今月の建設市況と今後の見通し
建築費は引き続き上昇基調も、鋼材価格は今後の中国内需の動向に注視
ラグビーワールドカップまで残り200日と少し、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会まで残り500日と少し。国際的スポーツイベントの開催までいよいよもう間もなくという感じになってきました。会場整備も着々と進められ、ビッグイベントをホスト国として無事に盛会のもと完了させるというミッションに向けて動かれている方々も多くいらっしゃると思います。それらの多くの方々とともに日本全体が盛り上がることを心から楽しみにしています。
さて、今月の建設資材の動向ですが、鉄鋼系はH形鋼、山形鋼、グラフにはない大径角形鋼管が上昇、鉄スクラップは3ヵ月連続で下降しています。鋼材価格は、日本国内の需要は堅調であるため、すぐに下がる動きになることはないと思いますが、米中貿易戦争の激化の影響を受けた中国経済の減速により中国国内の鉄鋼需要が減少すると、中国からの輸出が増加して鉄冷えの再来となりかねないので、注視が必要です。
コンクリート系は、先月に続き横ばいです。
建築費指数は、鉄骨造オフィス・RC造オフィスともに上昇しており、働き方改革による技能労働者の処遇改善(週休2日と労務賃金の改善)等もあり、今後も引き続き上昇基調と予測されます。
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
上昇
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
現状維持
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●H形鋼5.5×8×200×100ミリ 東京
下降
- ●鉄スクラップ H2 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
現状維持
- ●セメント バラ 東京
- ●人工軽量コンクリート 180キロ強度 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
次に、都市間における建築費の差を、東京を100とした都市間格差指数によりお示しします。今月は鉄骨造のオフィス、ホテル、店舗をピックアップしました。この3ヵ月でいずれの用途も東京に対して他の都市は横ばい、もしくは若干下降しており、東京と地方都市との差がじわりと広がっています。
鉄骨造 オフィスの建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京、札幌
鉄骨造 ホテルの建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京、札幌
鉄骨造 店舗の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
最後になりますが、この建設市況レポートを一昨年の10月から担当してまいりましたが、来月から担当が変更になります。来月からも引き続き建設市況レポートをご愛顧賜れればと存じます。これまで拙文にお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。
株式会社山下PMC
事業創造推進本部 第三部 特定プロジェクト部長
日比生 慶(ひびお・けい)
1972年生まれ。99年京都大学大学院工学研究科修了。山下設計で設計業務を経験し、2005年に山下PMC入社。オフィス、商業施設、文化施設、物流施設をはじめとする多様なプロジェクトについて、全体マネジメント業務から、調査、企画、発注支援、見積査定など、個別業務まで幅広く携わる。現在は事業管理運営本部QCDS部部長として、企画段階から現場まで幅広い業務を担当。主な実績にMOA美術館リニューアル、JR海浜幕張駅リニューアル、ランドポート厚木、ほか。一級建築士、CCMJ(認定コンストラクション・マネジャー)、CFMJ(認定ファシリティマネジャー)。週末は体を動かす、子供と遊ぶのが至上の喜び。得意技は上段廻し蹴り。