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私、能力は平均値でって言ったよね! 作者:FUNA
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448 敵 2

「え? 隣国って、西はブランデル王国、南西はアルバーン帝国、東はマーレイン王国で、北側と南東は海ですよね?」

「北東部で少しだけ、オーブラム王国と接しておるわ! オーブラム王国は北側の海に沿って東西に細長く延びた国で、その南側はマーレイン王国、トリスト王国と広範囲で接し、更に東側の国とも接しているという、面積に対して他国との国境線が非常に長い国だ。

 おまけに、反対側は海だから、もし他国から侵略された場合は縦深が浅い上に後方に逃げ場がなく、一瞬で王都が包囲される可能性がある。

 だから、周辺国との良好な関係を保つことに尽力し、万一どこかの国に攻められた場合は他の周辺国がその国を側面から襲い助けてくれる、という状況を形成するため、とにかく外交には力を入れている国だ。

 周辺国の飢饉や災害時には援助をしてくれるし、他国民からの印象は決して悪くはない。

 そのような国が、おかしなことを企むとは、とても思えんのだ。しかし……」

「思えないのに、おかしな噂が立ち、しかも、あくまでも『噂』に過ぎないから、こちらから変に確認や問合せをするわけにもいかないし、関係にヒビを入れるような真似もできない、と……」

「そういうことだ。お前達は、話が早いから助かる」

 まるで、もう『赤き誓い』がこの依頼を受けることが決まったかのようなことを言うギルドマスターであるが、勿論、それも作戦としての意図的な発言なのであろう。

 しかし、その程度の小手先の技が通用するほど、『赤き誓い』は甘くはなかった。


「で、具体的に、私達に何を依頼したいのかしら?」

「私達は、違法行為や戦争の切っ掛けとなるようなこと、そして死んだ時に女神の前で堂々と胸を張って説明できないような仕事は受けませんよ」

 レーナとメーヴィスが、とりあえず先制攻撃で釘を刺した。まぁ、前回のことから考えてもそういうことではないとは思っているが、念の為ということと、主導権は自分達の方にあるのだぞ、ということのアピールである。

 ギルドマスターも小娘の初歩的な交渉術だということくらいはお見通しであるが、そういうのにもきちんと対応してやるのが、大人の余裕というものである。


「分かっておる。いくら国からの依頼であっても、ギルドが仲介する仕事に違法なもの、恥ずべきものが入ることはない。全て、ギルド憲章にのっとった、正規の依頼のみだ。

 目先の利害でギルド全体の信用を失うような真似はできんし、もしそんなことをすれば、ギルド追放どころか、良くて斬首刑、悪くすれば絞首刑だぞ」

「はは……。どちらも大して変わらないような気が……」

 本気なのか持ちネタなのか分からないギルドマスターの言葉に、乾いた笑いを溢すメーヴィス。

 とにかく、互いの牽制や『御挨拶』は終わった。あとは……。

「じゃ、詳細説明を聞かせて貰おうかしら」

 そう、本題であった。


     *     *


 ギルドマスターの話によると、隣国オーブラム王国で、何やら問題が発生しているようなのである。

 別に謀反や一揆があるというわけではなく、表立って何かが、というわけではないが、小さな村が突然滅んだり、急に魔物による被害が大きくなったり、全滅する商隊が増えたり……。

 いや、ひとつひとつは、そうおかしなことではない。魔物が増えて村がひとつ消えたり、魔物の暴走スタンピードで複数の村や街が一瞬の内に消えたり、大きな盗賊団ができて商隊の被害が激増したりするのは、よくあることである。

 なのに、なぜ『おかしな噂』が流れているのか……。


 何か本当に困ったことがあるなら、周辺国に対して正式に注意喚起の知らせが来るか、援助要請が出されるであろう。それがないということは、別に困っていない、もしくは他国に知らせるほどは困っていないということなのか、あるいは『知らせたくない』ということなのか……。

 確かに、他国に助けを求めるとなれば大きな借りを作ることになるし、国として恥を晒すことになる。それは最後の手段だと考えても無理はない。なので、こちらから無理にしつこく問い合わせるわけにもいかない。しかし……。


「ある程度困っているくらいであれば、普通、間諜達が情報を掴みますよねぇ。それに、遠く離れた国であればともかく、隣国とあっては、いつこの国にも影響するか分かりませんよねぇ……」

 そう、マイルが言うとおりである。噂が流れているのに、上は正式には動かず、他国の間諜が簡単には状況を掴めない。そして、放置するには心配すぎる。

 ……ならば、噂が流れているところ、つまり市井しせいで、庶民の間で丹念に情報を拾うしかないであろう。それも、オーブラム王国側には気付かれないよう、非公式に、こっそりと……。

「あ、『草』の人達は?」

 いくら友好国であっても、間諜の類いを仕込んでおかないということはない。いつ政変が起こり敵対的な政権が誕生するか、分かったものではないのだから……。

 それに、謀反や簒奪による正当性が不確かな政権が、国外に敵を作ることにより国民の不満を逸らして国を纏めようだとか、どさくさに紛れて政敵を潰そうだとか考えて、政権を奪ってすぐに他国との戦争を始めようとするのは常套手段である。


「どこそこの村が消えたらしい、どこそこで商隊が全滅したらしい、とかいう話は拾えるが、だからどう、という情報には繋がらんらしい」

「あ~……。しかし、そもそもどこが『おかしな噂』なんですか? 村が消えた、商隊が全滅した、って、単なる被害情報であって、別におかしな話じゃないですよね?」

「それを確かめるのが、依頼内容だ」

「「「「何じゃ、そりゃ……」」」」

 まぁ、相手の秘密を調べるならばともかく、相手も知らないことは調べようがないし、オーブラム王国側が把握できてもいないことを、僅かな人数で、かつこっそりとしか活動できない間諜に調べさせるというのも無理があるだろう。


「ふぅん……。前の依頼とは大分違うわね……」

「良かったです。同じ展開だと、クレームが来ますからねぇ」

「どこから来るんだよ!」

 マイルの謎の発言に対してメーヴィスが何やら言ってきたが、スルーされた。

 実はマイルは、将来小説がネタ切れとなった時には自分達の活動を元にしたハンター物のシリーズを書こうと考えており、それに備えて日記を書いているのであった。

 そして、同じ展開のネタが続くのはマズいと思っていたのであるが、前回の帝国編と導入部分は似ていても内容が変わりそうなので、ひと安心なのであった……。


(……でも、最初の部分を読んだだけでクレームを付けてくる読者さんもいるから、油断はできないですよねぇ。伏線の回収や説明、謎の解明とかは次巻で書かれるというのが分かるだろうに、あそこはどういうことなのか、この先はこうなる予定なのか、って聞かれても困りますよっ!

 作者自らネタバレさせてどうするのですか、全く! 少しは我慢して待っていてくださいよっ!)


「マイル、どうかしたの? 何か、急に怖い顔して……」

「何でもありませんよっ!」

「「「「…………」」」」


「と、とにかく、オーブラム王国を旅して、気がついたことを適当に報告すればいいのね?」

 今のマイルに触れてはならないと察知したレーナが、何事もなかったかのようにギルドマスターに話を振った。

「あ、ああ、そういうことだ。勿論、正規の間諜……間諜に正規もクソもないとは思うが……も出しているだろうし、王宮の息がかかった商人や草、外交官、その他諸々も普通に活動しているから、別にお前達が何の成果も挙げなかったとしても、何の問題もない。

 あくまでも、お前達は『あわよくば、何らかの予想外の成果を挙げてくれれば』というような感じの、何と言えばいいのか、ええと……、特に期待されているわけではない、いやいや、そうじゃなく、……捨て駒? あ、いや違う、今のは無し! あ~、う~……」

 何だか、ドツボに嵌まってしまったかのようで、焦った様子のギルドマスター。


「何となく、言いたいのであろうことは分かりましたから、無理しなくていいですよ……」

「そ、そうか!」

 メーヴィスからの助け舟に、ほっとした様子のギルドマスターであった。

 レーナ達も、大体のニュアンスは把握したようである。ま、そういうことなのであろう……。

「実は、お前達に依頼することを強く勧めた者達がいたそうでな……」

「「「「やっぱり……」」」」

 前回の報告内容から、ギルドマスターも『赤き誓い』を推挙したのが誰かということには察しが付いていたのであろう。『赤き誓い』の呟きに、苦笑しているだけであった。


     *     *


「……で、結局引き受けちゃったわけだけど……。功績ポイント5割増し、という条件で」

「まぁ、仕方ないわね。依頼金増額やお礼奉公期間短縮とかは、お金の出所がハンターギルドじゃないから、ギルドマスターにはどうにもできないし。

 それに、どうせここでは面白い依頼もなくてマンネリだったし……」

「二重取りできる稼ぎも、功績ポイントも、ギルドや国の上層部への恩売りも美味しいですし……」

「養成学校への授業料や寮費の返済義務がなくなるまでの義務期間カウンターは回りっぱなしでいいそうですし……」

「「「「で、問題は……」」」」


     *     *


「どうしてそんなに早く2回目の修業の旅に出るんですかああああぁっっ!

 ついこの間、1回目の旅から帰ってきたばかりですよね! しかも、その後すぐに長期の護衛依頼で帝国へ行っちゃうし、その後も、ちょくちょく数日間の依頼で出掛けたり、エルフの里とかに行ったり……。

 もう少し宿屋の宿泊客としての自覚を持って、お風呂の給湯とか集客とかを真剣に考えて貰わないと困るじゃないですかっ!」


「あの~、私、レニーちゃんが何を言っているのか理解できないんですけど……」

「安心しなさい。私にも全く理解できないから!」

「私もです……」

「あはは……」

 マイルに続き、困惑の言葉を溢すレーナとポーリン、そして力なく笑うメーヴィスであった……。


「ま、こんなことだろうと思っていたわよ」

「マイルちゃんが言うところの、『想定の範囲内』というやつですよね」

「宿屋の客というものは、宿側からどこまでの奉仕を要求されるものなんだい?」

「たはは……」



2月9日(日)、いよいよワンダーフェスティバル【2020冬】、開催です。

そして、こみの工房さんから、マイル、カオル、ミツハの3人娘各10体ずつと、フィーア(『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』)の見本展示ががが!

こみの工房さんのHPにて、マイルとフィーアを組み合わせた見本写真が公開中。(^^)/


そして、その『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』の1巻が、再重版!

1巻を買わずに2巻を買う人はあまりいないから、1巻の重版というのはありがたいんですよねぇ……。

そして、常に作家を苛む、「重版して貰って、それが売れずに丸々不良在庫になったら……」という心配。

いーんだよ、そんなこたぁ! それは、そう決めた営業さんが心配すればいい!


作家「誰が決めた?」

営業「……俺だ!!」


営業「我、営業かみの名の許にこれを重版す。汝ら、罪無し」



そして、書籍化作業に備えて書きためをしなければならなかったこの週末、なろう作品を読むのがやめられなくて徹夜で一気読みしてしまう……。


『釣りガールの異世界スローライフ ~釣りスキルで村を大きくします~』(完結済み)、てめーのことだ!!〇| ̄|_

釣られたクマ~!

……そして、例によって、貧乳キャラ。(^^ゞ

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