やめて欲しい質問

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外来に通院していると、様々な疑問や不安が生じるものであり、色々な質問が来ます。

もちろん疑問点を抱えたまま検査や治療を進めるのはよくないので、聞きたいことは遠慮なく存分にご質問いただきたいのですが、時々、困った質問が来ます。

 

例えば、妊娠中で胎児が少し小さめだった時。

猫「赤ちゃんちょっと小さくないですか?」

ペンギン「まあでも心拍も見えているし、これから成長してきますよ」

猫「でも、妊娠判定の時に数値も低かったし」

ペンギン「4週2日で100あれば、問題なく出産される方もたくさんおられますよ。8で出産に至った方もおられます」

猫「でも、その方ってお若いんじゃないですか?私もう〇〇歳ですよ?」

(・・・あの、不安な気持ちはよく分かりますが、良くない材料全部医師にぶつけても何もいいことないです。不安な気持ちに同調すれば、より落ち込まれるだろうし、かといって励ませば否定するし、私どうすればよいのでしょう。)

 

体外受精採卵周期中、卵胞発育がよくなくてキャンセルになった時

ペンギン「今月は育ちがあんまりよくないので、いったんリセットして次の周期に期待しましょう」

猫「あの、私もう卵胞育たないんでしょうか」

ペンギン「今月は育ちませんでしたが来月は育つかもしれませんから、それに期待しましょう」

猫「でも、こないだAMH再検したらかなり下がってたし、先月もキャンセルになりました」

ペンギン「調子がよくない周期が数周期続いても、また調子が戻ることもありますよ」

猫「あ~もうどうしたらよいか分からない」

(・・・どうしたらって、調子が戻ることもあるし来月に期待しましょう、って今申し上げましたよね。。。)

 

 

いえ、不安な気持ちを医師や看護師にぶつけていただくのは大切なことです。そういった気持ちを受け止めるのも私たちの仕事で、そういう質問するなというわけではありません。

 

家族にこうした気持ちをぶつけても、困られてしまうか、いつまでそんなことを言っているのだ、などと言われてしまうこともあるので、医師や看護師にお気持ちを表明していただくことは大切なことです。

 

上記の会話の時の患者さんの心理状態は、自分の状態をすごくよくないと思っている患者さんが、医療従事者から思った以上に励まされた時、「本当はすごく状態が悪いのに、隠されているのではないか、表面上励ましたり慰めてはくれているけど、きっと全然ダメなんだ」というお気持ちになられることがあるというものです。それは、すごく自然なことであり、普通のことだと思います。

 

ただ、医師がいくら励ましても慰めても全く取り付く島がなく堂々巡りになることもあり、そうすると私たちもどうしてよいか分からなくなります。

 

医師から適切な方針が示されている前提であれば、自分の状態がよくないことの確認をどれほどしたところで治療上のメリットは全くありません。私たちも困ってしまうし、必要以上に不幸確認したところでますます自分の気持ちを追い詰めていくだけです。気にしてもどうにもならないことを気にし続けるのは、いいこと何もないのでやめたほうがよいです。

 

 

治療を継続するかどうかそのものを悩み始めていて、その相談ということであればまた話は別です。しかし、当面は妊娠継続することを期待し、また治療継続するのであれば、やはり医師・患者が協力してより良い方向を向いていくことが必要です。

 

注目度上げるために題名には「やめて欲しい質問」と書きましたが、こういう質問をして欲しくないということではないのです。しかし、これで終わってしまうと下を向いたまま帰宅することになってしまいます。できることなら、ある程度のところで気持ちを切り替えて、「そうですね、またうまくいくといいですね、頑張ります」と(まではっきり仰らなくてもよいですが、そういう気持ちになっていただいて)、少し頑張って医師の励ましに応えていただくことで、それが言霊ともなるかも知れないし、私たちも応援しやすくなります。

 

医療は多くの場合、医療従事者が高度な知識や技術、様々なサポートを提供する場面が多いのですが、医療従事者と患者さんが協力して治療を組み立てていくという側面もあります。このように書くと、自分たちのことは棚に上げて治療の協力体制について患者側に責任を押し付けるのか、などと言われそうですが、そういうことではなく、私たち医療従事者も襟を正すべきところはたくさんあると思います。しかし、一緒に治療をしていくということをお互いに忘れないようにしていくことは、やはり大切なのかなと思います。

 

なお、上記で言えば、医師ペンギンはもう少し共感的に説明したほうがbetterなのですが、あくまでも例文ということでご了承ください。念のため。

 

ということで、今日は、「やめて欲しい質問」と題して書いてみました。次回もお楽しみに!