NEW
江川紹子の「事件ウオッチ」第183回

【安倍前首相「桜を見る会」不起訴不当】事件は終わっていない!…江川紹子はこう見る

文=江川紹子/ジャーナリスト
【この記事のキーワード】

, ,

検察審査会が安倍前首相に突き付けた「透明性」と「説明責任」

 議決書によれば、前夜祭の開催に当たっては、「晋和会」会計責任者の元私設秘書が「主体的、実質的に関与していた」。そう言い切るには、それだけの証拠があるはずだ。

 しかも、ホテルが発行した領収書の宛先は「晋和会」だ。通常、こうした領収書は、支払いの主体に宛てて発行される。それをあえて、同会ではなく支払いの主体は後援会である、と認定するなら、それなりに納得のいく説明や証拠が必要だ。ところが、そうした捜査が行われていない、という指摘だ。

 議決書は「(安倍氏側に)積極的な説明や資料提出を求めるべきであり、その信用性は慎重に判断されるべきである」として、検察の捜査のあり方に厳しく注文をつけた。

 支払いの主体が、安倍氏が代表を務める「晋和会」であり、そこがホテルと契約したのであれば、同会の収支報告書に収支を記載し、報告しなければならないはずだ。議決書は、同会の元会計責任者については政治資金規正法違反の収支報告書の不記載容疑で、安倍氏についてはその選任・監督責任に関して、捜査を尽くすよう求めた。

 議決書は、こうした結論を述べた後、「付言」として安倍氏に対して、強い批判を連ねている。そのポイントは「透明性」と国民に対する「説明責任」だ。

 まず、税金を使った公的行事である「桜を見る会」に、本来招待されるべき資格のない安倍氏後援会の人たちが多数参加していた件。「国民からの疑念がもたれないように、(招待者の)選定基準に則って厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい」と注文をつけた。

 そして、前夜祭の費用不足分を安倍氏の個人資産で補填していた、という説明についても、「疑義が生じないように証拠書類を保存し、透明性のある資金管理を行ってもらいたい」と要求。

 さらに、総理大臣を務めた政治が、疑惑にきちんと答えず、問題が明らかになっても「秘書がやった」で済ませる対応に加え、国民に対する説明を怠った点についても、次のような批判を行った。

「国民の代表者である自覚を持ち、清廉潔白な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきである」

 検察審査会は、有権者の名簿から無作為に選出された11人で構成される。野党支持や安倍氏に批判的な人を意図的に集めることはできない。今回の場合は、法的な問題点について助言する弁護士が審査補助員として加わっている。そのような審査会において、メンバーの過半数が検察の捜査のあり方や不起訴処分に疑問符をつけ、安倍氏に対してこれだけ厳しい批判をしたことを、検察および安倍氏は重く受け止めるべきだろう。

 2回の議決で検察の判断とは関係なく強制起訴となる「起訴相当」と異なり、「不起訴不当」は検察が再度不起訴処分とすれば、刑事事件としてのプロセスは終わる。それを見越してだろう、安倍氏は「私としては今後、(検察)当局の対応を静かに見守りたい」と述べた。

 まるで他人事のような反応だ。しかし、「見守る」だけでいいのか。

CCPA Notice
あわせて読みたい