発掘で見つかったのは「小型恐竜自体の骨」ではなくて、「小さな恐竜が産んだ卵」だったのだ。しかも注目すべきはその卵のサイズ。なんと「恐竜が産んだ卵」としては「世界最小の卵」だというのだ!
私には、この恐竜の卵に特別な思い出がある。なぜなら、この卵、先に紹介した2017年放送の「ダーウィンが来た!」の取材時点(2016年)で既に見つかっており、当時から取材していた卵化石だったからだ。
ただ当時、丹波竜の化石を研究した兵庫県立人と自然の博物館の三枝春生博士の見解は「恐竜の卵なのは分かる。でも実は最新研究から、鳥も恐竜の一種であることが分かっており、そのため今回見つかった卵化石が鳥の卵なのか、鳥以外の恐竜の卵なのかは判断できない」というものだったのだ。
見つかった卵化石はウズラの卵くらいの大きさだったので、「鳥の卵なら在り得るサイズ」、でも「鳥以外の恐竜の卵ならば小さすぎるので、大ニュースになるだろう」と思ったことを鮮明に覚えている。
はたしてこの卵を産んだ親は、恐竜なのか? 鳥なのか? 三枝さんから話を聞いて以来、親の正体がずっと気になっていたが、ついに去年、卵の親は「鳥ではない恐竜」だと結論付けられたのだ。しかも「世界で最も小さな恐竜卵」だという。果たしてどんな方法で、卵の親を「鳥ではない恐竜」だと見分けたのか。
今回その謎に迫ったのは恐竜の卵が専門の筑波大学の田中康平助教だった。田中さんは「骨化石よりも卵化石が好き」と声に出して言うほどの大の恐竜卵好き。
私と田中さんとの出会いは2006年にまでさかのぼる。NHKスペシャル「恐竜vsほ乳類」(2006年放送)という番組を作った時、この番組を監修してくれた北海道大学の小林快次博士の研究室に学生として在籍していたのだ。以来、10年以上にわたり、公私ともに様々な局面でお世話になってきた方だった。
ちなみに自分の担当番組に初めて出演してもらったのは2019年に放送したNHKスペシャル「恐竜超世界」の時だ。今や世界的な卵研究者の一人となった田中さんが、中国で見つかった巨大恐竜の卵化石を手掛かりに、巨大な腕を持った珍恐竜デイノケイルスの謎だった繁殖術に迫っていく様子を紹介させてもらったのだ。
そんな田中さんが今回、兵庫の卵の親を研究し、鳥ではない恐竜が産んだ卵、しかも「世界最小の恐竜卵」だと結論付けた。
いったい田中さんはどんな方法を使ったのか? それは形の比較、何百、何千もの恐竜の卵を徹底的に比較検討するという方法だった。地道な作業の末に、ごく僅かな差から鳥ではない恐竜の卵であることが判明したのだ。
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