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無欲の聖女は金にときめく 作者:中村 颯希

第三部(完結編)

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19.レオ、珠の守護者と話す(後)

 クール系イケメンが、全力で下ネタに乗っかってくるノリのよさを見せたことにも驚いたが――


『ふ……腐蝕!? 腐っているということですか!? 我が……って、あなたの、その、タマが……!?』

『ああ。――なるほど? 症状の具体までは見通せなかったということか』


 まさかと思いながらの確認をあっさりと肯定されて、レオは愕然とした。

 サフィータはこちらを検分するような視線を寄越していたが、正直それどころではない。


(ど……どうしよ……。全然狙ってなかったのに、偶然にもこの人がそういった症状に苦しんでたなんて……)


 かつてレーナは、「暴言封印の魔術を解いたら解いたで、誤解の規模が拡大されそう」との懸念を抱いていたが、それはある意味で大正解だった。

 お下劣な言葉でも間引いてくれないエランド語を用いたばかりに、今とんでもない勘違いが生まれようとしているのだから。


 期せずして人の地雷を踏んでしまったと青ざめているレオを、サフィータは強い視線で見据えた。


『腐蝕とまでは気付かずとも、珠が弱り、失われかけていること自体は見通した。主催者側がそのような手落ちを許す不能ならば、儀式など完遂できまいと踏んで――それで、光の精霊が顕現するはずがないと思うからこそ、そなたはあれを金の精霊だなどと難癖をつけるのだな?』

『え、いえ、あの……』


 まくし立てられて、レオはパニくった。

 パニくりながらも、とにかく反論しようと必死で口を開いた。


 自分はあんたのタマの状態など見通した覚えはないんです。

 それに、仮にタマが弱っていたとしても、それを「不能」などという無神経な言い方で詰るつもりもありません。

 ついでに言えば、自分が先ほど金の精霊に見えたと言ったのは、難癖だなんてことではなく、単に守銭奴フィルターを発動したら、光の精霊だって金の精霊に見えるというだけなんです。


 どれから手を付けるべきかと一瞬悩むが、その隙に、同じ男として一番気になった点についての考えが、勝手に喉から言葉となって滑り出てしまう。


『あの……! 別に、タマが、その、腐ってしまったからといって、不能ということではないというか……。そこまで、ご自分を追い詰めることはないと思います……!』

『はっ』


 だが、その渾身のフォローは、嘲るような声とともに退けられてしまった。


『なにを言う……! そなた、ことの重大さはわかっているのか? なんといっても至宝の珠――これを失えば、エランドそのものの存続も危ういのだぞ』

『そ……っ。それは、そうかも、しれませんが……』


 たしかに、元とはいえ王子のタマがアレしてしまったら、世継ぎ問題的にエランドの存続も危ういのかもしれない。

 安易な慰めすら躊躇われ、言葉を失っているレオに、サフィータは血を吐くような叫びを漏らした。


『私はこの名に懸けて――守護者(マナシリウス)の名に懸けて、なんとしても至宝を守らねばならなかったというのに……!』


 レオはそこではたと、彼のフルネームを思い出した。

 サフィータ・マナシリウス・アル・エランド。


『サフィー、タマナシ……』


 なんという宿命を帯びた名前だろう。


 つい微妙な思いがそのまま表情に出ていたらしく――どうも香のせいか、先ほどから取り繕うことができずに困る――、見とがめたサフィータがそれを遮り、ぎっとこちらを睨みつけてきた。


『なれなれしく名を呼んで……慰めでもするつもりか? だが、私の苦悩がそなたにわかるものか。珠だ……! 我々には、珠が必要なのだ……!』

『わ、わかりますよ……! 必要ですよね……! そうですよね……!』


 男同士の理解を求められたものと思ったレオは、必死に頷いた。

 実はこの時点で、レオはかなりサフィータに同情的になっていた。


 タマを失う、ないし失いかける恐怖というのは、それを経験した者にしかわからない。

 かつて手術台に縛り付けられたときのあの絶望を、彼は現在進行形で味わっているのかと思うと、自然に憐憫の情が湧き出てくるのだった。


 自分は幸い救われた。

 だが、彼に救いは訪れなかったのだ。


 しかし、その相槌を聞いたサフィータはゆがんだ笑みを浮かべ、ぐいと身を乗り出してきた。


『は……先ほどから、随分と親身に慰めているつもりのようだが、わかっているのか……? これは、そなたの国のしでかしたことが原因なのだと……!』

『――……え?』


 まさかの展開である。

 サフィータ・弱っタマ問題が、なぜヴァイツにつながるのかがさっぱり読めず、レオは怪訝な思いで眉を寄せた。


 戸惑ったように瞳を揺らす少女に向かって、サフィータは、毒を注ぎ込むかのように囁いた。


『至宝の珠はな……。先の大戦時、野蛮にもこの聖堂を蹂躙したヴァイツの金剣王が――当時はまだ皇子だったが――魔力を揮い、それを浴びたことにより腐蝕したのだ……!』

『え……!?』

『聖なる精霊力と、龍の血からなる魔力は相容れぬ。そなたとて、聞いたことはあるだろう?』


 そのときレオの脳裏に、こたびのエランド行きに備え、様々な知識を詰め込んでくれたナターリアの教えがよみがえった。

 なぜ契約祭の最中は魔力を行使できないのかと尋ねたレオに対し、彼女はこう答えていた。

 魔力は強い精霊力に対して毒のような作用を持つのだと。時には血の一滴で相手の意識を奪うことすらあり、だからその「忌まわしい」力を忌避した精霊が、己の権威が最も高まる契約祭の間、それを退けるのだと。


 その時なぜかナターリアが顔を赤らめていたのが不思議だったのだが、今その理由がわかった。

 彼女は、某亡国の王子に降りかかった悲劇を思い、淑女らしく赤面していたのだ。


 もちろんナターリアは、実際のところグスタフとのやり取りを思い出して、ばつの悪さにムズムズしていただけだったのだが、それを知らぬレオは、サフィータが魔力によって大切なタマを傷つけられたのだと、すっかり信じ込んでしまった。

 しかし、よりによって局所に魔力を浴びるなど、いったい彼らはどんな状況にあったというのか。


『いったいどうしてそんな……』

『は、賢王と誉れの高い金剣王が、聖堂で魔力を振るう暴挙に出たとは信じられぬか? だが事実だ。かの王は、龍徴とかいう金の剣を引き抜き、それに禍々しい魔力をまとわせると、大きく振り上げ――』

『ま、待って! 具体の描写は割愛の方向でお願いします!』


 サフィータの苦しみは、できるなら癒してあげたい。

 だが、似たような経験をした者として、それ以上の生々しい再現を聞くのは断固ごめんだった。


『ふ……。聞くに堪えぬ所業に、恐ろしくなったか?』


 両耳を押さえ、小刻みに震えている少女に、サフィータは罪を突きつけてやるつもりで囁きかけた。


『どうだ、安易な慰めなど口にできぬ立場だと、理解しただろう。慰められれば、私がおまえに感謝を捧げるとでも思ったか。は! 実際には、そんな傲慢を告げる女など、成人していればこの場で滅茶苦茶に穢してやったろうよ』

『いやどうやって!?』


 レオは心底びっくりした。

 エランド語のその手の言い回しが、性的なことを指すというのは、官能小説のお陰で理解しているが――そして、そんなことを言ってしまうサフィータにはドン引きだが――、純粋に、物理的に、不可能だろうと思ったためだ。


(これって、この人なりの自虐ネタなの!? ツッコミ待ち!? やべえ、ヴァイツ人として恨まれるならまだしも、自虐に走られちゃ、掛ける言葉も見つかんねえぜ……)


 フレンドリーに『いや無理だろ!』とツッコむには、彼の抱える現実は痛々しすぎた。

 しかしそれを、その手の表現も理解できないほど初心な反応、と取ったサフィータは、意表を突かれたように黙り込んだ。


 少女は心底戸惑ったというように、眉を下げてこちらを見つめている。

 その、穢れを知らぬ水晶のような瞳を見て、さすがの彼も、冷水を浴びたかの心地を覚えた。

 いくら激していたからといって、こんな少女に対して向けるべき発言ではなかった。


『……そなた――』

『あの』


 だが、謝罪を口にすべきか逡巡しているうちに、相手の方が、なにかを覚悟したかのように頷き、話しかけてきた。


『余計なお世話かもしれませんが――もし、自虐の思いからそんなことを言うのなら、どうかそんな考えは捨ててしまってください』

『……なんだと?』


 意味を捉え損ね、低く聞き返す。だが少女は、サフィータの鋭い視線にも怯むことなく、きゅっと拳を握り締め、こちらを見据えた。


『その……確かに、タマの問題は重大だし、ヴァイツに対する恨み骨髄というのも、その通りでしょう。ですが自分には、あなたのその自虐的な様子のほうが気に掛かります』

『自虐的、だと……?』

『気付いていませんか? あなたはヴァイツを恨むようなことを言いますが、それ以上に、タマを弱らせてしまったご自身に、無能感というか……自責の念を抱いているようです。それで時々口にする自虐的な発言が、自分にはすごく気になるんです』


 レオは必死だった。

 なんだかこのサフィータという男が放っておけなかった。


 だって彼は、ありえたかもしれないレオの姿だ。

 あのときブルーノが駆けつけてくれなかったら、自分だってタマを失い、陰鬱としたり、攻撃的になったり、自虐ネタに走って他人を困惑させていたかもしれない。


 名前にまで過酷な宿命を込められてしまっているなんて、あんまりだ。

 ついでに言えば、皇子という存在に苦しめられているあたりも、なんだか似通っている。


 そう思うと、もはや彼のことが他人とは思えず、なんとかサフィータの苦悩をやわらげてやりたいと思うのだった。


 驚いたようにこちらを見つめているサフィータに向かって、レオは真剣な表情で続けた。


『タマを失ってしまったとしても、どうか絶望だけに囚われないでください。自分を責めてはいけません。自虐に走るより、――そうですね、例えばもっと、周囲を見回してみてください』

『周囲だと……?』

『はい』


 話しながら、レオはあることを思い出していた。


 どうもこの展開、なにか覚えがあると思ったら、先日グスタフとも似たようなやり取りを交わしていたのだ。

 あの時も、なぜかグスタフの秘めていたトラウマを刺激してしまい、彼が隠していた衝撃の事実を明らかにしてしまったのだった。

 こうした巡り合わせが続くのは不思議だが、もしかしたらそれだけ、世の中に悩みを抱えている人は多いのかもしれない。


(肉食に見えるグスタフ先生は賢者候補だし、モテそうに見えるカイは女になりたい願望の持ち主だし、男前のオスカー先輩は薄毛予備軍だし、爽やかに見える皇子は腹黒い超危険人物。考えてみりゃ、みんななにかしら、悩みやら裏やらを抱えてるってことだよな……)


 人生勝ち組に見えるイケメンに限って、その手の秘密を抱えていることに思い至り、レオは世の真理を垣間見た思いだった。


『あなただけが、秘密を抱えていると思っているかもしれません。でも、そうではないんです。みんな、誰にも言えないような秘密を抱えている。表面上は輝かしく見える人ほど、裏があったりするんです』

『なんだと?』

『にわかには信じられないかもしれません。ですが、それがこの世の真理です。どうか今一度冷静になって、よくよく、じっくり、目を配ってみてください。そうしたら、きっとあなた自身救われるはずです』


 なかには、サフィータよりもひどい境遇の人もいるかもしれない。

 傷の舐め合いを推奨するわけではないが、自分だけではないという事実認識は、きっと彼に余裕をくれるはずだ。


『そなたはいったい、なにを言っているのだ……? 「裏」というのは――』


 こちらの滲ませている真実のオーラに気圧されたのか、サフィータが戸惑ったように眉を寄せる。

 レオは、プライバシーの観点から詳細を語ることができないのを残念に思いつつ、彼を励ますつもりで、そっとその手を取った。


『私が見つけてしまったその「裏」については、私からはお話しすることはできません。ですが、あなたならきっと、この世の真実にたどり着けるものと信じています』

『そなた……』


 なにか思うことでもあったのか、サフィータは考え込むようなそぶりを見せた。

 壁際に追い詰めてくる気配がやや緩んだので、その隙にするりと脇を通り抜け、ドアの側に出る。

 縄抜けならぬ、壁ドン抜けは、そろそろ十八番になりつつあるところだ。


 もう少しカウンセリングを続けてもよいが、今は相手も心を整理したいタイミングだろう。

 というか、懺悔の香とやらが残っているせいか、これ以上この場にいては、うっかり相手を傷つける発言をしてしまいそうでもある。

 レオは早々にこの場を立ち去ることにした。


『お一人でじっくり考える時間も必要でしょう。自分は一度、失礼します。必要ならいつでも呼んでください』


 そう告げると、小柄な体格を活かして、するりと祈りの間を退散する。

 後には、呆然とした表情で佇むサフィータが残された。


『――いったい、どういうことだ……』


 彼は、無意識に持ち上げていた右手を、己の額に押し当てる。

 その脳裏には、まっすぐ射抜くようにこちらを見つめる少女の姿が刻みつけられているかのようだった。


 真剣な表情で話に聞き入っていた少女。

 珠の腐蝕について聞く際には、整った眉をつらそうに寄せ、瞳には深い同情の色を浮かべていた。

 サフィータの話に青褪めていた彼女は、こちらの境遇に対して、計算などではなく真実心を痛めていたように見える――いや、懺悔の香を嗅がせていたのだ、間違いなく、あれは彼女の本心から湧き出る行動だったのだろう。


(とすれば、あの娘は、精霊におもねるために貧民を褒め上げる、計算高い娘などではなく……真に慈愛深い精神の持ち主ということか……?)


 もしかしたら、自分は少女の人物像を見誤っていたのかもしれない。

 それ自体も、サフィータの心にさざ波のような震えを走らせたが、それ以上に、彼に衝撃をもたらしたことがあった。


(真実を見通す、ハーケンベルグの紫瞳……)


 布で覆い隠していたにも関わらず、至宝の珠が失われつつあることを見抜き、それがもたらす絶望を案じていた少女。

 それに対してサフィータが鬱屈させていた、自責の念や無力感を見抜いた少女。

 噂や流言などではなく、少女が本当に「真実を見通す瞳」を持ち合わせていることは間違いない。


(そんな、真実を見抜く娘が、今なんと言った――?)


 自分を責めるよりも、周囲を見渡せと。

 輝かしく見える人物にこそ、「裏」があると。


(それはいったい、どういう意味だ)


 ひどく曖昧な物言い。

 だが、彼女は一貫して、こうも言っていた。


 ――自分には、あの精霊は金の精霊に見える、と。


 讃頌の儀に顕現した、光の精霊。

 アリル・アドが、珠の腐蝕にもかかわらず、懸命に呼び出してくれた、光の精霊であるはずの、存在。

 儀式に難癖をつけるためではなく、真に、彼女にはあれが、金の精霊に見えていたのだとしたら――?


『――……まさか』


 脳裏でひっそりと繋がりはじめた、ある恐ろしい仮説に、サフィータは無意識にかぶりを振った。

 まさか。

 そんな。

 そんなはずはない。


 馬鹿らしい、と口の端を釣り上げるが、それは笑みのできそこないのように、ぎこちなく唇を引きつらせただけだった。


『……馬鹿らしい』


 代わりに、声に出して言ってみる。

 異国の、それも精霊に不敬を働いた国の娘の言葉を信じ、忠臣を疑うなど、あってはならないことだ。


(だが……)


 ぼんやりと彷徨わせていた視線が、ある物を捉える。

 それは、静かに煙をたなびかせている、小ぶりな香炉だった。


 懺悔の香。

 人の口から、あらゆる嘘と駆け引きを奪う、エランドの技術の粋。


 少女には、たしかにこの香を嗅がせた。

 その口が紡ぐ言葉には、どんな虚飾も混ざらぬはずだった。

 実際、少女の紫色の瞳には、深い慈愛と、真実の光だけが浮かんでいた――。


 ひやり、と、心臓の上を冷たいものが走る。

 今まで考えていなかった――いや、努めて考えずにいた、小さな疑問の芽が、急激に頭を持ち上げてくるのを、彼は感じた。


 依り代を穢されたにもかかわらず、光の精霊は顕現させられるとアリル・アドが確約できたのは、なぜだ。

 ヴァイツの魔力に腐蝕させられたとの説を精霊にぶつけ、直接精霊からヴァイツに罰を与えるよう仕向けないのは、なぜだ。

 いくら慈愛の存在とはいえ、依り代を穢されたはずの光の精霊が、ヴァイツの巫女にとびきりの祝福を授けようというのは、なぜだ――。


 ひとつひとつ、自分で納得した事情があったはずだった。

 だが、こうして並べ立ててみると、それらはいかにも不自然で、無理があった。


 そして、最大の疑問は。


(今まで私は、なぜこうした疑問を、抱かなかった……?)


 ぱた、とおちた手で、ゆるくこぶしを握る。

 と、そのとき、


『……失礼いたします』


 祈りの間の扉を叩く者があった。

 無言で振り向いてみれば、そこにいたのは、緊張で顔を強張らせたふたりの女――銀貨三枚で買った、貧民街出身の女官たちであった。


『……不敬だ。ここは、マナシリウスに連なる者の祈りの間であるぞ』


 威嚇するように低く告げると、カジェ、と名乗った年上の女のほうが、口を引き結んで一歩、部屋の中に踏み入った。


『……ご慈悲を。あたしたちとて、一度はマナシリウスのために身を捧げんとした以上、連なる者の内訳に入れていただいたって、いいじゃありませんか』

『痴れ事を』

『大導師様。どうぞ、あたしたちの懺悔をお聞き入れください』


 切り捨てると、今度はスーリヤと名乗る年若い娘のほうが、真剣な顔であるものを突き出してきた。


『懺悔だと?』

『ええ。わずかな手付金と、銀貨三枚ぽっちの報酬につられて、光の精霊の生き写しのような少女を傷つけようとした、愚かなあたしたちの懺悔を』


 粗末な麻袋の中身は、彼女たちの一か月分の給金くらいにはなる、銅貨であった。

 カジェは、そのきつい目元をさらに釣り上げ、スーリヤの手に己の手を添えると、ぐいと麻袋をサフィータに押し付けた。


『あたしたちに使いをやったのは、あなた様でしょう? ならば、あなた様本人にこれはお返しするよ』

『…………』

『だから、代わりに聞いてくれたっていいでしょう? あたしたちがどれだけ重い罪を犯そうとしていたか。……あの子がどれだけ清らかな魂の持ち主で、すでにどれだけ厳しい試練にさらされてきたのかを』

『試練だと……?』


 顔を上げたサフィータに、カジェたちは意を迎えるように頷いた。

 そうして、彼女たちはその場に跪き、『すべての真実を、精霊の御心と導師様の胸の内だけに』と、懺悔の決まり文句を口にしてから、重々しく語りはじめた。


 清貧の心を持ち、慈愛深く聡明な少女が、どんな壮絶な過去を乗り越えてきたかということを。

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