今月の建設市況と今後の見通し
建築費の高止まり傾向続く
世界的歴史建造物のノートルダム寺院(パリ)の火災は、建築を学んできた私にとって非常にショックな出来事でした。木製の屋根であるがゆえに火が非常に速く延焼していく中、消防隊の方たちが消火に重点を置いた理由は、寺院の2つの巨大な鐘楼が消火活動によって損傷しないように留意したから、とのこと。
ただ、そんな状況下でも、建築の教科書でよく見かけた鐘楼が何とか残っていたことは良かったと思います。早く再建されることを願っています。
さて、今月の建設資材の動向ですが、鉄鋼系資材についてスクラップは上昇ですが、その他は横ばいです。
ただし「日本経済新聞」(4月13日、朝刊)の記事にもありましたが、中国で鋼材生産が増えていることから、鉄鋼生産に必要な鉄鉱石が1割、電極は2割値上がりしています。生産コストの上昇を受け、メーカーは製品価格への転嫁を探ると思われるので、鋼材系の建設資材の動向に注視が必要です。
グラフにある資機材の傾向ですが、建築費指数は、S造・RC造は横ばいです。
資材・指数ともに横ばいですが、グラフにはない高炉品のガス管や構造用鋼管は上昇しているので、今後の動向には注意が必要かと思われます。(下がり基調ではありません。)
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
推移傾向
現状維持
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
上昇
- ●鉄スクラップ H2 東京
現状維持
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●H形鋼5.5×8×200×100ミリ 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
現状維持
- ●セメント バラ 東京
- ●人工軽量コンクリート 180キロ強度 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
次に、都市間における建築費の差を、東京を100とした都市間格差指数によりお示しします。
鉄骨造 工場の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
鉄骨造 倉庫の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
鉄骨造 物流の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
今回はS造の工場、物流、倉庫をピックアップしています。
前回から減少傾向の都市が多いですが、大阪、福岡は微増傾向にあるのが特徴ですね。
低い傾向(90以下)にあるのは変わらずどの用途も「金沢、新潟、高松」の3都市です。
株式会社山下PMC
事業創造推進本部 第一部 部長
鴨下 清(かもした・きよし)
大学院では、テンセングリティ構造や展開構造物について研究。山下PMCに入社し、大規模研究施設のCM業務を担当。現在は、基本計画~竣工・引渡しまでワンストップでプロジェクトを推進する案件を多数担当。特に、性能発注方式を活用したマネジメント経験が豊富。