今月の建設市況と今後の見通し
建設市況に対する2025年大阪万博決定の影響はいかに
12月は師走という異名の通り、慌ただしく過ぎていますが、立ち止まってこの一年を振り返ってみますと、建設市況は緩やかに右肩上がりで上昇を続けています。
建設業界としては活況を呈していることを示していますが、その裏で人手不足・資機材不足が深刻化しており、工事費のみならず、工期にも大きな影響が出てきています。
工事現場にも働き方改革により週休二日が徐々に浸透し始めていますが、工期の増加、それに伴う工事費の増加も見込まれ、事業者にとっては工事を伴う事業の実施時期をいつにするのが良いか、判断が難しい状況です。
日本では来年から3年連続で世界的なスポーツイベント(ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ2021関西)が続き、さらに2025年には大阪で万博が開催されることも決定しました。これらのビッグイベントが建設市況に与える影響も大きいため、周辺の動きに注視していきたいと思います。
さて、今月の建設資材の動向ですが、鉄鋼系は、鉄スクラップが大きく下げていますが、他は軒並み先月から横ばいです。RC系はセメントが上昇しています。
建築費指数は、鉄骨造オフィス、RC造オフィスともに先月に続き上昇しています。
なお、建築費指数は、先月までは2005年比でしたが、今月から2011年比となっています。
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
現状維持
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●H形鋼5.5×8×200×100ミリ 東京
下降
- ●鉄スクラップ H2 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
上昇
- ●セメント バラ 東京
現状維持
- ●人工軽量コンクリート 180キロ強度 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
次に、都市間における建築費の差を、東京を100とした都市間格差指数によりお示しします。RC造の集合住宅、病院、学校をピックアップしました。この3ヵ月で多少の上下はありますが大きくは変わらず、東京が一番高く、低い(90以下)のは、名古屋、福岡、金沢、新潟、高松のままです。
RC造 集合住宅の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
RC造 病院の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
RC造 学校の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
株式会社山下PMC
事業管理運営本部 QCDS部 部長
日比生 慶(ひびお・けい)
1972年生まれ。99年京都大学大学院工学研究科修了。山下設計で設計業務を経験し、2005年に山下PMC入社。オフィス、商業施設、文化施設、物流施設をはじめとする多様なプロジェクトについて、全体マネジメント業務から、調査、企画、発注支援、見積査定など、個別業務まで幅広く携わる。現在は事業管理運営本部QCDS部部長として、企画段階から現場まで幅広い業務を担当。主な実績にMOA美術館リニューアル、JR海浜幕張駅リニューアル、ランドポート厚木、ほか。一級建築士、CCMJ(認定コンストラクション・マネジャー)、CFMJ(認定ファシリティマネジャー)。週末は体を動かす、子供と遊ぶのが至上の喜び。得意技は上段廻し蹴り。