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前田幸男さんが最初に購入した前田鉄工所の農民車。現役は退いたが、今も運転可能だ=南あわじ市志知中島
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前田幸男さんが最初に購入した前田鉄工所の農民車。現役は退いたが、今も運転可能だ=南あわじ市志知中島
前田敬語さん
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前田敬語さん
農民車コマツ(日本自動車博物館提供)
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農民車コマツ(日本自動車博物館提供)
収穫したタマネギを運搬する農民車=2017年5月29日、南あわじ市賀集鍛冶屋
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収穫したタマネギを運搬する農民車=2017年5月29日、南あわじ市賀集鍛冶屋

 淡路島特産の野菜といえば、タマネギ。春から6月にかけての収穫期に活躍するのが、地元の鉄工所が造る独特な「農民車」だ。乏しい記録を探ると、その始まりは約60年前。しかも同時期、大手建設機械メーカーによる、もうひとつの「農民車」が注目を浴びていた。惜しくも短命に終わった車は果たして、草創期を彩る幻のライバルだったのか-。

 農民車を最初に手掛けたといわれるのが、南あわじ市松帆脇田出身の前田敬語さんの鉄工所。いとこの農業前田薫さんのアイデアで、牛馬車の木製荷台に中古の自動車部品や農業用発動機を組み合わせ開発した。

 敬語さんが2002年に74歳で没した後は修理のみ続けていたが、今年初めに機材を処分。過去を物語る資料は、農民車を特集したNHKテレビ「明るい農村」(1983年)などの録画しかないという。

 製造時期について、敬語さんは同番組で「昭和35、36年」と説明。それを裏付ける「61年秋に試作」という記述が研究書「地域農業の革新」(83年)にある。製造現場を見たという元営農指導員の日本農作業学会誌(2001年)での報告はやや異なり、「第1号は60年5月、現在の普及型の原型は62年2月に誕生」としている。

 「最初は格好も悪いし、皆、笑いよったんやけど、かなり注文があった」と、敬語さんは同番組で回想。この手作り感あふれる農民車と対照的な存在が、小松製作所(現コマツ)による「農民車コマツ」だ。

 日本自動車博物館(石川県小松市)によると、農作業と街乗りの兼用を狙い、60年に発売。デザインにもこだわり、「ヤクルト」の容器などで知られる剣持勇氏が手掛けた。4300台を製造したが、62年に生産を終了したという。

 神戸新聞淡路版を調べると、「島の農家機械化ばやり/人気のマトは農民車」という61年4月7日付の記事がある。「農作業がなんでもでき、ドライブも楽しめる」農民車の写真は、見るからにコマツ製だ。

 一方、地元の鉄工所製は「農用万能車」「農作業用運搬自動車」などと64年の記事で表現。「農業用特殊作業車“淡路農民車”」として登場するのは67年3月30日付の記事で、旧三原郡を中心に約1500台が普及しているとあることからも、通称化がうかがえる。

 タマネギの生産が盛んな淡路では、ぬかるみで大量の収穫物を運び出せる積載力や登坂力が求められた。農家の前田幸男さん(83)=南あわじ市志知中島=は約40年前、前田鉄工所が四駆のダンプ式農民車を造ると、土やバラケ(牛ふん堆肥)を田んぼに運び入れるのにも役立つと、すぐ購入。現在は3台所有しており、「1年中よう働いてくれて、ありがたい」と話す。

 車体の大きさや機能などオーダーメードで独自の進化を遂げ、淡路の農家には1台以上あるといわれる。地元仕様の便利さで爆発的に広まるにつれ、コマツ製のお株を奪う格好で、「農民車」のネーミングが定着したのかもしれない。(田中真治)

 ■沖縄でもサトウキビ収穫に一時活躍

 「淡路の鍛冶屋の知恵の塊」とも評される農民車。江本一也さん(74)=南あわじ市阿万下町=によると、かつては島外に渡り、タマネギ以外の農産物で活躍したこともあったという。

 江本さんは、父親の始めた鉄工所で1966年ごろから農民車を手掛け、最盛期の80年ごろは年間で最大128台を製造した。

 沖縄・西表島から依頼があったのは83年。親戚のいる淡路へ見学に来た農業青年が「サトウキビやパイナップルの収穫などに威力を発揮する」と農民車を熱望。知人を介して、江本さんに話が持ち込まれた。

 現地で指導したものの、技術的に難しく、完成品を5台ほど送った。しかし、「潮でぼろぼろになり、10年も使わなかった」と再訪時に聞かされた。別の沖縄の離島向けには、同業者と数十台を製造。大阪や徳島のイモ農家などからも数台の注文があったが、根付かなかったようだ。

 阿万地区にあった鉄工所5軒のうち、最後に残った江本さんは「部品が入らなくなった」ため、約2年前に製造をやめた。ハイテク化で転用可能な自動車が減ったことや、中古車が海外に流れていることが背景にあるという。農民車は長期的には、希少な存在になっていくかもしれない。(田中真治)

淡路
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