「ユリコ恐るべし」を印象付けた選挙で終わった
さすがに、これは狙ってできないだろう。「ユリコ恐るべし」を印象付けた選挙で終わった。

3日、東京都議選で「都民ファーストの会」荒木千陽代表を応援する小池都知事。都議選を制することができなかった菅首相は、4度目の緊急事態宣言という決断を迫られることに 写真/時事通信社
今年は選挙の年だ。7月4日に行われた東京都議会議員選挙を皮切りに、9月に自民党総裁選挙、10月に衆議院選挙が行われる予定だ。そして来年7月には参議院選挙。この長い戦いの緒戦を小池百合子東京都知事が制し、政局の主導権を握った。
通常、選挙は1か月前に大勢が固まる。自民党と公明党は小池都知事の与党である都民ファーストを包囲し、壊滅寸前まで追い詰めた。そんな最中に総大将の小池都知事が病気で入院。「不戦敗」「敵前逃亡」と批判されていた。
事前調査では、自民党は50議席を回復して都政第一党を回復、都民ファーストは一桁に転落する見込みだった。しかし、「火事は最初の5分間、選挙は最後の5分間」とは、よく言ったものだ。
投票日直前の金曜午後4時、既にワイドショーが終わっている時間に、突如として小池都知事は復帰記者会見を行った。そして土曜日は、激戦区を回った。公明党が当落線上の選挙区ばかりだ。
小池都知事は、乾坤一擲の勝負を挑み、勝った。負けた陣営の人間は「あれは仮病だ」「タヌキ寝入りだ」と悔しがるが、その負け惜しみに何の意味があるのか。聞けば、入院直前の小池都知事は、18歳の愛犬を亡くしたとか。周囲は「本当に落ち込んでいた」と証言が一致する。
私は小池都知事を「冷血漢」と見做し批判してきた立場だからこそ、その落ち込みは本当だったとの心証を抱く。小池氏のように、独身で子供がいない女性にとって、愛犬は夫と息子を兼ねた存在だ。しかも犬の平均年齢の12~13歳をはるかに上回るまで生きた。並大抵の愛情の注ぎ方ではないし、よほどの力を込めねばありえない。
自分のすべてを失いかけたギリギリの状況で、最後の力を振り絞って戦った。しかも勝てる保証のない戦いだ。明らかに出遅れだし、1日強の動きで何ができるのか。最終日に東京中を回る小池都知事を、「何もしなかったと言わせないためのアリバイ的動き」と自民党筋は揶揄していた。
ところが、日曜日の朝の出口調査では都民ファーストの勢いが止まらず、午後にも伸びた。