トマトは肥料が大好きな野菜だ。肥料が切れると樹勢が弱くなり、花芽分化が進まず、実ができない。新しくトマト栽培を始めて一番困るのが、肥料を切らさず最後まで良質な実を収穫することである。
そこで、新規就農者が参考になる追肥方法を書いていく。注意してもらいたいのは、夏秋ミニトマトであること。冬春はまた違った方法が求められる。
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<栽培初期>
ミニトマト定植後は元肥があるので追肥はせず潅水のみ。初期は苗の勢いが旺盛なため追肥すると樹がぼやけ、後期には樹が疲れ実がとれなくなってしまう。
元肥は、土壌診断を肥料会社に依頼し、適切な肥料設計をするといい。肥料会社は不要な肥料も勧めてくるが、就農1年目は何が必要で不要かを判断するのは無理だ。経費はかかるが余計なリスクはとらず、素直に従おう。
追肥のタイミングは80%3番花が開花したら行う。人によってタイミングは異なるが、3番花開花が一般的なので、無難な方を選ぼう。
追肥は基本的に液肥を使う。はじめは窒素分の強い液肥をやろう。手頃に買えるのは、トミーシリーズ。農協で買うことができるから楽。
[野菜・果樹・花卉] 液肥シリーズ|取扱製品|肥料製品情報サイト|片倉コープアグリ株式会社
トミーは2種類があるが、トミーネクサスにしよう。トミー液肥は3000円くらいで購入できてネクサスより安いが、ネクサスのほうが高い肥料効果がある。樹勢も保て実付きもいい。ネクサスは約4000円で販売されている。
ネクサスはネクサス046とネクサス688がある。数字じゃ覚えにくいのでブラックとグリーンで覚えるのがおすすめ。ブラックは10−4−6と窒素成分が強く、グリーンは6−8−8とリン酸とカリが若干強くバランスのとれた成分となっている。
ブラックもグリーンも使おう。ブラックだけだと樹勢だけが強くなり、花芽分化が進まない。倍率は箱に書かれているが、200〜300倍くらいがいいだろう。
★液肥はローテーションで回そう
1週間を基本として、毎日違う液肥を使うといい。同じ液肥をやり続けると樹がぼやけたり花芽がシングルしかつかず収量が確保できない。
液肥のランクのなかで、トミーブラック・グリーンは中間に位置するので、1回だけ高級な液肥を追肥するといいだろう。高級液肥は色々あるが、生科研のキッポ青がおすすめだ。
キッポ青は、5−6−4とバランスがとれた比率なうえ、すぐに肥効効果があらわれる優れた液肥だ。値段も1万円以上はする。
あとは微量要素。これも生科研のメリットMがいい。
2万円はするが病気になりにくくなり、トマトの旨味も増す。手がだせないなら、安いグリーンセーフでもいいだろう。
あとは、トミーと同じくらいの液肥を使う。農協に行けば他の液肥もおいてある。各都道府県によって置かれている液肥が違うため、肥料成分をみて買うといいだろう。
★ローテーション例
月曜日 トミーブラック
火曜日 トミーグリーン
水曜日 キッポ青
木曜日 メリットM
金曜日 窒素分の強い液肥
土曜日 窒素分の強い液肥
日曜日 バランス型の液肥
初期の肥料バランスは、窒素2:リン酸1:カリ:1を目安に。
<栽培中期>
中期は6番花以降のことを示す。この時期は元肥が完全になくなり追肥をしないと肥料切れになり、なり疲れになる。樹と実の双方を安定させるためにも毎日の追肥は欠かすことができない。
また、梅雨時期と被るため灰色かび病はすすかびなどの病気も発生しやすくなるので、追肥をして樹を元気にしておくことで病気の予防にもなる。
★液肥の変更
安定期に入るため窒素の量を減らしリンとカリを増やす。花と実をつくらないといけないからだ。トミーブラック、グリーン、キッポ青、微量要素のメリットMかグリーセーフは変えない。おすすめは、ジャットのGーⅢ。
有機醗酵肥料、栽培技術指導で、農業に奉仕するJAHT(ジャット)
2−8−8と窒素分は少なくリン酸とカリが強い。値段はトミーより少し高い。同じジャットのランセットpも月に2回くらい追肥すると花と実のつきがよくなるのでおすすめする。
★ローテンション例
月曜日 トミーブラック
火曜日 トミーグリーン
水曜日 キッポ青
木曜日 メリットM
金曜日 G-Ⅲ
土曜日 バランス型の液肥
日曜日 窒素分の強い液肥
中期の液肥バランスは、窒素1:リン酸1:カリ1を目安にしよう。
<栽培後期>
後期は8月中旬のお盆くらいから。この時期になると樹勢は落ち、実に栄養を行き渡らせようとするので、窒素はほとんどいらない。リン酸とカリの強い液肥を中心にする。窒素を一切やらない農家もいるが、多少窒素を与えたほうが樹勢が保て最後まで良質な実がとれる。
★リン酸、カリの強い液肥
キッポ青はやめていい。トミーブラックは量を減らし、トミーグリーンとGーⅢは多めに追肥する。メリットMは減らし、10日1回程度とする。
この時期のおすすめ液肥は、キッポ赤。
青をやめる代わりに赤を追肥してあげると花芽分化が進み着色がすすむ。
★ローテーション礼
月曜日 トミーブラック
火曜日 トミーグリーン
水曜日 キッポ赤
木曜日 メリットM
金曜日 GーⅢ
土曜日 リン酸、カリの強い液肥
日曜日 リン酸、カリの強い液肥
トミーブラックとメリットMは量と回数を少しずつ減らし、バランスのとれた液肥に切り替えると良い。
後期の液肥バランスは、窒素1:リン酸2:カリ:2を目安にしよう。生長点の芯止めをしたあとは、窒素0.5でもいい。
★裏わざ
基本的な追肥のやり方は上記の通りでいいが、裏わざを覚えるともっとうまくいく。自分が実践して会得したので、使ってみてはどうでしょうか!
ランセットNを葉面散布か液肥に混ぜる
ジャットが販売しているランセットNは肥効効果が抜群だ。
素人がみても樹の太さと樹勢が違う。葉面散布するなら週3回は最低でも行なって欲しい。
葉面散布より普通の追肥のほうが肥効効果は高い。毎日やる液肥に1リットル混ぜるだけで、病気にならず、樹が親指サイズの太さになり、花芽のダブルが劇的に増える。
葉面散布はできるだけする
新規就農すると時間がないから葉面散布をする時間をつくるのはなかなか難しい。しかし、葉面をすると健康な樹ができるし、実の見た目とサイズも向上し他の生産者より市場で高く売ることができる。
初期、中期、後期で葉面散布する液肥を使い分ける必要がある。初期はメリット青、中期はメリット青と赤を併用、後期はメリット赤を使うといいだろう。
あと微量要素も補ってあげるとなおいい。ジャットから販売されているクロビカαがいい。(商品欄に書いていない)値段は5000円くらいである。
お盆前にジャンプを追肥
生科研から販売されているジャンプ。
お盆前はなり疲れ、樹勢が落ちる時期になる。この時期にジャンプを追肥すると9月に向けてなり疲れせず樹勢も旺盛になるからおすすめ。20キロを買って、1回で使い切る。不安なら最低でも1回で10キロは追肥して様子をみてるといい。翌日には肥効が感じられる。
中期以降は月に2回リン酸とカリを葉面散布
リン酸とカリは下からの追肥だけでは補えないので、リンカリに特化した葉面散布剤を散布してあげよう。ジャットから販売されている、スーパーpと軽トラがいい。
毎日潅水、毎日追肥
たまにドカやりするのはダメ。毎日潅水して毎日追肥しよう。そのほうが収量が間違いなく上がる。自動潅水を使えば負担は少ないからできる。積極潅水・追肥の手間をかけよう。
<自分のやり方を会得する>
ここまで書いてきた追肥方法はあくまで自分のやり方だ。農家によってやり方は全然違ってくる。ただ、収量の多い農家は他の農家の良いところを積極的にマネをして試してみる。そして、自分の畑にあったやり方に改変していく。実践することが何より重要で自分なりのやり方を会得しないと、トマト栽培はうまくいかない。
試して最初から成功することはほとんどない。成功したとしても毎年の気候でうまくいかないこともある。心が折れそうになることばかりだ。それでも、前より多く収穫でき収量があがると、とても達成感がある。
ミニトマト栽培は他の野菜より難しく手がかかるが、試してみる価値は十分にある。たちあがれないほど失敗したら他のことをすればいいだけ。大きな気持ちで立ち向かおう。