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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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514 侵略開始 2

「な、ななな、何よこれ!」

「あ、あああ、悪魔のしもべか、神の使いか……」

「つ、つつつ、捕まえて売れば、いい値に……」

 ひとり、何か少しおかしいのが交じっていた。


 それらをスルーして……。

「ただの絡繰からくり、ゴーレムの一種ですよ。スカベンジャーのような、非戦闘用の……。

 そして、映像は幻惑魔法によるものです」

 マイルがそう説明すると、すぐに落ち着きを取り戻したレーナ達。

 作り物だと説明されれば、ゴーレムやスカベンジャー、そしてメーヴィスの左腕のことも知っているレーナ達にとっては、『なんだ、その系列のもののひとつか』で済むのであった。

 映像も、魔法だと言われれば、日頃マイルの不可視魔法や変装魔法等の光学系魔法を見慣れているレーナ達にとっては、大したことには思えなかった。

 そして鳥が喋ることくらい、ケモノ度が高い獣人や古竜が喋ることを思えば、全然大したことはなかった。


「で、訪問の目的は何ですか? そして異次元世界からこの世界へ、それもあなた達を造った知的生命体ではなく魔物を連れてくる理由は……」

 ナノマシンが仲介を受けたのである。マイル達に危害を加えるつもりがないことは間違いないであろう。なので警戒はしているものの、そう心配をしているわけではないマイル。

 せっかく異次元からの侵略者が向こうから接触してきたのである。この機会を逃すまいと意気込むマイルであったが……。


【あ、この小鳥はこの惑星側の勢力ですよ? あの、以前会ったスカベンジャーの関連です。

 でないと、マイル様のことを知っていたり、我々ナノマシンの存在を知っているはずがないでしょう?

 我々のことを知っているのは、以前接触してデータ通信による情報交換を行ったスカベンジャー達と、あの省資源タイプ自律型簡易防衛機構管理システム補助装置、第3バックアップシステムだけです】


(そっちですか~~!!)


 考えてみれば、異次元勢がマイルのことを知っていたり、捜し当てて直接接触を図ったりできるはずがない。


『「スロー・ウォーカー」ガ、管理者ニオ会イシタイト……』

「え? ゆっくり歩く者(スロー・ウォーカー)? ここに来て、新キャラの登場ですかっ!」

 マイルの突っ込みには無反応のメカ小鳥。

「というか、私のことを『管理者』と呼ぶということは、やはりアレですか、そのスロー・ウォーカーさんも、私の管理下の方ですか……」


 スロー・ウォーカーと名乗るということは、通常は6本足で素早く移動するスカベンジャーが、故障か何かで移動速度が落ち、そのため作業担当から離れて指揮官役をやっているのであろうか。

 しかし、スカベンジャーを新造する技術と資材があるのだから、修理すればよいはずである。

 電子頭脳の運動制御部位か何かの障害で、無理に修理しようとすると他の部分に影響が出るとか、そういった問題で手を出せないのかもしれない。

 そんなことを考えるマイルであるが、勝手に想像しても仕方ない。


「何か、私が指示しなければならないような問題が発生したのですか? それとも、単なる定期報告とかをしたいだけとか、基地の修理状況や他の場所の状況を教えたいとか?」

『「スロー・ウォーカー」ガ、管理者ニオ会イシタイト……』

「あ、スカベンジャーさんのような高度な思考能力があるわけではなく、ただのメッセンジャーでしたか……」

 メカ小鳥が先程と同じ台詞を繰り返したことから、簡単な受け答えしかできないのであろうと判断したマイル。


「会いに来てくれるのですか? それとも、こちらから行く必要が?」

『案内スル』

「あ~。数日待っていただけますか?」

『待ツ』


 無線とかのたぐいで、遠くにいる者が答えているようには見えなかった。

 どうやら、少しは受け答えができるようであるが、おそらく前もって想定問答として答えが入力されている質問に対しての自動的な応答にすぎないのであろう。

 思考や判断能力がスカベンジャーのように高性能ではないのは、身体が小さい上に飛行機能に体積を取られ、電子頭脳を小さくせざるを得なかったのであろうか……。

 メカ小鳥は自分の役目がいったん終わったと判断したのか、テーブルから飛び立って整理箪笥(チェスト)の上へと移動し、そこにぺたんと座り込んだ。

 テーブルの上に座り込まれると邪魔になるので、その配慮はありがたい、と思うマイルであるが……。


「報告に戻るんじゃないのですか! 私達がついていくまで、ずっと居座るつもりですかっっ!!」

 どうやら『マイルを連れて戻る』というのが任務らしく、自分だけ戻るというのは任務外の行動になるらしかった。

 悠久の刻を過ごす機械知性体にとっては、数日間などどうでもいい時間であり、誤差の範囲内なのであろうか……。

「まあ、そういう命令を受けているなら、仕方ないですよね。ロボットなのですから……」

 被造物の行動に関しては、割と理解のあるマイルであった。


「……で、説明してもらおうかしら……」

 そして当然のことながら、メカ小鳥との遣り取りが終わるのを待っていたレーナ達からの説明要求が待っていたのであった……。


     *     *


「じゃあ、先史文明の残滓ざんしであるあの時のスカベンジャーやその仲間達が、先史文明人の子孫であるあんたに命令権を渡したってわけ?」

「はい……。まあ、先史文明人の子孫って言っても、この世界のヒト種はみんながそうなんですけどね……。

 知的生命体がいきなり湧いて出るわけでなし、みんな昔の人間の子孫に決まってますよ。

 ただ、私が一番最初に話し掛けたことと、私は先祖返りと言うか何と言うか、少し昔の人の血が濃く出ているらしくて……」


「「「ああ!」」」

 先祖返り、という点には、みんなが納得したように頷いた。

 エルフやドワーフに、いつも同族臭い……本当に臭うのではなく、何となく同族のような気がするということ……と言われている理由が、何となく分かったような気がしたからである。

 それに、昔の偉大な種族の血が濃く出ているならば、マイルのあの馬鹿げた威力の魔法の説明がつく。

 そう、人間というものは、人から教えられ説明されたことよりも、自分が独力で気付いたと思ったことの方が、より真実に近いと思い込むものであった。たとえそれが、そう考えるように誘導された場合であっても……。


「それで、自衛のためなら仕方ないですけど、余裕がある時はなるべくヒト種や他の知的生命体には危害を加えないように、とお願いしたり、頑張ってくださいね、って励ましたり……。

 具体的なことは、何も知らない私が口出しすると混乱の元になると思って、彼らの自主判断に委ねました」

「君臨すれども統治せず、ってわけか……」

 メーヴィスの適切な解釈に、こくりと頷くマイル。


「じゃあ、とにかく、行くしかないわけね」

「はい……」

「そんな、申し訳なさそうな顔するんじゃないわよ!」

「そうですよ。あの地下遺跡に行ったのは修業の旅の一環でしたし、マイルちゃんの判断は適切なものでした。スカベンジャーやゴーレムにとっても、あそこにいた孤児達にとっても……」

「ああ。そしてマイルの行動は、私達『赤き誓い』の行動だ。その利益も不利益も、私達みんなで分け合い、支え合う。それが……」


「「「「我ら、魂で結ばれし仲間、『赤き誓い』!!」」」」



23日、『ポーション』6巻のAmazonオーディブル配信がリリースされます。

目が悪くてもOK、台所仕事をしながらでもOK。

BGMの代わりに、『聞く小説』を。(^^)/


『ろうきん』も、配信されています。(^^)/


そして、来週と再来週、GW休暇で休載させていただきます。

次回は、3週間後に……。(^^)/

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