今月の建設市況と今後の見通し
建設市場 陰る五輪特需?
2019年7月7日付日経新聞の記事です。国内総生産の5%を占める建設業生産額が国内景気に与える影響を取り上げています。
鋼材が3年ぶりに値下がりし、工事受注や生コン出荷も減少傾向とのこと。
「もしかして工事費が下がるの?」と期待される方もいらっしゃるかもしませんが、残念ながら直ぐに影響はでないと思われます。例えば記事に出ている鋼材メーカーは電炉材(鉄スクラップが主原料)を主に扱っています。住宅以外の大規模建築物では、電炉材は躯体以外の二次部材でしか使われません。
加えて労務費に下がる気配が見られないことも工事費が下がらない大きな要因のひとつです。
しかし、工事費が上昇する要因が減ったことは事実ですし、弊社が担当するプロジェクトでも一時期と比べて落ち着きを取り戻しています。
今後も注視して動向を追っていきます。
さて、今月の建設資材の動向ですが、鉄鋼系は先月に引き続き、資材、建築費指数ともに横ばいです。
RC造(鉄筋コンクリート)系の建築費指数は先月同様に横ばいですが、資材の生コンが上昇しています。
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
推移傾向
現状維持
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
現状維持
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●H形鋼5.5×8×200×100ミリ 東京
下降
- ●鉄スクラップ H2 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
推移傾向
現状維持
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
現状維持
- ●セメント バラ 東京
- ●人工軽量コンクリート 180キロ強度 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
上昇
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
次に、都市間における建築費の差を、東京を100とした都市間格差指数により示します。
今月はS(鉄骨)造の工場、物流、倉庫をピックアップしています。
福岡がいずれの用途も微増傾向にあるのが特徴です。
低い傾向(90以下)にあるのはどの用途も変わらず「金沢、新潟、高松」の3都市です。
5月からS造のオフィス・ホテル・店舗、RC造の集合住宅・病院・学校を紹介してきましたが、福岡が全てにおいて微増傾向にありました。
鉄骨造 工場の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
鉄骨造 倉庫の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
鉄骨造 物流の建築費都市間格差指数の推移
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 広島
- 高松
- 福岡
- 金沢
- 新潟
- 仙台
- 札幌
指数比較(今月)
- 金沢、新潟、高松 < 札幌、仙台、大阪、広島、名古屋、福岡 < 東京
株式会社山下PMC
事業創造推進本部 第一部 部長
鴨下 清(かもした・きよし)
大学院では、テンセングリティ構造や展開構造物について研究。山下PMCに入社し、大規模研究施設のCM業務を担当。現在は、基本計画~竣工・引渡しまでワンストップでプロジェクトを推進する案件を多数担当。特に、性能発注方式を活用したマネジメント経験が豊富。