店頭にCDが並ぶのを見て、本当に「アンジュルム」の一員になったという実感がわいてくる。アイドルグループの新メンバーに昨年11月になった長野県出身の為永幸音(ためなが・しおん)(17)にとって、初めてのCDとなるトリプルA面シングルが6月に発売された。
■歌詞の全てに共感した新譜
はきはきと受け答えする姿から伝わるのは芯の強さ。「自分を磨くことを忘れず、グループの魅力をたくさんの人にアピールしたい」。まっすぐ前を見つめる瞳が輝く。
アンジュルムは、「モーニング娘。」を輩出し、国内外にファンが多いアイドル集団「ハロー!プロジェクト」(ハロプロ)に所属するグループの一つ。2009年に結成され、14年に改名して今のグループ名に。メンバーの加入や卒業を経て現在は10人で活動する。
新譜はそんな10人の個性と魅力が詰まった1枚だ。「この曲を聴いて頑張ろうと思うことは結構多いですね」と言うのは、スターダスト・レビューのカバー曲「はっきりしようぜ」。コロナ禍の今をリアルに見つめ、「笑える日が来る」と勇気づける。
切ない恋愛ソング「泳げないMermaid(マーメイド)」は、しなやかなダンスが印象的。為永が恋を失ったヒロインを思わせるように苦しげな表情を浮かべ、凜(りん)とした歌声が耳に残る。「『柔らかく歌って』という指示にすぐに対応できなかったのが悔しくて、レコーディング中に泣いてしまうほど苦戦しました」。負けず嫌いな一面がのぞく。
大人びたジャジーな雰囲気が漂う「愛されルートAorB?」は、「真面目はコスパが悪いかも」をはじめ歌詞の全てに共感した。
■グループ加入をたぐりよせたのは 強い熱意
中学1年生の時、家族の勧めでモー娘。の新メンバーを募集するオーディションを受けた。小学1年生からダンスや演技などを学んでいたが結果は不合格。悔しさから動画などを見て研究するうちに、モー娘。のメンバーだった鞘師(さやし)里保に魅了された。「ダンスも歌もすごいうまくて誰よりも輝いているのに親しみやすい性格が魅力的で引かれていきました」
強い熱意を持って翌年、ハロプロのオーディションに再挑戦。最終審査で落選したものの、研修生として活動する道が開けた。毎週末、高速バスで数時間かけて東京までレッスンに通った。
「夢に近づけたのがすごくうれしかった。いろんなことを毎週学べるとわくわくし、憧れの先輩に会えるのも楽しみでした」。公演リハーサルで鞘師のパフォーマンスを直接見た時は、感動で涙があふれて止まらなかった。
ただ、競争が激しいアイドルの世界。成長の手応えを感じられず、自信を失い、スランプに陥ったことも。高校生になると、自分より年下の研修生を前に「若さだけではだめ。スキルを培っていかないといけない焦り」が募った。そんな時期を経て、アンジュルムへの加入が決まる。「幸せすぎて言葉にならないくらい頭が真っ白になった」
■目標は「地元凱旋コンサート」 深い信州への郷土愛
グループ名はフランス語の「天使」と「涙」を組み合わせた造語。「天使のような優しい心で、いろんな涙を一緒に流していこう」という意味が込められる。加入前からグループの仲の良さを感じていた。「メンバー間の愛が大きく、一人一人にいろんな魅力がある。皆さんのいいところをどんどん吸収していきたい」と貪欲だ。
活動の傍ら、信州に戻りたいと常に思ってしまうほど郷土愛は深い。目下の目標は地元での凱旋(がいせん)コンサート。同じく県内出身でモー娘。の羽賀朱音(あかね)(19)と共に「長野でのイベントに出られたら」と夢を描く。
「得意な演技を生かした仕事を通じて、多くの人にアンジュルムを知っていただけたらいいなと思っています」
(河原千春)
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アンジュルム「泳げないMermaid」 Promotion Editは以下のアドレスから動画を見ることができます。
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