2017年に刑法の性犯罪規定が改正されました。 110年ぶりです。 強姦罪は「強制性交等罪」になり、男性が被害に遭った場合も処罰されることになり、刑も重くなりました。(3年以上の懲役→5年以上の懲役)。それでも、未だに性暴力の被害にあって泣き寝入りをせざるを得ない人がたくさんいます。もっと被害者を守れる、より良い制度を実現するために、以下のような法改正が課題となっています。
- 強制性交等罪(レイプ)における暴行・脅迫要件をなくすことにより、同意なき性行為を広く処罰対象とすること
- 未成年者の性的自己決定権に配慮する形で性交同意年齢を引き上げること
- 地位や関係性を利用した性行為に対する処罰を拡大すること
- 性犯罪に関する公訴時効を撤廃又は停止すること
- パートナーや恋人との間の同意なき性行為について適切に処罰すること
- セクシュアル・ハラスメントを犯罪とすること
そこで、HRNでは、米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、韓国、台湾の性犯罪に関する規定を調査しました(2018)。その結果、どの国も日本より進んでいることがわかりました!
Q1. むりやり性行為をした加害者がなぜ処罰されないの?
内閣府男女共同参画局の「男女間における暴力に関する調査」(令和二年度調査,2020)によると、女性の6.9%、男性の1.0%が、無理やりに性交などをされた経験があると答えています。ところが、法務省の性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループによると、2019年の強制性交等の罪の認知件数は1405件、被害にあった人の一握りにすぎません。では勇気を出して被害届を出し、受け付けられた人のうち、その訴えが認められたのはどれくらいでしょう。2019年認知された強制性交等の罪のうち、起訴された事例は約33.6%に過ぎません。
なぜでしょうか。日本では、レイプが犯罪として成立するためには、暴行・脅迫、心神喪失などの厳しい要件が求められています。そのため、レイプ被害にあった女性の多くが、「暴行・脅迫の証拠がない」と言われ、警察で取り合ってもらえなかったり、加害者が起訴されないなど、泣き寝入りしているのが現状なのです。海外ではどうでしょうか。
暴行・脅迫等がなくてもレイプが成立する国
- 男性又は女性が、17歳未満であること以外の理由で同意する能力がない他人と性交した場合。
- 21歳以上の男性又は女性が、17歳未満の他人と性交をした場合。
- 男性又は女性が、同意能力がないこと以外の理由で同意なく性交をした場合。
暴行・脅迫等の要件を求める法制度の国〜 それでも日本より広くレイプ罪を規定しています〜
暴力、強制、脅迫又は不意打ちをもって行う、他人に対するあらゆる性的挿入行為は、15年以下の拘禁刑に処する。
「性的な満足を得る目的で他人にしつこく嫌がらせをする行為は、2年以下の拘禁刑又は3万ユーロ以下の罰金に処する。」
多くの国が暴行・脅迫という要件をなくし、被害者の同意の有無のみに基づいて性犯罪としています。そして、暴行・脅迫などの要件がある国でも、日本より緩やかな要件で犯罪が成立するとしています。また、信頼関係や依存関係からイヤと言えない関係を悪用した場合もレイプが成立するとしています。
調査に基づく勧告
深刻な性暴力被害をなくすために、私たちは求めます。
海外で実現したことは日本でも実現できるはずです。
- 勧告1-A : 不同意の性行為をすべて処罰対象に
- 強制性交等罪、強制わいせつ罪から、暴行・脅迫の要件を撤廃し、相手方の同意・自発性のない性行為はすべて「強制性交等」「強制わいせつ罪」として処罰対象としてください。そして相手方の自発的意思が明示・黙示に表現されていないのに性交等をすることは処罰対象とする、“Yes Means Yes”の法制を導入してください。
- 勧告1-B : 加重要件としての暴行・脅迫
- 暴行・脅迫は加重類型の処罰としてください。
- 勧告1-C : 同意要件の定義の明確化
- 同意の要件については被害者保護に欠けることのないよう、諸外国の法令を参考に明確に規定してください。
同意がないこと、自発的でないことの例示として、諸外国の例をもとに、暴行・脅迫や心神喪失、抗拒不能にとどまらない広範な例を列挙してください。
特に、恐怖、権限関係の利用、酩酊、疾患、心身の障害等の脆弱な状況により拒絶ができなかったことは、同意の存在が否定される場合として列挙されるべきです。この観点から、準強制性交等罪、準強制わいせつ罪の「心神喪失」「抗拒不能」の要件を緩和すべきです。 - 勧告1-D : 同意の認識に関する過失罪の採用
- 相手方の同意に関する合理的確信がない場合、相手方の自発的意思の確認に関する注意を著しく怠った場合も有罪とする法制を採用してください。
- 勧告1-E : 同意不取得の場合の処罰対象化
- 同意を得ないで人に対し性的行為を行うことを強制する罪を処罰してください。
- 勧告2-A : 性交同意年齢の引き上げ
- 性交同意年齢を少なくとも原則として、16歳まで引き上げてください。
- 勧告2-B : 子どもであることの加重要件化
- 子どもに対する性犯罪は加重処罰してください。
- 勧告2-C : 相手の年齢に関する誤認の処罰対象化
- 相手方が16歳未満であった場合において、行為者が、相手方が16歳以上であることについて合理的な根拠に基づき確信していなかったときも犯罪としてください。
- 勧告2-D : 子どもに対する地位利用等の処罰対象化
- 親権者、監護者だけでなく、学校、施設等の管理監督者、教師、施設職員、同居者、依存、搾取等の関係にある地位の者が子どもに性行為をした場合は処罰の対象としてください。
- 勧告3-A : 独立の処罰類型として明確化
- 優越的地位や関係性を利用して性行為を行う場合を処罰する法改正をしてください。
- 勧告3-B : セクシュアル・ハラスメントに対する刑事罰の導入
- セクシュアル・ハラスメントを明確に禁止し、セクシュアル・ハラスメント行為を処罰する規定を導入してください。
- 勧告3-C : 公務員による性犯罪等の厳罰化
- 公務員の性犯罪およびセクシュアル・ハラスメントについて、厳格な制裁規定を導入してください。