皮脂欠乏症(乾皮症)とは

皮脂欠乏症(乾皮症)は、皮膚の表面の脂(あぶら)が減少することにより皮膚の水分が減少して、乾燥を生じてしまう病気です。中高年者の手足、特に膝(ひざ)から下によくみられ、皮膚がカサカサしてはがれ落ちたり、ひび割れたりします。

また、かゆみを伴い、掻(か)くと悪化して湿疹になったりします。空気が乾燥しはじめる秋から冬にかけて症状が出はじめ、真冬になるとひどくなりますが、夏には自然に軽快したり、治ったりしてしまうこともあります。

皮脂欠乏症になりやすい人?

だれでも年をとってくると、程度の重い軽いはありますが、皮膚の乾燥が生じてきます。女性の方が男性よりやや早い年代から起こってくるようです。軽い皮脂欠乏症は、病気というより自然な変化といえるかもしれません。症状がひどくならないようにスキンケアをすることが大切です。
 

皮脂欠乏症の進行

     はじまり ⇒

 乾燥と角質(かくしつ)のはがれがみられます。かゆみも伴っています。

     進行すると ⇒

 亀の甲らのように皮膚がひび割れ、赤みもわずかに生じています。かゆみもかなり強くなっています。

    さらに進行すると

 皮脂欠乏症が進んで皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)に至った状態です。かゆみもひどく、夜中に目が覚めるほどです。

どうして皮脂欠乏症になるのでしょうか?

一般に、皮膚のうるおい(水分量)は皮脂(ひし)、天然保湿因子(てんねんほしついんし)、角質細胞間脂質(かくしつさいぼうかんししつ)という3つの物質によって一定に保たれています。

ところが、加齢などが原因でこれらの物質が減ってしまうと、皮膚がひどく乾燥し、皮脂欠乏症になってしまいます。また、外気や室内の乾燥、からだを洗いすぎるといった生活習慣なども原因の1つと考えられています。

放っておくとますます症状が悪化しますので、早い時期から治療することが大切です。

※皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質については「皮膚がうるおう理由」でくわしく解説しています。
 

健康皮膚


 角質細胞と角質細胞の間に角質細胞間脂質がぎっしりとつまっていて、すき間がみられません。皮脂膜も保たれ、天然保湿因子も十分に存在しています。

乾燥皮膚


 角質細胞がはがれてすき間ができ、水分が逃げやすい状態です。皮脂膜や天然保湿因子も減少しています。
 
 

皮膚がうるおう理由

1. 皮脂

皮脂腺から分泌される脂(あぶら)のことです。汗などと混じりあって皮膚の表面をおおい(皮脂膜)、水分の蒸発を防ぎます。

 

2. 角質細胞間脂質

表皮で作られ、角質細胞と角質細胞のすき間をうめている脂のことです。角質細胞同士をくっつけるニカワの役割をするとともに、水分をサンドイッチ状にはさみ込み、逃がさないようにします。

 

3. 天然保湿因子

角質層にある低分子のアミノ酸や塩類などのことです。ナチュラル モイスチャーライジング ファクター(NMF)ともいわれ、水分をつかまえて離さない性質を持っています。
 
 

日常生活で心がけること

ふだんの心がけが大切です

 1. お薬を正しく使いましょう

皮膚にうるおいを与えるぬり薬、また、かゆみや湿疹を抑えるぬり薬や飲み薬などがあります。

お薬は先生の指示をよく守り、正しく使いましょう。

   2. ゴシゴシ洗わない

 皮脂をとりすぎないことが大切です。お風呂に長く入りすぎたり、ナイロンタオルなどを使ってゴシゴシ洗いすぎたりしないようにしましょう。

3. 皮膚のうるおいを保ちましょう

 皮膚にうるおいを与えるぬり薬を朝晩2回ぬりましょう。特にお風呂上がりが効果的です。
 
 
 

 4. お部屋の乾燥に注意

 空気が乾燥すると、皮膚の乾燥やかゆみもひどくなります。加湿器などを使ってお部屋の湿度を保ちましょう。

 5. 掻(か)かないことが大切

 掻くと症状がひどくなるので、できるだけ掻かないように努めましょう。また、爪は短く切りましょう。

  6. 刺激の少ない肌着に

皮膚を刺激すると、かゆみがひどくなります。肌着類などは、なるべく肌にやさしい木綿(もめん)のものにしましょう。

 
 
 

 7. アルコールは控えめに

 アルコールや香辛料などの刺激物をとりすぎると、からだが温まり、かゆみがひどくなります。控えめにしましょう。