使うほどに味わい深さの増す、日本製の上質な皮革製品。その製造・販売を行うのが「ハシモト産業」(大阪市天王寺区)だ。革を活かしたモノづくりに情熱を燃やす、若きクリエイターたちの支援も行っている。時間・原料コストを惜しまず、上質な革製品を作ることにこだわり続ける、橋本信一社長の目指すミライについて聞いた。
ミライについて語る橋本信一社長
革の良さを広めることが目的です。中国など、海外の工場で安価な商品が大量生産されるようになったいま、革の価値は下がる一方です。しかし、1枚1枚丁寧に加工した革は、使うほどに風合いが深まり長く愛用できる。そうした上質な製品の良さを広め、革の価値を高めたいのです。
30年ほど前、イタリアの鞄専門店で、店主に「10年後の自分が、その鞄を持てるかどうかで選べばいい」とアドバイスを受けました。それは、「10年は使える」という自信の表れ。当時、日本の服飾業界は、表面だけを真似する“金メッキ”と揶揄されていたこともあり、ファッションの本場で認められる革を作りたいと強く思いましたね。
革には、動物の皮を扱いやすく加工する「なめし」という行程があります。その手法として現在主流となっているのが、ドラム式洗濯機のような機械を使った方法です。これなら5時間程度でなめすことができますが、革の繊維が破壊され、型崩れの早い製品になってしまう。そこで、世界でも数少ない「タンニンなめし」製法で作る、「栃木レザー」をプロデュースしました。
いくつもの大きなプール槽(ピット槽)に、タンニンという薬剤を濃度別に入れ、原皮を1枚ずつ順番に漬け込みながら加工していく方法で、1枚の革をなめすのに最低1ヶ月はかかります。しかし、繊維がしっかりと残ったこの革は、ヨーロッパの高級ブランドが視察に来るほど、海外でも高い評価を受けています。
また、上質な革を使い、こだわりの商品を発信したいというクリエイターには、パーツづくりなどの加工を支援。商品が支持され、多くの人材を抱える会社に成長したクリエイターもいます。
手間ひまかけて作られた上質の革を、海外に展開していきたいですね。今年の9月には、イタリアの革製品を扱う展示会への出展も決まりました。メイド・イン・ジャパンの革製品が、より世界に認められることで、革への価値観を高めたいと思っています。
また、日本の革産業は、原料である動物の畜産業を含め「キツい」「汚い」「臭い」の3K業界と言われ、後継者不足に悩まされています。革の価値が高まることで、この業界に興味を持つ若い世代が増えてくれればと願っています。
上質な革の良さに気づく人たちが増え、革産業が盛り上がること。それが理想のミライです。
企業/団体名 | ハシモト産業株式会社 |
---|---|
代表者 | 橋本 信一 |
所在地 | 〒543-0075 大阪市天王寺区夕陽丘町3-21 |
電話番号 | 06-6771-6911 |
従業員数 | 30名 (※パート・アルバイトを含) |
平均年齢 | 40歳 (※パート・アルバイトを含) |
URL | http://www.lfactory.com/ |
事業内容 | 皮革製品の製造販売・各種テープ製造販売 |