長いステムに交換する

こんにちは。からあげです。

はじめに

堂城賢(たかぎまさる)さんが提唱する「おじぎ乗り」習得のため、ポジションの見直しを行うことにした。

まず始めに手を付けたのはシートポストの交換だった。
オフセットの大きいシートポストでサドルを後方に移動させることで、ハンドルを遠ざけて前傾姿勢をとりやすくする。
オフセット37mmの日東S84を試してみると、窮屈だった姿勢が少し楽になり巡航スピードが上がったのだった。

シートポスト交換の結果に満足した私は、ポジションの見直し第2段としてステム交換を行った。
長いステムに交換してハンドルを遠ざけ、さらに深い前傾姿勢をとれるようにする。

 

ギザプロダクツ MS-308A 長さ100mm に交換

今回ステム交換する自転車は、機械式ディスクブレーキ仕様のサーリー ディスクトラッカー。
世界的な定番のツーリング車。

ステムはギザプロダクツの長さ(突き出し長)80mm。

Giza Products MS-308A ブラック(長さ80mm)

バークランプ径  31.8mm 
コラムクランプ径 28.6mm 
スタックハイト  40mm 
アングル     84°/96°

GP | GIZA PRODUCTS [ギザ プロダクツ]
MS-308A アヘッドステム

 

ステムには2種類の規格があって、ママチャリなどに使用されているノーマルステム(スレッドステム)。もうひとつはスポーツ自転車で多く使用されているアヘッドステム。形状が全く違うため、互換性はなし。アヘッド方式は剛性があり、スポーツ自転車では主流となっている。

ステム選びの際に注意しなければならないのは、種類、長さとアングル以外にバークランプ径・コラムクランプ径・スタックハイトの3点。

バークランプ径はハンドルバーを固定するクランプ部分の径で、25.4mm、26.0mm(以前の主流)、31.8mm(太めの主流)などの規格あり。

コラムクランプ径はフロントフォークのコラムを固定するクランプ部分の径で、25.4mm(ノーマルサイズ)、28.6mm(オーバーサイズ)、31.8mm(スーパーオーバーサイズ)などの規格あり。

スタックハイトはコラムクランプ部分の高さ。メーカーや型式によって微妙に異なるので注意が必要。異なる場合は、コラムを切らずになるべくコラムスペーサーで調整するようにする。

 

ギザプロダクツ MS-308A 長さ100mm

無難に同じメーカーで同じ型式、アングルも同じで20mm長いステムを選択した。
単に付け替えるだけでよく、もっとも簡単な方法だ。
簡素で手頃な価格。そして必要十分な剛性を備えていてツーリング用途にピッタリだった。

20mm長くなっても重量は10g増加したのみ。

 

ステムの長さはハンドルバー中心からコラム中心まで。

ハンドルバークランプ部分(よこ)

ハンドルバークランプ部分(正面)

ボルト4本留めでしっかりと固定できる。

フェイスプレート内側にはズレ防止のための凸凹が設けられているが、あまり機能しない。

ステム交換前のハンドル周りのようす

自作のステムバッグを2個やサイクルコンピューターなどを取り付けている。
まずはこれらを取り外す必要がある。

サイコンはフロントライトやスマホホルダーと干渉しないステムの上に取り付けていた。

斜め上から

センタースタンドで立てた状態でステムを外すとフォークがスッポ抜けるので、前カゴに重量ブロックを載せておく。

実はほかにいい方法があるのだが、この時は全く思いつかず。整備スタンドを持たない世間一般の人はブロックなどの重しを載せてやっているもんだと思っていた。

新旧ステムの比較。
下が80mm、上が100mm。

アンカーボルトとトップキャップ。

トップキャップ裏面。
この段差が非常に重要。アンカーボルトでしっかりとステムを押さえ付ける。

スターファングルナットのようす

コラム上端が3mm程度下がっていることに注目。トップキャップの段差よりも深くなければならない。

ついでにヘッドパーツのグリスアップをやればいいものを、グリスを足しただけで復旧する。この時はどうしてもやる気にならず。

まず先にステムの方を固定してからハンドルを取り付ける。(写真は作業後に行った締め付けの確認。)

スペーサーで高さ調整してからステムの取り付け。アンカーボルトを適度に締め込む。ヘッドパーツのベアリングにガタツキが出ない程度にして強く締めすぎない。
それからステムとタイヤが一直線上になるように調整し、コラムクランプ部分の固定ボルト2本を均等に締め付ける。

トップチューブに跨った状態でやった。

ステムの取り付けが完了したところ。
スタックハイドが同じため、コラムスペーサーで調整する必要はなし。
ブレーキ・シフトケーブルの交換も必要なし。多少の変更で交換する必要がないように、ケーブルは長めに設定していた。

アヘッドステムの場合、ハンドルの高さ調節はコラムスペーサーの入れ替えで行うため、一つ持っておくととても便利。各種厚みあり(10mm×1 5mm×1 3mm×1 1mm×2)。

 

ヘッドチューブとアウターケーブルが擦れてペンキが剥がれていたため、ビニールテープを貼って保護しておいた。

ステムを20mm長くすると、明らかにペダルがよく回るようになり、巡航スピードが上がった。
深い前傾姿勢にもすぐに慣れて、物足りなく感じるようになった。
もっと深く。もっと深く。

そう思った私はさらにステムを20mm長くすることにした。

 

シマノプロ LT ステム 長さ120mm に交換

シマノプロ LT ステム 長さ120mm

ステムは長さ120mm以上になると、選択肢が一気に少なくなり高価にもなってくる。
耐久性と信頼性に欠けるカーボン製は却下。規定トルクでの締付けなど取り扱いに気を使い、不意に衝撃を受けるおそれのあるツーリングや自転車生活ではカーボンは不向き。

安価で丈夫なアルミ製でなおかつ簡素なものがいい。そうおっさんはわがままなのだ!
そうして取捨選択してゆくと、シマノプロ LTステムが残された。多少の柄が入っているが、ギリギリおっさんの許容範囲内。3Tという有名なメーカーもあるが、派手で私好みではない。

トップチューブがほぼ水平の旧ディスクトラッカーに合うように、アングルは±17度を選択した。
スタックハイトはギザプロダクツものと同じ40mm。コラムスペーサーで調整する必要はなかった。

重量は166gとやや重めだが、剛性が高い。

 

角度を替えてもう一枚。

フェイスプレートには右肩上がりの矢印あり。
「まるで私の人生を象徴しているかのようだ。」などと一人ニンマリとする。

斜め前から撮影。

ハンドルバーを固定するクランプ部分には先進のヘッドロックシステムが採用されていて固定力は十分。ハンドルがズレることはなし。固定ボルト4本のうち、上2本を完全に締め付けてから、下2本を締め付けるようになっている。

フェイスプレート側面に「TOP」「CLOSE GAP」の表示あり。

コラムクランプ部分

この高さがスタックハイトとなる。

コラムクランプはボルト2本で固定する。アルミの肉厚があり固定力が高そうに見える。(実際にしっかり固定してくれる。)

 

他のステムとの比較

シマノプロの品質の良さを知ってもらうために、ブランド不詳のアルミ削り出しステムと比較してみる。

長さは同じ120mm、アングルは±6度。
重量はシマノプロLTは166。ブランド不詳のアルミ削り出しは132g。

ハンドルバーはボルト4本留めだが、フェイスプレートの形状が大きく異る。

左がブランド不詳、右がシマノプロLT

H型と面とでは剛性が大きく違うだろう。
軽量バイクに取り付けるならいいが、耐久性や信頼性が求められるツーリング車には合わない気がする。

Hの形状に加えて肉厚が薄いのも気になる。

クランプ部分

下のブランド不詳ステムは穴を空けて軽量化してある。
スタックハイトはシマノプロLTは40mm、ブランド不詳は35mm。

角度を替えてもう一枚。
ブランド不詳のステムも悪くない加工が施されている。工業製品としてはそれなりに美しい部類。だが私好みではなかった。

結局、手に入れただけで使用せず。シマノプロLTを使った。

80mmのステムと比較する。40mm長くなると見た目だけでなく、乗り心地も大きく変わるということを後になって理解する。

ステム取り外し前のようす

右バーエンドに大型ミラー。ステムの両側には自作のステムバッグを取り付けている。
じつに実用的な自転車だなと自画自賛しつつ作業を始める。

このステムバッグ。使い心地は良いのだが、付け外しに手間が掛かるのが欠点。

ギザプロダクツのステムも悪くはない。調整がしやすく値段が手頃。だが締め付け力が弱いとズレるのが欠点だった。

自作のステムバッグを取り外したところ。
中古のシルバーシートで自作したもの。縫製作業を簡略化するため、底はロープで縛るようにした。

ぶつけても壊れることはなく、紫外線に晒されても劣化しにくい。水ボトルだけでなく、モバイルバッテリーやヘッドランプ、補給食などの小物類を入れられてとても便利。

もう少し見栄え良く作って着脱を簡単にできるようにしたら売り物になると思うのだが、その行程が非常に面倒くさい。同じものをたくさん作るようになると、楽しい楽しい裁縫がただの苦行になってしまう。

次にバークランプのボルト4本を抜いてからハンドルを外す。
ケーブルで繋がっているので、自由が効かないのが鬱陶しい。

ギザプロダクツ MS-308Aのバークランプのようす。

ハンドルには若干のペンキの剥がれあり。
アルミは錆びにくいので汚れを拭き取っておくだけでいいだろう。

ステムを外すと、フォークがすっぽ抜けて鬱陶しい思いをする。
なにか良い方法はないものかと、頭を絞って考えてみた。

するとペダルを外して横に寝かせればいいことに気がついた。この方法は大正解だった。
しっかり固定できる整備スタンドなしの作業では常に工夫が求められる。ツーリング先での不慮のトラブルに柔軟に対応するためにも普段から考えておくことが重要だ。

外したギザプロダクツのステム。わずか4,000kmしか走っていないのに傷が付いている。
頻繁に逆さにして整備しているとこうなるか。

ステムを外すついでにヘッドパーツのグリスアップを行うことにした。
フォークのすっぽ抜けが鬱陶しくて先延ばししていたら、いつの間にか10,000kmも走っていた。

中に入れていたグリスは真っ黒。

フォークコラム部分の付け根。一番負荷がかかるところ。
ペンキが剥げて地肌がむき出しになっている。

楽に整備する方法が分かったことだし、次回からはこまめにグリスアップすることにした。

分解したヘッドパーツ。
圧入されているヘッドチューブ両端のもの以外は全て外れる。

ドロドロのギットギト。

トップチューブ内部を丁寧に掃除する。

するとチューブ内はピカピカになった。

コラムの付け根もピッカピカ。
うむ、満足満足。などと脳内で呟きながらご機嫌で作業を進める。

パーツもキレイになった。

プレミアムグリスを惜しげもなく使って組み立ててゆく。
普通のグリスとは段違いに長持ちする。

 

ヘッドパーツのダストカバー

よく見ると内側にOリングが取り付けられている。
そのため大雨のなか走っても、グリスが雨で流れることはなし。

ステムの取り付け完了。

シルバーのベルがよく目立つ。あとでペイントマーカーで黒く塗っておいた。
ステムはだいたい水平。

前から見たようす

違和感は特になし。

この右肩上がりの矢印が気に入った。

 

ステムを長くした感想

シマノプロLTステムに交換して驚いたのは、長くしたのに剛性が上がったこと。
取り付けている段階で早くも感じた。シマノプロはまるで違うと。

ただ剛性が大幅に上がって走りやすくはなったが、長距離を走ると疲れるようになった。
それ以外、とくに欠点はなし。人生のように休み休み走れということか。

ハンドルが遠くなってより深い前傾姿勢をとれるようになると、巡航スピードが上がり楽に走れるようになった。脚に自然と力が入り、ペダルがくるくるとよく回る。まるで別のエンジンを積んだ車のように思えた。おじぎ乗りの真価が現れた。

100mmから120mmは慣れるまではハンドルが遠く感じたが、慣れたら120mmでも物足りないと思うようになった。

そこでコラムスペーサーを調節して15mm下げみた。
大きく下げるとハンドルに体重が乗って脚に力が入りにくくなるので、15mm下げたところで止め。
数mm程度ハンドルが遠くなり、気持ち漕ぎやすくなった。

ステムが120mmもあると、サイクルコンピューターを取り付けても余裕あり。

 

これでポジションの見直し第2段はひとまず終了。

あとはさらに長いシマノプロPLT130mmのステムに交換するか、リーチが長いハンドルに交換するかのどちらかだ。今のディズナクロスバンディーのリーチは60mm。まだまだ調整の余地はある。

思い切って新ディスクトラッカーのフレームに買い替えて、一つ大きなサイズのフレーム(46cm→50cm)にするという手もある。さて、どうするかな。