2020年2月放送のフジテレビ系音楽番組『Love music』の“ハロー!プロジェクト”全58人アンケート調査で「メンバーが選ぶ ダンスがうまいメンバーランキング」の1位に選ばれたJuice=Juice稲場愛香(いなば・まなか)さん。愛らしいルックス、小柄ながらもダイナミックかつ繊細なダンス、あざとかわいいキャラも魅力です。4歳からダンスを始め、ダンス歴は約20年というハロプロのダンスクイーンに、これまでの経歴や「ダンスがすごい!」と思うMVなどをじっくりと語っていただきました。
撮影:草刈雅之 取材・文:東海林その子
記事制作:オリコンNewS
ハロプロを好きになったきっかけはスマイレージ「私はオタク?」
――まずはダンスを始めたきっかけから教えてください。
母の話によると、首がすわって間もない頃から宇多田ヒカルさんの『Automatic』に合わせてノリノリで動いていたらしいんです。2〜3歳頃からは音楽が流れると常に踊っていたそうで、母が「習ってみたい?」と聞いてくれて、4歳からダンスと歌を習い始めました。
――本格的にダンスを続けていこうと思われたのはいつ頃だったのでしょうか?
小さいときはとにかく楽しいという感情しかなかったんですけど、小学5年生で別のスクールに移ったときに、歌のレッスンは継続せず、ダンスだけを習うことにしたんです。新しいダンススクールでは上手な人がたくさんいたし、アイソレーション(首だけ、肩だけ、胸だけなど、体の一部分を単独で動かす技術)とか、できない動きがたくさんあって、「自分ってまだまだだったんだな」「この壁を乗り越えたいな」という気持ちが初めて芽生えたんです。
ただ楽しいだけじゃなくて、難しいとか、悔しい気持ちもあるからこそ、「もっと上手になりたい」と思って、そこから本当にダンスを好きになったのかなと思います。自分でもなんでなのかは分からないんですけど、ダンスを踊れば風邪を引いていても元気になれるし、とにかく好きっていう気持ちが大きかったんです。
――そんな稲場さんがハロプロに入ろうと思った経緯を教えてください。
中学1年生くらいまでそのダンススクールに通ったんですけど、最終的に特待生に合格してスクールの中で一番上のクラスにいけたので、やり尽くした感が出てしまって「新しい場所に行きたいな」と思いました。
ハロー!プロジェクトが好きだったので、中学1年生のときに「モーニング娘。9期オーディション」(2010年)を受けました。合格はできなかったけれど、「アイドルになりたい」という気持ちが大きくなったので、地元・北海道のアイドルグループに入りました。何年もダンスだけをやってきたからこそ、歌いながら踊るのが難しかったですし、自分だけが目立てばいいわけではないので、そろえるダンスや自分で振りを作る難しさもそこで学びました。
――ちなみに、ハロプロを好きになったきっかけは?
もともとハロー!プロジェクトは知っていたんですけど、中学に入ってアイドルの映像を見ることにハマって。その中でスマイレージ(現アンジュルム)さんの動画にたどり着いて、前田憂佳(2011年12月末で芸能界引退)さんのことがすごく好きになったんです。人生で初めて、「私はオタクなのかもしれない」と思って(笑)。前田さんが本当にかわいすぎて、母にもちょっと心配されるくらい、ずっとYouTubeで動画を見ていました(笑)。
特にデビュー曲の『夢見る 15歳(フィフティーン)』(2010年5月発売)や『同じ時給で働く友達の美人ママ』(同年9月発売)のMVがすごく好きで、カラオケでもたくさん歌いました。今はいろんなタイプのアイドルがいると思うんですけど、私は今でも“かわいいアイドル”がブレずに好きで、前田さんのようなキラキラした姿に憧れるようになりましたね。
憧れのハロプロ入りで味わった二度目の挫折
――2013年にハロプロ研修生に加入しますが、憧れのハロー!プロジェクトに入っていかがでしたか?
すごいなって思いました。歌やダンスを妥協しないところがプロだなって。研修生になったのは高校1年のときでしたが、自分はもう大人だと勘違いしていたんです。でも礼儀などを根本的なところから教えていただいたし、歌もダンスも想像以上に大変で、二度目の挫折を味わいました。
――そんななかで2014年にはカントリー・ガールズへの加入が決まります。
カントリー・ガールズはとにかくかわいい振り付けが多かったので、ダンススクールで習ってきたヒップホップがそのまま生かせるかというと、そうではありませんでした。でも私はかわいいアイドルが大好きだったので、自分のダンスを生かしつつ、ちょっとした首の角度や腰の使い方でどうかわいく表現していくかを、鏡を見ながら研究しました。
でもあるとき、ダンスの先生から「合わせ過ぎても稲場らしさが消えてしまうから、かわいらしい動きの中にキレを出してもいいと思う」とアドバイスしていただいたんです。かわいらしさを出すか、自分らしさを出すかは、そのステージや曲によっても違うので、どうしたらいいんだろうってすごく考えて。当時はどうするのが正解なのかわからないという気持ちが大きかったですね。
――2016年に喘息の治療のためカントリー・ガールズを卒業し、2018年からJuice=Juiceのメンバーになりました。大人っぽくて歌唱力に定評のあるグループですよね。
そうなんです。Juice=Juiceに加入したからには「歌が得意ではない」という言い訳はもう通用しないので、菅井(秀憲)先生にボイストレーニングで指導していただきながら、力強い声を出すトレーニングをするようになりました。自信を持って歌うことはまだできていませんが、歌はダンス以上に気持ちに影響されやすいことがわかったので、メンタルを鍛えることも大切だなと思っています。
ダンスの面だと、私だけひときわ身長が低い(152センチ)ので、大人っぽい動きをしようとしてもセクシーに見せることが難しくて。たくさん鏡を見て踊って、脚が長くてスタイルのいいメンバーと合わせつつ、自分の体型に合ったダンスを研究しているところです。深く考えすぎると、昔先生に言われたように自分のよさが出なくなってしまうので、「ここは好きなように踊って」と任せていただいたたら、そのときは思い切り踊るようにしています。
――踊るための体作りで意識していることはありますか?
体がすごく重いなと感じるほど太らなければ、基本的に何かをする必要はないかなと思っています。もともと筋肉がつきやすい体質なので、筋トレをしすぎるとその分体が重くなってしまいますし、体をこう動かせばこう動くというのは自分が一番よくわかっているので。リハーサルで毎回全力で踊って、体を動かしたあとには柔らかい筋肉を作るために、必ずストレッチをするようにしています。
「このダンスがすごい!」MV3選-ハロプロ編
――では、ここからは稲場さんが「ダンスがすごい!」と思うMVをご紹介いただきたいと思います。まず、ハロー!プロジェクトの中から3作品お願いします!
℃-ute『夢幻クライマックス』:ハイヒールでも全くブレない動き
最初に浮かんだのは、℃-ute(2017年6月解散)さんの『夢幻クライマックス』(2016年)です。曲自体がすごく難しくて、音数もたくさんある中で、セクシーで女性らしくカッコいい振り付けがすごく印象的です。℃-uteさんはいつも、ものすごく高いヒールで踊られているのに動きが全くブレないんです。
私はこの曲をバースデーイベントで踊らせていただいて、オリジナルの振り付けに加えて間奏部分をアレンジしたんですけど、見ているだけでは伝わらない難しさがあるんですよね。ちょっとした止めだったり、縦に体を回す場合、自分が思っている以上に動かないと見ている人には伝わらなかったり。それを、歌いながらハイヒールで踊っていたんだなと思うと、改めてすごいなと感じるMVです。
アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』:かっこよさの中に繊細さ
2曲目はアンジュルムさんの『全然起き上がれないSUNDAY』(2019年)。このMVは全員裸足で踊っていて、今までのアンジュルムさんにはなかったような振り付けがすごく多い曲です。中でも、いつもダイナミックに踊る佐々木莉佳子ちゃんのカッコよさの中に繊細な動きが見えて、改めて「莉佳子ちゃんのダンスは素敵だなぁ」とホレボレします。
船木結(ふなき・むすぶ/2020年12月卒業)ちゃんは私よりも小柄なのに、踊っているとそれを感じさせないパワーがあって。細かい手の動きや体の使い方がすごくきれいで、スタイルがよく見えるんですよね。そういう部分がよく分かるMVだと思います。アンジュルムさんは振り付けが激しくてカッコいい曲がいっぱいあるんですけど、私は繊細な動きに目がいきますね。
モーニング娘。’15『冷たい風と片思い』:鞘師里保さんのダンスに衝撃
ハロプロ編の最後はモーニング娘。’15さんの『冷たい風と片思い』(2015年)です。これはもう、私が鞘師里保(さやし・りほ/2015年12月卒業)さんのことが大好きなのも大きな理由なんですけど(笑)。
鞘師さんは私にとってすごく偉大な方で、ずっと尊敬している憧れの先輩なんです。この曲では長いアイドル生活を経て、かわいくてダンスが上手な鞘師さんが、どんどん強くなっていく背景まで見えてくる気がするんですよね。特に間奏は「そこでこのダンスをするんだ!」というような、曲からはあまり想像がつかない振りで、初めて見たときに本当に衝撃を受けて。音数の少ない、歌詞がない部分でも、気持ちが伝わってくるダンスを踊られるんですよね。
私はダンスを始めて20年くらいになるんですけど、昔から音が早取り(音やリズムに対して動きが早くなること)になってしまうことが多いんです。鞘師さんのダンスは音にぴったりハマっているようにも見えるし、場所によってはあえて遅く音を取っているような、その“タメ”がすごくカッコいい。安定感のある、我慢強いダンスというイメージがあります。音の最後の最後ギリギリで音ハメをするダンスが見ていて本当にカッコよくて、「やっぱり鞘師さんのダンスはすごい」と思わせてくれたのがこのMVです。
――この曲は、鞘師さんが卒業する直前にリリースされたシングル『冷たい風と片思い/ENDLESS SKY/One and Only』(2015年12月発売)の楽曲でしたが、交流はあったのでしょうか?
ご卒業されるちょっと前はいろいろお話する機会がありましたし、ご卒業をされるときはお手紙を書かせていただきました。パフォーマンスのことなどに関して相談させていただき、ただ憧れていた鞘師さんがちょっとだけ身近に感じられたときに改めてすごい人だなと感じました。
大先輩なのでちょっとしたことでは連絡しづらいんですけど、今もたまに連絡を取らせていただいていて。「タイミングがあったら会いたいね」と言ってくださっているので、夢がかなえばいいなと思います。
「このダンスがすごい!」MV3選-ハロプロ以外編
――では続いて、ハロプロ以外で3作品あげていただけますでしょうか。
TWICE『Feel Special』:それぞれの個性が出ているのに一体感
まずはTWICEさんの『Feel Special』(2019年)。曲自体がすごく好きで、歌詞に勇気づけられたというか、共感する部分があったり、誰かに見られる立場の人たちにすごく寄り添っている曲だなって思うんです。すごくキラキラしているのに葛藤も描いているコントラストが素敵なんですよね。
私は特にMOMOさんが大好きなんです。“ももりん”はスタイルからして私は持っていないものをすべて持っていて、男前なカッコいい踊りもされる方で。この曲は基礎的なダンスのうまさがすごく引き立つ振り付けだなぁと思うんです。ちょっとした首の角度や指の動かし方とか、細かい部分で女性らしさが出ていて、1曲の中で「かわいい」「女性らしくてセクシー」「カッコいい」というのが全部見られます。
それぞれの個性が出ているのに一体感があるというのも、グループで活動している身として勉強になります。Dance Practice Videoの映像もよく見るんですけど、みなさんがモノトーンのレッスン着で統一されていて、儚い感じがすごく伝わってくるし、振り付けも本当に揃っていて好きな一曲です。
s**t kingz『Oh s**t!! feat. SKY-HI』:語彙力がなくなるカッコよさ
2曲目は4人組ダンスパフォーマンスグループ・s**t kingz(シットキングス)さんの『Oh s**t!! feat. SKY-HI』(2020年)。ハロプロのダンス好きなメンバーが出演するCS放送の番組『ハロプロダンス学園』にゲストで来ていただいたときに、初めてs**t kingzさんのダンスを生で拝見したんですけど、本当にすごすぎて。ダンス学園のメンバーもみんなファンになっちゃって、それからMVもたくさん見ているんです。
この曲の振り付けはすごくコミカルで、語彙力がなくなるくらいのカッコよさなんですよ。見ているだけですごくワクワクして、見て楽しむダンスってこういうことを言うんだなあと感じた1曲ですね。
『ダンス学園』では実際に振りを付けていただいたんですけど、「今までガツガツ踊ってきたから男性らしい動きをやりたいです」と自分から言ったわりに、全然うまくできなくて。男性らしいセクシーさを出すのがすごく難しくかったんですが、それを直接学べたことはすごく勉強になりました。
三浦大知『Unlock』:感動と同時に挫折を感じた
最後は三浦大知さんの『Unlock』(2015年)。三浦さんと菅原小春さんが一緒に踊られているMVでかなり有名だと思うんですけど、もうやっぱりすごくて。初めて見たときにおふたりとも上手すぎて、感動と同時に挫折を感じました。私なんかもう……みたいな(笑)。
三浦大知さんはしなやかな動きも、力を抜いたダンスも素敵なんですよね。カッコつけたいときって、つい大きく、激しく踊りたくなったり、力んでしまうんですけど、そこを抑えるのもカッコいいんだというのが、このMVにはすごく表われていると思います。
菅原小春さんは女性が惚れてしまうくらい、カッコいい女性だなぁって思います。菅原さんがダンスを踊っている映像はたくさん見ているんですけど、髪の毛が今まで見たことのない動きをされる方なんです。あの動きは菅原さんしか見たことがない。私も「髪の毛まで踊っているね」と言っていただくことがあるんですけど、比にならないです。
重力がどうなっているんだろう、どんな空間にいるんだろうって疑問に思うくらい、不思議で仕方がなくて。その動きもしっかり映っているMVなので、もしまだ観ていない方がいたらぜひ観ていただいて、これが本当のダンスなんだというのを感じてもらいたいです。
ハロプロのダンス推しメンは佐々木莉佳子&西田汐里
――ダンスがすごいと話題になる動画は、よくチェックされるんですか?
そうですね。海外で活躍されている女性ダンサーの映像とかをYouTubeで見ると、本当に楽しくて。心から湧き上がるような何かが生まれてくるのは、すごいダンスを見たときなんです。
ハロー!プロジェクトで活動させていただいていると、特に『ハロプロダンス学園』では壁にぶつかることも多いんですけど、そういうことがあるとすごく燃えます。挫折するのが好きなわけではないんですけど(笑)。「誰かに負けたくない」というよりは、「これができないのが嫌だ」という気持ちが大きいので、自ら壁を探していくような部分もあるんです。「こんなにすごい人がいるんだな」と感じるためにも、定期的に動画をチェックしています。
――ハロプロ現役メンバーで、ダンスが気になるメンバーはいらっしゃいますか?
自分と正反対なダンスでカッコいいなと思うのは、先ほどもお話しした佐々木莉佳子ちゃんで、やっぱり目がいきますね。莉佳子ちゃんは自分への自信がパフォーマンスにも出ているし、自分の見せ方をわかっているダイナミックなダンスがすごくカッコいいんです。
あと、最近の推しメンはBEYOOOOONDS(ビヨーンズ)の西田汐里(にしだ・しおり)ちゃん。もともと「かわいいな」「一生懸命なパフォーマンスが目を引くな」とは思っていたんですけど、写真集のメイキング映像を見たときに「なんて素敵なくびれの持ち主なんだ!」と思ったという、ちょっと不純なきっかけです(笑)。
そこから注目して見るようになったら、自分をどう見せたらいいかをすごくわかっていて、ダンスもとても上手なんですよね。BEYOOOOONDSの振り付けってすごく面白くてキャッチーなんですけど、その中でちゃんと自分らしさやかわいらしさが出ているし、歌声も好きなので、最近はすごく目がいきますね。他にも、推しメンとしてチェックしている子はたくさんいます(笑)。
――推しは増やすタイプですね(笑)。これまでカントリー・ガールズとJuice=Juice、2つのグループで活動されてきたなかで、特に苦労したダンスはありますか?
難しかったのはカントリー・ガールズの『ブギウギLOVE』(2016年)です。ロカビリー調の曲でグループとして新たな試みだったということもあるんですけど、衣装がフリフリのパニエで、すごくボリュームのあるスカートだったので、それで踊るのが難しくて。
ペアになって手をつないで、上体を反らした状態でステップしながらグルグル回るところがあるんですけど、そこで苦戦したことがパッと頭に浮かんできました。大きなスカートがぶつかりあうから、いい感じにごまかしながら動いたり、移動でも気をつけることが多かったですね。
腹筋の縦のラインは絶やさないようにしなきゃ
――では振り付けが楽しかったり、印象に残っている曲も教えてください。
Juice=Juiceに入って最初のアルバムに参加したときに『素直に甘えて』(2018年)という曲を歌ったんですけど、セクシーを研究している時期にすごくセクシーな振り付けをいただいて、メンバーや先生を見てたくさん研究して踊りました。夏場に屋外でその曲をパフォーマンスした映像があるんですけど、みんな汗だくになりながら大人っぽい振り付けを露出多めな衣装で踊っていて、客観的に見てみんなすごいセクシーだなと思ったんですよ。
そのとき初めて自分のおなかの縦ラインがこんなに見えるんだなってことが分かったんです。そのあたりがきっかけで「おなかのラインがきれい」とか、「腹筋がセクシー」と言っていただく機会が増えて、自分のモチベーションにもなりました。そのラインは絶やさないようにしなきゃと思いましたし(笑)、発見があった楽しさという意味で印象的でしたね。
――カントリー・ガールズさんは、おなかを出す衣装はほとんどなかったですもんね。
そうなんです。あとカントリー・ガールズの『恋はマグネット』(2016年)もすごく印象的ですね。ウィスパーボイスで歌うという自分の新境地を開拓したこともそうですし、シンプルな振り付けだけど間奏ではガッツリ踊っていて。
見る人によっては「急にそんなに踊る?」って思ったかもしれないですけど、先生から「ここはガッツリ踊って」と言われていて、私のダンスをグッと見せられたのかなと思います。
新曲MVで見せ場も「Juice=Juiceにダンスのイメージも加えていけたら」
――4月28日にリリースされる新曲の話も伺いたいのですが、『がんばれないよ』のMVでは稲場さんのソロダンスがありますよね。
実は『がんばれないよ』では歌のソロパートがひとつもないんです。レコーディングでも涙が出てしまうくらい感情移入できた曲だったので、ちょっと落ち込んだんですが、だからこそ、ダンスで見せ方を考えようと思っていました。
当初予定されていたものからどんどん振り付けが少なくなっていって、手だけの振りがメインになったので、みんなで手の角度をそろえたり、振りに気持ちを込めることを重視していたんですけど、MV撮影のときに振り付けの先生から「曲に合わせてフリーで踊ってみて」「ちょっとコンテンポラリー(ダンス)っぽい感じで」というオーダーがありました。コンテンポラリーをちゃんと習ったことがないので雰囲気でしかないんですけど、曲に合わせて自分の気持ちをぶつけようと、思うままに踊ってみました。
――しなやかなダンスがすごく素敵でした。そして『DOWN TOWN』は山下達郎さんが在籍されていたシュガー・ベイブさんの名曲のカバーですね。
間奏では、この曲がシングル初参加となる元こぶしファクトリーの井上玲音(いのうえ・れい)ちゃんのボイパに合わせて激しく踊っているので、いろんな表現を楽しんでいただきたいです。
実はこの曲も振り付けがどんどん減っていって、ダンス好きとしてはちょっと悲しいところではあったのですが、最終的にサビはランウェイを歩くような振り付けに決まって。スタイルのいいメンバーの歩き方を見ながら、とはいえ私のスタイルは変えようがないので、ポーズのバリエーションを増やしたり、みんなで雰囲気をそろえたりしました。
こんな時期だからこそ、この曲を聴いているときは街へ繰り出しているような気持ちになっていただきたいと思って、ただカッコつけるだけじゃなく、楽しくルンルンな歩き方もしています。メンバーそれぞれの違いも見ていただきたいです。
――稲場さんは“あざとかわいいキャラ”も魅力ですが、カッコいいダンスとのギャップがあると言われることも多いのではないかと思います。そう言われることはどう感じていますか?
すごくうれしいです。自分の強みがないなとずっと思っていたところで、あざといキャラと言われるようになったのはすごくありがたかったですし、最近は自分から寄せて発言することもあるんです。それはあざといキャラでやっていきたいからではなく、私があざといことをしてみんなが笑ってくれるのがうれしいんです。ダンスが好きなのも、かわいいものが好きなのも、全部が自分なので、結果的にギャップがいいと言ってもらえるのは本当にありがたいです。
――稲場さんのいろんな面がちゃんとみなさんに伝わっているということなんですね。では、ダンス面で今後やってみたいことや目標を教えてください。
オーディションで入ってくる新メンバーが、歌がうまい子か、ダンスが上手な子かで方向性が変わってくると思うんですけど、ダンスに振り切った曲もやってJuice=Juiceにダンスのイメージも加えていけたらうれしいなと、個人的には思っています。
とはいえ、ガツガツ踊る曲ばかりをやりたいかというとそうではなくて、かわいい曲ももっとやりたいですし、セクシーな曲も極めたいです。もちろん先輩方が築き上げてこられた「歌がうまいグループ」というイメージは崩したくないので、歌もダンスも両方頑張っていきたいです。
――これからのJuice=Juiceさんが楽しみです! 最後に、稲場さんにとっての“ダンス”をひと言で表すなら?
「人生」と言いたいですけど、ちょっと大きすぎる気もするので、「なくてはならないもの」ですかね。自分の人生を振り返ったときに、ダンスがなかったら全く違う人生になっていたと思うんです。こんなにもダンスを好きにならなければ、アイドルになっていなかったと思います。たくさんのきっかけをくれたのがダンスですし、一番成長させてくれたものでもあるので、私にとってはなくてはならないもので、ダンスに支えられているなと思います。
プロフィール
稲場愛香(いなば・まなか)
1997年12月27日生まれ、北海道出身。愛称まなかん、いなばっちょ。2013年5月にハロプロ研修生となり、2014年11月、カントリー・ガールズに加入。2015年3月、シングル『愛おしくってごめんね/恋泥棒』でデビューした。喘息の療養のため活動休止後、2016年8月にグループを卒業。2017年9月、ハロプロ研修生北海道のリーダー的役割を担いながら活動を再開し、2018年6月にJuice=Juiceに加入した。
作品情報
Juice=Juice 14thシングル『DOWN TOWN/がんばれないよ』
『DOWN TOWN』は、山下達郎さんが在籍していた伝説のバンド、シュガー・ベイブの1975年の名曲を2021年流にカバー。スウェーデン人プロデューサー、Anders Dannvikによるクールなシティポップアレンジと、新加入・井上玲音さんのボイスパーカッションも聴きどころとなっている。『がんばれないよ』は、代表曲『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」』と同じくシンガー・ソングライターの山崎あおいさんが作詞を担当した。
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