さて、「アダルトな動画のためにVRゴーグルを──」とは、“いかにも”なことを言われてしゃらくさい気もするが、まさしく「いかにもその通り」であり、的を射ているからぐうの音も出ない。世の中はそのように運営されてきて、おそらく今回も例に漏れずエロがVRをけん引するのである。
しかし、Aさんはといえば入口がエロ目的ではなかった。彼は常々ゲームを愛好しているので、では話題のVRゲームを1回体験しておこうかとPSVRの購入に至ったのであった。
あわせて買ったソフトが海で泳ぐものと車でドライブするものの2つで、Aさんは早速ヘッドセットを装着してゲームの世界へと赴いた。「これはすごい」とAさんは思った。想像以上にリアルであり、ヘッドセットの中にもうひとつの現実が存在しているかのようであった。
ドライブが好きなAさんは主にそちらの方のゲームをいじって遊んでいたが、段々気分が悪くなってきた。俗にいうVR酔いである。VR体験に慣れることで耐性がついていくことも珍しくないようなので、Aさんは悲観せず目を閉じてベッドに横になっていた。気分がよくなったら再開するつもりであった。
「なかなか面白い」とAさんはひとりごちた。「これからのVRゲームがますます楽しみだ」とも思い、胸が高鳴った。VR酔いが克服できたら他の欲しいソフトも買っていこうと考えた。
その時Aさんの頭をあるひとつの思いがかすめたのである。「そういえばVRのエロ系はどんな感じなんだろう?」と。ただの好奇心でのぞいてみた世界がのちにAさんを虜(とりこ)にするであろうとは、彼はこの時知る由もなかった。