小池氏は事実関係について書面でこう回答した。
「組織委員会が17年12月に取りまとめた『東京2020大会の開閉会式に関する基本コンセプト』には『日本・東京』の項目があり、『江戸文化の伝統の世界発信』について記載されていると承知している」
五輪憲章にも抵触しかねない
政治家による著名人や支援者の“口利き”に、問題はないのか。スポーツ史が専門の坂上康博・一橋大学大学院教授が指摘する。
「五輪憲章の根本原則の5では、『スポーツ団体は自律の権利と義務を持つ』と定められています。開会式の演出に政治家が介入し、組織委の自律が損なわれることは、五輪憲章にも抵触しかねません。また、政治家にとって支援団体を出演させることができれば、集票に繋がる。それは五輪の政治利用に他なりません」
森氏らの動きに、組織委幹部も困惑を隠せなかったという。それでもMIKIKO氏は五輪の理念を念頭に、自らが描く演出の中身を前向きに詰めていった。
IOCも評価していたMIKIKOチームの“幻の開会式案”
そうして練り上げた開会式の演出案。小誌は、MIKIKO氏のチームが、IOC側にプレゼンした280頁に及ぶ内部資料(昨年4月6日付)を入手した。渡辺直美もYouTubeで「かっこよすぎ」と絶賛した“幻の演出案”である。
その資料によれば、セレモニーは、会場を1台の赤いバイクが颯爽と駆け抜けるシーンで幕を開ける。漫画家・大友克洋氏が20年東京五輪を“予言”した作品として話題となった『AKIRA』の主人公が乗っているバイクだ。プロジェクションマッピングを駆使し、東京の街が次々と浮かび上がっていく。三浦大知、菅原小春ら世界に名立たるダンサーが花を添え、会場には、大友氏が描き下ろした『20年のネオ東京』が映し出される。
64年の東京大会を映像で振り返ったのち、「READY?」と合図を送るのは、渡辺直美だ。女性ダンサーたちが、ひとりでに走る光る球と呼吸をあわせて舞う。世界大陸をかたどったステージの間を、各国のアスリートたちが行進。各種競技の紹介は、スーパーマリオなどのキャラクターのCGが盛り上げていく。
最後に聖火が点されると、花火が開幕を告げる――。
「IOCも『よくここまで作り上げた』と称えていました。ただ、MIKIKO氏はプレゼン直前の3月5日、佐々木氏の侮辱演出案に異論を唱えていた。この間、水面下で事態は動き出していたのです」(電通幹部)