「今までマスコミの取材を拒否し続けている会長ですが、社内では『熱海の件は前の土地所有者が悪い』と主張しています」(ZENホールディングス関係者)
静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した土石流災害から約1カ月が経過。8月2日現在で死者22名、5名の行方が不明のままだ。
「土石流の原因は不適切な工法で行われた盛り土。大量の産業廃棄物も埋められており、一部が露出してきています」(社会部記者)
この盛り土の土地の所有者が麦島善光氏(85)。建設業や不動産業など9社からなる「ZENホールディングス」の創業者で、800億円もの年間売上を誇るグループの会長を務めている。
「22歳で建設会社を始めた叩き上げで、今も現役バリバリ。『昔アメリカで見たビジネスマンを真似て』と一年中半袖を着ています」(前出・ZENHD関係者)
麦島氏が小田原市の不動産管理会社「新幹線ビルディング」から約40万坪の伊豆山一帯の土地を購入したのは2011年のこと。同社関係者が語る。
「土地は新幹線ビル社が宅地造成の名目で16年前に取得したのですが、ろくに土地改良もしないまま残土や産廃処理の現場にしていた。ただ、麦島さんは“いわくつきの土地”だと知っていましたよ。一緒に下見した時に『ひっどい土地だな』と呆れていましたから」
麦島氏はなぜこんな土地を購入したのか。
「会長は『あの辺りを将来的に観光地化する』と言っていた。安い土地を買い漁り、金を生み出すのが彼の手法。太陽光発電施設を作り、ホテルも建設中です」(前出・ZENHD関係者)
麦島氏は現在、週4日ほどグループの不動産管理会社「ユニホー」の東京支店に早朝から出社。同社は全国で約2万4000件以上の管理物件をオーナーから預かるZENHDの中核企業だ。
「会長お膝元のユニホーは“昭和な会社”で、毎朝社員全員でラジオ体操をして業務がスタートします。会長は高度経済成長期の成功体験を引きずっており、口癖は『今の日本は五等国になった』。モーレツ社員が理想で、このテレワークのご時世に夜9時まで必ず電話番の社員が残らないといけません」(ユニホー元社員)
金曜朝には会長の訓示があり、しきりに「日本を変えたい」と言って社員にハッパをかけている。最近は熱海の土石流についても言及し、「いずれは被害者の救済基金を作りたい」と話したというが、「その発言を額面どおりに受け取った社員はほとんどいません」(別のZENHD関係者)
いったいなぜか。
「会長はとにかくケチなんです。不動産のブローカーがよく訪ねてくるのですが、接待は会社近くの焼鳥屋。安月給のサラリーマンや学生が行く店です」(同前)
前出の元社員が続ける。
「会社に数千万円の利益をもたらした社員に、会長が『お前のボーナスは封筒が立つからな』と期待させたのです。しかし実際の支給額は30万円程度で、その社員はがっかりしていた」
ビジネス面でも麦島氏は窮地に立たされている。
「実は最近、ミャンマーでのインフラ整備への投資で大失敗したのです。『目の黒いうちに立て直す』と躍起になっており、熱海は二の次ではないでしょうか」(前出・ZENHD関係者)
被災住民は8月2日に会見を開き、県や市、麦島氏などに損害賠償請求を検討していることを表明した。
麦島氏の代理人弁護士に被害者救済基金の予定や今後の対応を問うと、「そのような概略の話をしたことは事実のようです。しかし、法的責任を認めるという趣旨ではありません。市、県、第三者委員会の調査結果を待って対応を決めたいと考えています」と回答した。
ユニホーの社内には「やる!!」と大書された額縁が掲げられているという。
source : 週刊文春 2021年8月12日・19日号