1-7-4. 鈴虫でもわかる損益計算書の見方 / A列車で行こう3D攻略情報
ご注意……このページで説明しているのは、ゲーム「A列車で行こう3D」における損益計算書の見方です。一般の会計事務における損益計算書についての説明ではございません。
損益計算書は、その年の会社の業績を表す書類です。英語では"Profit and Loss Statement"などと呼ばれ、よく"P/L"と略されます。
ゲームでは経理部長がまとめておいてくれますが、ある程度は見方がわからないと困ります。
ここでは、だれでもわかるように、極力簡単に見方を説明していきます。
忙しい人のための損益計算書の見方
ぶっちゃけた話、下の3行さえ見ればだいたい掴めます。
下の3行は、「税引前当期純損益」「法人税等」「当期純損益」です。
税引前当期純損益は、その年会社の出した儲けが損より大きいかどうかを示します。プラスなら儲けが大きく、マイナスなら損が大きいです。
法人税等は、次の年度の6月1日に払わなければならない法人税の額です。払うべき税金は法人税だけではないので、これよりもたくさん払う、ととりあえず覚えておいてください。
当期純損益は、法人税を引いた後に利益が手元に残るか否かを表します。ここがプラスなら黒字、マイナスなら赤字です。
要は、この書類はその年に会社が儲けたか、それとも損を出したかを見るものなので、エッセンスはこの3行というワケです。ここさえわかっていればどうにでもなるので、お急ぎの方はここでお帰りいただいても結構です。
各項目の見方
ここからは、上から順に各項目について軽く説明します。
まず売上高。これは会社の本来の事業によって得られた売上の総額です。鉄道会社なので、まずは鉄道やバスの利益が記載されます。そのほか、資源や子会社の売上も書かれます。ここを伸ばすのがプレイの基本です。
続いて売上原価。売上を出すための費用の合計です。鉄道・バスの運行費用や資源の購入費用、子会社の運営費用が含まれます。
建物の建設費や購入費用は、ここで言う「費用」ではありません。たしかに現金を減らして建設・購入するわけですが、現金資産から建物という不動産に形が変わるだけで、資産を失ったわけではないからです。「桃太郎電鉄」をプレイされたことがある方は、物件を買っても総資産が減らないのを思い出してくださるといいでしょう。
よく勘違いされることかと思いますが、現金が減ったら赤字ではなく、きちんと利益を出せていれば、現金が減っても黒字になりうるのです。(ボクも高校生になってやっと理解できた)
売上高から売上原価を引いた額が売上総利益です。
さらにそこから販売費および一般管理費を引いたのが、営業利益です。販売費および一般管理費とは、一般には広告を打ったりする費用などを言います。このゲームでは事業プランの費用や一部の税金が含まれます。
営業利益がマイナスだということは、事業で利益があがっていないということです。駅や子会社の立地、列車の長さや本数、子会社の経営方針などを見直しましょう。
お次は、営業外収益と営業外費用です。これは、本業以外の収益と費用です。収益は、持っている株式の配当や地方自治体からの助成金などです。費用は、支払った利息などです。
なお、前作「A列車で行こうDS」では利息を受け取ることもできました。つまり、資金は銀行に預けているという設定になっており、毎年利子が付いていました。今作にも実装されていれば営業外収益に計上されていたでしょうが、なぜかありません。
営業利益から営業外収益・費用を足し引きしたものが、経常利益です。これは、一時的な収益・費用を除いた会社の業績になります。ここがプラスなら経営はしゃんとしている、って感じです。
特別利益と特別損失は、会社の本業以外の部分で臨時に出た利益・損失です。例えば固定資産売却益は、固定資産(土地or建物or車両)を売るのは鉄道会社の本業以外で、しかも一回限りですよね。毎年出る売上ではないですよね。だからここに計上するのです。
会社の業績を悪化させないで経常利益を減らすのは難しいので、節税がしたいなら特別損失を削るようにしましょう。今作ではそれもムズいけど(後述)。
経常利益から特別利益・損失を足し引きしたら、税引前当期純利益がようやくはじき出せます。後は先程説明した通りです。
減価償却について
販売費および一般管理費の中に、減価償却費というのがあったと思います。どういうものか、ここで説明したいと思います。
先ほど、建物の建設費や購入費用は売上原価に含まれない、と言いました。建物などの価格は費用ではなく、建物そのものという形の資産となります。
でも、建物ってだんだん劣化しますよね。今作には経年劣化という概念があって、建物などはだんだん古くなって運営費が余計にかかったりします。ということは、少しずつ建物の価値が落ちるということですよね。
ここで減価償却という概念の登場です。減価償却とは、建物などが劣化して価値が下がった分を毎年費用として計上(償却と言います)する、というものです。
ふつう、償却期間はその建物などを何年使えるかを基準に考えます。このゲームでは、建物は40年かけて償却するので、毎年価格のだいたい1/40ずつ費用に計上します(厳密にはちょっと違うみたい)。鉄道車両は、10年で償却するようです。JR東日本以上のペースですね。
ではなぜこのような方法をとるのか。例えば最初の年にどどーんと駅ビルをたくさん建てると、結構な費用になるワケです。それをその年の費用にしてしまうと、その年はとんでもない赤字になってしまうかもしれません。そうすると株式公開のタイミングが最低でも1年遅れます。銀行からもお金を借りづらくなります。だから毎年ちょっとずつ費用として計上することで、毎年の損益を一定になるようにして、こういう事態を防ぐのです。
では、償却が終わる前に建物を撤去してしまった場合はどうなるでしょう。まだ残っている部分は、固定資産処分損としてその年の費用になります。
少々ややこしいかもしれませんが、メリットがあるからこそ、このようにするのです。
まあ、おかげさんで税金減らすの難しくなりましたが。(前作では売却・処分した年に費用(固定資産処分損)になってた)
繰延資産償却も同様で、高額なプロジェクトの経費を1年にまとめて費用にするのではなく、何年かかけて償却するのです。
結構リアルなんです
ここまで書いてきたことの多くは、実は会社法の教科書に書いてあることです。このゲームの損益計算書は、結構リアルなんです。
なので、このゲームの損益計算書の見方を理解できれば、案外いい経理の勉強になっちゃうんです。簿記の資格を取りたい方にオススメ?
ただ、リアルであるがゆえに、ふだん経理に触れない方にはわかりづらいです。前作はリアルさに欠ける反面、非常にわかりやすかったのですがね。
このページの解説をお読みいただいても理解できなければ、ゲームで損益計算書を表示させて各項目をタッチして経理部長の説明を聞くといいでしょう。
次のページでは、もうひとつの計算書類である貸借対照表について説明します。今回の説明でわからないことがあっても、貸借対照表の説明も合わせてご覧になることでわかるかもしれません。