卓球「0点で完封」は本当にマナー違反なのか…中国で生まれた説が有力
「完封回避のマナー」は必要か――。
卓球は1ゲーム11点制で行われるが、10―0でリードしている方が意図的に相手に1点与える独特の慣習が存在する。わざとサーブをミスしたり、レシーブをネットにかけたりするものだ。今回の五輪でも、議論になりそうな場面があった。
関係者によると、2000年代に入り、1ゲームが21点制から11点制になって始まったという。卓球界を席巻する中国で「11―0で相手を打ちのめすのはかわいそう」「礼儀を欠く」などの理由で生まれたとの説が有力だ。
そんな中、今大会では「完封」が日本の試合で見られた。男子シングルス4回戦で、オフチャロフ(ドイツ)が丹羽孝希(スヴェンソン)に対し、第3ゲームの10―0からチキータレシーブでこのゲームを取った。
オフチャロフにはある思いがあった。先に行われた混合ダブルス準々決勝。同僚のドイツペアが水谷隼(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)組に、最終第7ゲームで9―2から、大逆転負けを喫した。オフチャロフは勝負の怖さを目の当たりにし「卓球は何が起こるか分からない。普段の大会なら1点与えたけど、五輪のために頑張ってきたから」と、丹羽との試合では愚直に1点を取りにいったのだった。
女子シングルス準々決勝で、石川佳純(全農)に勝ったユ・モンユ(シンガポール)が、第5ゲームの10―0から失点した場面。「私が相手のボールを取れなかっただけ」と言うが、返球する意志がなかったようにも見えた。この暗黙のマナーについては「これはルールではない。どうするかは選手の考え次第だ」と語った。
故意に失点する行為は、スポーツマンシップに反するとの声もある。日本協会の宮崎義仁強化本部長は「(完封回避マナーは)ナンセンスだ。わざとミスをすれば、そこから調子が狂うことだってある。必死に目の前の1点を取りにいくべきだ」と話している。(今井恵太)