「では心を込めて。ハァッピ、バァースデーイ」
「うわもうやめて」
「トゥー・ユーウ」
「その余韻もやめて」
「ハァッピー、バースデイ」
「マリリン・モンローの物まねもやめて」
「トゥー・ユー」
「好きじゃない」
「ハァッピバァ――……この渾身のファルセットちゃんと聴いて。バァ――!」
「無駄にうまい」
「アァ――!」
「どこまで伸ばすの」
「アァ――スデ――エィェィエ――」
「本当に無駄にうまいんだから」
「ェエ――イ、ディーア」
「あー、あー、あー! 聞こえない!」
「………………」
「あー!! あー!! わー!! ……終わった?」
「ジェ」
「あーっ! 聞こえない聞こえない! 何も聞こえなーい!」
「じゃあそこは省略して、ハアッピバースデーイ、トゥー・ユー。おめでとう。終わり」
「ありがとう。ひゅう、やっと終わった…………」
「苦行僧みたいな顔するなら歌わせなきゃいいのに」
「そこは褒めてくれなくちゃ。Bランクあたりの苦行僧としては、Aランクの拷問に耐えられる日を夢見てさ、日々苦行にいそしんでるんだから。はいはいケーキ! フー! 蝋燭の火も全部消したよ。終わり終わり。おつかれさまでしたー」
「今年も一年、おつかれさま」
「……本当だよ。いつまで続くと思う?」
「さあ」
いつかの6月28日
June 28,2020
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宝石商リチャード