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「動画さらすぞ!」救急搬送をゴリ押しした立民議員

「週刊文春」編集部

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同性婚の実現を訴える石川議員
同性婚の実現を訴える石川議員

 日本一の繁華街・歌舞伎町に近い住宅街に怒号が響いたのは、8月8日深夜のこと。駆けつけた救急隊員に対し、スマホを片手に声を張り上げていたのは――。

 消防庁関係者が事の顛末を振り返る。

「8日の夜10時半頃、新宿区のマンションに住む30代の男性A氏の知人を名乗る人物から119番通報が入りました。『A氏は数日前にコロナに感染し、自宅療養を続けているが、体温は40度から下がらず、容体が悪化している』と救急搬送を求める内容でした」

 駆けつけた救急隊員がA氏の体温や血中酸素濃度を測った結果、保健所は「直ちに病院に搬送する状態ではない」と判断した。するとその直後、1人の男性が現場に姿を現した。

「男は救急隊員に対し、『俺は立憲民主党の国会議員だぞ。石川だ』と喚き、周囲に聞こえる声で恫喝していました」(目撃者)

 彼は立憲民主党の石川大我参院議員(47)。119番通報したのは、A氏の病状を心配した旧知の秘書だったという。

「実はA氏は8月4日と5日の2回、119番通報していましたが、保健所の判断は入院措置ではなく、自宅療養でした。医師の診断は中等症でしたが、入院が必要な重症バイタルではないという判断です。8日深夜の病状も搬送の基準に達していなかったため自宅待機をお願いしていましたが……」(前出・消防庁関係者)

 その判断を知った石川氏らは、思わぬ行動に出た。

「救急隊員は『保健所の判断です』と説得したのですが、彼らの怒りは収まらず、救急隊員をスマホの動画で撮影し始めた。そして『搬送しなければ、この動画をSNSでさらすぞ!』と言い放ち、救急搬送をゴリ押ししてきたのです。現場でのやり取りに関しては、消防庁に報告書として上げられています」(同前)

 事態を重く見た消防署は当直勤務をする「指揮隊」に応援を要請。内情を知る消防署員が嘆息して言う。

「指揮隊は、緊急の火災現場に出動し、被害状況の把握を迅速に行うことが務め。それなのに、このような事案に駆り出され、消防署を留守にせざるを得ない事態になってしまった」

 その後、再度保健所と協議し、朝方になって病院への搬送が決まったという。

 石川氏とはどのような議員なのか。02年「ボクの彼氏はどこにいる?」(講談社)を出版し、同性愛者であることをカミングアウト。LGBT活動家としてのキャリアをスタートさせた。社民党の福島瑞穂参院議員の秘書を経て、11年に豊島区議に当選。18年に同党を離党すると、翌年7月の参院選で立憲民主党から出馬し、初当選した。

「当選直後には、『桜を見る会』の前夜祭で銀座久兵衛の寿司が提供されていたとツイッターで追及。ところが久兵衛側が全否定し、釈明に追われることに。昨年3月には新宿でパトロール中の警察官に腹を立て、『俺は国会議員だぞ』と威嚇。その様子を動画で撮影していました」(政治部記者)

 石川氏は知人宅に駆け付けた顛末を自身のツイッターに書き込み、「東京は医療崩壊しています」と問題提起している。だが、前出の消防署員はこう語る。

「知人を救いたいという気持ちは理解できます。しかし、保健所からの指示で自宅療養を余儀なくされている国民が多くいる中で、議員という立場を利用して救急隊員を脅すような言動を取るのは、あまりに傲慢ではないでしょうか」

石川議員のツイッター
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 石川氏に事実関係を確認すると、こう回答した。

「『搬送すべき人を搬送できない』という危機的状況のなか、救急隊の方々には種々ご対応いただいていました。危機的状況を事後ご本人や秘書に共有する観点から要所要所で記録は取りました。患者の容体については意見交換をしましたが、『この画像をSNSで晒す』などといった発言をしたことは一切ありません」

 現場の対応に日夜追われ、救急隊の疲労も限界だろう。

枝野代表も自撮り映像をSNSにアップ中

source : 週刊文春 2021年8月26日号

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