Cフリジアンの♭iiです。フリジアンのモーダルインターチェンジとしては最もよく見つかるやつ。
(※フリジアンの短2度なので、chord & scaleは普通リディアンになります)
Phrygian II、別名、ナポリの2度ですね。6の和音(第一転回型)ではないのでナポリの6ではないです。
面倒ならVsus47の(不完全)代理、あるいは♭II7のバリエーションだとでも考えといて下さい。
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補足
>V7sus4の不完全な代理というのもその通りで、理由を書かれなかったので出しゃばらせてもらうと、 Ⅴ7sus4(♭9) と Ⅱm7♭5/Ⅴ は構成音が同じであり、 Ⅴ7sus4(♭9,♭13) のルートを裏(♭Ⅱ)にすると♭ⅡM7(9) になるからです。 (りんろんたさん、違う解釈でしたら補足しといて下さい。)
合ってるとも言えるし合ってないとも言えますが、論理の筋道をちゃんと書いとけばいいですかね。
以下の代理なスケール関係に対して
♭II Lydian ♭7th 〜 V Altered
1音差のバリエーションを持つ不完全代理として以下のスケール関係があります。
♭II Lydian 〜 V Locrian
余談ですがこれは
Overtone scale(倍音音階)≒Lydian♭7th
と
Pythagorian scale(ピタゴラス音階)≒Lydian
の差異に相当していて、実は論理の根本的なスタートポイントはそこです。
(もちろん古典的な旋律的短音階と全音階の差異の考えを用いた説明もできますが、どうしても音響心理学や音響物理学的な意味から逸れる論理を介すことになります。)
両スケールの上で、互いに「ルート以外の構成音」を持った場合、厳密な表し方(※)をするならば
♭II△7 omit 5 対 Vsus47 omit 5
これらがコードの(コードトーン部分の)不完全代理になります。
いってみれば、冒頭の代理
♭II7 (omit 5) 対 V7 (omit 5)
のバリエーションみたいなものですね。
(※5度がコードトーンから省かれる≒ノンコードトーン・非和声音として扱われる、という前提で代理のメカニズムが十分に成立します)
ですから整理すると
♭II7のバリエーションとしての♭II△7
V7のバリエーションとしてのVsus47
V7の代理としての♭II7
Vsus47の不完全代理としての♭II△7
という構図となるわけです。
ノンコードトーン(テンション-アボイド)の部分をみると
♭iiのP5[♭vi]とvの♭9[♭vi]
♭iiの9[♭iii]とvの♭13[♭iii]
が対応してることになります。その点に限った話ではおとうさんの説明で十分ですね。
Vsus47が、(典型的には進行元のサブドミナントからの共通音(保続や繋留)を伴って)、ドミナントへの解決動機から「サブドミナントのような性質(pre-dominantの性質※)」を持つのと同様に、不完全代理である♭II△7も同様のメカニズムで似たような性質を持つことになります。
(※pre-: 一種の機能分類の亜流で、特定の主要三和音に前置される傾向が強い、という意味でpre-という接頭語がつきます。
主要三和音のtonic、subdominant、dominantの名称かと主要三和音以外の機能分類の混同を避ける場合にはこちらが好まれます)
非常に雑な言い方をすると、導音[vii]を持たない、ってところで「ドミナントらしくない中途半端なドミナント」とか「踏み込みの浅いドミナント」とでも言えますかね。
「導音を伴うあからさまなケーデンスを避ける」ってのがモードの表現目的とうまくマッチするので、それと似たような"バリエーション"の考え方(主にドミナントの導音処理)は、モードの諸技法との関連で語られることが非常に多いです。
ともかく、本質的には♭II△7もVsus47も分類上はドミナントです。その上で、「副次的に(潜在的に)サブドミナントのように働く」というような説明ができます。
「前後関係によって機能が違う」「〜のときには⚪︎⚪︎で…」みたいな説明の仕方は却ってややこしいと思ってますが、古典的な理論では確かにそういう言い方にならざるを得ないのか、とは思います。
余談として、
これらは似たような不完全代理
♭II Lydian Augmented 対 Vø7 Altered Dorian
上の
♭II+△7 対 Vø7
ノンコードトーンの部分も含めると
♭II+△7(9,♯11) 対 Vø7(9,11,♭13)
にも非古典的なモーダルインターチェンジの次元で応用可能です。
音楽理論理論の話になりますが、Lydian Chromatic Conceptっていう古い理論がありますが、この話題自体はそっちによく似てます。
それの源流にロマン派音楽(+印象主義音楽)が発端のovertone scale(synthetic scale)の理論があって、そこからaxis systemの理論なんかが絡む別の発展形がこれ系統(バークリー系統)の理論になりまして、実はここの説明はどちらかといえばバークリー的な筋道での説明です。chord &scaleの話ですからね。
とはいえこのコード進行自体に関しては単純にトニックに向かう半音近接の和音として片付けてもいい気はします。その部類のコード進行は昔からよくあります。
あくまでその和音を用いる技法のひとつの形態としてフリジアンやら代理のような音階に基づく説明がでてくるわけですけどね。
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再補足
>一方♭ⅡM7のi(主音:M7)と♭Ⅱ7のvii=♭i(導音:m7)は変位の関係にあり、♭ⅡM7はNCTにも導音を持たないので、本質的にはサブドミナント(サブドミナントマイナー)に分類されるのが一般的な解釈だと思います(少なくとも私が音理論を学んでいた昭和終盤の時点では)。
だからそれと同じことがVsus47やIIm7/Vにも言える、ってことですね。昔のことは知りませんが、ルート絶対主義の視点で、ベースラインが優勢な音楽(可聴域に最も強く影響する低音)を説明する上では
主にdominant
(ごく潜在的にpre-dominant)
みたいに整理されるのが主流です(この主流です、っていう言説をどう取るかはお任せします)。
ベース以外の構成音の変化はベースと比べて影響は低いです。それこそM7とm7の違いは。
裏を返せば、ベースの変更はコードに大きな用法の変化をもたらします。
古典的なコードの分類は"構成音のみ"に着目する傾向が強いようですが、その反面、転回型=ベースの変更はコードの用法を大きく変えることは昔から強く認識されてました。