私はフリーランスのジャーナリストに転職して今年で17年になります。またNGOの代表を務めて、現地入りするたびに食料や医薬品を支援してきました。
アフガニスタンには911事件直後から合計11回取材をしていまして、現地には私の通訳が住んでいます。彼らとは時々メールでやりとりをして、適宜、難民の状況や戦闘の様子などの写真や動画を送ってもらっていました。
8月15日にカブールが陥落し、現地の様子がどうなっているのか、カブール在住で私の通訳アブドラに報告を頼みました。タリバンが首都に迫ってくる様子や、大統領府に入ったことなどを、彼は写真、動画とともに、メールで送ってきました。
私は、緊急事態でありこの情報を伝えねばならないと思ったので、その日からSNSで発信を続けました。
1 空港における写真と記事
8月16日に朝日新聞社から電話があり、インタビューに答えるとともに、通訳アブドラが送ってきた写真を提供しました。そして記事がネット上にアップされました。その直後に、特に空港の様子が、別の誰かがツイートしているものではないかと、朝日新聞社からの指摘があり、通約アブドラに確認したところ、彼は暴動が起きた直後から仲間と一緒に空港に入り、一晩写真を撮り続けていたと証言しました。彼の送ってきた写真の中で、KAM・AIRの屋根に乗っている写真を記事にしたのですが、これはJAWID OMIDという中国系のメディアの現地記者が撮影したものではないかと、指摘されましたのでアブドラに再確認したところ、「自分たちが撮影した」と言います。
この騒動の中で事実確認をしなければ、と思い、アブドラにJAWID OMID氏に連絡を取ってもらったところ、「写真をもらったので、ツイッターにアップした」とJAWID氏が語ったとのことでした。その後、JAWID氏からの連絡を待っていますが、8月18日午後3時半現在、まだ連絡はありません。実際に当日に空港に入っていた通訳のアブドラはこの写真だけではなく、別のアングルからの写真も持っていましたので、掲載写真と合わせて私の SNSに掲載します。このKAM・AIRの写真は、誰の撮影なのか、現在のところ不明です。
なお朝日新聞社とは電話でやり取りを続けて、当該記事が公開終了となりました。記事公開に至るまでには、記者と私のメールや電話やりとりの中で確認をとった上でのことでした。しかし8月17日の時点では、まだJAWID氏との連絡が取れておらず、このままだと朝日新聞社にもご迷惑がかかる可能性があるので、「確かに通訳のアブドラが無断でインターネットから取ってきた可能性がある」と考えましたので、公開終了することに合意しました。仕方がないことですが、アフガニスタンで起きていることを広く伝えたかった私としては大変遺憾なことになりました。
2 私のSNSでの発信につきまして
新聞記事に載せた写真以外にも多数、アブドラが送ってきた写真があります。8月15日から一連のツイートに掲載した大部分のものは、彼が直接撮影したものです。しかし中には彼が友人からもらったものが含まれており、この点を確認せず、SNSで発信したことは軽率だったと思います。特に19年8月にロイター通信で使われた写真を、「2週間前に撮影されたものだ」とのアブドラの証言を鵜呑みにしてしまい、ツイートしたことは軽率で、ロイター社のみならず、ツイートを閲覧した方々に誤解を与えたことを、ここに謝罪し、このツイートに関して早急に削除いたします。本日以後も、写真1枚ごとに確認が取れ次第、削除するか残すかの対応をしてまいります。
上記の問題が起きてから、例えばアブドラが撮影した「米兵に射殺された5名の若者の写真」は事実経過が確定したものです。しかしながら、たくさんの方々から「これも怪しい」「ウソではないか」などとうツイートが寄せられました。
あるいは「大統領府にあがったタリバンの旗」についても、「コラージュだろう」と決めつけた投稿も多数見られます。しかしこれは実際に掲げられた旗です。
また8月10日に北部のクンドゥズで老人を担いで逃げるアフガン軍兵士の写真については、アブドラの友人が撮影したもので、許可を得てそれを送付してくれたのですが、この写真はかなりの人に共有されて現地で回っていたものですから、これも「盗んでいたのでは?」などの投稿がありました。現在はアフガンでもネットが発達して、こうした情報が瞬時に回りますので、朝日の記事は、その後から出さざるを得ず、あたかも「順番が逆」のように捉えて、やはり「盗んでいる」などの投稿がありました。
その上で、訴えたいことは、私が投稿した写真の大部分は貴重な現地の一次情報だということです。私たちには知る権利があり、米国の20年に渡るアフガン戦争が一体なんだったのか、総括する必要があると思います。もちろん、日本もインド洋で給油を続けていたので、数々の日本による人道支援とともに、きちんと振り返る必要があると思います。
さらにいえば、大事なことはアフガンの人々の命であり、国際社会のタリバン政権への監視です。私はアフガンの現地を取材する者であり、私の情報を待っておられる大勢の方々がおられます。私のSNSに心ない中傷やフェイクと取れる投稿を続けることは、決してアフガンの人々のためになりません。今回の一連のSNSの発信では、誓ってネットなどから勝手に写真を剽窃したことはありません。あたかもこのような行為をしたかのような、事実確認をしないままの行き過ぎた中傷は私と通訳への名誉毀損にもなりますので、今後このような投稿をされる方々には法的措置も取らせていただきたいと考えています。
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