1)はじめに
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、有象無象の“除菌”“殺菌”“感染対策”を謳う商品の宣伝が喧しい。
ちょっと前に歯クラで話題となっていたものに「次亜塩素酸水」というものがある。
(すぐに調べ始めたのだが奥が深く、ずいぶん経ってしまった。)
次亜塩素酸水の殺菌効果については各種研究がなされており、『一定の条件下においては』有益なものであることに疑問はない。
しかし、どうにも胡散臭さが拭えないのも事実である。
TLでも、次亜塩素酸水の効果を宣伝、あるいは自院の売りとしてアピールする姿に忌避感を抱いている様子が見て取れた。
かくいう私も、とあるオバサンを関係機関に通報したためにブロックされる憂き目を見た。
そこで今回、次亜塩素酸水の詳細は性質はともかく、法的あるいは行政的な位置付けがどうなっているのか調査をした。
法律用語もあるので難解である。
そしてとにかく長い。10000字近い。読まなくてもいい。
(時間がなければ小括とまとめだけでも)
目次は以下の通りである。
- 1)はじめに
- 2)食品添加物としての次亜塩素酸水
- 3)(財)機能水研究振興財団の次亜塩素酸水に関する資料
- 4)次亜塩素酸水の生成装置
- 5)(歯科)医療機関における次亜塩素酸水
- 6)まとめ
- 7)個人的な感想
- 8)謝辞
2)食品添加物としての次亜塩素酸水
1. 食品添加物の定義と法的根拠
次亜塩素酸水の安全性を強調する文句としてよく使われるのが、「食品添加物としても認められています」という文言である。
そう言われると確かに人体に使用しても安全そうに思える。
化学的にはともかく、法的・行政的にはどのような取り扱いになっているのだろうか。
「食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるもの」
最終的に販売される食品の中に含まれているものだけではなく、製造過程で用いる物も食品添加物としてリストに含まれている。
出典:
食品衛生法第10条では、食品添加物の認可について定められている。
食品添加物は厚生労働大臣が、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて定めるもの、とされている。
さらに食品衛生法第11条では、食品添加物の成分や規格の認可について定められている。
食品添加物は厚生労働大臣が、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、その成分や規格を決めることとなっている。
第11条第2項にも注目したい。
「その基準に合わない方法により(中略)食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、販売してはならない」
厚生労働大臣が定めた規格通りでないと、製造や加工、使用、販売は許されていないのである。
2. 次亜塩素酸水に求められる規格
食品添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)というものがある。
全ての食品添加物の規格等が記載されており、当然次亜塩素酸水についても記載がなされている。
D 成分規格・保存基準各条の次亜塩素酸水の部分を抜粋する。
食品添加物としての次亜塩素酸水は以下のように定義されている。
「塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液。」
強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水の3種類が一括で次亜塩素酸として括られているが、一方でそれぞれ有効塩素濃度やpHなどが定められている。
F 使用基準の次亜塩素酸水の部分を抜粋する。
次亜塩素酸水は、最終食品の完成前に除去しなければならない、とされている。
つまり厚生労働省は、危険なもの、と認定しているわけではないが、人の口に入ることは想定していないのである。
(食品添加物なのに人の口に入らないの?と思った方は2)1.に戻ってみよう)
そう、次亜塩素酸水は食品の製造過程でのみ使用が認められている食品添加物であり、
厚生労働省は、食品添加物に指定したことをもってして次亜塩素酸水の安全性を担保しているわけではないのである。
同様の記載は「公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 各添加物の使用基準及び保存基準」にも確認できる。
https://www.ffcr.or.jp/webupload/e3984852a08b38bffaa3d166a8176173c3916dd2.pdf
次亜塩素酸水は「殺菌料」に分類されている。使用制限は「最終食品の完成前に除去すること」とされている。
使用できる食品や使用量等の最大限度が無制限(空欄)であるのは、「最終食品の完成前に除去すること」が想定されているからである。
同様の食品添加物には塩酸や過酢酸などがある。いずれも製造過程での使用に限定されており、最終食品には含まれてはいけないことになっている。
「塩酸は食品添加物として認められているので安全です」とは到底言えない。
やはり食品添加物であることだけでは、安全であることは担保されないのである。
3. 食品添加物としての次亜塩素酸水の使用方法と消毒効果
話はやや脱線するが、せっかくなので次亜塩素酸水はどんな食品の製造過程で使用されるか見てみよう。
「大量調理施設衛生管理マニュアル」(生食発0616第1号)に使用方法が記載されている。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000168026.pdf
野菜や果物を加熱せずに供する(提供する)場合に用いても良いことになっている。
ただし使用には食品衛生法で規定する「食品、添加物等の規格基準」(前段の2. で紹介したもの)を遵守することが求められている。
つまり、次亜塩素酸水を野菜や果物の殺菌に利用しても良いが、流水(水道水などの飲用適の水)で十分すすぎ洗いを行い、前段で紹介したように「最終食品の完成前に除去する」ことを求めているのである。
(次亜塩素酸水は残留してはいけないことになっているが、水道水ですすいだら水道水に含まれている塩素が残留するんだけど、どうなってんだ?)
器具や容器の殺菌は80℃で5分以上の加熱、またはこれと同等の効果を有する方法で行うこととされている。
この「同等の効果を有する方法」として注釈が付けられており、塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸水、次亜塩素酸水)がリストアップされている。
ここで「浸漬により使用することが望ましいが、浸漬が困難な場合にあっては、不織布等に十分染み込ませて清拭すること。」とある点は注目に値する。
さっと吹き付けて拭う、などという生温い方法では殺菌できない、と読むのが妥当であろう。
この「大量調理施設衛生管理マニュアル」で参考資料として記載されていた「ノロウイルスの不活性化条件に関する調査報告書」(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)の内容は実に興味深い。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000125854.pdf
ノロウイルスの代替ウイルスであるネコカリシウイルスを用いて、市販されている塩素系消毒薬10種類のウイルス不活性化効果を判定した調査報告である。
次亜塩素酸水は被検液FとGの2商品が調査対象であった。
F、G共にボトル入りの液体をそのまま使用している。
実験は、ウイルス液と被検液を混ぜたものと、それに有機物負荷(タンパク質を混ぜた状態、一般的に消毒薬の効果が減弱する条件)をかけたものとで行われた。
有機物の種類は「食品衛生検査指針微生物編」に則り4種類使用したとのこと。
まあとにかく、結果を見てみたいと思う。
被検液Fは弱酸性で有効塩素濃度が200mg/Lと記載されていたようであるが、
検査前の有効塩素濃度は150mg/L、検査後には73mg/Lに低下していた。
被検液Gは中性であり、有効塩素濃度は記載すらされていなかったようである。
検査前の有効塩素濃度は25mg/L、検査後は4mg/Lであった。
さて、この結果をどう見るべきであろうか。
被検液Fは有機物負荷のない条件では効果あり(評価A)。
巷で言われているような、「汚れを拭き取った後に吹き付けると除菌できます」のような使用条件に合致する結果のように思える。
有機物負荷があると散々な結果である。(評価C、一部評価B)
被検液Gに至ってはクソみたいな商品であることが一目瞭然である。(全条件評価C)
さて、実験結果を正しく評価するためには、実験方法を精査する必要がある。
前述した通り、本実験は「ウイルス液に消毒液を混ぜて」いる。
ウイルスに消毒液を噴霧したわけではない。
消毒液に浸漬させた状態に近いと見るべきであろう。
従って本実験の結果は、被検液Fのような商品が宣伝しているような「汚れを拭き取った後に吹き付けると除菌できます」ということの証明にはなっていない。
3)(財)機能水研究振興財団の次亜塩素酸水に関する資料
ただ、次亜塩素酸水の持つ殺菌作用と組織為害性の低さに期待する人は多い。
(財)機能水研究振興財団が食品衛生法10条・11条にも出てきた薬事・食品衛生審議会の部会に提出した資料に、それが現れている。
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会(平成21年8月19日開催)配布資料一覧より
【(財)機能水研究振興財団からの要望】
資料4−1 生食用鮮魚介類の加工への次亜塩素酸水の使用に関する要望書
資料4−2 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料
資料4−3 新しい殺菌・酸性電解水
資料4−4 次亜塩素酸水の食品添加物指定に関連する資料
食品安全委員会評価書 次亜塩素酸水
資料4−1 生食用鮮魚介類の加工への次亜塩素酸水の使用に関する要望書
生食用鮮魚介類に次亜塩素酸水を使うことができれば、生食用の牡蠣による食中毒のリスクが減ることが予想される。是非ともお願いしたい笑
資料4−2 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料
ここに、これまで私が述べてきたことを裏付ける記述がある。
次亜塩素酸ナトリウムよりも次亜塩素酸水の優位性を記す一方で、弱点として有機物の存在下では活性が低下することを指摘しており、その弱点をカバーするためには「流水で使用することが肝心である」としている。
クロスにびしょびしょに含ませて清拭するならともかく、吹き付けて清拭、噴霧などでは、その殺菌剤としての活性を見込めるとは言えない。
また、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの特徴を比較した一覧表も注目に値する。
まず1)供給、を見てほしい。「ユーザーが製造」とある。
次に2)使用、を見てほしい。酸性電解水(次亜塩素酸水)の使用条件として、「希釈せず、新鮮なうちに流水洗浄」とある。
つまり次亜塩素酸水は「ユーザーが製造」し「新鮮なうちに」使うものと、機能水研究振興財団は定義しており、業界団体としては次亜塩素酸水をその化学的不安定性から、生成機器で製造したらすぐに使用することで品質を保証している。
機能水研究振興財団としては、次亜塩素酸水と認められるには、生成装置とセットでなければならないとしている。
1)2.で紹介した食品添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)でも次亜塩素酸水を「(種々の電解槽で)電解して得られるもの」としており、装置から出てきたものでなければ次亜塩素酸水としては認めない、という見解に異論はない。
生成後にボトル詰めして保管して使用することは推奨されていないのである。
しかしこの機能水研究振興財団、この新型コロナウイルスの蔓延に乗じてヤっちゃってるので、個人的に完全には信用はしていない。
多くのトンデモ歯科医院のホームページに書いてある内容と比べたらずっっっっっっっとましな内容ではあるが。
また昨今、次亜塩素酸ナトリウムを希釈し、塩酸等で酸性化したものが次亜塩素酸水として出回っているが、それは次亜塩素酸水溶液であり、当然医薬品でもなければ食品添加物でもない。
ここに関しては「次亜塩素酸水溶液女」の異名をとる薬剤師のゆい先生のツイートが分かりやすいので、気になる方はお目通し願いたい。
4)次亜塩素酸水の生成装置
実は次亜塩素酸水の生成機器にはJIS規格がある。このJIS規格認証に協力した研究者が、私の友人の友人であり、お願いしたところ快く情報を提供していただいた。
「包括的な装置の規格基準はなくメーカーの自主基準に任せている状況であり、品質が不明瞭なもの、メンテナンス等のフォローアップがなされていない装置が散見される状態であった」とある。
業界としてもこれじゃダメだから規格を作ろう、という流れだったそうだ。
果たしてJIS規格は承認された。
そして今日現在、JIS規格に適合した生成機器は存在しない。
さて、ここまで来て意味不明である。
JIS規格に適合した生成装置がないのであれば、この世に存在する次亜塩素酸水の品質とは一体何なであろうか?
JIS規格があるのに認証を得ていない装置を、我々はどうしたら信頼できるというのか。
ただ、JIS規格の管轄は経済産業省であり、JIS規格を有していないからと言って食品衛生法第11条第2項の「その基準に合わない方法により(中略)食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、販売してはならない」の“基準”には該当しないとは言えないのかもしれない。
小括
さて、ここまでウダウダと話を進めてきたが、ここで一度、まとめてみたい。
・次亜塩素酸水の殺菌作用については『一定の条件下において』効果があることは疑問がなく、本ブログでは議論しない。
・次亜塩素酸水は食品の製造過程にのみ用いることが許された食品添加物であり、食品添加物であることは安全性を担保しない。(食品添加物等の規格基準(厚生省告示第370号))
・野菜や果物の消毒でのみ用いることができるが、使用後は残存してはならない(人の口に入ってはならない)食品添加物である。(食品添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)、「大量調理施設衛生管理マニュアル」(生食発0616第1号))
・有機物の存在で活性がすぐに低下するため、流水または浸漬など、十分量のもとで使用しなければ意味がない。吹き付けたり噴霧することは無意味。(「ノロウイルスの不活性化条件に関する調査報告書」(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部))
・生成装置から出てきてすぐのものしか次亜塩素酸水として認められない。従ってボトル詰めしたものは次亜塩素酸水として通用しない。(食品添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会(平成21年8月19日開催)配布資料4−2)
・厚生労働大臣が定めた規格通りでないと、食品添加物としての次亜塩素酸水の製造や加工、使用、販売は許されない。(食品衛生法第11条第2項)
・生成装置にはJIS規格があるが、取得していないからと言って食品衛生法第11条第2項違反になるのかは分からない《←詳しい方教えてください!》
・JIS規格の認証を取得した生成装置は、ブログを記載した2020年4月8日現在、存在しない。(独自情報)
5)(歯科)医療機関における次亜塩素酸水
さて、次亜塩素酸水を歯科医院で使用したり、販売したりしているところがあるそうだが、それが医療機関として適当であるのか、さらには法的な問題についても考えてみたい。
あのオバサンが電解次亜水(≒次亜塩素酸水、pHが異なる:参考文献https://doi.org/10.4009/jsdt.48.90)を(おそらく)ボトルに詰めて500ml 3,000円で販売していること、噴霧していることを一例として取り上げてみよう。
噴霧することが無意味であることは申し上げた通りである。
活性を失えばだの水、噴霧したければ別に好きにしたらいい。
ボトル詰めについても申し上げた通りであり、間違った方法である。
ただこの写真ではボトル詰めして販売しているかどうかはわからない。
もしかしたら生成装置から直接、500ml飲んで帰ってもらっているのかもしれないが、口の中に入れることは食品衛生法違反である。
ここで気になることが3つある。
1点目は「電解次亜水液(500PPM)あります」と宣伝していること
2点目は「歯周病はもちろん、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルスに効果があります」と謳っていること
3点目は500ml 3,000円で販売していいのか、という点
◯◯に効果がある、という広告表示は以下の法律によって規制がなされている。
1. 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
3. 健康増進法
1. 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
略称を薬機法、または医薬品医療機器当法と言う。(旧薬事法)と注釈がつくこともある。
医薬品の定義や取り扱い、広告に関する部分を抜粋してみよう。
第1条の五
「医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は(中略)(医薬品等に関する)正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない」
とされており、科学的根拠に乏しい情報の提供は慎まなければなりません。
第2条第1項
次亜塩素酸水は医薬品として認可されていない。
第2条第4項
次亜塩素酸水の生成装置も医療機器として認可されていない。
“機器そのもの”を診断や治療、予防に用いるわけではないので今後も認可されることはないだろうとのことである。(独自情報)
第66条
医薬品に関して、虚偽又は誇大な広告は認められない。
「医師(など)が推奨!」などの広告も認められない。
第68条
医薬品の認証を受けていないものは、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
名称の広告まで禁じられているとは驚きました。
以上より薬機法では、医薬品ではない次亜塩素酸水の広告をすることは効果について述べることは禁じられている。不用意に名称を用いることも禁じられている。
さて例の画像に戻ろう。
「歯周病はもちろん、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルスに効果があります」
→これは明確に薬機法第68条違反であろう。
「電解次亜水液(500PPM)あります」
→もし、単にこれだけが書いてあったとしたら(意味不明だが)セーフかもしれないが、「電解次亜水液は歯周病はもちろん、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルスに効果があります」と読める以上、誤解を招くため不適切だろう。これも薬機法第68条違反であろう。
販売していることについては、医薬品についての条文はあったが、医薬品でないものについてはよく分からなかった。《←詳しい方教えてください!》
2. 不当景品類及び不当表示防止法
一般的には景品表示法と言われる。
消費者の保護を目的とした法律である。
第5条
いわゆる優良誤認表示を禁止している。
ボトルに詰めた次亜塩素酸水は「ノロウイルスの不活性化条件に関する調査報告書」(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)で説明した通り、効果には大いに疑問がある。
そしてそもそもボトルに詰めた時点で次亜塩素酸水とは言い難い。
これからは次亜塩素酸水だった液体、とでも言えばいいかな。
違反者には措置命令や課徴金納付命令が出される可能性がある。
3. 健康増進法
なぜ健康増進法が?と思うかもしれないが、例えばトクホなどは健康増進法の守備範囲であり、食品に関する条文が存在する。
例えば次亜塩素酸水を、「食品添加物だから安全だ」と食品のように販売した場合はこの法律に抵触する可能性がある。
健康増進法第65条第1項では、健康への効果が必ずしも実証されていないにもかかわらず、当該効果等を期待させるような広告を禁止している。
具体的にどのような広告(文言)が禁止されているのかは、以下の資料が詳しい。
(ビタミンC売ってる歯科医院をぶっ叩くのにも使えそうですよー)
「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(消費者庁)
例えば次亜塩素酸水を、「食品添加物だから安全だ」と食品のように販売した場合、以下のような広告は違反である。
これらに該当する場合、広告内容が著しく事実と相違するか、著しく人を誤認させるかどうかは関係なく、そもそも薬機法第68条違反である。
これも実に興味深い。
よくある「学会で発表されました」は何の担保にもならないことは科学者であれば分かっているが、一般の消費者を欺くには十分であろう。
こうした人を誤認させる広告は健康増進法第65条第1項に違反する。
6)まとめ
- 1)はじめに
- 2)食品添加物としての次亜塩素酸水
- 3)(財)機能水研究振興財団の次亜塩素酸水に関する資料
- 4)次亜塩素酸水の生成装置
- 5)(歯科)医療機関における次亜塩素酸水
- 6)まとめ
- 7)個人的な感想
- 8)謝辞
さて、もう一度観察してみよう。
薬機法第68条、景品表示法第5条違反は明確である。
もしこれを医薬品ではない、食品だ、と言うなら健康増進法第65条第1項違反である。
もう一度通報してみようかしらね。
このような薬機法違反が疑われる医療機関があった場合、こちらに通報しましょう↓
代行も承りますので、ご連絡ください。
おまけ
「次亜塩素酸水 歯科医院」で検索したところバカがたくさん見つかったのでご紹介したい。
次亜塩素酸水はほぼ全ての細菌・ウイルスを“滅菌”します。
さすが第二種歯科感染者在籍の歯科医院は違うぜ(棒)
ん?第二種歯科“感染者”?
ま、誤植は人のこと言えないからまあいいとしよう笑
食品添加物に指定されていることは安全であることを担保しません。
はい、ダウトです。
ボトルに入れたらダメです。
この「●んぽ歯科医院」は完全にヤっちゃってますね。
ポスターには「コロナ対策」「感染症の予防」「ほぼ全ての(微生物に有効みたいなことが書いてあるんでしょう)」「ポイックウォーターがベスト」と書いてますので薬機法違反、景品表示法違反です。
出ました空間除菌!
噴霧!噴霧―!
フンムだっ!
フンムーーーーー!!
7)個人的な感想
JIS規格はともかく、次亜塩素酸水を医療機関で使用することを積極的に推奨することはできそうも無い。
しかし次亜塩素酸水は『一定の条件下であれば』有効である。
広まらない理由は医薬品の認定が取れないこと、生成したらすぐに使用する必要があること、生成装置が高価であること、あたりであろうか。
一方次亜塩素酸ナトリウムは、人体への為害性があるものの、安価であり、冷暗所であればある程度保存が効く。希釈してボトルへ詰めて持ち運ぶこともできる。
大規模な病院の中央機材室などの使用は今後十分ありうるかもしれないが、一般の歯科診療所レベルでどうしても必要になってくるかは未知数である。
あったとしても、ユニットの配管系の維持管理であろう。
え?どうしても欲しいって?
…別にいいんじゃない?
(野菜でも洗ってろよ)
8)謝辞
このブログ作成にあたり、spee先生(@spee_dentalblog)、ゆい先生(@cocotan_to_y)、奥村晴彦先生(@h_okumura)、峰宗太郎先生(@minesoh)のツイートを大いに参考にさせていただきました。(直接引用はしておりません)
この場を借りて感謝申し上げます。
記載事項について何か誤りがあれば、何なりとご指摘ください。
なお記載事項については、2020年4月8日時点の情報であることをご承知おきください。
続報はこちら