昔から、「みんながまだ知らない、価値あるものを伝えるのが好きだった」という久保田さんは、学生時代はフリーペーパーを制作し、公務員時代も情報発信する仕事をしていた。
「経歴だけ見るといろんなことに手を出しているように見えますが、根底には価値ある情報を伝えたいという思いがずっとあったのかもしれません」と、冷静に振り返る。
2014年3月に立ち上げたもぐらゲームスでは、いわゆる「AAAタイトル」(トリプルエータイトル)と呼ばれるメジャーゲームではなく、インディーゲームやフリーゲームを中心に、隠れた名作を“発掘”する日々を過ごした。
もぐらゲームスは、中高の時代の同級生でネトゲで苦楽を共にしてきたNoah(のあ)さんと2人で立ち上げた。もぐらゲームスの立ち上げから1年、2015年2月にMogura VRを立ち上げ、2016年8月に法人化している。
そして、VRとの運命的な出会いは、2014年に開催されたインディーゲームの祭典「BitSummit 2014」にさかのぼる。そこで、Oculus RiftとLeap Motion(手の動きで操作できるデバイス)に対応する「BLAST BUSTER」(ブラストバスター)というシューティングゲームで宇宙空間に没入し、引き込まれた。
デバイスが手の動きを読み取り、指の先から鮮やかなレーザービームが次々と飛び出す。「これはすごいものが出てきた」――。
当時のVRは、Oculus Riftの開発者向けキット「DK1」(2012~2014年)を使い、niconicoなどで面白いコンテンツが共有されたりと、「まだまだマイナーなジャンルで、インディーのノリ」だった。まだVRという言葉すら浸透していなかった頃。VRは、「隠れた宝石を掘り出す」というもぐらゲームスのコンセプトにもぴったりだ。
しかし、同時期にソニー・コンピュータエンタテインメントが今のPlayStation VRの元となる「Project Morpheus」を開発者イベント「GDC」(米サンフランシスコ)で披露し、米Facebookが米Oculus VRの買収が合意に達したと発表するなど、VRは急速にマイナーの枠からはみ出していった。
「もうVRはインディー、そしてゲームという1ジャンルの枠に収まらないなと(笑)。もぐらゲームスで扱うのが厳しくなったので、VRをスピンアウトして2015年にMogura VRを立ち上げました。今と違ってVRなんかビジネスにならないという風潮でしたが、これはさらに大きなムーブメントになるぞと思いましたね」。
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