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POIV、全てが1つに:プライス、出来高、そして、取組高

OBV(オン・バランス・ボリューム)インディケーターは、株式市場を分析する上で非常に役立つテクニカル・インディケーターと言える。特に、他のインディケーターと組合せて、市場のひずみを見つけだすことを容易にしてくれている。
しかし、ここで、新たなインディケーター、POIVを紹介したい。

出来高はパワフルなインディケーターで、中長期の市場変動を分析するとき、その威力を発揮している。
中でも、OBV(オン・バランス・ボリューム)は最も知られた出来高インディケーターだろう。
このインディケーターは、次のように計算されている;

    昨日の終値より今日の終値が上であれば、今日の出来高を昨日の値に足す。
    昨日の終値より今日の終値が下であれば、今日の出来高を昨日の値から引く。
この分析は、1961年にジョー・グランビル氏によって開発されたとして知られている。
しかし、1940年、サンフランシスコ在住だったウッズとバジロリアが“アキュミレーティブ・ボリューム”として、このアイデアを公表していた。

プライス、取組高と出来高を使ったPOIVについて解説する前に、OBVがどのように活用できるのか例をあげて説明したい。

OVBの一般的な使用方法としては、株価が安値を更新して下落していく中、OBVはその動きに連動していないダイバージェンシーから転換時期が間近に迫っていることを見つけだす方法だろう。
この状況は、売り手の力が底をついてしまい、買い手側が余力を持って株を拾い集めている様子になっている。
全く逆の状態もしばしば市場でみられる。
価格が上昇していくが、OBVは高値を更新していかない。このようなダイバージェンシーが起きると、そろそろ相場が天井を打って、その後、下落に転じる。

マイクロソフトの株価とOBV

上記のチャートから、マイクロソフトの株価とOBVとの間にひずみが起きて、2006年2月は、絶好の売り場であったことが見て取れる。価格と実際の買い手と売り手の動向との間にダイバージェンシーが発生することがある。
この市場の参加者動向をOBVが的確に捉えている。1月後半からマイクロソフトの株価が急騰したとき、赤線で表示されているOBVは最高値をつけていなかった。つまり、買い手側のモメンタムはそれ程強いものではなかった。
この時期からマイクロソフトの株価は3月と4月は横ばい状態になり、遂には大きくその値を崩す結果になった。

ファステナル社の株価とOBV

ファステナル(FAST)社の株価が爆謄するだろうと予測させる動きがOBVからみてとれた。
2005年9月の株価とOBVに注目して貰いたい。8月の安値を9月に更新して株価が下落を続けていた。
しかし、そんな相場をOBVというレントゲンで撮影してみると、全く異なった状況を表していた。
OBVは安値を更新することなく、その値を徐々に上げてきていた。
その結果、たった35営業日間で株価は29ドルから40ドルに跳ね上がった。

出来高について

OBVの効力から出来高は市場を分析できる優れた情報源であることは容易に理解できるが、この出来高には問題がある。
多くの場合、その銘柄の需給を出来高は明確に反映していない。それは、ファンドの銘柄入れ替えによる売買があまりに多く、一銘柄の本来の需給を出来高から読み取るのは困難になっている。
また、近年、活発になってきたアルゴリズムトレードによって裁定取引が高速で行われ、その銘柄自体の需給は無視されるケースが多い。

先物市場では、また、出来高分析には別の問題が存在している。大口投資家や需給筋と言われるコマーシャルズは、先物市場でヘッジを目的とした先物取引を主に行うため、投機的な動きが全てではない。
ヘッジの方法も現物に対して先物でヘッジするだけではなく、限月間のサヤの拡大と縮小に注目した期間ヘッジや異商品間スプレッドによるヘッジも頻繁に実施されている。そのため、その先物商品の需給を出来高から分析するのは難しい。

解決方法?

これまで列挙してきた出来高に関する問題点から、その利用方法が困難であるようだが、それでも、出来高推移はそれなりの価値を持っている。
やはり、出来高自体のデータに頼るのではなく、他の情報と組合せて、はじめてインディケーターとしての価値が出てくる。例えば、日中のレンジと出来高と言った他の情報とミックスするべきだろう。

先物市場であれば、この問題を解決する一つに取組高がある。取組高を簡単に説明すると、その商品の未決済の売りと買いのペアの総数である。グランビル氏によって有名になったOBV式の出来高を取組高と入れ替えてみる。
また、価格と出来高も一緒の式に取り込んでみる;

累積[取組高*(終値-前日の終値)/(真の高値-真の安値)]+OBV

上記の式をいくつかに分けて説明したい。先ず、累積であるが、この新インディケーターはオシュレーター系のインディケーターではなく、それぞれの値を累積していくようになっている。そのため、値の増減がよりはっきりと表わされている。

オリジナルOBVと取組高を入れたOBV

POIVでは、価格変動に取組高をかけて、その値を真のレンジで割っている。そして得られた値を累積して、それに、オリジナルのOBVを足している。

つまり、日々に価格変化を真のレンジで割ることで、その変化がレンジのどこに位置しているのか求めている。
どれぐらいの取組高が買い手側に流れているのか、もしくは、売り手側についているのかをここでは求めている。

そして、この需給関係に価格帯とトレンド要素をPOIVの式では取り入れている。これまでの流れを把握しながら、しかも、前日比を使って変化も見極めている。それだけではなく、オリジナルのOBVでは、出来高全てを買いか売りに仕分けていたが、この新しい式では、取組高の割合に沿った分だけをOBVに追加していくようにしている。
次のステップで、累積された結果をOBVに加えて増減の変化をビジュアル的に把握できるように する。これは、私が独自に開発したPOIV ADである。

トウモロコシとPOIV、30年物米国債先物とPOIV AD

POIVの式はOBVとかなり違っているが、それでも、その活用方法はOBVと同じである。トウモロコシと30年物米国債先物を例にあげて、POIVとの価格とのひずみ(ダイバージェンシー)をチャート上に記した。株式市場と違って、先物市場の場合、出来高よりも取組高の方がより需給関係を分析するには適している。

どうも、電子取引が一般化されて、しかも、時間外取引も増えてきている今となっては出来高から需給を判断するのは極めて難しくなっている。そこで、POIVでは、取組高、価格変化、それに出来高の情報を全て取り入れて1つのインディケーターにまとめてある。注意して欲しいには、1限月の出来高だけではなく、その商品の全取引高を考慮する必要があることだ。

POIVとS&P500

POIVとS&P500指数との間にダイバージェンシーが発生して2007年3月、POIVは引き続き、安値を更新しないで上昇していた。そのとき、指数は安値を割り込んできていた。しかし、その後、POIVの動きを追うようにS&P500指数が反騰して上昇トレンドへ転換した。これは、商品相場に限らず、POIVは金融商品でも活用できると裏付けている。

では、個別株は?

先物市場で役立つインディケーターがそのまま、個別株の分析にも活用できるだろうか疑問に思うだろう。端的に答えれば、株式市場では取組高データが存在しない。そのため、POIVを個別株にあたることはできない。
それでも、個別銘柄の先物分析には十分、このインディケーターを利用できる。ここでは、個別銘柄先物を分析していないが、POIVの威力を試す価値はあるだろう。

最後に、ここで紹介したPOIVはあくまでインディケーターであって、トレーディングシステムではない。終値の変化とレンジとの関係から取組高の買いと売りを仕分けていく方法をマーケット分析に使ったに過ぎない。
つまり、この新インディケーターだけで市場分析を全て行うことが不可能である。

新インディケーターとプライスパターンなどを組合せることで相場のレントゲン撮影ができ、早期に相場の変化を発見する手助けになるだろうと信じている。

2007年12月、フューチャーズ誌より
ラリー・ウィリアムズ