一方、武漢ウイルス研究所は石氏を中心にして、2013年からコロナウイルスを抽出する研究が始まっていた。6月25日公開コラムで書いたように、研究資金の一部は米国の国立衛生研究所(NIH)や国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)から、ニューヨークの非営利団体であるエコヘルス・アライアンスを通じて、武漢ウイルス研究所に流れていた(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84497)。
報告書は「石氏とその仲間は、米国の資金とピーター・ダスザック氏(注・エコヘルス・アライアンス代表)の支援を得て、パンデミックが始まる前の2018年から19年にかけて、コロナウイルスを遺伝子的に操作し、ヒトの抗体システムに試す実験を盛んに行っていた」と記している。米国納税者の資金が中国の生物兵器研究に使われていたのである。
石氏は感染が広がり始めると、研究所の関与を隠蔽する工作に関わった。最初の試みは、2020年1月20日に科学専門誌「ネイチャー」に発表した論文である(https://www.nature.com/articles/s41586-020-2012-7)。
石氏は、論文で「雲南省の洞窟にいるキクガシラコウモリから抽出された『RaTG13』というウイルスが、新型コロナウイルスの遺伝子配列と96.2%同じであり、もっとも近い」と主張した。つまり「RaTG13こそが、新型コロナは自然由来であることを示す証拠」と指摘したのだ。
ところが、この論文が墓穴を掘ってしまう。
RaTG13について、専門家から多くの疑問が指摘され、彼女は10カ月後の20年11月17日、同じネイチャー誌で「RaTG13は、実は2012年から13年にかけて採集した『ID4991』というウイルスだった。また、完全な遺伝子配列が得られたのは、最初の論文に書いた2020年1月ではなく、2018年だった」と修正した(https://www.nature.com/articles/s41586-020-2951-z)。
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