2021年3月、「ミス・オブ・ミス・キャンパス・クイーン・コンテスト2021」でグランプリに輝いた東京大学文科2類2年の神谷明采(あさ)さん。20年秋に「ミス東大」に選ばれ、ミスキャンパスの頂点を決める同コンテストに挑んだ。「コロナ下でなければミスコンには出場しなかっただろう」と語る神谷さん。ミスコンに何を求め、どんな将来像が見えてきたのか。
「神谷さんを目指して受験勉強を頑張りました。無事合格できました!」
最近、神谷さんのツイッターにダイレクトメール(DM)で、受験生から「サクラサク」報告が届いた。ミス東大に参加してからフォロワーが増え、こうした応援が彼女の原動力だ。中学受験と大学受験に失敗した経験を持つ自分が、誰かの目標になっていることは、素直にうれしいと感じる。「今では受験に失敗して良かったと思う」と笑う。
中学受験失敗「人生なかなかうまくいかない」
「勉強に関してコンプレックスの塊でした。中学受験では第1志望にも第2志望にも落ちてしまったので」
埼玉県で四姉妹の次女として生まれ育った神谷さん。大学受験はしたくないと、中学受験で有名大学の付属・系属校を目指した。しかし、第1志望の早稲田大学系属の早稲田実業学校中等部(東京都国分寺市)、第2志望の慶応義塾湘南藤沢中等部(神奈川県藤沢市)にはいずれも不合格だった。
進学したのはカトリック系の名門女子校、浦和明の星女子中学・高校(さいたま市)。失意の中での入学だったが、校風はノビノビしていて、「一人ひとりを大切に」という校訓が自分の性にあっていたという。新体操部に入り、部活中心の毎日を送った。進学校には珍しく、部活は週6日に及び、疲れて授業中に居眠りをすることもしばしば。当然成績は下がった。高1の春、たまたま地元の塾の無料講習を受けたとき、高校受験を経た他の生徒と自分の成績の差にがくぜんとした。
「人生なかなかうまくいかないなって思ってました」と当時を振り返る。
転機は高1の秋。仲のいい友人から東大の駒場祭にいかないか、と誘われた。「東大なんて別世界」と思っていたが、軽い気持ちで学園祭に顔を出した。堅苦しい秀才の集まりと思って期待していなかったが、キャンパス内の空気は意外なほど明るかった。「一緒に東大を目指そうよ」と友人から促され、その気になった。
高2では新体操部の部長も務めながら、進学塾に通い、部活と勉強の両立に励んだ。しかし東大の壁は厚かった。東大の2次試験では結局、約5点差で落ちてしまう。滑り止めでいいという発想はなく、むしろ「東大に行きたい」という思いに火が付いた。浪人生活を送り、猛勉強した。何か具体的になりたい職業があったわけではない。モチベーションは何だったのか。「中学受験で失敗した悔しさもありました」という。センター試験では思うような成績が出なかったが、東大2次試験では得意の英語と数学で盛り返し、文科2類に合格した。
コロナ下の孤独感、ミス東大への応募のきっかけに
「東大の魅力は優秀な友人たちと出会えること」。そんな期待に胸を膨らませた春、新型コロナウイルスの感染拡大で、憧れのキャンパス生活は制限だらけになる。