お薬の飲み合わせ

確かに食べ物と薬との飲み合わせは注意しなくてはならないものです。
しかし日常で食べている物と薬との組合せは、無際限にあると同時に、例えば10000件あるとしてそれを臨床的に調査して結果を出そうとしても、すべてを証明するのは至難のわざと言ってよいと思います。

ここでは、今まで一般的に多く報告されている注意すべきもの、身近なもののみを取り上げています。飲食物・嗜好品と医薬品の飲み合わせにおいても医薬品と医薬品との飲み合わせにおける相互作用があるということを認識していただく事を当面の目的とし、今後、臨床的な調査や新しい文献の発表等を待って、随時お知らせしていきたいと思います。

※この項は、じほう発行の「改訂3版 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」を参考 (以下、『改訂3版』)

薬局の窓口でよく聞かれる質問です !

 

グレープフルーツジュースと一緒に飲んではいけない薬ってなぁに?

 

血圧の薬の中でカルシウム拮抗剤といわれているお薬です ! (でも、全部ではありません。) 
薬の作用を強くしてしまう可能性があります。

  果物のグレープフルーツは食べてはだめ?
 

特に薬が強くなるということは、報告されていません。

グレープフルーツジュースはなぜ、薬の作用を強くするの?

グレープフルーツジュースの中の成分で、薬を分解する酵素を邪魔する作用があると報告されています。分解されないことによって、薬の作用が強くなってしまいます。

  オレンジジュースだったら??
 

オレンジジュースは特に問題ないです。

ただし、お薬もかなり改良されているので、かかりつけの薬剤師に「これは、大丈夫??」と相談してください。
でも、できればお薬はお水で飲んでくださいね!!

牛乳と薬剤を一緒に服用することによって問題となるものをいくつか紹介します。

  • 牛乳と薬剤を一緒に服用することによって問題となるものをいくつか紹介します。
  • 牛乳と一緒に服用すると、友情水と服用するのと比べて吸収が2.6倍にもなってしまう薬もあります。これは牛乳の中の脂肪分によるものです。
  • 牛乳と一緒に服用すると、逆に吸収が抑制されてしまう薬(抗生物質の一部)があります。これは牛乳にふくまれているカルシウムと結合して吸収されにくい物質に変わってしまうからです。

牛乳アレルギーについて

  • 牛乳アレルギーの発生頻度は0.5%~1.0%であり牛乳アレルギーの発生時期は、約1/3が生後1ヶ月以内と言われています。
  • 乳児の牛乳アレルギーは、1才の終わり頃にはその症状も治り、牛乳の飲用が可能になる子供も多い。

ここでいう、鉄剤の薬の名前の例は、下記のものです。

薬品名 一般名 会社名
フェロミア錠(顆粒) クエン酸第一鉄ナトリウム エーザイ
フェロ・グラデュメット 硫酸鉄 大日本製薬
フェルムカプセル フマル酸第一鉄 三菱ウエルファーマ
スローフィー  乾燥硫酸鉄  ノバルティス 
 インクレミンシロップ 溶性ピロリン酸第二鉄  日本レダリー 

以前までは、お茶の中に 「タンニン酸」 が含まれていて、タンニンが鉄の吸収を阻害するという試験結果から『禁茶』あるいは 『本剤服用の前後30分間(1時間)はお茶を飲まないでください』 等といわれてきました。

しかし最近の調査の結果では、この「禁茶」扱いが見直されるようになっています。それでもお茶の影響で現実的には吸収抑制がみられることには変わりはありませんので、濃いお茶での服用は避けたほうが良いと思います。

同じお茶でも「タンニン酸」よりも、むしろお茶に含まれている「カフェイン」のほうを充分注意する必要があります。

 

緑茶等の中に含有されるカフェインの量(㎎/100ml)(『改訂3版』表6より) 

種別 含有量 煎洗条件
緑茶-玉露 160mg 10gに60℃のお湯60mlで2.5分
煎茶 20mg 10gに90℃のお湯430mlで1分
釜入り茶 10mg 10gに90℃のお湯430mlで1分
番茶 10mg 15gに90℃のお湯650mlで0.5分
焙じ茶 20mg 15gに90℃のお湯650mlで0.5分
玄米茶 10mg  15gに90℃のお湯650mlで0.5分
ウーロン茶 20mg 15gに90℃のお湯650mlで0.5分
紅茶 50mg 2.5gに90℃のお湯100mlで2分
コーヒー 40mg  10gを150mlでドリップ式
インスタントコーヒー 16mg 小匙山盛り1杯(2g)を100mlで

カフェインの通常成人投与量は、1回100mg~300mgとされており、コーヒーあるいは緑茶(玉露等)では、通常飲用する1杯量中に通常投与量に見合う程度のカフェインが含まれていることから、カフェインと相互関係のある薬剤服用時には充分注意する必要がある。

 

今までに報告されている『カフェインと薬剤』の相互作用の一例(『改訂3版』より)

カフェイン 薬品名 一般名 会社名
タガメット シメチジン gsk-住友 
セルシン ジアゼパム 武田
テオドール テオフィリン 日研

 

複数の薬剤を併用するとき、双方あるいは一方の作用に影響を与える事を相互作用という

薬物と薬物との相互作用と同様に、薬物と飲食物・嗜好品の場合も、飲食物・嗜好 品の成分中に含有されている物質(化学的作用をもつ物質)あるいは添加剤などが重要な意味をもつと考えられています。

相互作用は、下記の三つに分類される

相加作用 二つ以上の薬剤を併用するとき、個別に使用した場合の相和として薬理作用が発現する場合
相乗作用 二つ以上の薬剤を併用するとき、相加作用より大きな薬理作用として発現する場合
阻害作用 与えられた活性をもつ薬物が作用を無効にする薬物によって妨害される。あるいは、薬物代謝酵素を誘導して相手薬物の代謝を促進し、作用を減弱する場合。また、作用の相和より小さい薬理作用として現れる相減作用も含む

 参考文献 :
 治療薬マニュアル(医学書院)
今日の治療指針(医学書院)
医薬品情報21(古泉 秀夫著)