なぜ郊外のベッドタウンでホラー推し?あなたも1時間で“即戦力のゾンビ”になれる 大阪・門真市の挑戦
先日、馴染みのスーパーに夕飯の買い物に行くと不気味なチラシが目についた。
【写真】ゾンビに扮して歩く人たち クリエーターらが本格的にメイク
8月13日に「門真怪談フェス」というイベントが開催されるという告知で、プロの怪談師が語る怪談や、映画「門真市ゾンビ人材センター」の上映もあるらしい。調べると、一般の市民らしき人々がゾンビになり街を彷徨う映画の予告編を発見。
ゾンビメイク教室なども催されるとのこと。1日のイベントスケジュールを見ると市長の挨拶まで予定されているが、大阪郊外のベッドタウンである門真市でなぜこんなに怪談やゾンビといったホラーコンテンツが推されているのだろうか?
イベント主催者である、門真フィルムコミッション理事長の奈須さんにお話を聞いてみた。
――まず、特定非営利活動法人 門真フィルムコミッションについて教えていただけますか?
奈須:きっかけは私が映画撮影に携わることになり、ロケ地の交渉をスムーズに行うため立ち上げた団体でした。現在は28人の理事と共に門真国際映画祭の運営や、門真市の社会実験として門真市駅高架下シアターの企画なども行っています。市からの援助は受けず、資金は全部寄付やボランティアで賄っています。
――自立された団体だったんですね!
奈須:門真市役所の方とは、最初は映画と全く関係なくて。住んでる地域の街灯を増やすために自治会を発足したんです。その時の手続きを通じて仲良くなりました。
――安全な街を作りたかったのがきっかけで、ゾンビ映画を撮ることに…真逆の世界観ですね。
奈須:門真市シルバー人材センターが40周年ということで事務局長から映画製作のお話をいただきました。その時「映画”ゾンビ”のヒットがきっかけで日本にブームが起きたのもちょうど40年前なので、ゾンビ映画にしましょう!」と提案したんです。ゾンビって、40年間常にキャラクターとしてトップを独走する存在なんですよ。それが人生をリタイヤすることなく生涯現役で活躍されるシルバー人材センターの活動と重なるように思えました。
――怖がる人もいると思いますが…
奈須:確かに、「そんなんイヤや!」と言う方もいました。でもゾンビメイクをすると人は変わるんですよ。無邪気に皆さんノリノリで、「孫に写真送るから!」と写真撮影されたり、楽しい現場でした。
――メイクや演技指導などは、どうやってされたんですか?
奈須:団体は劇団関係者や殺陣師、書道家などの特殊なクリエイター集団です。ゾンビの特殊メイクが出来るメンバーが10人くらい在籍しているので、1時間で即戦力のゾンビになれるカリキュラムを組みました。ゾンビ独特の発声をマスターする”ゾンビ早口言葉”、”ゾンビとしての驚かせ方”、”ゾンビの気持ちを考えてみる”など、楽しくゾンビになれる講座を開いたんです。
――即戦力のゾンビ!怪談フェスは、何がきっかけだったんでしょうか。
奈須:元々シルバー人材センターのお祭りの計画があったのですが、「1時間余るので何か演目をしてもらえないですか?」というお話がきまして。
理事の中に怪談師がいたのと、私が実は小説家なので、「怪談を書き下ろして怪談イベントをやりましょう」とご提案したら、「夏だしピッタリですね!」となり開催が決まりました。
――これからの野望は何ですか?
奈須:高架下シアターの運営で、スクリーンで上映している映画をヘッドホンで音声共有するシステムを開発したんです。これで騒音などの問題が解決するので、空き家を映画館にしたいですね。古民家で小津安二郎作品を観るとか、ホラー映画オールナイトとか、楽しそうですよね!
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怖い話専門の不気味な団体かと思いきや、地元住民に愛され活動しているという門真フィルムコミッションの皆さん。懐かしさ×ハイテクのハイブリット映画館の誕生も楽しみだ。
(よろず~ニュース特約・ゆきほ)