竹箒日記 | ||||||
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2021/8/12 : 無題。(きのこ)■ |
2部6章崩壊編が公開されてから一週間が経過しました。 過去最長のメイン章になってしまいましたが、無事完成した事、 改めてDW開発スタッフの皆さん、サーヴァントデザイン、 背景美術に参加してくれたクリエイターの皆さん、そしてラスト3ヵ月、 「そうなると分かってたよ、はい、なにやればいいの?」 と全面協力してくれたTMスタッフに感謝します。 誰か一人でも欠けていたら達成できなかった、夢のような一大キャンペーンでした。 さて。多くのユーザーさんがクリアされているようなので、 ちょっと早い気もしますが、こちらも全体通しての裏話などを。 『そもそも崩壊編って呼び方、なに?』という疑問。分かります。 6章は前編・後編・崩壊編、の三部構成になっていました。 前編直前SPで『空の境界』に喩えていましたが、 ・前編:空の境界でいう 伽藍の洞 まで ・後編:空の境界でいう 矛盾螺旋 まで ・崩壊編:空の境界でいう 殺人考察(後) まで といった具合です。ラスボスが途中で退場するのも同じですね。 崩壊編にすべてのリソースがいくよう執筆していたのですが、 前編・後編もボリューミーになってしまい、素材も増え、スチルも増え…… 結果、どの編もリッチな、思い入れの深いものになりました。 ダメ元で、メイン作業でパツパツの隣の席の男(社長)に、 「マシュ 花嫁差分 ホシイ。 デキレバ 二週間後ニ ホシイ。 ユルサレヨ ユルサレヨ キノコノ罪ヲ ユルサレヨ」 とテレパシー(物理)を送ったら立ち絵差分じゃなくてまるっと新規、 かつ沢山の表情差分がきた時はワシは心底痺れたよ。 「言ってみるもんだな……。 なら妖精三人組とマイクもいけそうだな……。 BLACKさんに三人組を、ボガードをシモシ君にお願いしよう! そうだ、シモシ君にはマイクもねじこむといいぞぅ! ダ・ヴィンチ担当だしね!」 結果ああなった。 マイクはプロットではモブ妖精の立ち絵だったのですが、 どうしてもピンでほしかった。なので 『モブっぽく見えるけどモブではないラインで。 前編では目立たないけど、崩壊編で大切な意味を持つ』とデザインしてもらいました。 サンキュー、シモシ! 水着ダ・ヴィンチちゃん、楽しみだね! 今回はBGMも通常メイン章の三倍近くあり、 作曲のケータ君はギリギリまで戦ってくれました。 「妖精騎士にはそれぞれバトルBGMを用意してほしい。 崩壊編の○○たちは、そのBGMのアレンジ……というより、 完成形は○○の方。妖精騎士戦はあくまで前哨、と思ってくれ」 「ふむふむ。ランスロとガウェインはそれぞれモチーフ分かりやすいからいいけど、トリスタンは?」 「少女狂想。血まみれの舞踏会。ダンスミュージック、 キラキラ舞踏会、本人は地獄、みたいな。CCCのエゴバトル風味」 「○○の時はボスだからオーケストラにしていいの?」 「しなくていい。『少女が見ている、幸せな夢(踊っている)』なので、 華やかで、スピード感のある曲が好ましいです。 ステージもクライマックスで、客席もみんな見蕩れていて、 “私、生まれてきて良かった!”な感じの。 人生の中でいちばんアがっている……みたいな。まあ全部夢なんだけど」 「ああ、だからステージがグルグルまわってるのか! なるほどねー! でもひとついい? なんでそんなひどい注文してくるの?」 ところで『希望の地』のBGMなんですけど、これ、 実はセイバーウォーズ2の時、最初にあがってきたMAP曲なんです。 ケータ君からこれが上がってきた時、 想定していた6章の最後にあまりにもピッタリだったので 「これ、6章で使うから封印させてください。 アルキャスの宝具はこのBGMのアレンジで、先に出してユーザーの耳に馴染ませたいと思います。 あと最後の最後にこの曲のハートフルなアレンジを使いたいので、その時はよろしくお願いします」 そんなワケで、この2年間、移動中はずっと『希望の地』の BGMを聴きながら春の記憶に思いを馳せていました。 あのBGMは、自分的にスターシーカーな曲なのです。 ……と、こんな調子で書いていたらまた容量オーバーのそしりを 受けるのでパパッと思いつく範囲で小ネタの説明などしていきます。 ・失意の庭の○○○○ 失意の庭の(囚われたモノの名前)で、最後に出てくるヤツはたいてい、 『自分自身、一番つらくて、一番目を背けているコト』を指摘してくだろうなぁ、と 無意識に感じている人物になります。 最後に出てきたオベ公は本人じゃないよ。 ・オークニーのヴィヴィアン 罪を認め、楽園の妖精に愛を注いだ雨の氏族の長。 ヴィヴィアンのあたたかな幼年期。 雨だれの止まない、ほの暗いけれど温かな王城のサンルーム。 楽園の使命ではなく、 誰もが穏やかに暮らせる、童話のような王国を夢見た少女。 ・アヴァロンのキャスター キャスターに春の記憶がないのは『楽園の妖精』として 楽しかった記憶は無かった、与えられなかった、というコト。 もしヴィヴィアンが楽園に帰ってきていたら同じ展開だったかもしれない。 でもモルガンには大切に育てられたオークニーの記憶が、 アルトリアには名なしの森で出会った、はじめての……楽園の妖精の使命とはまったく関係のない……旅の仲間(トモダチ)との記憶。 ・オベロンの回想 30節でオベロンの成り立ちを語っているのはA・A。 朝と夜、それぞれの出だしの「~の気持ちがわかるかい?」はオベロンの語りですが、 それ以降の「三人称での語り」は、聖剣の守護者になってブリテンの事情すべてを知ったA・Aの語りです。 ・奈落の星 30節にある『嵐の中の星』のシーン。 あれは『玉座で消滅した彼女』が、『守護者』になる時の最後の疾走です。 「もう何も考えずにここで○○になればゴールだよ? それ以上頑張ると永遠に頑張る事になるよ?」 という問いかけに対しての選択。 その結果、まあ、時空とか超越してスパッと。 ・マーリン こいつが魔術を教えるとしたら、それは夢の中だけ。 残酷な話だけど、マーリンにとってアルトリアは騎士王のアルトリアなんだ。 ・赤字の選択肢について どっちが正解、とかはありません。 読者は気づいているのに主人公は気づいていない、という乖離はよくないので、 「え、それおかしくない?」「もしかしてそういう事じゃない?」と 思ったユーザーの選択が、最後にカタチになっただけです。 分かりやすくするために色違いにしたんですが、赤字はちょっと禍々しかったですね……。 ・オベロンの最終再臨。 自分も昨夜、最終再臨したんだけど、再臨ボイス中にずっとファンファーレが 鳴っているのを止めてもらいました。11日深夜の更新はたぶん、その変更だと思います。 「そんな事より、僕はなぜか絆6でフレーバーがガラッと変わっちゃうんだ。 どうしてかなー? どうしてだろうねー? きみ、それまでに王子様なフレーバーは見ておくんだぞ☆」 ちなみにナーサリーへのコメントですが、 『一緒に読者なんて○○どもが消えた後、誰の主観も偏見も入らない穏やかな世界で、一緒にお茶会をしないかい?』 と誘ったら笑顔で 『ごめんなさい、素敵な王子様。あたし、読み手のみんなの輝く顔が大好きなの』 と優しい笑顔で告げて去って行くナーサリーの後ろ姿を、 『まあ、そうだろうと思ったよ』 なーんて、皮肉げに笑って、目を細そめて見送っているのです。 ・最後に年表の一部を抜粋 BC.1000 牙の氏族に亜鈴返りが生まれる。星の排熱器官の仔、勇者ライネック。 BC.800 トネリコ、排熱大公ライネックと戦い、勝利。ふたりは友人に。 以後、ライネックは牙の氏族一の長としての立場上、 表だってトネリコの旅には同行しなかったが、陰日向、トネリコの為に力を尽くす事になる。 「楽園の妖精の使命とは相容れないが、トネリコの強さは気に入った」 とは本人の弁。(エクターにはバレバレ) BC.400 ロンディニウムの戴冠式、その前日。調停式。 出席したのはウーサー、トネリコ、エクター、グリム、初代妖精騎士。 ライネックはウーサーが気に入らない(理由は言うまでもない)ので 戴冠式には出席せず、モース狩りと称してひとり西の海岸に。 「……しかし、だ。代理を立てたとはいえ、やはり牙の長が出席しないというのも……問題があるな……」 ライネック、戴冠式を迎えた朝にそう決意してロンディニウムへ。 ふてくされて戻ってきた時、すべては終わっていた。 トネリコを糾弾する氏族たち。立場上トネリコの味方はできず、以後、 ライネックは女王歴までこの時の判断に苦しむ事になる。 「もしオレがいたのなら何か変わっていたのだろうか…… ……いや。 何も変わらなかっただろう。何も。 ブリテンの妖精であるオレでは、トネリコを救う事は、できなかった」 AD.1000 大災厄。モース戦役、始まる。 老いたライネック、死を覚悟した戦いに。 「消え去るがいい、モースの王。 ここはようやく手に入れた、アイツの國だ。……もう決して、奪わせはしない」 牙の氏族のトップが死亡、『次代』が待たれる。 |
2021/8/6 : カメラの外。(きのこ)■ |
走る。走る。 世界が滅びるただ中であるというのに、 私はいま、あきれるほど爽やかだ。 ◆ “予言の子をお願いね、■■■■・■■■。 あなたがつきっきりで守ってあげて。 ああ、それと―――毎日、一日の終わりにどんな旅だったのか、 私に聞かせてもらえるかしら。 立場上、私は一緒には行けないから…… 何があったのか知る事で、せめて同じ気持ちになりたいの” はじめは誇らしげに。 けれど次第に、その行為が何を意味するのか、私はうすうす気づいていた。 気づいた上で報告を続け、戦場には出るなという命令を守り、そして――― 遠く、オックスフォードから。 ロンディニウムの炎を見た。 「―――ああ―――」 償う術はない。そもそも私の責任ではない。 本当に女王軍の襲撃かもしれない。 そう自分に言い聞かせながら、 “機会さえあればロンディニウムのやつらに思い知らせてやる” “なにが円卓の解放軍だ。工場で捨てられた三流品どもが、 選ばれた人間(オレ)たちに並ぶつもりか” ソールズベリーの人間たちの声が、 そのように彼らを焚きつける妖精の声が、頭から離れなかった。 鎮火したロンディニウムを見た時、後ろ脚が鈍くなった。 もう二度と、自由には走れない。 誰に語る事もなく、私は、その事実を受け入れた。 そもそも、妖精國のあり方は、私には難しすぎた。 もっと単純に、ありのままに、自分の性能を行使する世界が良かった。 言葉もなく、差別もなく、競争もなく。 野生のまま、平原を走る生き物で、ありたかった。 風のように走りたかった。 獣のように走りたかった。 私の目的はそれだけ。 ただそれだけの目的が、あの炎を見た時、砕け散った。 だが、最後に機会がやってきた。 やらなくてはならない事だと言い聞かせ、全力で地面を蹴った。 激痛があった。 肉体が、精神が、“いまさら何のつもりだ”と訴える。 私には返す言葉がない。あの勇敢な、勇ましい少女騎士を弔う資格もない。 つい苦笑する。何のつもりだ、もない。 何もないなら、あとはできる事をやるだけだ。 ◆ 走る。走る。 激痛があった。 歓喜があった。 世界が滅びるただ中で、今までいちばん自由な自分があった。 脚が折れれば妖精馬は命を終える。 その強烈な痛みで魂が裂ける。 一日半。馬車を牽いての全力疾走で、どの脚もじき粉砕するだろう。 その痛みを、歓喜に変えて走る。 彼らを海岸まで送り届けるためだけに走る。 希望を隠すのではなく、希望を生かすために走る。 どれほど汚れたものであろうと、 自らを生み、育て、喜びをくれた世界を、愛したブリテンの大地を駆ける。 車輪は壊れ、荷台は外れ、私はひとり、森を走る。 走りながら、体が切り刻まれる音を聞く。 なんという幸福。 なんという赦しだろう。 私は、私が消えるその瞬間(とき)まで、歓びの中にいた。 ―――最期まで、風のように。 |