東京・浅草のすきやきの老舗「ちんや」が8月15日で閉店することになった。雷門の並びで明治の初めから文明開化の象徴だったすき焼きを提供し続けて140年余。レトロが売りの建物は老朽化し、コロナ禍で客足が激減するなか改修もままならず、歴史にいったん幕を下ろすことにした。6代目店主の住吉史彦さん(55)は「すきやきとは元来、人との距離が縮まり密になるもの。そこが素晴らしさだったのに、コロナ禍では仇(あだ)となった」と残念がる。
「ちんや」は江戸時代、諸大名や豪商に「ペット」としての犬の狆(ちん)などを納め、獣医も兼ねていた時の屋号に由来する。1880(明治13)年に料理屋に転じてからも、親しまれた屋号を使い続けてきた。
明治維新後、福沢諭吉ら文化人が好んで牛鍋屋に通い、牛鍋はハイカラな食べ物として人気を博した。明治10年には浅草を中心に東京には500軒近い牛鍋屋店があったとされる。その後、関西風の「すき焼き」との呼び名が広まり、ちんやも1903年にすき焼き専門店となった。いまも店内には「開化絵」と呼ばれる文明開化の文物を描いた浮世絵が多く飾られている。
店主自ら「下足番」
2001年から店主を務める…
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- 常見陽平千葉商科大学准教授・働き方評論家2021年07月12日23時17分 投稿
【視点】下町(墨田区)に15年住んだ者として発言します。大変に残念です。悲しいです。
「ちんや」に年に1度くらい、たまの贅沢でお邪魔するのが大変に楽しみでした。雷門のすぐ近くにあり、歴史を感じる建物で、素敵でした。美味しいものを食べるだけでなく、歴史や文化とふれあっている体験がたまりませんでした。
この記事では触れられていませんが、数年前に肉のサシを最適化する「適サシ宣言」を行ったことでも話題となりました。ちんやに行くということは、すき焼きを食べる以上の体験でした。
新型コロナウイルスショックはこのように、飲食店にダメージを与え、日本の食文化を少しずつ消していきます。いつの間にか、飲食店が敵視されている状態が残念です。西村大臣はじめ、政治家たちの発言はときに無神経であり、適切な対応とは言えません。そして、飲食店が苦境に陥るということは、企業が一つ、消えていく以上の何か、文化が消えていく、体験する場が失われていくということなのだと理解しています。
食べ物に関する恨みは恐ろしいです。日本における暴動や炎上も、意外にも食べ物に起因するものが多いではないですか。総選挙でも、飲食店関係者の怒りが燎原の火のように広がり、自民党の命取りになるかもしれません。
柏木友紀記者の「歴史にいったん幕を下ろすことにした」という記述を信じ、復活を祈っています。最後にお邪魔したのは、昨年の2月でした。店員さんと、浅草もお客さんが減ってきましたねと話したのを覚えています。皮肉なことに、そうであるがゆえに予約は取りやすかったのですが。その後、ずっとサボっていたことを後悔しています。閉店前に、お店にお邪魔したいと思っています。ありがとうございました。…続きを読む
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