあります。ですので性交渉の場面では、こちらのニュアンスになりますね。
rub は「手で擦る、さする」という意味なのですが、あからさますぎるので「愛撫」としておきました。マイケルいい加減にしなさい(笑)


ところで、もう一か所注釈を加えたい部分があります。

Because there's
Somethin about you baby
That makes me want
To give it to you

なぜなら君には「何か」がある
だから、君としたくなるんだよ



この、「君には『何か』がある」と言っている部分ですが、以前どこかのブログさんで「『何か』とはっきりしないマイケルは優柔不断だ」と、積極的な彼女に比べて迷いがあるというような解釈をしていらっしゃいました。
something を日本語でただ 「何か」 と表面的に読んでいると解らないのですが、 これは 「言葉では説明できない種類のすごいもの」 というニュアンスを含むことがあります。

ですから、ここでマイケルが言っているのは「ある異性に対してなぜ強い欲望を感じるのかというのは、言葉で説明が付くものではない」ということです。「言葉では言い表せないほどの強い欲望を君に感じている。」と。「Dangerous」でも、同じ表現をしていますよね。


この曲の一番の聴きどころ、クライマックスは後奏の 5:30 からの ‘セックス・シーン’ でしょう。
「誰にも言わないでくれ」と言いながらも「もっと挑発してくれ」と求める様子が、入り乱れる 'Keep it in the closet' 'Dare Me' というセリフに表れていて、あまりに生々しくて心拍数が跳ね上がります。

この後奏部分では、この二つのセリフと 'She wants to give it' (彼女はしたがってる)というコーラスが絡み合っています。
このコーラスは後奏だけでなく曲中で何度も繰り返されますが、これはマイケル自身の口から出る言葉というよりも、誰かが耳元で誘惑してくるようなイメージで歌っていますよね。「HISTORY」アルバムの「Money」と同じ構造です。

こういったヴォーカルと本気モードの喘ぎ声、ベッドが軋む音などを絶妙に組み合わせて、lust(肉欲)に揺れるリアルなベッド・シーンを作っているのです。

アカペラ・バージョンなどを聴いていても思うのですが、この曲のヴォーカル・アレンジは他の音を必要としないほどに多彩で、聴きごたえがありますね。マイケルの声は肉感的でパーカッシヴで、もちろんコーラスは美しく、「トゥル、トゥル、ンー」なんていう声も耳に残ります。
サウンドがニュー・ジャック・スイングだということなどは、もはやオマケにしか感じないほどです。

ここまで官能的な、性的欲望というものを直接的に表現した楽曲をあまり他に聴いたことはありませんが・・・・。

確かにこの曲を聴いた女性ファンは、神様に懺悔した方が良いのかもしれませんね。

もちろん、一緒にあらぬ妄想をした男性ファンの方も、同罪ですよ・・・・・。


この記事へのコメント

  • ちた

    テ、テトさん・・・すごすぎますね。
    心臓に毛が生えてるって言ったけど撤回します。
    いろいろ感想はありますがまとまらないので一点だけ。
    王女様にあんなこと言わせるなんて変態ですね!でも冷静に考えてみるとマイケルを前にしたら王女様でも、王女様ではない私含め他の女性でも「あなたにこんなにも欲望を感じてしまう私は、なんて卑しい人間なの」と言ってしまうのではないかと思いました。マイケルは自分にそこまでの魅力があるとわかっていて書いたのかなとか深読みしました。だとしたらドSですね!

    テトさんのブログを知った時の最新記事がBreak Of Dawn~2~だったのでテトさんにはいろいろ、色々教えていただき私もここまでこれました。それまではIn the ClosetのSFも恥ずかしくて観れませんでした。本当ですよ!扉を開けてくれてありがとうございます・・・
    2017年11月08日 13:28
  • みちこ

    テトさん、今日ちょうどこのブログを見ていたときに新着記事がUPされて、思わずキター!!とにニヤけちゃいました(*´∇`*)
    書いてくださってありがとうございます!
    やっぱりテトさんらしくしっかり解釈を加えてくださって、読みごたえたっぷりです!これからゆっくりゆっくり読みたいと思うのですが、とりあえずお礼をと思って書きました(^-^)私、LUSTってどういうことなのかなー?と思ってたので、その説明もしてくださって嬉しいです。ありがとうございます。
    2017年11月08日 22:47
  • とも

    テトさん、第二弾ありがとうございます。僕も一票入れといて良かった(笑)
    「She wants to give it」(彼女はしたがってる)のコーラスは、確かに「MONEY」と同じ作りですね。そう考えたことなかったです。
    女性がマイケルを欲望(LUST)へ誘う→耳元では「彼女はしたがってる」と誘惑のコーラスが響き→交わりたいと欲望(DESIRE)を抱く・・・・・なるほど、そういう世界感だったのか。妄想好きを自認していたマイケルらしいですね。あえてキャラ設定をせず人物描写がないのも、そのテーマを際立たせる為なんですね。
    自分は今まで、「パーカッシヴでファンキーだけど、エロいよマイケル」(というかスーパーモデルとの絡みが羨ましいぜ)くらいにしか思っていなかったので(すいません、男なもんで。笑)やっぱりマイケルらしく練られているんだなーと、初めてこの曲をちゃんと理解した気がしました。テトさんさすがですね。社会派の曲から官能まで解説できるとは・・・・・。
    それにしても、「Cuz if it's achin You have to rub it」の「疼いてしまったら~」の部分はすごいっすね(笑)これを王女様に言わせるとは。さすが天下のマイケル・ジャクソン・・・・・。
    2017年11月09日 23:17
  • テト

    みちこさん、早速見て下さってありがとうございます(^^)
    書いてしまいました(笑)
    2017年11月10日 00:43
  • テト

    ちたさん、こんばんは。オブラート、剥がしすぎました・・・・?どうしよう、もっと包んだままにしておけば良かったかしら・・・・(笑)
    2017年11月10日 00:50
  • テト

    ともさん、コメントありがとございます。いえ、あくまでも私個人の解釈なので(笑)・・・・・他のblogさんもいろいろ書いていらっしゃると思うので、覗いてみてください。

    'Cuz if it's achin You have to rub it' はエッチですね。
    ここはたぶん、もともとマイケルが自分で歌う予定で書いたと思うんですけど、王女様に歌わせましたね(笑)
    2017年11月10日 20:13
  • とも

    テトさん度々すいません。 そこ、マイケルが歌うはずの部分だったんですか・・・・・?英語って、男と女の言葉遣いの区別がつかないからわかりにくいですね(笑)
    僕、この曲に関して他のブログも調べたことあるんです。でも意外とあんまり書いてる人いないし、女性の方だとやっぱり「きゃー♡妊娠してしまうわー」とかなっちゃって冷静に読めてないようだし(笑)。いや、いいんですよもちろん、マイケルはもちろんそれを狙って書いてる部分もあるでしょうからね。でもテトさんは女性ファンなのにいたって冷静に分析されているし(笑)説得力があるからすごく参考になるんですよ。
    2017年11月11日 00:33
  • テト

    ともさん、男性女性の言葉遣いの違いということではなくてですね・・・・・Aメロはマイケルが歌うパートなのですが、3コーラスAメロのあの部分だけ、ステファニー王女が歌っているんです。
    本来は、直前の ‘It's just desire I really love it’ 「それは、‘欲望’。いいじゃないか、それが気に入ってるんだよ。」というマイケルのチャラい歌詞と、’Cuz’ (‘Because’ の口語体)から始まる「だって、疼いてしまったら・・・」のヴォーカル・ラインは意味がひと続きになっているんです。でもマイケルは、このセリフをステファニー王女に言わせてみたいと思ったんでしょう(笑)
    この曲は、女性を「欲望の源泉」的な象徴として捉えていて、ステファニー王女の語り部分は詩的な表現になっているのですが、あの部分だけは本来マイケルのパートなので、 ’Cuz…’ と口語調で歌っているんですね。
    マイケルの声は冷静に聞けますよ。R・KELLYは無理ですけど。
    2017年11月12日 18:30
  • とも

    テトさんありがとうございます。確かに他の所では王女様は語り口調なのに、ここだけ歌っていますね。やるなーマイケル(笑)そういえば、テトさんはr.kellyのファンでもあるんでした(笑)彼はまさにエロ大王ですね。
    2017年11月13日 00:01
  • jin

    はじめましてテトさん。アメリカ在住のものです。以前からよく拝見していました。この曲って、アカペラで聴いてもすごい楽しめるんですよね。最近の若手なんかみんなマイケルを手本にして歌ってますけど、マイケルのリズミカルでパーカッシヴなヴォーカルっていうのは、上っ面だけ真似てもやっぱり違うんですよね。それがこの曲を聴いていてもすごく実感するというか。バックアップ・ヴォーカル抜きのアカペラヴァージョンをYou Tubeで聴いていると、物凄いですよね。テトさんおっしゃる通り後半からエンディングにかけてのアドリヴも上手い。ああいう作り方はマイケルしかやらない、というかマイケルにしか出来ないでしょうね。真似しようと思っても自信がないと無理ですよ。しかも本気モードのベッド・シーンですから、女性ファンにはたまらないでしょう・・・・徐々にクールダウンしてくのも秀逸です。中盤の方のベッド・シーンですが、アカペラで聴くと何て言っているか聴き取れちゃいますね。あれは隠さないとマズイ。(笑)マイケルは一旦好き放題にアドリヴを入れた後で、慎重に声の選別をしたんでしょうね。大変な作業だなぁ。高音と低音の声でセリフを絡ませてますけど、これまた臨場感が増してSexyですね。そういえば、その直後、'Because There's Something~’の声が微妙に笑っちゃってるように聞こえるんですが、気のせいでしょうか。くだらない長文で失礼しました。
    2018年01月10日 13:10
  • テト

    jinさん、見てくださってありがとうございます。
    あのアカペラ・バージョンは、いろんな意味で凄いですね(笑)「without back-up vocal」っていうやつですよね?
    最後のビート・ボクシングが、なんとも言えず格好いいですね。マイケルならではです。
    ご指摘の部分は笑ってると思いますよ。というか、アカペラバージョンではその部分で「クククッ」って笑っちゃってるのが聞こえますよ。楽しんだんでしょうね(笑)
    2018年01月11日 00:21